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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1190476 |
審判番号 | 不服2007-5409 |
総通号数 | 110 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-02-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-02-21 |
確定日 | 2009-01-05 |
事件の表示 | 平成11年特許願第228121号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 3月 7日出願公開、特開2000- 70439〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成7年4月17日に出願された特願平7-91164号の一部を特許法44条1項の規定により新たな特許出願とした特願平7-93710号の一部をさらに同法44条1項の規定により新たな特許出願としたものであって、平成19年1月18日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年2月21日付けで本件審判請求がされるとともに、同年3月15日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成19年3月15日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正内容及び補正目的 本件補正は特許請求の範囲の補正を含んでおり、特許請求の範囲に限っていうと補正前の請求項4を削除するとともに、請求項1を次のように補正するものである。 「複数の図柄を可変表示する可変表示部と、該可変表示部の可変表示が停止した時の表示態様について乱数サンプリングにより入賞判定を行い、その判定結果に基づいて前記可変表示部の可変表示動作を制御する制御部とを備えた遊技機において、 前記制御部は、前記入賞判定により入賞が発生し、該入賞の図柄が入賞ライン上に並んだ時、入賞態様を発生させるとともに複数種類の視覚的又は聴覚的な報知態様のうちから前記入賞の図柄が並んだ入賞ラインに応じた報知態様で遊技者への報知を行うが、前記入賞判定により特定入賞が発生し、該特定入賞の図柄が入賞ライン上に並んだ場合には、特定入賞態様を発生させるとともに前記複数種類の視覚的又は聴覚的な報知態様のうちから前記特定入賞の図柄が並んだ入賞ラインに応じた報知態様で遊技者への報知を行い、その後、前記複数種類の視覚的又は聴覚的な報知態様のうちから乱数値に応じて選択された報知態様で遊技者への報知を行い、さらに前記特定入賞態様において所定の図柄が入賞ライン上に並んだ時、前記複数種類の視覚的又は聴覚的な報知態様のうちから前記入賞の図柄が並んだ入賞ラインに応じた報知態様とは異なる入賞ラインに応じた報知態様で遊技者への報知を行うように構成したことを特徴とする遊技機。」(下線部が補正箇所) 請求項1についての補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認めることができる(課題追加と解する余地はあるものの、そのことは不問に付す。特許請求の範囲の減縮でなければ、目的外補正の理由によって本件補正は却下される。)。そのため、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」といい、それは上記本件補正後の請求項1に記載されたとおりのものである。)については、独立特許要件の判断を行う。 2.新規事項追加 (1)請求項1を引用する請求項2(同項の記載自体は本件補正により補正されていない。)には「請求項1記載の遊技機において、前記特定入賞はビッグボーナスゲームとシングルボーナスゲームのうちの少なくとも1つであることを特徴とする遊技機。」とあるから、特定入賞はビッグボーナスゲームであってもよく、その場合について以下検討する。 本件補正後の請求項1には「特定入賞の図柄が入賞ライン上に並んだ場合」及び「特定入賞態様において所定の図柄が入賞ライン上に並んだ時」との2つの記載があり、これらを異なる意味に解釈すべきことは明らかであるから、「特定入賞態様を発生させる」との記載もあることを考慮すると、後者の「特定入賞態様において」は「特定入賞態様が発生し、特定入賞態様が終了していない状態において」、すなわち「ビッグボーナスゲーム中」の意味に解すべきである。 