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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B |
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管理番号 | 1190414 |
審判番号 | 不服2007-33608 |
総通号数 | 110 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-02-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-12-13 |
確定日 | 2009-01-08 |
事件の表示 | 特願2005-136336「中空ゴルフクラブヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 8月25日出願公開、特開2005-224633〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成14年1月11日に出願された特願2002-4675号(以下、「原出願」という。)の一部を新たな特許出願としたものとして、平成17年5月9日に出願されたものであって、拒絶理由通知に応答して平成19年8月29日付けで手続補正がされたが、平成19年11月6日付けで拒絶査定がされ、これを不服として平成19年12月13日付けで審判請求がされるとともに、平成19年12月25日付けで明細書についての手続補正がされたものである。 第2 平成19年12月25日付け明細書についての手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成19年12月25日付け明細書についての手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正の内容 本件補正における特許請求の範囲についての補正は、 補正前(平成19年8月29日付け手続補正書参照)に 「【請求項1】 金属製の外殻部材と繊維強化プラスチック製の外殻部材とを接合して中空構造のヘッド本体を構成した中空ゴルフクラブヘッドにおいて、前記金属製の外殻部材の接合部の両面に前記繊維強化プラスチック製の外殻部材の接合部を厚さ方向に分岐させて両側から挟み込むように接着する構造を、前記繊維強化プラスチック製の外殻部材の全周囲にわたって形成したことを特徴とする中空ゴルフクラブヘッド。 【請求項2】 前記金属製の外殻部材の接合部の厚さを非接合部との境界において該非接合部の厚さと同一にした請求項1に記載の中空ゴルフクラブヘッド。 【請求項3】 前記金属製の外殻部材の接合部の厚さと前記繊維強化プラスチック製の外殻部材の接合部の厚さとの総和を、前記金属製の外殻部材の非接合部の厚さよりも大きくし、かつ、前記繊維強化プラスチック製の外殻部材の非接合部の厚さよりも大きくした請求項1又は請求項2に記載の中空ゴルフクラブヘッド。 【請求項4】 前記金属製の外殻部材の接合部の肉厚を端部に向けて徐々に薄くした請求項1?3のいずれかに記載の中空ゴルフクラブヘッド。 【請求項5】 前記金属製の外殻部材の接合部に複数の切り欠きを設けた請求項1?3のいずれかに記載の中空ゴルフクラブヘッド。 【請求項6】 前記金属製の外殻部材の接合部に貫通穴を設けた請求項1?3のいずれかに記載の中空ゴルフクラブヘッド。 【請求項7】 前記金属製の外殻部材の接合部の表面粗さRaが0.5?2.0である請求項1?6のいずれかに記載の中空ゴルフクラブヘッド。 【請求項8】 前記繊維強化プラスチックの繊維が炭素繊維である請求項1?7のいずれかに記載の中空ゴルフクラブヘッド。 【請求項9】 前記金属製の外殻部材が前記ヘッド本体のフェース部、ソール部及びネック部を構成し、前記繊維強化プラスチック製の外殻部材が前記ヘッド本体のクラウン部を構成する請求項1?8のいずれかに記載の中空ゴルフクラブヘッド。」 とあったものを、 「【請求項1】 金属製の外殻部材と強化繊維が炭素繊維である繊維強化プラスチック製の外殻部材とを接合してクラウン部、フェース部、ソール部及びネック部を含む中空構造のヘッド本体を構成した中空ゴルフクラブヘッドにおいて、前記金属製の外殻部材が前記ヘッド本体のフェース部、ソール部及びネック部を構成し、前記繊維強化プラスチック製の外殻部材が前記ヘッド本体のクラウン部を構成すると共に、前記金属製の外殻部材の接合部の両面に前記繊維強化プラスチック製の外殻部材の接合部を厚さ方向に分岐させて両側から挟み込むように接着する構造を、前記繊維強化プラスチック製の外殻部材の全周囲にわたって形成したことを特徴とする中空ゴルフクラブヘッド。 【請求項2】 前記金属製の外殻部材の接合部の厚さを非接合部との境界において該非接合部の厚さと同一にした請求項1に記載の中空ゴルフクラブヘッド。 