• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B23D
管理番号 1190485
審判番号 不服2007-8995  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-29 
確定日 2009-01-05 
事件の表示 平成10年特許願第361217号「フープ材カッター」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 6月27日出願公開、特開2000-176727〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯及び本件発明
本件出願は、平成10年12月18日の出願であって、同18年11月20日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内の同19年1月25日に意見書の提出とともに手続補正がされたが、同19年2月20日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、同19年3月29日に本件審判の請求がされた。その後、当審において同20年7月30日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内の同20年10月6日に意見書の提出とともに手続補正がされたものである。
本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年10月6日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】
ベースフレーム1とサブフレーム2との間にて摺動しつつ往復動するラム4側に固定した動刃8と、
前記ベースフレーム1側に固定した固定刃11との間にて、
前記ベースフレーム1側に設けたホッパー13の入口側に設けたフープ材15をホッパー13内に供給する上下一対のピンチロール14によりホッパー13に送り込まれるフープ材15を切断するとともに前記サブフレーム2の開口部17より排出することができるように構成したフープ材カッターにおいて、
前記サブフレーム2に、前記ベースフレーム1に設けたホッパー13との対向側に開口部19を開口し、当該開口部19を介して前記ラム4の端部に動刃8をバインダー9及びボルト10を介して固定するとともに、前記ベースフレーム1に固定刃11をボルト12を介して固定し、動刃8及び固定刃11をその取付面に対して直角方向に着脱することができるように構成したことを特徴とするフープ材カッター。」

2 引用刊行物
これに対して、当審において平成20年7月30日付けで通知した拒絶理由には、本件出願前に頒布された刊行物である次の刊行物1、2が引用されており、各刊行物には、以下の技術的事項が記載されている。
[引用刊行物]
刊行物1:実願平3-39341号(実開平4-133517号)のCD -ROM
刊行物2:特開昭55-144924号公報

(1)刊行物1
ア 段落【0001】
「【産業上の利用分野】
この考案は、電線の端末加工がなされる電線処理機の技術分野で利用され、特に、電線の切断や、被覆端部をはぎ取るためのカッターの取付け用治具に関するものである。」

イ 段落【0012】
「図1および図2に示す取付け用治具1は、後述の電線処理機(全体の図示省略)の切断装置21(図3参照)に対し、上側刃体2および下側刃体3からなる電線切断用のカッター4を取付けるために用いる治具であって、治具本体5と、この治具本体5に収容されて各刃体2、3の磁気吸着をなすための磁石6A、6Bとからなっている。」

ウ 段落【0016】?【0017】
「前記、上側刃体2および下側刃体3には、それぞれ二個のボルト孔14、15があけられている。
図3に示す切断装置21は、基盤22上に二本の案内柱体23が立設され、この各案内柱体23間に上側昇降フレーム24および下側昇降フレーム25が昇降可能に架設されたもので、この各昇降フレーム24、25が駆動手段(図示省略)により互いに向かい合って昇降するようになされている。」

エ 段落【0020】?【0023】
「まず、取付け用治具1の上半部に上側刃体2を、刃部2aの裏面が前向きになるように挿入すると、上側刃体2は、背面が磁石6Aに吸着されて上側基準面7に固定されるとともに、左右両側面が上側案内壁11で位置ずれを阻止される。
また、取付け用治具1の下半部に下側刃体3を、刃部3aの表面が前向きになるように挿入すると、下側刃体3は、上側刃体2の場合と同様に、下側基準面8に吸着固定がなされるとともに、左右両側面が下側案内壁12で位置ずれを阻止されることにより、各刃体2、3が互いに正しく向き合った芯出しが自動的になされる。
次に、上側刃体2および下側刃体3を取付け用治具1ごと切断装置21に搬入して各ボルト孔14、15に六角穴付きボルトBを挿入する。そして、この各六角穴付きボルトBの締め付けにより上側刃体2を上側昇降フレーム24に下側刃体3を下側昇降フレーム25に固定したのち、取付け用治具1を各刃体2、3から引き離すことによって、カッター4の取付けを完了する。
この場合、各刃体2、3に挿入した六角穴付きボルトBを各昇降フレーム24、25のねじ孔(図示省略)に適合させるために、各刃体2、3を上下方向に移動させても、各刃体2、3は、左右両側が各案内壁11、12で正しく案内されるから、各刃体2、3の芯出しを乱すおそれがない。」

