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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1190516
審判番号 不服2007-26277  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-26 
確定日 2009-01-05 
事件の表示 特願2001-362084「切削加工機」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月 6日出願公開、特開2003-163181〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯及び本願発明
本件出願は、平成13年11月28日の出願であって、同19年4月5日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内の同19年6月6日に意見書の提出とともに手続補正がされたが、同19年8月20日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、同19年9月26日に本件審判の請求がされた。
本件出願の請求項1乃至3に係る発明は、同19年6月6日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】 一直線上に順次に配列されたカセット載置域、チャッキング域及び洗浄域を有すると共に、該一直線に対して直角な方向に該チャッキング域から離隔して配列された加工域を有し、
該カセット載置域にはカセット支持手段が配設され、該チャッキング域には仮支持手段が配設され、該加工域には切削加工手段が配設され、該洗浄域には洗浄手段が配設され、そして更に該チャッキング域と該加工域とに選択的に位置せしめられる可動チャック手段、及び被加工物搬送手段が配設されており、
該仮支持手段は一対の支持部材を含み、該一対の支持部材は両者間に跨がって被加工物が載置される作用位置と両者間を通して被加工物が昇降され得る非作用位置とに選択的に位置せしめられ、該チャック手段が該チャッキング域に位置せしめられると該チャック手段は該仮支持手段の該一対の支持部材の下方に位置し、
該カセット支持手段上には被加工物を収容したカセットが載置される切削加工機において、
該被加工物搬送手段は共通可動支持構造体並びに該共通可動支持構造体に配設された第一の保持手段及び第二の保持手段を含み、
該共通可動支持構造体は、該カセット載置域と該チャッキング域との離隔方向に平行に且つ実質上水平に往復動自在に装着された水平移動部材と、該水平移動手段に実質上鉛直な方向に昇降動自在に装着された昇降動部材とを含み、
該第一の保持手段は、該昇降動部材に装着され該昇降動部材から下方に垂下する作用位置と該昇降動部材から上方に延びる非作用位置とに選択的に位置せしめられる可動部材と、該可動部材に配設された一対の把持片とを含み、該一対の把持片は上下方向に間隔をおいて突出し且つ少なくとも一方は他方に対して近接及び離隔移動自在であって、両者間に被加工物を把持し、
該第二の保持手段は、該昇降動部材に装着され且つ該仮支持手段に支持されている被加工物の上面を開放自在に吸着することができる吸着器を含み、
該カセット支持手段上に載置されているカセットから被加工物を搬出して該仮支持手段上に搬送する時及び切削加工され洗浄された後に該仮支持手段上に載置された被加工物を該カセット支持手段上に載置されているカセット内に搬入する時には該第一の保持手段が被加工物を保持し、該仮支持手段上から該チャッキング域に位置せしめられている該チャック手段上に被加工物を搬送する時及び該洗浄手段から該仮支持手段上に被加工物を搬送する時には該第二の保持手段が被加工物を保持し、
そして更に、該チャッキング域に位置せしめられている該チャック手段上の切削加工された後の被加工物を該チャック手段上から該洗浄手段に搬送するためにのみ使用される付加被加工物搬送手段が配設されている、ことを特徴とする切削加工機。」

2 引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶理由には、本件出願前に頒布された刊行物である、特開2001-7058号公報(以下「刊行物1」という。)、及び特開平6-181257号公報(以下「刊行物2」という。)が引用されており、各刊行物には、以下の技術的事項が記載されている。

(1)刊行物1
ア 段落【0001】
「【発明の属する技術分野】本発明は、半導体ウェーハ等の被加工物を切削する切削装置に関する。」

イ 段落【0006】
「【課題を解決するための手段】上記課題を解決するための具体的手段として本発明は、被加工物を収容したカセットが載置されるカセット領域と、該カセット領域に載置されたカセットから被加工物を搬出する搬出手段と、該搬出手段によって搬出された被加工物をチャックテーブルに載置する被加工物載置領域と、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削手段が配設される切削領域と、該切削手段によって切削された被加工物を洗浄する洗浄手段が配設される洗浄領域と、該洗浄手段によって洗浄された被加工物を該カセット内に搬入する搬入手段とから構成される切削装置であって、カセット領域と被加工物載置領域と洗浄領域とはY軸方向に一直線上に配設され、切削領域はY軸方向に直交するX軸方向に被加工物載置領域と一直線上になるように配設され、チャックテーブルは被加工物載置領域から切削領域までをX軸方向に移動する構成とした切削装置を提供する。」