【請求項3】 前記金属製の外殻部材の接合部の厚さと前記繊維強化プラスチック製の外殻部材の接合部の厚さとの総和を、前記金属製の外殻部材の非接合部の厚さよりも大きくし、かつ、前記繊維強化プラスチック製の外殻部材の非接合部の厚さよりも大きくした請求項1又は請求項2に記載の中空ゴルフクラブヘッド。 【請求項4】 前記金属製の外殻部材の接合部の肉厚を端部に向けて徐々に薄くした請求項1?3のいずれかに記載の中空ゴルフクラブヘッド。 【請求項5】 前記金属製の外殻部材の接合部に複数の切り欠きを設けた請求項1?3のいずれかに記載の中空ゴルフクラブヘッド。 【請求項6】 前記金属製の外殻部材の接合部に貫通穴を設けた請求項1?3のいずれかに記載の中空ゴルフクラブヘッド。 【請求項7】 前記金属製の外殻部材の接合部の表面粗さRaが0.5?2.0である請求項1?6のいずれかに記載の中空ゴルフクラブヘッド。」 と補正するものである。 つまり、本件補正は、特許請求の範囲についての以下の補正事項を含む。 〈補正事項1〉補正前の請求項8乃至9を削除する補正。 〈補正事項2〉補正前の請求項1における「繊維強化プラスチック製の外殻部材」を補正後の請求項1において「強化繊維が炭素繊維である繊維強化プラスチック製の外殻部材」とする補正。 〈補正事項3〉補正前の請求項1における「中空構造のヘッド本体」を補正後の請求項1において「クラウン部、フェース部、ソール部及びネック部を含む中空構造のヘッド本体」とする補正。 〈補正事項4〉補正前の請求項1に「前記金属製の外殻部材が前記ヘッド本体のフェース部、ソール部及びネック部を構成し、前記繊維強化プラスチック製の外殻部材が前記ヘッド本体のクラウン部を構成すると共に、」を追加する補正。 2.本件補正の目的 〈補正事項1〉について 補正事項1は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除を目的としたものと認める。 〈補正事項2〉について 補正前の請求項1における「繊維強化プラスチック製の外殻部材」について、「強化繊維が炭素繊維である」を追加するものであるが、この追加された「強化繊維が炭素繊維である」は補正前の請求項1に係る発明の特定事項、すなわち「繊維強化プラスチック」の「強化繊維が炭素繊維である」ことを特定するものであるから、補正事項2は補正前の請求項1に係る発明の特定事項を限定するものといえる。 よって補正事項2は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認める。 〈補正事項3〉について 補正前の請求項1における「中空構造のヘッド本体」について、「クラウン部、フェース部、ソール部及びネック部を含む」を追加するものであるが、この追加された「クラウン部、フェース部、ソール部及びネック部を含む」は補正前の請求項1に係る発明の特定事項、すなわち「中空構造のヘッド本体」が「クラウン部、フェース部、ソール部及びネック部を含む」ことを特定するものであるから、補正事項3は補正前の請求項1に係る発明の特定事項を限定するものといえる。 よって補正事項3は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認める。 〈補正事項4〉について 補正前の請求項1における「金属製の外殻部材」について、「前記ヘッド本体のフェース部、ソール部及びネック部を構成し」を追加するものであるが、この追加された「前記ヘッド本体のフェース部、ソール部及びネック部を構成し」は補正前の請求項1に係る発明の特定事項、すなわち「金属製の外殻部材」が「前記ヘッド本体のフェース部、ソール部及びネック部を構成する」ことを特定するものであり、 加えて補正前の請求項1における「繊維強化プラスチック製の外殻部材」について、「前記ヘッド本体のクラウン部を構成する」を追加するものであるが、この追加された「前記ヘッド本体のクラウン部を構成する」は補正前の請求項1に係る発明の特定事項、すなわち「繊維強化プラスチック製の外殻部材」が「前記ヘッド本体のクラウン部を構成する」ことを特定するものであるから、補正事項4は補正前の請求項1に係る発明の特定事項を限定するものといえる。 よって補正事項4は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認める。 すると、上記補正事項1乃至4を含む本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしているといえる。 3.独立特許要件について 上記のとおり、本件補正は平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしており、同法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認めることができる補正を含んでいるので、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (3-1)本願補正発明の認定 本願補正発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。 