「入賞ラインに応じた報知態様」に関連して、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、これらを総称して「当初明細書」という。)には「入賞ライン上に各入賞図柄が並んだ時、下記の表2及び図9(A)?図10(E)に示すように、リールランプ(W1?W9)により、入賞図柄が並んだ入賞ラインに対応したデモンストレーションが行われ(図16のステップ9)、その後、入賞図柄が並んだ3つのリールランプ(例えばW1-W2-W3)のみが、点灯と消灯を所定時間(例えば、120 msec)間隔で繰り返す。」(段落【0045】)及び「ボーナスゲームで前述の“JAC-JAC-JAC”入賞が発生した時には、図10(F)のデモンストレーションが実行される。」(段落【0047】)との各記載があり、【表2】(段落【0046】)及び【図9】(A)?【図10】(F)によれば、ボーナスゲームでのJAC入賞を除く入賞時には、5通りの入賞ラインに対応したリールランプの1つが順次消灯(【図9】(A)?【図10】(E)の段階1?3)した後、すべてのリールランプが点灯(段階4)し、ボーナスゲームでのJAC入賞時には、上段及び下段に対応するリールランプは段階1?4において消灯している点で、ボーナスゲームでのJAC入賞以外とは異なる報知態様となることが示されている。 当初明細書には「1枚のコインを投入したときは中央の入賞ラインだけが有効化され」(段落【0020】)及び「ボーナスゲームを実行する。このとき、1枚賭けで所定のシンボル組合せ(例えば、図4の区分[D]の“JAC-JAC-JAC”)が揃うと(その発生の確率は約9/10。図18のステップ32及び34)、15枚のコインが払い出される。」(段落【0034】)との記載があるから、ボーナスゲームのJAC入賞に限っては、もともと入賞ラインが1つしかない。 ここで「前記入賞の図柄が並んだ入賞ラインに応じた報知態様とは異なる入賞ラインに応じた報知態様で遊技者への報知」について検討するに、「入賞ラインに応じた報知態様」というからには、入賞ラインが複数あると考えるのが自然である。「前記入賞の図柄」が「特定入賞の図柄」を意味することは明らかであるから、「前記入賞の図柄が並んだ入賞ラインに応じた報知態様」は図9(A)?図10(E)の1つであり、それとは異なる報知態様となるのは、ボーナスゲームでのJAC入賞だけであるが、JAC入賞では入賞ラインが1つしかないから、上記の理由により、【図10】(F)のように報知しても、「入賞ラインに応じた報知態様」とはいいがたい。 本件補正後の請求項1において、「所定の図柄」がJAC入賞図柄である旨の限定はないのだから、ボーナスゲーム入賞図柄又は適宜の小役入賞図柄であってもよく(当然、入賞ラインは複数存する。)、それら図柄での入賞を他の入賞と区別するために、報知態様を異ならせたと解するのが自然であり、そのようなことは当初明細書に記載されておらず、自明でもない。 (2)入賞ラインが1つしかなくとも、「入賞ラインに応じた報知態様」と表現することがあるかもしれないが、そうであったとしても、本件補正後の請求項1の「所定の図柄」がJAC入賞図柄でない場合を含んでおり、新規事項であることには変わりはない。 (3)さらに、「所定の図柄」がJAC入賞図柄であるとした場合も新規事項に該当する。 当初明細書には「「B・Bゲーム」の場合の動作」(段落【0030】)として、「所定のシンボル組合せ(図4のリプレイゲーム(後述)の区分[C]のもの。例えば、最下段の“3色のいずれかの7-黄7-黄7”)が発生すると(その発生の確率は約1/4で、上記「B・Bゲーム中の入賞判定テーブル」のデータによって予め定められている。)、5枚のコインが払い出される。」(段落【0033】)との記載があり、「リプレイゲーム(図4の区分[C]に示された4つのシンボル組合せのいずれか)」(段落【0071】)との記載もあるから、【図4】の区分[C]最上段の「JAC-JAC-JAC」(区分[D])は、ビッグボーナスゲーム中のボーナスゲーム入賞図柄ではなく、ボーナスゲームに入賞するまでに、JAC入賞図柄で入賞することはない。 上記のとおり、ボーナスゲームのJAC入賞における「入賞ラインに応じた報知態様」をそれ以外(特定入賞を含む。)の「入賞ラインに応じた報知態様」と異ならせることは、当初明細書に記載されており、ビッグボーナスゲーム中のボーナスゲーム以外に、JAC入賞図柄で入賞することがないのであれば、「所定の図柄」がJAC入賞図柄である場合は、「所定の図柄が入賞ライン上に並んだ時、前記複数種類の視覚的又は聴覚的な報知態様のうちから前記入賞の図柄が並んだ入賞ラインに応じた報知態様とは異なる入賞ラインに応じた報知態様で遊技者への報知を行う」に該当する。 