ウ 段落【0009】
「【発明の実施の形態】本発明の実施の形態の一例として、図1に示す切削装置10について説明する。この切削装置10は、被加工物を収容したカセット11がカセットテーブル12aに載置される領域であるカセット領域12と、カセット領域12に載置されたカセット11から被加工物を挟持部13aで挟持して搬出する搬出手段13と、搬出手段13によって搬出された被加工物がチャックテーブル14に載置される領域である被加工物載置領域15と、チャックテーブル14に保持された被加工物を切削する切削手段16が配設される切削領域17と、切削手段16によって切削された被加工物を洗浄する洗浄手段18が配設される洗浄領域19と、被加工物載置領域15と洗浄領域19との間で被加工物を搬送する搬送手段20と、洗浄手段18によって洗浄された被加工物をカセット11内に搬入する搬入手段21とから概ね構成される。なお、図1の例においては、搬出手段13が搬入手段21を兼ねた構成となっている。」

エ 段落【0020】
「切削の終了後は、チャックテーブル14が-X方向に移動して被加工物載置領域15まで戻った後に、搬送手段20の吸着パッド20aがフレームFを吸着して+Y方向に移動することにより、切削済みの半導体ウェーハWが洗浄領域19に搬送される。そして、洗浄領域19において、洗浄水供給ノズル18aとスピンナーテーブル18bを含む洗浄手段18によってスピン洗浄、乾燥がなされて切削屑等が除去される。」

オ 段落【0023】?【0026】
「なお、図4に示すように、切削装置10における被加工物載置領域15の上部に仮置き手段42を設けることもできる。この仮置き手段42は、Y軸方向に設けた一対のフレームガイドレール43により構成され、ガイド溝44に沿ってそれぞれが独立してX軸方向に移動可能となっている。そして、2つのフレームガイドレール43は、作用位置においては、一対のフレームガイドレール43の上に保持テープTを介してフレームFに保持された半導体ウェーハWが載置されるよう適宜の間隔に位置付けられる。一方、非作用位置においては、2つのフレームガイドレール43同士がガイド溝44の両端に位置することで、両者が最も離れて位置付けられる。
また、図4において2点鎖線で示す搬入手段21は、仮置き手段42の上方をY軸方向に移動可能であり、これを上下動可能とすることもできる。
このような仮置き手段42を設けることにより、チャックテーブル14に載置された半導体ウェーハの切削が行われている間に、洗浄領域19において洗浄が終了した半導体ウェーハを搬送手段20によって仮置き手段42に載置し、搬入手段21によってカセット11に収容することができる。
また、切削前の半導体ウェーハを搬出手段13によって仮置き手段42に搬出し、ガイドレール43がフレームFを挟持する方向に移動して機械的な位置合わせをした後、搬送手段20によってフレームFを吸着保持し、ガイドレール43を非作用位置に待避させて搬送手段20の下降によってチャックテーブル14に半導体ウェーハをフレームと共に載置するよう構成することもできる。」

カ 段落【0030】
「なお、搬送手段20と同様の搬送手段を追加し、洗浄前の被加工物の搬送と洗浄後の被加工物の搬送とをそれぞれ独立して行うようにすれば、切削直後の被加工物の搬送時に搬送手段に付着したコンタミ(切削屑)が洗浄後の被加工物に付着するのを防止することができる。」

