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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02B
管理番号 1190437
審判番号 不服2006-18550  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-08-24 
確定日 2009-01-05 
事件の表示 特願2003-147069「往復ピストン式燃焼機関」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月 8日出願公開、特開2004- 3489〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成15年5月26日(パリ条約による優先権主張2002年5月27日、欧州特許庁)の出願であって、平成17年6月9日付けで拒絶理由が通知され、平成17年10月5日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成18年5月24日付けで拒絶査定がされ、平成18年8月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであって、その請求項1?4に係る発明は、平成17年10月5日付けの手続補正書及び出願当初の図面の記載からみて、その明細書の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】 2ストロークの往復ピストン式燃焼機関、具体的には低速2ストローク・ディーゼル機関であって、直列に配置された14のシリンダによって特徴づけられ、さらに、シリンダ1?7の点火順序が、
A.1つのシリンダ、および2つのシリンダおよび3つのシリンダのグループ内で、または
B.1つのシリンダ、および2つのシリンダのグループ内で、または
C.1つのシリンダ、および3つのシリンダのグループ内で、または
D.2つのシリンダおよび3つのシリンダのグループ内で
順に点火し、シリンダの番号付けが、機関のシリンダの列の2つの端部の1つで開始されるように、機関のクランク軸が設計されている燃焼機関。」

2.引用文献記載の発明
(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-144779号公報(以下、「引用文献」という。)には、例えば、次の事項が記載されている。

ア.「【特許請求の範囲】
【請求項1】圧縮着火2ストローク往復動型ピストン燃焼機関、詳細には低速駆動2ストロークディーゼルモータにおいて、
第1?第13のシリンダが配列され、第1?第7のシリンダの着火順序を2個及び3個のシリンダ群にて連続的に、或いは同時に、又は部分的に同時に着火し、かつ部分連続的に着火するようにしてモータのクランクシャフトが設計され、シリンダの番号付けがモータのシリンダのラインの2つの端部のうちの一端から開始して連続的に行われる圧縮着火2ストローク往復動型ピストン燃焼機関。」

イ.「【請求項3】前記シリンダ内で爆発させるためのクランクシャフトの到達距離の回転角度上の差違が少なくとも約360°/13に達する請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の圧縮着火2ストローク往復動型ピストン燃焼機関。」

ウ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、圧縮着火往復動型ピストン燃焼機関に関し、より詳細には低速駆動2ストロークディーゼルモータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】概して、低速駆動ディーゼルモータは1シリンダ当り数千馬力に達する大型ディーゼルモータである。これらモータは、例えば船舶に使用されるとともに、発電機を駆動するためのいわゆる定置機関において使用される。低速駆動モータは50?250rpmの回転速度を有する。」

エ.「【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、モータの最適着火順序を選択してモータの振動作用を改善することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明の燃焼機関では、第1?第13のシリンダが配列され、第1?第7のシリンダの着火順序を2個及び3個のシリンダ群にて連続的に、或いは同時に、又は部分的に同時に着火し、かつ部分連続的に着火するようにしてモータのクランクシャフトが設計され、シリンダの番号付けがモータのシリンダのラインの2つの端部のうちの一端から開始して連続的に実行される。」

オ.「【0011】本発明に基づく第1?第13のシリンダを有する2ストロークディーゼルモータでは、クランクシャフトの到達距離が360°にわたって均一に配分されるものと想定して、理論上479,001,600個の着火順序があり得る。全ての対称性を無視したとしても、47,174,400個の着火順序があり得る。更に、到達距離が均一ではない時、到達距離には異なる角度配置が無限に存在する。
【0012】一般的に、着火順序においてシリンダに番号付けする際、シリンダの順序は常時逆回転方向にて番号付けされ、即ち時計回りに回転するモータでは、シリンダの番号付けは反時計回りに行われ、これとは逆に、反時計回りに回転するモータでは、シリンダは時計回りに番号付けされる。」

カ.「【0015】自然着火ピストン・シリンダ燃焼機関には第1?第13のシリンダが配列されている。シリンダの番号付けがモータのシリンダのラインの一端から開始して連続的に行われる時、第1?第7のシリンダの着火順序は連続的に、或いは2つ又は3つのシリンダ群にて同時に生じる。
【0016】シリンダの着火順序を賢明に選択することにより、構造を複雑にすることなく、モータ駆動を実質的に向上させる要因となるための複数の可能性が提供される。例えば、モータの用途に応じて、モータの実質的な外乱要因間に最適条件を見出すことが可能であり、特定の外乱要因の補正程度を高め、或いは低くする。
【0017】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、モータの最適着火順序を選択してモータの振動作用を改善できる優れた効果がある。」