しかし、多くの遊技機では、ビッグボーナスゲーム中のボーナスゲーム入賞図柄とJAC入賞図柄は同一であり(後記認定の引用発明1もそうである。)、これら2つの入賞図柄が同一の場合には、ビッグボーナスゲーム中にJAC入賞図柄で入賞しても、ボーナスゲームでのJAC入賞とは限らないから、所定の図柄(JAC入賞図柄)が入賞ライン上に並んだ時であっても、特定入賞の図柄が並んだ入賞ラインに応じた報知態様とは異なる入賞ラインに応じた報知態様で遊技者への報知を行うとは限らない。 本件補正後の請求項1には、ビッグボーナスゲーム中に、ボーナスゲームに入賞するまでに、JAC入賞図柄で入賞することはない旨の限定がないから、この点からみても新規事項に該当する。 要するに、入賞ラインが1つしかなくとも、「入賞ラインに応じた報知態様」と表現でき、「所定の図柄」をJAC入賞図柄と解したとしても、当初明細書に記載されているのは、ボーナスゲームでの入賞における「入賞ラインに応じた報知態様」だけが、他の報知態様と異なることが記載されているだけであって、決してビッグボーナス中の入賞図柄に着目して、ビッグボーナス中の「所定の図柄」と「特定入賞の図柄」に対する「入賞ラインに応じた報知態様」を異ならせることが記載されているのではない。 (4)以上のとおりであるから、本件補正は平成6年法律116号改正附則6条によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第2項において準用する同法17条2項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下されなければならない。 3.引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-114143号公報(以下「引用例1」という。)は発明の名称を「スロットマシン」とする公開公報であって、以下のア?コの記載が図示とともにある。 ア.「遊技者がコインを投入してスタートレバー12を押圧操作すれば、可変表示装置70が可変開始されて各可変表示部5L?5Rにより複数種類の識別情報が可変表示される。次に、遊技者が各ストップボタン9L,9C,9Rを押圧操作すれば、それに対応する各可変表示部5L,5C,5Rの可変表示が停止されるように構成されている。」(段落【0009】) イ.「図中21?23は有効ライン表示ランプであり、前述した賭数に応じて有効となる有効ラインに対応する有効ライン表示ランプのみが点灯または点滅し、どの有効ラインが有効になっているかを遊技者が認識できるように構成されている。」(段落【0012】) ウ.「可変表示装置70の停止時の表示結果が賭数に応じた有効ライン(当りライン)上において「AAA」となればビッグボーナスゲームが開始されるとともにコインが15枚払出される。一方、有効な有効ライン上において「BBB」となればボーナスゲームが開始されるとともにコインが15枚払出される。さらに有効ライン上において「CCC」または「DDD」となれば小役の図柄の組合せが成立してコインが15枚払出される。有効ライン上において「EEE」となれば小役が成立してコインが8枚払出される。有効ライン上において左図柄と中図柄とが共に「F」となれば小役が成立して6枚のコインが払出される。また、有効ライン上において左図柄のみ「F」となれば小役が成立して3枚のコインが払出される。」(段落【0018】) エ.「ビッグボーナスゲーム中あるいはボーナスゲーム中ではない通常ゲーム中に、当りライン上に「G」すなわち「JAC」が3つ揃えば、再ゲームが成立して後述するようにコイン投入等を行なうことなくスタート操作を行なうのみで再度可変表示装置70が可変開始される。また、ビッグボーナスゲーム中にこの「G」が有効ライン上に3つ揃えばボーナスゲームの開始が行なわれる。また、ボーナスゲーム中にこの「G」が当りライン上に3つ揃えばボーナスゲーム中の入賞となりコインが15枚払出される。なお、ボーナスゲーム中に入賞が発生する有効な当りラインは可変表示部における中段の横一列のみである。」(段落【0019】) オ.「S66に進み、格納されているランダム値R(図6参照)を用いて所定の演算を行なう処理がなされる。このランダムカウンタのランダム値Rは、前述したように、1賭けの場合には1つの値であるが2賭けの場合には2つの値を有し、3賭けの場合には3つの値を有する。ゆえに、1賭けの場合にはその1つの値を用いて所定の演算を行なうことになるが、2賭けの場合には2つの値を用いて所定の演算を行ない、3賭けの場合には3つの値を用いて所定の演算を行なうことになる。その所定の演算とは、ランダム値R同士を加算したり減算したり乗じたり除したりあるいは所定の関数に代入して答えを算出したりする演算である。