刊行物1において、上側刃体2と下側刃体3との間にて、本体の入口側から送り込まれる電線等を切断するとともに本体の出口側より排出することができるように構成されることは技術常識より明らかである。
そして、上記摘記事項エ及び図1及び図3の記載によれば、上側刃体2が上側昇降フレーム24にボルトBを介して固定されるとともに、下側刃体3が下側昇降フレーム25にボルトBを介して固定されており、上側刃体2及び下側刃体3はその取付面に対して直角方向に着脱することができることも明らかである。

これらの事項を、技術常識を勘案しつつ本願発明に照らして整理すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「上側昇降フレーム24側に固定した上側刃体2と、
下側昇降フレーム25側に固定した下側刃体3との間にて、
本体の入口側から送り込まれる電線等を切断するとともに本体の出口側より排出することができるように構成したカッターにおいて、
上側刃体2が上側昇降フレーム24にボルトBを介して固定されるとともに、下側刃体3が下側昇降フレーム25にボルトBを介して固定されており、上側刃体2及び下側刃体3はその取付面に対して直角方向に着脱することができるように構成したカッター。」

(2)刊行物2
ア 第1頁左下欄第14?18行
「本発明は自動プレス装置などに併設されるスクラツプフープ材処理用のフープ材カツターの改良に係り、特に単一ガイド構成として、硬質な材料や厚い材料のカツトに好適な単一ガイド構成のフープ材カツターに関する。」

イ 第2頁左上欄第7行?右上欄第9行
「6はフープ材カツターを示し、7はモータであり、上部には減速機8を介して回動軸9を該減速機8に固定した下盤10にベアリング11、ベアリング止め12、オイルシール13を介して可回動に挿通し、更にその上部突出している。
固定下盤10上には未広がり状のラム14が可摺動的に載置されてあり、且つ前記回動軸9にキー15を介して設けられた偏心カム16にベアリング17を介して相対回動可能にセツトされている。偏心カム16の反対側端部上面には動刃18をボルト19等の適宜手段により取替可能に設けてある。20はラム14の周囲に設けたスペーサである。
ラム14の上部にはこのラム14を可摺動に変位させうる上盤21が固定されて設けられており前記動刃18に対向してホツパー22を固定して設け、一方動刃18の下面に当接可能な様に固定刃23がホツパー22の裏面の上盤21下部にボルト24等の適当な手段により固定されて設けられている。25はホツパーカバーである。また30は上盤21の略中央に設けた潤滑油グリース注入口31のニツプルであり、32は該上盤21の適宜形状のグリース溝である。」

ウ 第1図の記載によれば、固定下盤10には、上盤21に設けたホッパー22との対向側に開口部が開口されており、ホッパー22に送り込まれて切断されたフープ材を排出することができるようにしたことが看取できる。

これらの事項からみて、刊行物2には、次の発明が記載されているものと認められる。
「上盤21と固定下盤10との間にて摺動しつつ往復動するラム側に固定した動刃18と、
上盤21側に固定した固定刃25との間にて、
前記上盤21側に設けたホッパー22に送り込まれるフープ材を切断するとともに前記固定下盤10の開口部より排出することができるように構成したフープ材カッターにおいて、
前記固定下盤10に、前記上盤21に設けたホッパー22との対向側に開口部を開口した、フープ材カッター。」