上記摘記事項ウによれば、搬出手段13は搬入手段21を兼ねた構成となっているから、刊行物1における切削装置は、搬出と搬入を行う搬出入手段13(21)を具備しているということができる。
また、摘記事項エ、オによれば、搬送手段20は、該搬送手段20に装着され且つ該仮置き手段42に支持されている被加工物の上面を開放自在に吸着することができる吸着パッド20aを含むものであり、カセットテーブル12a上に載置されているカセット11から被加工物を搬出して該仮置き手段42上に搬送する時及び切削加工され洗浄された後に該仮置き手段42上に載置された被加工物を該カセットテーブル12a上に載置されているカセット11内に搬入する時には搬出入手段13(21)の挟持部13aが被加工物を保持し、該仮置き手段42上から該被加工物載置領域15に位置せしめられている該チャックテーブル14上に被加工物を搬送する時及び該洗浄手段から該仮置き手段42上に被加工物を搬送する時には搬送手段20の吸着パッド20aが被加工物を保持するものであることは明らかである。
さらに、摘記事項カによれば、洗浄前の被加工物の搬送と洗浄後の被加工物の搬送とをそれぞれ独立して行う搬送手段を追加することが記載されているから、被加工物載置領域15に位置せしめられているチャックテーブル14上の切削加工された後の被加工物を該チャックテーブル14上から洗浄手段18に搬送するためにのみ使用される付加被加工物搬送手段が配設されていることが理解される。

そこで、これらの事項を技術常識を勘案しながら本願発明に照らして整理すると、刊行物1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「一直線上に順次に配列されたカセット領域12、被加工物載置領域15及び洗浄領域19を有すると共に、該一直線に対して直角な方向に該被加工物載置領域15から離隔して配列された切削領域17を有し、
該カセット領域12にはカセットテーブル12aが配設され、該被加工物載置領域15には仮置き手段42が配設され、該切削領域17には切削手段16が配設され、該洗浄領域19には洗浄手段18が配設され、そして更に該被加工物載置領域15と該切削領域17とに選択的に位置せしめられるチャックテーブル14、及び搬出入手段13(21)及び搬送手段20が配設されており、
該仮置き手段42は一対のフレームガイドレール43を含み、該一対のフレームガイドレール43は両者間に跨がって被加工物が載置される作用位置と両者間を通して被加工物が昇降され得る非作用位置とに選択的に位置せしめられ、該チャックテーブル14が該チャッキング域に位置せしめられると該チャックテーブル14は該仮置き手段42の該一対のフレームガイドレール43の下方に位置し、
該カセットテーブル12a上には被加工物を収容したカセット11が載置される切削装置において、
該搬送手段20は、該搬送手段20に装着され且つ該仮置き手段42に支持されている被加工物の上面を開放自在に吸着することができる吸着パッド20aを含み、
該カセットテーブル12a上に載置されているカセット11から被加工物を搬出して該仮置き手段42上に搬送する時及び切削加工され洗浄された後に該仮置き手段42上に載置された被加工物を該カセットテーブル12a上に載置されているカセット11内に搬入する時には該搬出入手段13(21)の挟持部13aが被加工物を保持し、該仮置き手段42上から該被加工物載置領域15に位置せしめられている該チャックテーブル14上に被加工物を搬送する時及び該洗浄手段から該仮置き手段42上に被加工物を搬送する時には該搬送手段20の吸着パッド20aが被加工物を保持し、
そして更に、該被加工物載置領域15に位置せしめられている該チャックテーブル14上の切削加工された後の被加工物を該チャックテーブル14上から該洗浄手段18に搬送するためにのみ使用される付加被加工物搬送手段が配設されている、切削装置。」

