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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65B
管理番号 1190441
審判番号 不服2006-19364  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-01 
確定日 2009-01-05 
事件の表示 平成9年特許願第21763号「熱収縮フィルムチューブの包着装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年8月18日出願公開、特開平10-218127号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成9年2月4日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明は、平成18年1月3日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項によりそれぞれ特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1は次のとおりのものである。
「熱収縮フィルムチューブを、その内部に滑性芯体を配置してこの滑性芯体に被着するよう送り出し、前記チューブを拡開しながら搬送し、次いで拡開した前記チューブを被包着物に被包させ、所定の長さで切断し、加熱して収縮させて被包着物を密封するように構成した熱収縮フィルムチューブの包着装置において、前記滑性芯体の下部に前記チューブを送り出す送出ローラを配設し、この送出ローラと対応して調整可能に当接する案内ローラを備えた拡開幅調整案内部材を設けて、前記滑性芯体の大きさに応じて前記チューブの拡開幅を調整可能に構成することを特徴とする熱収縮フィルムチューブの包着装置。」

2.引用文献
当審の訳によると、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である米国特許第5024049号明細書(以下、「引用文献」という。)には、次の事項が図面とともに記載されているということができる。
(a)「この発明の目的は、バンディング(banding)機械に使用されるようなチューブ状のバンディング材料の折り線を開き、平滑にするための改良された案内及び形成装置を提供することにある。バンディング材料の搬送経路に沿って、バンディング材料の内部に配置される内部案内装置を有し、内部案内装置は、平坦にされたチューブ状材料を開かれたシリンダ形状へと徐々に広げるように対向する傾斜縁あるいは面を有し、少なくとも2個の内部ピンチローラがチューブ状材料の内面に回動自在に当接するように内部案内部材に回動自在に設けられている。そして、対向する少なくとも2個の外部ピンチローラが経路の反対側からチューブ材料に回転自在に当接して係合する内部ピンチローラとの間で対応するチューブ状材料の部分を広げるように配置されている。」(第1欄49?65行の記載参照。)
(b)「図1はチューブ状バンディング材料12をフィードローラ14からバンディング機械16へ予め決められた経路に沿って供給する本発明の第1の例に係るバンドの案内及び形成装置10を示す。この装置10は、バンディング材料を所定の長さに切断して一連の容器18の頚部に装着する如何なるバンディング機械にも適用できるが、我々の関連出願である米国特許出願07/160848(1988年2月26日出願、これを引用文献として提示する)に記載されたバンディング機械に搭載された例が示される。」(第3欄8?22行の記載参照。)
(c)「図1に示すようにバンディング装置16は該装置終端部の下方で直立した容器18を連続して供給するコンベア20の上方に配置される。バンディング機械16は案内形成装置10を含む種々の機構すなわちステーションを備える。……本発明を構成しない他のステーションについてここでは詳述しないが、基本的に、バンディング材料を経路に沿って搬送するための供給機構23、装置10の下方で拡開されたバンディング材料を所定の長さに切断する切断機構24及び切断されたバンド27を連続する容器18の頚部に装着する装着ステーション26を備えている。」(第3欄第23?40行の記載参照。)
(d)「図7?10は、内部案内部材が、相対する側壁83,84の溝82に、ピボットピン81によって内部ピンチローラ85,86が回転自在に設けられた4面体の楔形部材80からなるバンド案内及び形成装置すなわち拡開装置の他の例を示している。ロ-ラ85.86はそれが設けられるブロックの各側壁から部分的に外方に突出する(図7及び9参照)。ブロックが対応する外部案内部材87,88に自由に当接するように、内部ピンチローラを備えたブロックの側壁は下方すなわちバンドの進行方向に向かって内方に傾斜している(図7参照)。外部案内部材87.88はバンディング機械の背面板22に支持されている。外部案内部材のそれぞれは、機械の背面板22にネジ固定手段93のような手段で支持されたブラケット91,92の端部に回転自在に支持された外部ピンチローラ89,90を有する。ネジ固定手段93の一方又は双方を緩めることによりブラケットはピンチローラをチューブ状材料12の径に応じて離間したり接近したりするように回動することができる。」(第5欄第41?62行の記載参照。)
(e)「使用に際し、楔形部材80はチューブ状材料の端部から内部に挿入され、内部ピンチローラ85,86が外部ピンチローラ上に置かれるように配置される。楔形部材80はローラ89及び90の間隔より大きな最大幅を有し、図7に示されるように、内部ピンチローラ85,86が外部ローラ上に押し付けられ、それらの間にチューブ状部材を把持するようになるまで重力によって滑降する。チューブ状材料は対向する折目線が内外のピンチローラの対向する面の間にあるように位置する。チューブ状材料は供給機構の形成装置によって引っ張られるので、楔形部材の外側に傾斜した壁94.95(図8及び10参照)は、他の壁に設けられた内部ピンチローラが対向する外部ピンチローラとの間でバンディング材料をプレスし、折目線を徐々にほぐしている間に材料を拡げる作用をする。」(第5欄第63行?第6欄第12行の記載参照。)
(f)「平らにされたバンディング材料の幅にほぼ等しい最大幅を有する適当な寸法の楔形部材を選択すること及び固定具93を緩めて外部ピンチローラの間隔を選択された楔形部材上の内部ピンチローラの間隔よりも僅かに小さくなるように調節することによって、装置は、異なる径のバンディング材料に適応するように簡単に変更をすることができる。」
(第6欄第17?24行の記載参照。)
(g)「内部及び外部ピンチローラの対向した配置は、折目線を平らにし、材料のよじれを引き起こすような楔形部材への材料の貼付きや引っ張りの傾向を減少する。楔形部材はまた、材料を拡開するとともに少なくとも一時的に折目線を平滑にする。」
(第6欄第31?37行の記載参照。)