ゆえに、このランダムカウンタのランダム値Rの数が多いほどすなわち1枚賭けよりも2枚賭けあるいは2枚賭けよりも3枚賭けの場合ほどS66による演算結果の値がランダムな値となる。次にS67により、その演算結果を各当選の判定値と比較する処理が行なわれる。この各当選の判定値は、ビッグボーナスゲーム当選の判定値,ボーナスゲーム当選の判定値,小役当選の判定値,再ゲーム当選の判定値の4種類がある。なお、この各当選の判定値は、テーブルの形でROM47に記憶され、賭数が多いほどその当選判定値の範囲(領域)が広くなって当選しやすいように構成されている。つまり、1賭けの場合が最も当選しにくく、3賭けの場合が最も当選しやすくなっており、3賭けの場合には、1賭けの場合よりも少なくとも3倍以上当選しやすくなっている。」(段落【0042】) カ.「ボーナスゲームフラグではなくビッグボーナスゲームフラグがセットされている場合にはS71によりYESの判断がなされてS72に進み、S67による比較結果、ランダム値Rを用いた演算結果がボーナスゲーム許容値に含まれているか否かの判断がなされる。スロットマシンのゲーム状態がビッグボーナス中において、可変表示装置の可変停止時の表示結果が「JAC」の停止図柄の組合せになった場合には、前述したようにビッグボーナスゲーム中におけるボーナスゲームが開始されるのであり、そのために、S72により、ビッグボーナスゲーム中におけるボーナスゲームを発生させるか否かの判定が行なわれるのである。」(段落【0047】) キ.「図15は、入賞判定処理のプログラムを示すフローチャートである。まずS153により、ボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断がなされ、セットされていない場合にはS159に進み、ビッグボーナスゲームフラグがセットされているか否かの判断がなされてセットされていない場合にS163に進み、有効ライン上に入賞があったか否かの判断がなされる。・・・S163により有効ライン上に入賞があったと判断された場合にはS165に進み、入賞した有効ラインに対応する有効ライン表示ランプを点滅させる。」(段落【0061】) ク.「ビックボーナス入賞であると判断された場合にはS167に進み、各小役当選判定値をビックボーナス時の値にし、ビックボーナスゲームカウンタを「30」にセットし、ボーナス回数カウンタを「3」にセットし、ビックボーナス当選フラグをクリアし、払出し予定数を「15」にセットし、ビックボーナスゲームフラグをセットし、遊技効果ランプを第1態様で点滅させ、ビッグボーナス音をスピーカから発生させる処理が行なわれる。」(段落【0062】) ケ.「ボーナスゲームフラグがセットされている場合にはS153によりYESの判断がなされてS154に進み、ボーナスゲームカウンタを「1」減算し、S155に進み、有効ライン上にJAC入賞があるか否かの判断がなされ、ない場合には払出し予定数を「0」にセットしてコイン払出し制御に移行する。一方、有効ライン上にJAC入賞がある場合にはS156に進み、払出し予定数を「15」にセットし、JAC入賞カウンタを「1」減算し、S157により、入賞した有効ラインに相当する有効ライン表示ランプを点滅させた後コイン払出し制御に移行する。」(段落【0063】) コ.「ビックボーナスゲームフラグがセットされている場合にはS159によりYESの判断がなされてS160に進み、ビックボーナスゲームカウンタを「1」減算し、S161により有効ラインにJAC入賞があるか否かの判断がなされ、ない場合にはS163に進むが、ある場合にはS162に進む。S162では、ボーナスゲームカウンタを「12」にセットし、JAC入賞カウンタを「8」にセットし、ボーナスゲームフラグをセットし、払出し予定数を「8」にセットし、遊技効果ランプを第2態様で点滅させ、ボーナス音をスピーカから発生させる。このように、前記S169はビックボーナスゲームでない通常ゲーム時においてボーナスゲームが開始された時に行なわれる処理であり、S162の方は、ビックボーナスゲームが開始されている段階でボーナスゲームが成立したときに行なわれる処理である。」(段落【0064】) 4.引用例1記載の発明の認定 引用例1の記載ウ等の「図柄」と記載アの「識別情報」に実質的な相違はない。 引用例1の記載キ?コ及び【図15】は、入賞判定処理についての記載及び図示であるが、これらによれば、ビックボーナス入賞時には「ビックボーナスゲームカウンタを「30」にセットし、ボーナス回数カウンタを「3」にセット」(記載ク)であるから、ビックボーナスゲームフラグがセットされている場合の遊技には、ボーナスゲームとそれ以外の遊技がある。 