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審決分類 審判 査定不服 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 B22F
管理番号 1190518
審判番号 不服2007-29353  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-29 
確定日 2009-01-05 
事件の表示 特願2004-149701「内部に少なくとも1本の螺旋状管路を有する押し出し方法により製造された焼結ブランク(半加工品)」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月 2日出願公開、特開2004-339610〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件審判に係る出願は、平成5年4月7日(パリ条約による優先権主張、1992年4月8日、同年12月15日、ドイツ国)に国際出願した特願平5-517955号の一部を平成16年5月19日に新たな特許出願としたもので、平成18年9月25日付け拒絶理由通知書が送付され、願書に添付した明細書又は図面についての平成19年4月3日付け手続補正書が提出されたものの、同年7月20日付けで拒絶査定されたものである。
そして、本件審判は、この拒絶査定を不服として請求されたもので、上記明細書又は図面についての平成19年11月13日付け手続補正書が提出され、その後、平成20年3月6日付け審尋が発送され、同年6月11日付け回答書が提出されたものである。

2.原査定
原査定の拒絶理由の1つは、以下のとおりのものと認める。

「この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第5項及び第6項に規定する要件を満たしていない。」

そして、上記要件を満たしていないとの根拠は、請求項に記載された「ねじられていない」との記載事項が不明確である、というものと認める。

3.当審の判断

3-1.特許請求の範囲の記載
願書に添付した明細書又は図面(以下、「本件明細書等」という。)の特許請求の範囲の記載は、以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】
可塑化された粉末冶金的な材料あるいはセラミック類の材料より成り、軸線を有し、内部に、少なくとも部分的に螺旋状に走る予め設定された断面を持つ管路を有した、押し出し方法によって製造された少なくとも1本の棒であって、前記軸線と直交する前記棒の断面外形が円形と異なり、矩形、多角形、又は楕円のものであり、かつ前記棒の前記材料がねじられていないことを特徴とするドリル用焼結ブランク。」

3-2.原査定の拒絶理由について

1)特許請求の範囲の記載によれば、請求項1に係る発明、すなわち、特許を受けようとする発明は、ドリル用焼結ブランクについてのもので、同項には、上記ドリル用焼結ブランクが、「可塑化された粉末冶金的な材料あるいはセラミック類の材料」と記載された該材料より成る、1本の棒であって、該棒の前記材料がねじられていない旨、要するに、棒の材料がねじられていない旨が、記載されている。
他方、「ねじる」とは、「棒状・糸状のものの両端をつかんで、互いに逆の方向にまわす。一部をつかんで無理のいくほどまわす。回転式のスイッチや栓をまわす。ひねる。」(広辞苑第五版、ねじる[捩じる・捻じる]の項、2065頁、1998年11月11日、株式会社岩波書店発行)との一般的な意味を持つもので、上述した、棒の材料がねじられていない旨の記載については、該一般的な意味を合わせ見れば、棒状や糸状といった形状に関する事項でない材料について、これがねじられていないとの記載は不明りょうな記載ながら、上記旨の記載は、棒がねじられていないことを意味し、このことを、棒の材料がねじられていないと記載しているとの、一応の解釈ができる。

2)そこで、更に、本件明細書等の発明の詳細な説明を詳しく見ていくことにする。
本件明細書等には、以下の記載が認められる。

a;「【0009】
本発明の目的は、押し出されたブランクに正確に設定されたコースを有するコアに形成されている螺旋状の冷却管路が、最大限の再現性、および組織質をもっているもののように発展させることであり、特に、ねじれなく押し出された柱状体(ブランク)を提供することである。」
b;「【0011】
この場合において、コアの管路は、原形を作る段階でノズルの管先の中にある材料の可塑的な変形によって形成される。この場合、材料が特にねじりの無いようにノズルの管先に入り、流れの全断面にわたってねじりの無いように前記の少なくとも1つのピンに向かって流れ、ノズルの管先を通る際、連続的な螺旋のピッチに相当する回転運動を与えられ、あるいは1つの流速に依存するように駆動できる懸架装置を通るように流れる。」
c;【0012】
本発明は、高粘性材料流の押し出しの際、製造すべき螺旋ピッチに相当するねじり運動を与え、それによって該材料を比較的に強く可塑的に変形させる理念からは根本的に離れている。それよりも本発明は、少なくとも1本のワイヤにピンの全長に加算される流れ-押し寄せる力によって回転運動を与え、その運動によって可塑的な材料がノズルの管先を通る際に少なくとも1つの螺旋状のコア管路が形成され、そしてこの管路のピッチは、予めねじれているピンのピッチと正確に一致する原理に基づく。本発明による柱状体を製造するために適用される方法は、栓抜き効果の逆転した効果に基づく。この場合、前記のピンは栓抜きの螺旋状の棒、そして可塑的な押し出し材料が栓とたとえることができる。」