以上の記載を総合すると、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているということができる。
「チューブ状のバンディング材料を、その内部に、楔形部材を配置して拡開しながら搬送し、次いで拡開したチューブ状のバンディング材料を所定の長さで切断して、容器の頚部に装着するバンディング機械において、前記楔形部材に内部ピンチローラを配設し、この内部ピンチローラと対応して調整可能に当接する外部ピンチローラを備えた外部案内部材を設けて、チューブ状材料の径に応じて選択された大きさの楔状部材に適用するように上記外部案内部材部上の外部ピンチローラの間隔を調整可能にしたバンディング機械。」

3.対比
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)と引用発明とを対比する。
引用発明の「バンディング機械」は、所定寸法のチューブ状のバンディング材料を、被包着物である容器の頚部に包着するものであるから、本願発明と同様に「被包着物を包着する包着装置」ということができる。
引用発明の「楔形部材」は、チューブの内部で、滑降して所定の位置に配置され、チューブ状材料を拡開しながら送り出し方向に案内するものであるから、当然「滑性」を具備するものであり、本願発明の「滑性芯体」に相当し、同様に、「内部ピンチローラ」は「送出ローラ」に、「外部ピンチローラ」は「案内ローラ」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明の「外部案内部材」は、チューブ状材料の径に応じて選択された大きさの楔形部材に適用するように、外部ピンチローラの間隔を調整可能にしているものであるから、本願発明において、送出ローラと対応して調整可能に当接する案内ローラを備えている「拡開幅調整案内部材」に相当し、同様に、楔形部材の大きさに応じてチューブの拡開幅の調整が可能なものということができる。
してみれば、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりとなる。
【一致点】
「チューブを、その内部に滑性芯体を配置してこの滑性芯体に被着するよう送り出し、前記チューブを拡開しながら搬送し、拡開した所定長さのチューブを被包着物に被着する包着装置において、前記滑性芯体に前記チューブを送り出す送出ローラを配設し、この送出ローラと対応して調整可能に当接する案内ローラを備えた拡開幅調整案内部材を設けて、前記滑性芯体の大きさに応じて前記チューブの拡開幅を調整可能に構成したチューブの包着装置。」
【相違点1】
本願発明の包着装置が「熱収縮フィルムチューブの包着装置」であり、拡開しながら搬送されるチューブが「熱収縮フィルムチューブ」であり、被包着物に被包した後、加熱収縮され被包着物を密閉するとされているのに対し、引用発明のバンディング機械が、熱収縮によりチュ-ブを容器に装着するものである否か明確ではなく、したがって、チュ-ブが「熱収縮フィルムチューブ」であるとも特定されていない点。
【相違点2】
本願発明においては、拡開したチューブを被包着物に被包させて所定の長さで切断するのに対し、引用発明においては、拡開されたチューブ状材料を所定の長さに切断して、容器に装着する点。
【相違点3】
本願発明においては、送出ローラが滑性芯体の下部に配設されるのに対し、引用発明においては、楔状部材に対する内部ピンチローラの上下方向の取り付け位置が特定されておらず、使用態様を示す図面には、進行方向に狭くなる側壁の上方に内部ピンチローラが位置するものが示されている点。