(2)刊行物2
ア 段落【0001】
「【産業上の利用分野】
本発明は、ダイシング装置であって特に小型コンパクトに形成したダイシング装置に関するものである。」

イ 段落【0006】?【0008】
「【実施例】以下、図示の実施例により本発明を更に詳しく説明する。図1において、1はダイシング装置であり、前端側部にウェーハを収納したカセット2′が位置付けられるカセット領域2が配設され、このカセット領域2の中心を通る直線L上にチャック領域3とスピン洗浄領域4とが近接配置されている。
5はダイシング装置1の側端部に設けられた搬送手段であり、前記直線Lに対し平行に移動できるようにしてあり、前記カセット領域2に位置付けられているカセット2′からテープを介してフレームに保持されたウェーハ(図略)を取り出してチャック領域3に搬送し、或は切断されたウェーハを洗浄した後にスピン洗浄領域4からカセット領域2に搬送できるようにしてある。
前記搬送手段5は、図2に示すように垂直基板51が送りねじ52によってガイドレール53に沿って直線L方向に摺動自在に設けられ、この垂直基板51に対して断面L型のアーム板54が送りねじ55によってガイドレール56に沿って上下移動可能に取り付けられ、更にアーム板54の前端側にはウェーハを保持したフレームの一端部を把持するためのハンド機構57が取り付けられ、後端側にはウェーハを着脱するための吸着機構58が設けられ、この吸着機構58はシリンダー59によって上下方向に移動可能に形成されている。又、前記カセット領域2は送りねじ21によって上下動可能になっている。」

ウ 段落【0019】
「・・・尚、搬送手段5のハンド機構57はカセット内のウェーハの搬出と、洗浄後のウエーハをカセット内に搬入する場合に使用され、吸着機構58はダイシング後のウェーハをスピン洗浄領域まで搬送する場合に使用されるのでクロスコンタミを防止することができる。」

上記摘記事項及び図1,2の記載からみて、刊行物2には次の事項が記載されているものと認められれる。
「一直線上に順次に配列されたカセット領域2、チャック領域3及びスピン洗浄領域4を有すると共に、該一直線に対して直角な方向に該チャック領域3から離隔して配列されたダイシング領域6を有し、
該カセット領域2にはカセット支持手段が配設され、該ダイシング領域6には切削加工手段が配設され、該スピン洗浄領域4には洗浄手段が配設され、そして更に該チャック領域3と該ダイシング領域6とに選択的に位置せしめられるチャックテーブル31、及び被加工物搬送手段が配設されており、
該カセット支持手段上には被加工物を収容したカセット2’が載置されるダイシング装置において、
被加工物搬送手段が、搬送手段5並びに該搬送手段5に配設されたハンド機構57及び吸着機構58を含み、
該搬送手段5は、該カセット領域2と該チャック領域3との離隔方向に平行に且つ実質上水平に往復動自在に装着された垂直基板51と、該垂直基板51に実質上鉛直な方向に昇降動自在に装着されたアーム板54とを含み、
該ハンド機構57は、該アーム板54に装着され、
該吸着機構58は、該アーム板54に装着され且つ被加工物の上面を開放自在に吸着することができる吸着器を含むこと。」