記載セは、ボーナスゲームフラグがセットされておらず、ビックボーナスゲームフラグがセットされている場合の説明であるから、ここでの「JAC入賞」はボーナスゲーム入賞を意味する。また、入賞した有効ラインに相当する有効ライン表示ランプを点滅させるのは、ボーナスゲームにおけるJAC入賞、ビックボーナスゲームフラグもボーナスゲームフラグもセットされていない状態でのすべての入賞、及びボーナスゲームフラグはセットされておらず、ビックボーナスゲームフラグがセットされている状態での、ボーナスゲーム以外の入賞の場合であり、同状態でのボーナスゲーム入賞の場合には有効ライン表示ランプを点滅させない。記載キ,ク及び【図15】によれば、ビッグボーナスゲーム入賞時には、入賞した有効ラインに対応する有効ライン表示ランプを点滅させた後に、遊技効果ランプ、ビッグボーナス音等の処理が行われる。 したがって、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。 「遊技者がスタートレバー押圧操作により、可変表示装置の各可変表示部により複数種類の図柄が可変表示され、ランダムな値を各当選の判定値と比較した比較結果と遊技者のストップボタン押圧操作に基づいて、操作されたストップボタンに対応する可変表示部の可変表示が停止されるように構成されたスロットマシンであって、 ビックボーナスゲームフラグもボーナスゲームフラグもセットされていない状態での当選にはビッグボーナスゲーム当選,ボーナスゲーム当選,小役当選及び再ゲーム当選の4種類があり、 ビッグボーナスゲームに当選し、「AAA」という図柄の組み合わせが成立すると、ビックボーナス入賞であると判断され、ビックボーナスゲームカウンタを「30」にセットし、ボーナス回数カウンタを「3」にセットし、ビックボーナスゲームフラグをセットし、遊技効果ランプを第1態様で点滅させ、ビッグボーナス音をスピーカから発生させる処理を行い、 ビックボーナスゲームフラグがセットされている場合にも、「G」が3つ揃えばボーナスゲームに当選し入賞成立することがあり、 ボーナスゲームに入賞すると、ボーナスゲームフラグがセットされ、可変表示部における中段の横一列のみが有効ラインとされる遊技を実行し、「G」が3つ揃うとJAC入賞となり、 ボーナスゲームにおけるJAC入賞、ビックボーナスゲームフラグもボーナスゲームフラグもセットされていない状態でのすべての入賞、及びボーナスゲームフラグはセットされておらず、ビックボーナスゲームフラグがセットされている状態でのボーナスゲーム以外の入賞の場合であれば、入賞した有効ラインに対応する有効ライン表示ランプを点滅させるように構成され、ビッグボーナス入賞の場合の遊技効果ランプ及びビッグボーナス音に関する前記処理は有効ライン表示ランプ点滅の後に行われるように構成したスロットマシン。」(以下「引用発明1」という。) 5.補正発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定 引用発明1の「ランダムな値を各当選の判定値と比較」と補正発明の「乱数サンプリングにより入賞判定」には相違がないから、「複数の図柄を可変表示する可変表示部と、該可変表示部の可変表示が停止した時の表示態様について乱数サンプリングにより入賞判定を行い、その判定結果に基づいて前記可変表示部の可変表示動作を制御する」点は補正発明と引用発明1の一致点であり、そのための「制御部とを備えた遊技機」であることも一致点である。 引用発明1の制御部が「前記入賞判定により入賞が発生し、該入賞の図柄が入賞ライン上に並んだ時、入賞態様を発生させる」ことはあまりにも当然のことである。 引用発明1の「「AAA」という図柄の組み合わせ」及び「ビックボーナス入賞」は、補正発明の「特定入賞の図柄」及び「特定入賞」にそれぞれ相当し、引用発明1において、「「AAA」という図柄の組み合わせ」となるのは「ビックボーナスゲームフラグもボーナスゲームフラグもセットされていない状態でのすべての入賞」の1つであるから、「入賞した有効ラインに対応する有効ライン表示ランプを点滅させ」ることとなり、それは補正発明の「前記複数種類の視覚的又は聴覚的な報知態様のうちから前記特定入賞の図柄が並んだ入賞ラインに応じた報知態様で遊技者への報知」に相当し、その後に「遊技効果ランプを第1態様で点滅させ、ビッグボーナス音をスピーカから発生」(補正発明の「前記複数種類の視覚的又は聴覚的な報知態様のうちから・・・選択された報知態様で遊技者への報知」に相当する(「第1態様」などとあるから、複数種類からの選択自体は一致点である。)。 したがって、補正発明と引用発明1の一致点及び相違点は次のとおりである。 