「金属製の外殻部材と強化繊維が炭素繊維である繊維強化プラスチック製の外殻部材とを接合してクラウン部、フェース部、ソール部及びネック部を含む中空構造のヘッド本体を構成した中空ゴルフクラブヘッドにおいて、前記金属製の外殻部材が前記ヘッド本体のフェース部、ソール部及びネック部を構成し、前記繊維強化プラスチック製の外殻部材が前記ヘッド本体のクラウン部を構成すると共に、前記金属製の外殻部材の接合部の両面に前記繊維強化プラスチック製の外殻部材の接合部を厚さ方向に分岐させて両側から挟み込むように接着する構造を、前記繊維強化プラスチック製の外殻部材の全周囲にわたって形成したことを特徴とする中空ゴルフクラブヘッド。」 (3-2)刊行物記載の発明 本願の出願前に頒布された刊行物であって、原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-112041号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の〈ア〉?〈ウ〉の記載が図示とともにある。 〈ア〉「【特許請求の範囲】 【請求項1】内部に中空部を有し・・ウッドタイプのゴルフクラブヘッドにおいて、 ソール部とクラウン部とその他の部分を構成する本体部とを夫々別材料から形成し、 本体部を形成する材料を最も比重の大きな材料から形成したことを特徴とするゴルフクラブヘッド。 【請求項2】クラウン部を形成する材料を最も比重の小さな材料から形成したことを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。」 〈イ〉「【0009】 【実施例】以下に、この発明の好適な実施例を図面を参照にして説明する。 【0010】図1に示す実施例において、内部に中空部1を有しソール部2とクラウン部3とその他の部分を構成する本体部4とを夫々別材料から形成してある。中空部1には軽量発泡樹脂等の充填材を充填しても良い。また、図示していないが、フェース面は本体部4と別材料であっても良い。少なくともソール部2,クラウン部3,本体部4は夫々別材料から形成してあり、本体部4を形成する材料を最も比重の大きな材料から形成してある。本体部4はヘッドの側周面を含んでいる。この側周面の肉厚を厚くして周辺に重量を配分することもできる。本体部4を形成する材料としてはステンレスやチタン合金あるいは銅合金,マグネシウム合金等が使用できる。クラウン部3としては合成樹脂材料が好適である。また、ソール部2としては本体部4を形成する材料よりも比重の小さなアルミニウムやその合金等が好適である。クラウン部3は最も比重の小さい材料を使用することが望ましい。クラウン部3として繊維強化樹脂を用いた場合、本体部4に対して接着させる。またソール部2は、この例では、本体部4に対しビス止めを行ったが、溶接あるいは嵌合等の手段により本体部4に取付けることができる。 〈ウ〉「【0011】図2はソール部2の形状を示すが、このような形状に限定されるものではない。 【0012】本体部4にステンレス(7.8g/cm^(3) )を用い、クラウン部3としてカーボン繊維強化樹脂(1.5g/cm^(3) )を使用し、ソール部2としてはアルミニウム(2.7g/cm^(3) )を用い、フェース長さが比較的長く体積が約190ccのヘッドを製造した。通常の同一体積のステンレス材料のみから成るヘッドに比べてヘッド重量は軽くなり、十分に振り切ることのできるものとなる。このようなヘッドでボールをヒットしたとき、ボールがトウ寄りに当った場合であっても、ボールは真っ直ぐに飛んだ。同様にヒール側でボールをヒットした場合も方向性は良かった。」 〈エ〉上記〈ア〉の「その他の部分を構成する本体部」とは、図1より、フェース部及びネック部を含むものである。 〈オ〉上記〈エ〉より、上記〈ア〉の「ソール部とクラウン部とその他の部分を構成する本体部」とは、中空構造のヘッド本体であることが把握できる。 〈カ〉上記〈エ〉及び〈オ〉より、上記〈ア〉の「ゴルフクラブヘッド」は、クラウン部、フェース部、ソール部及びネック部を含む中空構造のヘッド本体を構成したゴルフクラブヘッドであることが把握できる。 〈キ〉上記〈ウ〉より、図1の「本体部4」はステンレス製の外殻部材からなることが把握できる。 〈ク〉上記〈ウ〉より、図1の「ソール部2」はアルミニウムの外殻部材からなることが把握できる。 〈ケ〉上記〈ウ〉より、図1の「クラウン部3」はカーボン繊維強化樹脂製の外殻部材からなることが把握できる。 〈コ〉上記〈ウ〉及び上記〈キ〉乃至〈ク〉より、ステンレス製の外殻部材がヘッド本体のフェース部及びネック部を構成し、アルミニウムの外殻部材が前記ヘッド本体のソール部を構成していることが把握できるから、金属製の外殻部材がヘッド本体のフェース部、ソール部及びネック部を構成しているといえる。 〈サ〉上記〈ウ〉及び上記〈ケ〉より、カーボン繊維強化樹脂製の外殻部材がヘッド本体のクラウン部を構成していることが把握できる。 