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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02D
管理番号 1190412
審判番号 不服2007-31490  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-22 
確定日 2009-01-08 
事件の表示 特願2003-349924「圧力センサの故障判定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月28日出願公開、特開2005-113809〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は、平成15年10月8日の出願であって、平成19年2月5日付けで拒絶理由が通知され、平成19年4月16日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成19年10月16日付けで拒絶査定がされ、平成19年11月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであって、その請求項1ないし6に係る発明は平成19年4月16日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲、明細書及び出願当初の図面の記載からみて、請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものと認められ、そのうち、請求項2に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項2】 複数の気筒のうちのすべての気筒を運転する全気筒運転モードと、一部の気筒の運転を休止する部分気筒運転モードに、運転モードを切り換えて運転される内燃機関において、当該内燃機関を制御するためのパラメータとして、スロットル弁よりも下流側の吸気圧を検出するために設けられた圧力センサの故障を判定する圧力センサの故障判定装置であって、
前記スロットル弁の開度を検出するスロットル弁開度検出手段と、
当該検出されたスロットル弁の開度が所定の第1しきい値よりも大きい場合において、前記圧力センサで検出された吸気圧が所定の第2しきい値よりも小さいときに、前記圧力センサが故障していると判定する故障判定手段と、
前記内燃機関の運転モードが前記全気筒運転モードのときと前記部分気筒運転モードのときにおいて、前記第1しきい値および前記第2しきい値の少なくとも一方を互いに異なる値に持ち替えるしきい値持替手段と、
を備えることを特徴とする圧力センサの故障判定装置。」

2.引用文献
(1)原査定の拒絶理由に引用された特開平3-47447号公報(以下、単に「引用文献」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。
(ア)「この発明は ‥‥‥‥ 圧力センサの故障判定を確実に行うことができ運転者に不安を与えるような誤判定を生じない電子制御エンジン制御方法を提供することを目的とする。」(第2頁上左欄18行ないし同頁上右欄2行)
(イ)「この発明においては、スロットル開度を検出し、スロットル開度が所定値以上(なお、「所定値以下」の記載は、平成2年9月14日付けの手続補正書(第5頁上右欄6?7行)により前記したように補正されている。)か、あるいは、エンジン回転数が所定値以下のときのみ、圧力センサによって検出したスロットル弁下流の吸気圧力が所定の常用範囲内にあるかどうかの下限側判定を行う。そして、検出された吸気圧力が所定範囲外であれば、圧力センサに何らかの故障が発生したとみなし、この場合は、通常の吸気圧力とエンジン回転数に基づいた燃料供給量、点火時期等の制御に代えて、吸気圧力以外の運転状態パラメータに基づいたエンジン制御を行う。」(第2頁上右欄12行ないし同頁下左欄2行)

(ウ)「第1図はこの発明の一実施例に係るエンジンの電子制御装置の構成図である。
この図において、1は内燃機関であり、2は内燃機関1に接続された吸気管、3は吸気管2内に設けられたスロットル弁である。吸気管2内にはスロットル弁3下流に圧力センサ4が設けられ、この圧力センサ4によって吸気圧力が検出される。‥‥‥‥ スロットル弁3にはその開度を検出するスロットル開度センサ8が連結されており、スロットル開度に対応した出力がADコンバータ91に送られる。
第1図で9は、圧力センサ4,回転センサ5およびスロットル開度センサ8などから送出された情報を基に所要燃料量および点火時期を演算し、インジェクタ6および図示しないイグニッションコイルの駆動パルスを発生する制御装置を示す。」(第2頁下左欄4行ないし同頁下右欄11行)