〈一致点〉 「複数の図柄を可変表示する可変表示部と、該可変表示部の可変表示が停止した時の表示態様について乱数サンプリングにより入賞判定を行い、その判定結果に基づいて前記可変表示部の可変表示動作を制御する制御部とを備えた遊技機において、 前記制御部は、前記入賞判定により入賞が発生し、該入賞の図柄が入賞ライン上に並んだ時、入賞態様を発生させるが、前記入賞判定により特定入賞が発生し、該特定入賞の図柄が入賞ライン上に並んだ場合には、特定入賞態様を発生させるとともに前記複数種類の視覚的又は聴覚的な報知態様のうちから前記特定入賞の図柄が並んだ入賞ラインに応じた報知態様で遊技者への報知を行い、その後、前記複数種類の視覚的又は聴覚的な報知態様のうちから選択された報知態様で遊技者への報知を行うように構成した遊技機。」 〈相違点1〉補正発明の制御部が「入賞の図柄が入賞ライン上に並んだ時、複数種類の視覚的又は聴覚的な報知態様のうちから前記入賞の図柄が並んだ入賞ラインに応じた報知態様で遊技者への報知を行う」としているのに対し、引用発明1では「ビックボーナスゲームフラグがセットされている状態でのボーナスゲーム以外の入賞」に限って「入賞した有効ラインに対応する有効ライン表示ランプを点滅させる」点。 〈相違点2〉特定入賞の図柄が入賞ライン上に並んだ場合に、特定入賞の図柄が並んだ入賞ラインに応じた報知態様で遊技者への報知を行った後に、複数種類の視覚的又は聴覚的な報知態様のうちから選択された報知態様で遊技者への報知を行うに際し、補正発明では「乱数値に応じて選択された報知態様で遊技者への報知を行」うのに対し、引用発明1では報知態様を「乱数値に応じて選択」していない点。 〈相違点3〉補正発明の制御部が「前記特定入賞態様において所定の図柄が入賞ライン上に並んだ時、前記複数種類の視覚的又は聴覚的な報知態様のうちから前記入賞の図柄が並んだ入賞ラインに応じた報知態様とは異なる入賞ラインに応じた報知態様で遊技者への報知を行うように構成した」のに対し、引用発明1では、特定入賞態様における図柄と「入賞ラインに応じた報知態様」の関係について、かかる限定を加えていない点。 6.相違点の判断及び補正発明の独立特許要件の判断 (1)相違点1について 引用発明1の「入賞した有効ラインに対応する有効ライン表示ランプを点滅」は補正発明の「複数種類の視覚的又は聴覚的な報知態様のうちから前記入賞の図柄が並んだ入賞ラインに応じた報知態様で遊技者への報知」に相当するから、ここで検討すべきは、入賞の図柄が入賞ライン上に並んだ時に常に「入賞ラインに応じた報知態様で遊技者への報知」をすることの容易性である。 引用発明1では、ビッグボーナスゲーム中だけでなく、ビックボーナスゲームフラグもボーナスゲームフラグもセットされていない状態においてもボーナスゲーム入賞に入賞することがあり、この場合には有効ライン表示ランプを点滅させている。 また、ビッグボーナスゲーム中のボーナスゲーム入賞の場合だけを、他の入賞と区別して、有効ライン表示ランプを点滅させないことの利点は見あたらず、他の入賞同様有効ライン表示ランプを点滅させることを妨げる要因も見あたらない。 そうであれば、ビッグボーナスゲーム中の通常遊技を含むすべての遊技において、すべての入賞に対して、入賞した有効ラインに対応する有効ライン表示ランプを点滅、すなわち、相違点1に係る補正発明の構成を採用することには何の困難性もなく、当業者にとって想到容易といわなければならない。 (2)相違点2について 原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-80128号公報(以下「引用例2」という。)には、「メッセージ抽出手段を所定の範囲から抽選するようにして、音声メッセージを選定することにより、変化に富んだ抽出内容とすることができる。この手段としては、次のような構成がある。」(段落【0005】)、「前記音記憶手段には、多数の非序列的な音声メッセージの集合からなり、かつブロック相互は遊技の進行状況に沿って序列化されている多数のメッセージブロックが記憶されており、前記メッセージ抽出手段は、当該発音時期の遊技の進行状況に対応する音声ブロックのなかから音声メッセージを抽選するものとする。」(段落【0008】)及び「序列型図柄群の他の実施例として、図7で示すように、多数の同列の音声メッセージ群の集合からなるメッセージブロックa,b,c,d?を設け、このブロックa,b,c,d?相互を遊技の進行状況に沿って序列化するようにしておいても良い。従って、100個目のときには第一のメッセージブロックaから音声メッセージxを選定し、200個目のときには第二のメッセージブロックbから音声メッセージxを選定し、300個目のときには第三のメッセージブロックcから音声メッセージxを選定するようにする。そして、各メッセージブロック間には序列を生じさせるようにする。」