3 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「上側昇降フレーム24」及び「下側昇降フレーム25」は、一方のフレーム及び他方のフレームという限りで本願発明の「ラム」及び「ベースフレーム」と共通しており、引用発明の「上側刃体2」及び「下側刃体3」は、一方の刃及び他方の刃という限りで本願発明の「動刃」及び「固定刃」と共通している。
また、引用発明の「電線等」は、被切断材という限りで、本願発明の「フープ材」と共通している。
さらに、引用発明の「本体の入口側から送り込まれる電線等を切断するとともに本体の出口側より排出することができるように構成したカッター」は、「本体の入口側から送り込まれる被切断材を切断するとともに本体の出口側より排出することができるように構成したカッター」という限りで、本願発明の「前記ベースフレーム1側に設けたホッパー13の入口側に設けたフープ材15をホッパー13内に供給する上下一対のピンチロール14によりホッパー13に送り込まれるフープ材15を切断するとともに前記サブフレーム2の開口部17より排出することができるように構成したフープ材カッター」と共通している。
したがって、両者の一致点及び相違点は次のとおりと認められる。
[一致点]
「一方のフレーム側に固定した一方の刃と、
他方のフレーム側に固定した他方の刃との間にて、
本体の入口側から送り込まれる被切断材を切断するとともに本体の出口側より排出することができるように構成したカッターにおいて、
一方の刃が一方のフレームにボルトを介して固定されるとともに、他方の刃が他方のフレームにボルトを介して固定されており、一方の刃及び他方の刃はその取付面に対して直角方向に着脱することができるように構成したカッター。」である点。
[相違点]
本願発明は、カッターが、
「ベースフレーム1とサブフレーム2との間にて摺動しつつ往復動するラム4側に固定した動刃8と、
前記ベースフレーム1側に固定した固定刃11との間にて、
前記ベースフレーム1側に設けたホッパー13の入口側に設けたフープ材15をホッパー13内に供給する上下一対のピンチロール14によりホッパー13に送り込まれるフープ材15を切断するとともに前記サブフレーム2の開口部17より排出することができるように構成したフープ材カッター」であって、
一方のフレーム及び刃が、「ラム4」及び「動刃8」であり、他方のフレームが、「ベースフレーム1」及び「固定刃11」であるとともに、「サブフレーム2に、前記ベースフレーム1に設けたホッパー13との対向側に開口部19を開口し、当該開口部19を介して前記ラム4の端部に動刃8をバインダー9及びボルト10を介して固定する」のに対し、
引用発明は、そのようなものではない点。

4 相違点についての検討
刊行物2には、上記2(2)に示すとおりの事項が記載されており、刊行物2に記載の発明の「上盤21」及び「固定下盤10」は本願発明の「ベースフレーム」及び「サブフレーム」に相当しているから、刊行物2には、
「ベースフレームとサブフレームとの間にて摺動しつつ往復動するラム側に固定した動刃と、
前記ベースフレーム側に固定した固定刃との間にて、
前記ベースフレーム側に設けたホッパーに送り込まれるフープ材を切断するとともに前記サブフレームの開口部より排出することができるように構成したフープ材カッターにおいて、
前記サブフレームに、前記ベースフレームに設けたホッパーとの対向側に開口部を開口した、フープ材カッター。」が記載されているとすることができる。
引用発明と刊行物2に記載の発明とは、いずれも一方の刃と他方の刃との間で被切断材を切断するカッターという同一の技術分野に属するものであるとともに、引用発明に係るカッターをフープ材用とできないとする特段の理由も発見しない。してみると、引用発明に刊行物2に記載の発明を適用し、一方のフレーム及び刃を「ベースフレームとサブフレームとの間にて摺動しつつ往復動するラム」及び「動刃」と、他方のフレーム及び刃を「ベースフレーム」及び「固定刃」として、フープ材カッターとすることは当業者が容易になし得たことである。
ところで、引用発明は、一方の刃及び他方の刃はその取付面に対して直角方向に着脱することができるものであるが、カッタ本体の前記刃の着脱を行う側には、着脱を行うための空間が必要であることは明らかであり、引用発明に刊行物2に記載の発明を適用するに当たり、サブフレームに開口した開口部を介して着脱を行うことに格別困難性はない。
また、ピンチロールを用いて材料を加工装置等に供給することは従来周知の事項(必要であれば、実願平3-80558号(実開平5-31818号)のCD-ROMを参照)であり、引用発明において上下一対のピンチロールによりフープ材を供給することに格別困難性はない。
さらに、ボルトによる固定の際に座金等の別部材を介して固定することも当業者が普通に採用する事項であり、ラムの端部に動刃をバインダー及びボルトを介して固定することも設計的事項にすぎない。

また、本願発明の作用効果についてみても、引用発明、刊行物2に記載の発明から当業者が十分予測しうる範囲内のものであって、格別顕著なものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明、刊行物2に記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本件出願の請求項1に係る発明は、引用発明、刊行物2に記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-20 
結審通知日 2008-10-28 
審決日 2008-11-10 
出願番号 特願平10-361217
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B23D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 仁木 浩  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 豊原 邦雄
佐々木 一浩
発明の名称 フープ材カッター  
代理人 奈良 武  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