(2)ここで、上記ア.?カ.の記載及び図面を参酌すると、引用文献には以下の点が記載されていることが分かる。
2ストローク往復動型ピストン燃焼機関であって、具体的には低速駆動2ストロークディーゼルモータであって、直列に配置された13のシリンダによって特徴づけられている。
第1?第7のシリンダの着火順序は、2個及び3個のシリンダ群内で連続的に着火し、シリンダの番号付けが、モータのシリンダのラインの2つの端部のうちの一端から開始されるように、モータのクランク軸が設計されている2ストローク往復ピストン式燃焼機関。

(3)引用文献記載の発明
上記2.(1)及び(2)の記載から、引用文献には次の発明が記載されている。
「2ストローク往復動型ピストン燃焼機関、具体的には低速2ストロークディーゼルモータであって、直列に配置された13のシリンダによって特徴づけられ、さらに、シリンダ1?7の着火順序が、
2つのシリンダおよび3つのシリンダ群内で連続的に着火し、シリンダの番号付けが、モータのシリンダのラインの2つの端部のうちの一端から開始されるように、モータのクランク軸が設計されている燃焼機関。」(以下、「引用文献記載の発明」という。)

3.対比
本願発明と引用文献記載の発明とを対比すると、引用文献記載の発明における「2ストローク往復動型ピストン燃焼機関」は、本願発明における「2ストロークの往復ピストン式燃焼機関」に相当し、同様に引用文献記載の発明における、「低速駆動2ストロークディーゼルモータ」、「着火順序」、「シリンダ群」、「連続的に着火」及び「モータのクランク軸」は、本願発明における「低速2ストロークディーゼル機関」、「点火順序」、「シリンダのグループ」、「順に点火」及び「機関のクランク軸」に各々相当する。そして、引用文献記載の発明における「モータのシリンダのラインの2つの端部のうちの一端から開始されるように」は、本願発明における「機関のシリンダの列の2つの端部の1つで開始されるように」に他ならないことから、本願発明と引用文献記載の発明とは
「2ストロークの往復ピストン式燃焼機関、具体的には低速2ストロークディーゼル機関であって、直列に配置されたシリンダによって特徴づけられ、さらに、シリンダ1?7の点火順序が、2つのシリンダおよび3つのシリンダのグループ内で順に点火し、シリンダの番号付けが、機関のシリンダの列の2つの端部の1つで開始されるように、機関のクランク軸が設計されている燃焼機関。」の点で一致し、以下の点で相違あるいは一応相違する。
(相違点)
(1)本願発明においては、14のシリンダであるのに対して、引用文献記載の発明においては、13のシリンダである点(以下、「相違点1」という。)。
(2)本願発明においては、シリンダ1?7の点火順序が、
A.1つのシリンダ、および2つのシリンダおよび3つのシリンダのグループ内で、または
B.1つのシリンダ、および2つのシリンダのグループ内で、または
C.1つのシリンダ、および3つのシリンダのグループ内で、または
D.2つのシリンダおよび3つのシリンダのグループ内で順に点火するのに対して、引用文献記載の発明においては、2つのシリンダおよび3つのシリンダのグループ内で順に点火する点(以下、「相違点2」という。)。

4.判断
上記相違点について、検討する。
(1)相違点1について
そもそも、14気筒エンジンは、例えば原査定の拒絶の理由に引用された米国特許第4121423号明細書に記載されているように周知技術であり、直列型の多気筒エンジンの設計に当たって、振動を防止するために、点火順序を考慮することは引用文献にも記載されるように周知の設計課題であることからすれば、13のシリンダに換えて相違点1に係る本願発明のように直列に配置された14のシリンダにすることは、当業者が容易に推考し得るものである。
(2)相違点2について
引用文献記載の発明においても、シリンダ1?7の点火順序が、2つのシリンダおよび3つのシリンダのグループ内で順に点火しており、当該事項は、本願発明におけるD.の特定事項に相当している。そして、本願発明においては、A.?D.の択一的な記載となっていることから、相違点2に係る特定事項は、引用文献に記載されているといえる。

また、本願発明を全体として検討しても、引用文献記載の発明及び前記周知技術から予測される以上の格別の効果を奏するとも認めることができない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用文献記載の発明及び前記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-29 
結審通知日 2008-08-01 
審決日 2008-08-18 
出願番号 特願2003-147069(P2003-147069)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤原 直欣  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 森藤 淳志
柳田 利夫
発明の名称 往復ピストン式燃焼機関  
代理人 浅村 皓  
代理人 吉田 裕  
代理人 岩本 行夫  
代理人 浅村 肇  

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