(段落【0052】)との各記載があり、【図7】には、ブロックaのメッセージ群として「マダコレカラ」、「ジョノクチ」及び「ハジマッタバカリ」等が示されており、これら各メッセージが伝えようとする内容には格別相違がない。 引用発明1におけるビックボーナス入賞は、遊技の進行状況の1つであり、ボーナスゲーム入賞もそれとは別の遊技の進行状況の1つであり、遊技効果ランプの点滅態様やビッグボーナス音は、これら遊技進行状況に対してのメッセージに当たる。 そして、引用発明1においても、ビックボーナス入賞時の遊技効果ランプの点滅態様やビッグボーナス音を変化に富んだ内容とすれば、それだけ遊技の興趣を向上できることは明らかであるから、引用例2の「メッセージブロック」同様、点滅態様やビッグボーナス音として複数用意しておき、そのうちの1つを抽選することは当業者にとって容易である。 引用例2には、「乱数値に応じて選択」する旨の記載はないが、各ブロック内のメッセージは同一内容を伝えるものであり、同一内容のメッセージ群から1つを抽選するに当たり、「乱数値に応じて選択」することは設計事項というべきである。 したがって、相違点2に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。 (3)相違点3について 引用発明1では、「入賞した有効ラインに対応する有効ライン表示ランプを点滅」するのであるが、ここで「点滅」と表現していることを考慮すれば、入賞した有効ラインに対応しない有効ラインの表示ランプは点灯していると解すべきである。 そして、引用例1の記載オにあるとおり、「3賭けの場合には、1賭けの場合よりも少なくとも3倍以上当選しやす」いのであるから、ビッグボーナスゲーム入賞時には、ほとんどの場合3賭けであると理解でき、3賭けであれば、入賞した有効ラインに対応しない4つの有効ライン表示ランプは点灯している。これに対し、ビッグボーナスゲーム中のボーナスゲームでは、1賭けしかできないから、入賞した有効ラインに対応しない4つの有効ライン表示ランプは消灯している。そうすると、多くの場合、ビッグボーナスゲーム中のボーナスゲームにおいて入賞(JAC入賞)した場合の「入賞ラインに応じた報知態様」は、「特定入賞態様において所定の図柄が入賞ライン上に並んだ時」の「入賞ラインに応じた報知態様」とは異なることになる。仮に、入賞した有効ラインに対応しない有効ラインの表示ランプは点灯していると解釈できないとしても、入賞成立までは、同表示ランプは点灯しており、入賞した有効ラインに対応しない有効ラインの表示ランプがその後消灯するかどうかにより、「入賞ラインに応じた報知態様」が異なるといえるから、上記判断には影響を及ぼさない。 もっとも、引用発明1では、ビックボーナスゲームフラグがセットされ、ボーナスゲームフラグがセットされていない状態(ビックボーナスゲーム中の通常遊技)においても、JAC入賞図柄によりボーナスゲーム入賞となるから、JAC入賞図柄を補正発明の「所定の図柄」に対応させても、必ずしも「特定入賞態様において所定の図柄が入賞ライン上に並んだ時、前記複数種類の視覚的又は聴覚的な報知態様のうちから前記入賞の図柄が並んだ入賞ラインに応じた報知態様とは異なる入賞ラインに応じた報知態様で遊技者への報知を行う」ことにはならない。しかし、JAC入賞図柄とビックボーナスゲーム中のボーナス入賞図柄を一致させなければならない理由はなく、それら図柄を異ならせ、ボーナスゲーム以外ではJAC入賞図柄が発生しないようにしたスロットマシンも多数あり(例えば、メーシー販売が販売した「ファンファン」及び「トロピカーナ」、オリンピアが販売した「プレイガールV」、北電子が販売した「クリエーター7S」などを挙げることができる。これらスロットマシンが同構成を備えることは、「パチスロ必勝ガイド パチスロ大図鑑2001年5月12日、株式会社白夜書房より発行。)上記刊行物の頒布日は本件出願前ではないかもしれないが、上記各スロットマシンの販売日は本件出願前である。)、本件出願当時の周知技術と認めることができる。 そうであれば、引用発明1を出発点として、JAC入賞図柄とビックボーナスゲーム中のボーナス入賞図柄を一致させなければならない理由はないのだから、上記周知技術を採用してそれら図柄を異ならせ、ボーナスゲーム以外ではJAC入賞図柄が発生しないようにすることには何の困難性もないというべきである。 ただし、ボーナスゲーム以外ではJAC入賞図柄が発生しないとしても、ビッグボーナスゲーム入賞時に3賭けであるとは限らず、1賭けであれば相違点2に係る補正発明の構成にはならないが、前示のとおりほとんどの場合3賭けであると考えられるから、ボーナスゲームを除けば、3賭けのみを許容する遊技機に変更することにも困難性はなく、3賭けのみ許容するのならば、必ずJAC入賞図柄による入賞時の「入賞ラインに応じた報知態様」とビッグボーナスゲーム入賞時のそれは異なる。 