3 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「カセット領域12」は本願発明の「カセット載置域」に相当し、以下同様に、「被加工物載置領域15」は「チャッキング域」に、「洗浄領域19」は「洗浄域」に、「切削領域17」は「加工域」に、「カセットテーブル12a」は「カセット支持手段」に、「チャックテーブル14」は「可動チャック手段」に、「仮置き手段42」は「仮支持手段」に、「フレームガイドレール43」は「支持部材」に、「切削装置」は「切削加工機」に、それぞれ相当することが明らかである。
引用発明においては、カセットテーブル12a上に載置されているカセット11から被加工物を搬出して該仮置き手段42上に搬送する時及び切削加工され洗浄された後に該仮置き手段42上に載置された被加工物を該カセットテーブル12a上に載置されているカセット11内に搬入する時には該搬出入手段13(21)の挟持部13aが被加工物を保持し、該仮置き手段42上から該被加工物載置領域15に位置せしめられている該チャックテーブル14上に被加工物を搬送する時及び該洗浄手段から該仮置き手段42上に被加工物を搬送する時には該搬送手段20の吸着パッド20aが被加工物を保持するから、引用発明の「搬出入手段13(21)の挟持部13a」及び「搬送手段20の吸着パッド20a」は、それぞれ本願発明の「第一の保持手段」及び「第二の保持手段」と対応している。
そうすると、引用発明の「搬出入手段13(21)」と「搬送手段20」は、第一の保持手段及び第二の保持手段を含む被加工物搬送手段という限りで、本願発明の「被加工物搬送手段」と共通している。
したがって、両者の一致点と相違点は次のとおりと認められる。
[一致点]
「一直線上に順次に配列されたカセット載置域、チャッキング域及び洗浄域を有すると共に、該一直線に対して直角な方向に該チャッキング域から離隔して配列された加工域を有し、
該カセット載置域にはカセット支持手段が配設され、該チャッキング域には仮支持手段が配設され、該加工域には切削加工手段が配設され、該洗浄域には洗浄手段が配設され、そして更に該チャッキング域と該加工域とに選択的に位置せしめられる可動チャック手段、及び被加工物搬送手段が配設されており、
該仮支持手段は一対の支持部材を含み、該一対の支持部材は両者間に跨がって被加工物が載置される作用位置と両者間を通して被加工物が昇降され得る非作用位置とに選択的に位置せしめられ、該チャック手段が該チャッキング域に位置せしめられると該チャック手段は該仮支持手段の該一対の支持部材の下方に位置し、
該カセット支持手段上には被加工物を収容したカセットが載置される切削加工機において、
該被加工物搬送手段は、第一の保持手段及び第二の保持手段を含み、
該第二の保持手段は、該仮支持手段に支持されている被加工物の上面を開放自在に吸着することができる吸着器を含み、
該カセット支持手段上に載置されているカセットから被加工物を搬出して該仮支持手段上に搬送する時及び切削加工され洗浄された後に該仮支持手段上に載置された被加工物を該カセット支持手段上に載置されているカセット内に搬入する時には該第一の保持手段が被加工物を保持し、該仮支持手段上から該チャッキング域に位置せしめられている該チャック手段上に被加工物を搬送する時及び該洗浄手段から該仮支持手段上に被加工物を搬送する時には該第二の保持手段が被加工物を保持し、
そして更に、該チャッキング域に位置せしめられている該チャック手段上の切削加工された後の被加工物を該チャック手段上から該洗浄手段に搬送するためにのみ使用される付加被加工物搬送手段が配設されている、切削加工機。」である点。
[相違点]
本願発明では、被加工物搬送手段が、「共通可動支持構造体並びに該共通可動支持構造体に配設された第一の保持手段及び第二の保持手段を含み、
該共通可動支持構造体は、該カセット載置域と該チャッキング域との離隔方向に平行に且つ実質上水平に往復動自在に装着された水平移動部材と、該水平移動手段に実質上鉛直な方向に昇降動自在に装着された昇降動部材とを含み、
該第一の保持手段は、該昇降動部材に装着され該昇降動部材から下方に垂下する作用位置と該昇降動部材から上方に延びる非作用位置とに選択的に位置せしめられる可動部材と、該可動部材に配設された一対の把持片とを含み、該一対の把持片は上下方向に間隔をおいて突出し且つ少なくとも一方は他方に対して近接及び離隔移動自在であって、両者間に被加工物を把持し、
該第二の保持手段は、該昇降動部材に装着され」るのに対し、
引用発明では、被加工物搬送手段がそのようなものではない点。