(エ)「次に、上記実施例の動作を第2図のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップ100で、回転センサ5から入力されるパルス信号即ちエンジン回転数Neと圧力センサ4から得られた吸気圧力(絶対圧力)値Pbとスロットル開度センサ8からのスロットル開度とを読み込む。そして、ステップ101で、まず、圧力センサの値が所定範囲内にあるかどうかの上限側の判定を行い、読み込んだ吸気圧力値Pbが設定上限値(例えば860mmHg)よりも大きいときは、通常の機関運転時には有り得ない値なので圧力センサ故障と判断し故障時の処理ルーチンステップ107へ進む。また、吸気圧力値Pbが設定上限値よりも小さいときは次のステップ102へ進んで、圧力センサの所定範囲の下限値の判定ができるかどうかの判定として、まず、スロットル開度の条件を判定する。すなわち、スロットル開度を所定値、例えば全閉基準から5度程度の値と比較する。そして、この値より小さければステップ103へ進み、そうでない場合はステップ106へ進む。
ステップ103では回転数が所定値、例えば3000rpmより高いか否かを判定して、回転が高ければステップ104へ進んで圧力センサ正常時の処理を行い、回転が低ければステップ106へ進む。つまり、ステップ102と103で圧力センサの故障判定が困難な機関の減速時を識別し、減速時には圧力センサ所定範囲の下限側判定を行わないようにしている。
ステップ106では、圧力センサが所定範囲にあるかどうかの下限側の判定を行うべく、吸気圧力値Pbと設定下限値、例えば100mmHgとを比較し、圧力値Pbが大きいときはステップ104へ進み、そうでない場合は、高回転の減速時を除いては取り得ない値なので、故障と判定しステップ107へ進む。
ステップ104では、圧力センサが正常時の通常の処理として、読み込んだ吸気圧力とエンジン回転数により燃料量および点火時期を決定し、ステップ105でインジェクタおよびイグニッションコイルに出力する。
ステップ107では、ノイズ等による誤動作を防止して故障を確実に検出するために、所定範囲外の状態が一定時間あるいは一定回数継続したかどうかをチエツクし、一定期間以上継続したという時にはステップ108へ進み、そうでない場合は正常ルーチン104へ進む。
ステップ108では圧力センサ故障情報を記憶し、次のステップ109では、運転者に圧力センサが故障であることを知らせる警告灯を点灯させ、さらに、次のステップ110において、スロットル開度とエンジン回転数より燃料量および点火時期を決定し、圧力センサ正常時と同じようにステップ105でインジェクタおよびイグニッションコイルに出力する。
上記動作を繰り返して圧力センサの故障判定が実行される。
なお、上記実施例では機関の減速時を検出するのにスロットル開度センサを用いたが、高回転での圧力センサ出力値が故障判定識別レベル以上となるようなスロットル開度を検出するスイッチを用いても同様の効果を奏するのは云うまでもない。」(第3頁上左欄12行ないし同頁下右欄13行)

(オ)「以上のようにこの発明によれば、スロットル開度を検出し、スロットル開度が所定値以上か、エンジン回転数が所定値以下のときのみ、吸気圧センサ出力値が機関通常動作時の所定範囲内にあるかどうかの下限側判定を行うようにしたので、圧力センサの故障判定を確実に行うことができ、運転者に不安を与えないエンジン制御が行える。」(第3頁下右欄15行ないし第4頁上左欄1行)

(2)引用文献に記載された発明
上記の記載事項(1)(ア)?(オ)及び図面の記載を総合すると、引用文献には、以下の点が記載されていることが分かる。
内燃機関において、当該内燃機関を制御するためのパラメータとして、スロットル弁3よりも下流側の吸気圧力を検出するために設けられた圧力センサ4の故障を判定する装置(以下、「故障判定制御装置」という。)がある。
スロットル弁3の開度を検出するスロットル開度センサ8と、当該検出されたスロットル弁3の開度が所定値よりも大きい場合において、前記圧力センサ4で検出された吸気圧力が設定下限値よりも小さいときに、前記圧力センサ4が故障していると判定する手段(以下、「故障判定制御手段」という。)がある。
よって、引用文献には次のような発明が記載されているものと認められる。
「内燃機関を制御するためのパラメータとして、スロットル弁3よりも下流側の吸気圧力を検出するために設けられた圧力センサ4の故障を判定する圧力センサの故障判定制御装置であって、スロットル弁3の開度を検出するスロットル開度センサ8と、当該検出されたスロットル弁3の開度が所定値よりも大きい場合において、圧力センサ4で検出された吸気圧力が設定下限値よりも小さいときに、圧力センサ4が故障していると判定する故障判定制御手段とを備える圧力センサの故障判定制御装置。」(以下、「引用文献に記載された発明」という。)