以上のとおりであるから、相違点3に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。 (4)補正発明の独立特許要件の判断 相違点1?3に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。 したがって、補正発明は引用発明1、引用例2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 すなわち、本件補正は、平成18年法律55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。 [補正の却下の決定のむすび] 以上述べたとおりであるから、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本件審判請求についての判断 1.本願発明の認定 本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成18年10月12日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載されたとおりの次のものと認める。 「複数の図柄を可変表示する可変表示部と、該可変表示部の可変表示が停止した時の表示態様について乱数サンプリングにより入賞判定を行い、その判定結果に基づいて前記可変表示部の可変表示動作を制御する制御部とを備えた遊技機において、 前記制御部は、前記入賞判定により特定入賞が発生し、該特定入賞の図柄が入賞ライン上に並んだ時、特定入賞態様を発生させるとともに複数種類の視覚的又は聴覚的な報知態様のうちから前記特定入賞の図柄が並んだ入賞ラインに応じた報知態様で遊技者への報知を行い、その後、前記複数種類の視覚的又は聴覚的な報知態様のうちから乱数値に応じて選択された報知態様で遊技者への報知を行うように構成したことを特徴とする遊技機。」 2.本願発明の進歩性の判断 第2[理由]3?5で述べたことを踏まえると、本願発明と引用発明1の一致点及び相違点は次のとおりである。 〈一致点〉 「複数の図柄を可変表示する可変表示部と、該可変表示部の可変表示が停止した時の表示態様について乱数サンプリングにより入賞判定を行い、その判定結果に基づいて前記可変表示部の可変表示動作を制御する制御部とを備えた遊技機において、 前記制御部は、前記入賞判定により特定入賞が発生し、該特定入賞の図柄が入賞ライン上に並んだ時、特定入賞態様を発生させるとともに複数種類の視覚的又は聴覚的な報知態様のうちから前記特定入賞の図柄が並んだ入賞ラインに応じた報知態様で遊技者への報知を行い、その後、前記複数種類の視覚的又は聴覚的な報知態様のうちから選択された報知態様で遊技者への報知を行うように構成した遊技機。」 〈相違点2’〉特定入賞の図柄が入賞ライン上に並んだ時、特定入賞の図柄が並んだ入賞ラインに応じた報知態様で遊技者への報知を行った後に、複数種類の視覚的又は聴覚的な報知態様のうちから選択された報知態様で遊技者への報知を行うに際し、本願発明では「乱数値に応じて選択された報知態様で遊技者への報知を行」うのに対し、引用発明1では報知態様を「乱数値に応じて選択」していない点。 そこで検討するに、相違点2’は補正発明と引用発明1との相違点2と実質的に同じである。そして、相違点2に係る補正発明の構成を採用することが当業者にとって想到容易であることは「第2[理由」6(2)」で述べたとおりであり、同じ理由により、相違点2’に係る本願発明の構成を採用することも当業者にとって想到容易であり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。 したがって、本願発明は引用発明1及び引用例2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-10-30 |
結審通知日 | 2008-11-04 |
審決日 | 2008-11-19 |
出願番号 | 特願平11-228121 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F) P 1 8・ 561- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 赤坂 祐樹 |
特許庁審判長 |
津田 俊明 |
特許庁審判官 |
小原 博生 池谷 香次郎 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 藤田 和子 |