〈シ〉上記〈イ〉の「クラウン部3として繊維強化樹脂を用いた場合、本体部4に対して接着させる。」より、クラウン部3として繊維強化樹脂を用いた場合は、前記クラウン部3と前記本体部4とが接着する箇所(以下、「接合部」という。)で接合しているといえる。 そうすると、上記〈ウ〉【0012】で製造したゴルフクラブヘッドは、ステンレス製の外殻部材とカーボン繊維強化樹脂製の外殻部材とを接合し、前記ステンレス製の外殻部材の接合部と前記繊維強化樹脂の外殻部材の接合部とが接着する構造を有するものであることが把握できるから、金属製の外殻部材とカーボン繊維強化樹脂製の外殻部材とを接合し、前記金属製の外殻部材の接合部と前記繊維強化樹脂の外殻部材の接合部とが接着する構造を有するものであるといえる。 以上より、上記記載及び図面を含む引用例1全体の記載から、引用例1には、次の発明が記載されていると認めることができる。 「金属製の外殻部材とカーボン繊維強化樹脂製の外殻部材とを接合してクラウン部、フェース部、ソール部及びネック部を含む中空構造のヘッド本体を構成したゴルフクラブヘッドにおいて、前記金属製の外殻部材が前記ヘッド本体のフェース部、ソール部及びネック部を構成し、前記カーボン繊維強化樹脂製の外殻部材が前記ヘッド本体のクラウン部を構成すると共に、前記金属製の外殻部材の接合部と前記繊維強化樹脂の外殻部材の接合部とが接着する構造であるゴルフクラブヘッド。」 (以下、「引用発明」という。) (3-3)対比 a.引用発明における「カーボン繊維強化樹脂製の外殻部材」は、前記「カーボン繊維」及び「樹脂」がそれぞれ「炭素繊維」及び「プラスチック」を意味することから、本願補正発明における「強化繊維が炭素繊維である繊維強化プラスチック製の外殻部材」に相当する。 b.引用発明における「ゴルフクラブヘッド」は中空構造のヘッド本体を構成したゴルフクラブヘッドであることから、本願補正発明における「中空ゴルフクラブヘッド」に相当する。 してみれば、本願補正発明と引用発明とは、 「金属製の外殻部材と強化繊維が炭素繊維である繊維強化プラスチック製の外殻部材とを接合してクラウン部、フェース部、ソール部及びネック部を含む中空構造のヘッド本体を構成した中空ゴルフクラブヘッドにおいて、前記金属製の外殻部材が前記ヘッド本体のフェース部、ソール部及びネック部を構成し、前記繊維強化プラスチック製の外殻部材が前記ヘッド本体のクラウン部を構成すると共に、前記金属製の外殻部材の接合部と前記繊維強化樹脂の外殻部材の接合部とが接着する構造である中空ゴルフクラブヘッド。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 〈相違点1〉 本願補正発明においては、金属製の外殻部材と強化繊維が炭素繊維である繊維強化プラスチック製の外殻部材とを接合する構成として「前記金属製の外殻部材の接合部の両面に前記繊維強化プラスチック製の外殻部材の接合部を厚さ方向に分岐させて両側から挟み込むように接着する構造を、前記繊維強化プラスチック製の外殻部材の全周囲にわたって形成した」と特定されているのに対し、引用発明では金属製の外殻部材の接合部と強化繊維が炭素繊維である繊維強化プラスチック製の外殻部材との接合部が接着されているものではあるものの、接合部の構成が異なっており、上記特定を有していない点。 (3-4)判断 〈相違点1〉について (1)一方の部材の接合部の両面に他の部材の接合部を厚さ方向に分岐させて両側から挟み込むように接着する構造は、 (a)本願の出願前に頒布された刊行物である接着ハンドブック第3版[(1996年6月28日、日刊工業新聞社発行)」、858頁5行?12行、858頁16行?859頁11行、特に、図5.15において、「はめ合わせ接着」と「改良型二重ラップ」] (b)本願の出願前に頒布された刊行物である接着ハンドブック第2版[(1989年8月30日、日刊工業新聞社発行)、863頁末行?864頁3行、表7.11において、上から3番「接着方式」の図面] (c)本願の出願前に頒布された刊行物である複合材料ハンドブック[(1989年11月20日、日刊工業新聞社発行)、197頁1行?8行、図I.135(198頁)において、「(k)ダブルスカーフ接合」] に記載の如く、周知の技術事項であり、 (2)中空ゴルフクラブヘッドにおいて、一方の部材の接合部の両面に他の部材の接合部を厚さ方向に分岐させて両側から挟み込むように接着する構造は、 (d)本願の出願前に頒布された刊行物である特開平10-137371号公報[請求項1乃至2,段落【0014】乃至【0031】図1乃至5] (e)本願の出願前に頒布された刊行物であって、原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-98953号公報[請求項1乃至3及び段落【0008】乃至【0009】並びに段落【0016】、図9の下段の図面] (f)本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-70484号公報[段落【0010】乃至【0014】及び図1乃至3] (g)本願の出願前に頒布された刊行物である米国特許第4630825号明細書[第2欄65乃至66行、3欄8乃至12行、同欄20乃至27行、同欄29乃至31行並びにFIG.2.