3.当審の判断
(1)本願発明と引用文献に記載された発明との対比
本願発明と引用文献に記載された発明とを対比すると、引用文献に記載された発明における「スロットル弁3」、「圧力センサ4」、「吸気圧力」、「スロットル開度センサ8」、「スロットル弁3の開度」、「故障判定制御手段」及び「故障判定制御装置」は、それらの意図する技術内容及び機能等からみて、それぞれ、本願発明における「スロットル弁」、「圧力センサ」、「吸気圧」、「スロットル弁開度検出手段」、「スロットル弁の開度」、「故障判定手段」及び「故障判定装置」に相当する。また、引用文献に記載された発明における「(スロットル開度センサ8により検出されるスロットル開度の比較基準値である)スロットル開度の所定値」及び「(圧力センサ4により検出される吸気圧力の比較基準値である)吸気圧力の設定下限値」は、それらの意図する技術内容からみて、本願発明における「所定の第1しきい値」及び「所定の第2しきい値」にそれぞれ相当する。
したがって、本願発明と引用文献に記載された発明は、「内燃機関において、内燃機関を制御するためのパラメータとして、スロットル弁よりも下流側の吸気圧を検出するために設けられた圧力センサの故障を判定する圧力センサの故障判定装置であって、スロットル弁の開度を検出するスロットル弁開度検出手段と、検出されたスロットル弁の開度が所定の第1しきい値よりも大きい場合において、圧力センサで検出された吸気圧が所定の第2しきい値よりも小さいときに、圧力センサが故障していると判定する故障判定手段とを備える圧力センサの故障判定装置。」である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点〉本願発明においては、内燃機関が、「複数の気筒のうちのすべての気筒を運転する全気筒運転モードと、一部の気筒の運転を休止する部分気筒運転モードに、運転モードを切り換えて運転される内燃機関」であり、「内燃機関の運転モードが全気筒運転モードのときと部分気筒運転モードのときにおいて、第1しきい値及び第2しきい値の少なくとも一方を互いに異なる値に持ち替えるしきい値持替手段」を備えているのに対し、引用文献に記載された発明においては、内燃機関についてなんら特定されておらず、しきい値持替手段を備えるものではない点。

(2)相違点についての検討
前記〈相違点〉について検討する。内燃機関において、複数の気筒のうちの全ての気筒を運転する全気筒運転モードと一部の気筒の運転を休止する部分気筒運転モードとの間で、運転モードを切り換えて運転しうるように構成することは、本願出願前に従来から周知の技術事項である(必要ならば、例えば、特開平5-195850号公報や特開昭55-78132号公報、さらには、原査定の拒絶理由に周知事項を例示するものとして引用された特開2003-83148号公報(平成15年3月19日公開)、特開2003-184595号公報(平成15年7月3日公開)及び特開2002-256950号公報等参照のこと)。そして、この種の内燃機関においては、原査定の拒絶理由においても指摘するように、部分気筒運転モードと全気筒運転モード間では吸気圧が異なり、部分気筒運転モードのときに、スロットル弁よりも下流側の吸気管内で負圧が発生しにくいため、その吸気圧は、全気筒運転モードのときより高くなるという吸気圧特性を有することは、当業者にとって一般に知られている周知の技術事項である(必要ならば、例えば、原査定の拒絶理由に周知事項を例示するものとして引用された特開2003-83148号公報、特開2003-184595号公報及び特開2002-256950号公報等参照のこと)。また、内燃機関等に用いられるセンサ等の検出手段の故障や異常の判定を行う際に、センサ等の検出手段により検出される検出値と比較する比較基準値やそのしきい値を、環境条件や機関の状態等に応じて、変更することが好ましいことは当業者にとって周知の技術事項であり(必要ならば、例えば、特開平5-256214号公報、特開平5-256127号公報等参照のこと)、このような環境条件や機関の状態の一態様である吸気圧特性が異なる部分気筒運転モードと全気筒運転モード間での運転モードの切り換えに際して、そのしきい値を運転モードに応じて適宜変更するように構成することは当業者が容易に想到しうる程度のものと認められる。
したがって、引用文献に記載された発明における内燃機関として、複数の気筒のうちの全ての気筒を運転する全気筒運転モードと一部の気筒の運転を休止する部分気筒運転モードとの間で運転モードを切り換えて運転しうるように構成した内燃機関を採用し、運転モードが全気筒運転モードのときと部分気筒運転モードのときにおいて、センサ等の検出手段により検出された検出値と比較するためのしきい値としてそれぞれの運転モードに適した適切なしきい値をそれぞれ設定し、それぞれの運転モードに応じて互いに異なるしきい値に持ち替えるように構成し、〈相違点〉に係る本願発明のように特定することは、前記引用文献に記載された発明及び前述した周知の技術事項等に基づいて、当業者が格別な創意工夫を要することなく容易に想到しうる程度のものと認められる。
よって、本願発明は、引用文献に記載された発明や前述した周知の技術事項等に基づいて、当業者が格別困難なく容易に想到し発明をすることができたものと認められ、しかも、本願発明は、全体構成でみても、引用文献に記載された発明や前述した周知の技術事項等から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明及び前述した周知の技術事項等に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-05 
結審通知日 2008-11-11 
審決日 2008-11-25 
出願番号 特願2003-349924(P2003-349924)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 有賀 信  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 柳田 利夫
森藤 淳志
発明の名称 圧力センサの故障判定装置  
代理人 高橋 友雄  

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