4 相違点についての検討
刊行物2には、上記2(2)に示したとおりの事項が記載されており、刊行物2に記載の事項における「ダイシング装置」は本願発明の「切削加工機」に相当し、以下同様に、「搬送手段5」は「共通可動支持構造体」に、「ハンド機構57」は「第一の保持手段」に、「吸着機構58」は「第二の保持手段」に、「垂直基板51」は「水平移動部材」に、「アーム板54」は「昇降動部材」に、それぞれ相当している。
そうすると、刊行物2には、切削加工機において、被加工物搬送手段が、共通可動支持構造体並びに該共通可動支持構造体に配設された第一の保持手段及び第二の保持手段を含み、該共通可動支持構造体は、該カセット載置域と該チャッキング域との離隔方向に平行に且つ実質上水平に往復動自在に装着された水平移動部材と、該水平移動手段に実質上鉛直な方向に昇降動自在に装着された昇降動部材とを含み、該第一の保持手段及び該第二の保持手段が該昇降動部材に装着されることが記載されているとすることができる。
引用発明と刊行物2に記載の事項は切削加工機における被加工物の搬送技術という共通の技術分野に属するものであり、引用発明に刊行物2に記載の事項を適用し、被加工物搬送手段が、共通可動支持構造体並びに該共通可動支持構造体に配設された第一の保持手段及び第二の保持手段を含み、該共通可動支持構造体は、該カセット載置域と該チャッキング域との離隔方向に平行に且つ実質上水平に往復動自在に装着された水平移動部材と、該水平移動手段に実質上鉛直な方向に昇降動自在に装着された昇降動部材とを含み、該第一の保持手段及び該第二の保持手段が該昇降動部材に装着されるものとすることに格別困難性はない。
ところで、物品を保持し搬送する搬送手段において、昇降動部材から下方に垂下する作用位置と該昇降動部材から上方に延びる非作用位置とに選択的に位置せしめられる可動部材に把持片を配設して、周囲と干渉しないようにすることは、例えば、原査定の備考欄で引用された特開昭58-77474号公報の第3頁右上欄第13?18行等に記載されているほか、実願平2-35257号(実開平3-126586号)のマイクロフィルムの第2?4図等に記載されているように従来周知の事項である。
また、ハンド機構(保持手段)が、一対の把持片を含み、該一対の把持片は上下方向に間隔をおいて突出し且つ少なくとも一方は他方に対して近接及び離隔移動自在であって、両者間に被加工物を把持するものは例示するまでもなく従来周知である。
してみると、引用発明に刊行物2に記載の事項及び従来周知の事項を採用して上記相違点に係る本願発明の特定事項とすることは当業者が容易になし得たことである。

本願発明の奏する作用効果についてみても、引用発明、刊行物2に記載の事項及び従来周知の事項から当業者が十分予測しうる範囲内のものであって、格別顕著なものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明、刊行物2に記載の事項及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、請求人は平成19年12月10日付け手続補正書において、概略、下記(ア)?(ウ)について主張している。
(ア)引用文献1には、チャック手段(68)とは別個に仮支持手段(64)を配設することについては全く記載も示唆もなされていない。引用文献1に開示されている切削加工機においては、仮支持手段が配設されておらず、切削され洗浄された後の被加工物は洗浄手段からチャック手段上に搬送される。チャック手段には切削加工の際に切削加工屑が付着し、従って洗浄後の被加工物がチャック手段上に搬送されることによって、被加工物が切削加工屑によって再汚染されてしまう。
(イ)引用文献2に開示されている切削加工機においては、第一の保持手段を構成するハンド機構(57)は、アーム板(54)から下方に垂下した状態に固定されており、従ってアーム板(54)を下降する時にハンド機構(57)を受け入れる空間を切削加工機のハウジング内に確保することが必要であり、この点からも切削加工機の嵩が徒に大きくなってしまう。
(ウ)参考例として引用されている特開昭58-77474号公報の開示は、本願発明の切削加工機とは技術分野が全く異なる工業用ロボットに関するものである。

しかしながら、(ア)の点については、刊行物1(引用文献1)には、上記2(1)オに摘記したとおり、チャック手段(チャックテーブル14)とは別個に仮支持手段(仮置き手段43)を配設することが記載されている。
また、(イ)及び(ウ)の点について、上記特開昭58-77474号公報は工業用ロボットに関するものであるが、ワークの搬送手段として引用発明及び刊行物2に記載の事項と共通するものであり、ワークの搬送手段における上記従来周知の事項を採用できないということはできない。さらに、切削加工機の嵩が徒に大きくならないとの効果も、上記従来周知の事項を採用することにより生じる効果にすぎない。
よって、請求人の上記主張は採用することができない。

5 むすび
以上のとおりであり、本願発明は、引用発明、刊行物2に記載の事項及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-31 
結審通知日 2008-11-04 
審決日 2008-11-17 
出願番号 特願2001-362084(P2001-362084)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 塩澤 正和  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 鈴木 孝幸
鈴木 敏史
発明の名称 切削加工機  
代理人 小野 尚純  
代理人 奥貫 佐知子  

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