及びFIG.2a..FIG.33.] に記載の如く、周知の技術事項である。 (3)中空ゴルフクラブヘッドにおいて、中空構造のヘッド本体を形成する複数の外殻部材を固着する際に、一方の外殻部材の全周囲にわたって固着のための構造を形成することにより、当該固着を補強する技術は、 上記(d) (h)本願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-7486号公報[段落【0027】及び図2] に記載の如く、周知の技術事項である。 してみれば、引用発明において、金属製の外殻部材と強化繊維が炭素繊維である繊維強化プラスチック製の外殻部材とを接合する構成として、上記(1)及び上記(2)に係る周知の技術事項を適用し、前記金属製の外殻部材の接合部の両面に前記繊維強化プラスチック製の外殻部材の接合部を厚さ方向に分岐させて両側から挟み込むように接着する構造とするようになすことは、当業者が容易になし得ることであり、中空ゴルフクラブヘッドである引用発明の使用に際して、充分な強度及び耐久性が得られるよう、上記(3)に係る周知の技術事項を参酌し、当該構造を前記繊維強化プラスチック製の外殻部材の全周囲にわたって形成する構成となすことは、当業者が適宜になし得る設計事項である。 したがって、相違点1に係る本願補正発明の特定事項は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易になし得ることである。 〈まとめ〉 このように、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が想到容易な事項であり、この発明特定事項を採用したことによる本願補正発明の効果も当業者が容易に予測し得る程度のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4.本件補正についてのむすび 前記「第2 3.」に記載のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明の認定 平成19年12月25日付け明細書についての手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成19年8月29日付けで補正された特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。 「金属製の外殻部材と繊維強化プラスチック製の外殻部材とを接合して中空構造のヘッド本体を構成した中空ゴルフクラブヘッドにおいて、前記金属製の外殻部材の接合部の両面に前記繊維強化プラスチック製の外殻部材の接合部を厚さ方向に分岐させて両側から挟み込むように接着する構造を、前記繊維強化プラスチック製の外殻部材の全周囲にわたって形成したことを特徴とする中空ゴルフクラブヘッド。」(以下、「本願発明」という。) 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及びその記載事項は、前記「第2 3.(3-2)」に記載のとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記「第2 3.」で検討した本願補正発明から「前記金属製の外殻部材が前記ヘッド本体のフェース部、ソール部及びネック部を構成し、前記繊維強化プラスチック製の外殻部材が前記ヘッド本体のクラウン部を構成すると共に、」との事項を削除するとともに、以下(i)乃至(ii)の下線部の限定を省いたものに相当する。 (i)「強化繊維が炭素繊維である繊維強化プラスチック製の外殻部材」 (ii)「クラウン部、フェース部、ソール部及びネック部を含む中空構造のヘッド本体」 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 3.(3-4)」に記載したとおり、引用発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-11-04 |
結審通知日 | 2008-11-11 |
審決日 | 2008-11-25 |
出願番号 | 特願2005-136336(P2005-136336) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63B)
P 1 8・ 575- Z (A63B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小齊 信之 |
特許庁審判長 |
酒井 進 |
特許庁審判官 |
上田 正樹 菅野 芳男 |
発明の名称 | 中空ゴルフクラブヘッド |
代理人 | 小川 信一 |
代理人 | 斎下 和彦 |
代理人 | 野口 賢照 |