4.判断
そこで上記各相違点について検討する。
(1)相違点1及び相違点2について
本願発明が前提としている「熱収縮フィルムチューブを、その内部に滑性芯体を配置してこの滑性芯体に被着するよう送り出し、前記チューブを拡開しながら搬送し、次いで拡開した前記チューブを被包着物に被包させ、所定の長さで切断し、加熱して収縮させて被包着物を密封するように構成した熱収縮フィルムチューブの包着装置」は、例えば、特公昭49-35752号公報、特公昭48-9633号公報及び特公昭48-23307号公報等に示されるように、いわゆるシュリンク包装装置の一種として、本願出願前より周知の技術である。
しかも、引用文献においても、引用発明に係るチューブ状バンドを拡開しながら送り出す案内及び形成装置を、記載(b)に提示された関連出願に記載のバンディング機械に適用される旨が記載されており、当該出願に係る米国特許第4914893号明細書を参酌すれば、ポリ塩化ビニルのような熱収縮性のバンディング材料を用い、容器の装着後に熱処理をする機械が示されていることから、引用発明を熱収縮フィルムチューブの包着装置に適用することが示唆されているということができる。
してみれば、引用発明のチューブの包着装置を、熱収縮フィルムチューブの包着装置に適用することは、当業者が容易になし得る程度の事項であり、その際、容器への装着前に行っているチューブの切断を、上述した周知のシュリンク包装装置に示されるように、被包着物に被着した状態で行うようにすることも、対象とする容器の形態等に応じて当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。

(2)相違点3について
チューブ内部に挿入する部材上にローラを配設し、チューブ状部材を拡開しながら搬送する際、ローラの配設位置は、これと協動してチューブを案内する外部ローラとの当接や、挿入部材(滑性芯体あるいは楔状部材)の形状等をも考慮することにより、当業者が適宜決定し得る設計的事項であり、例えば、引用文献にも内部案内部材の他の例として下方に内部ピンチローラが配設されたものが示されている。
そして、本願の請求項1に、滑性芯体の形状等が特定されているわけでもなく、しかも、本願明細書を参酌しても、送出ローラの配設位置を、単に「滑性芯体の下部」とすることにより格別の効果が奏されるものと解されないから、送出ローラの配設位置を「滑性芯体の下部」とした点は、適宜なし得る程度のものにすぎないことというべきである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、本願出願前より周知の技術を勘案すれば、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-31 
結審通知日 2008-11-05 
審決日 2008-11-19 
出願番号 特願平9-21763
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 白川 敬寛  
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 栗林 敏彦
村山 禎恒
発明の名称 熱収縮フィルムチューブの包着装置  
代理人 浜田 治雄  

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