3)これらの記載a?cが、特許を受けようとする発明であるドリル用焼結ブランクについて記載しようとするものであることは明らかで、これらの記載によれば、ドリル用焼結ブランクは、材料を押し出す工程を経て製造されるものであること、そして、その工程、すなわち、押出工程において、その材料の流れにねじりなるものが与えられないことが記載されており、また、発明の詳細な説明の他の記載を見ても、1本の棒であるドリル用焼結ブランク、すなわち、棒という形状のものが、ねじられているか否かを記載している記載箇所は見当たらない。
してみると、発明の詳細な説明において、特許を受けようとする発明であるドリル用焼結ブランクについては、その構成として、棒がねじられていないことを記載している訳ではなく、少なくとも、上記ドリル用焼結ブランクの製造過程において、ドリル用焼結ブランクを形作る材料に流れがあり、その際に、ねじりなるものが与えられないことを記載しているということができる。
一方、請求項1には、先に「1)」で述べたように、棒の材料がねじられていない旨が記載されており、不明りょうな記載ながら、「ねじる」の一般的な意味を合わせ見れば、上記旨の記載は、棒がねじられていないことを意味しているとの一応の解釈ができるものであるが、発明の詳細な説明をみると、ねじられていないと表現されている対象は、棒ではなく、文字どおり「材料」であることが窺え、このことは、上述した一応の解釈と矛盾するもので、そもそも、上記旨の記載は、上述したように不明りょうなものであることを勘案すると、本件明細書等の記載全体において、上記旨の記載は、やはり、不明確な記載といわざるを得ず、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載した項に区分してあることに適合するものとはいえない。

4)この点に関し、請求人は、本件に係る審判請求書及び平成20年6月11日付け回答書(以下、「本件回答書」という。)において、要するに、棒の材料がねじられていない旨の記載は、本件明細書等の発明の詳細な説明における段落【0012】から明確であると主張するが、特許請求の範囲の記載が不明確であることに変わりはなく、当を得た主張ではない。
なお、この点に関し、本件回答書において、上記旨の記載を、押し出し時に棒の材料がねじられていない旨の記載とする補正の用意があるとの回答が為されている。

5)してみると、この出願は、特許請求の範囲の記載が、平成6年改正前の特許法第36条第5項及び第6項に規定する要件を満たしておらず、原査定の拒絶理由は、妥当である。

6)また、本件審判においては、先に「1」で述べた経緯にあるように、平成20年3月6日付け審尋が発送され、本件回答書が提出されている。
上記審尋は、以下のとおりのものである。なお、ここにある「a」として記載の釈明事項を「釈明事項a」といい、他のbからeについても同様とする。

「請求項1の記載に関し、以下の事項について釈明して下さい。
a.「粉末冶金的な材料」とありますが、「粉末冶金的な」との記載で、どのような材料を記載しようとしているのか?
b.「可塑化された粉末冶金的な材料あるいはセラミック類の材料より成り、」とありますが、「可塑化された」は、「セラミック類の材料」を修飾する記載なのか?
また、そうである場合、可塑化されたセラミック類の材料とは、どのような組成を持つセラミックなのか?或いは、従来技術(原査定で引用された引用文献1又は2)にあるような、粉粒体を有する可塑組成物材料と関係があるのか?
c.「前記軸線と直交する前記棒の断面外形が円形と異なり、矩形、多角形、又は楕円のものであり、」とありますが、「矩形」は、当初明細書のいずれに記載があったのか?
また、断面外形を、矩形、多角形、又は楕円としたことの、ドリル用焼結ブランクと云う物品における技術的意義は何なのか?
d.「棒の前記材料がねじられていない」とありますが、ドリル用焼結ブランクという物品に係る本件発明の、形状や構造等、どのような構成を表現しているのか?形の概念のない材料につき、「材料がねじられていない」との表現は、どのような構成を表現しているのか?
これらの点に関し、審判請求書の主張は、要するに、押し出し時において、材料がねじられていないとのようですが、主張が明確ではないので、詳しく釈明して下さい。なお、審判請求書においては、「材料がねじられていない」との記載は、ドリル用焼結ブランクの製造過程において、材料にねじり(回転?)運動を生じさせていないことを表現していると主張するようにも解せますが、少なくとも、請求項1には、そのような製造過程に関する事項として記載されていないし、そもそも、該事項は、物品に係る発明の構成ではない、或いは該構成を間接的に表現するものでもないと考えますので、これらの点についても釈明して下さい。
e.「ドリル用焼結ブランク」とあり、この記載によれば、本件発明は、焼結されたものですが、その場合、先の「a」及び「b」の釈明事項とも関係しますが、焼結されたものにおいても、可塑化された材料より成っているのでしょうか?
なお、上記dについては、原査定の根拠としているので、十分に釈明して下さい。」

そして、これら釈明事項のうち、釈明事項dを含む幾つかが、特許請求の範囲の記載が不明確であることに起因して釈明を求めるものであることは明らかで、そして、本件回答書において、釈明事項dについては、先に「4)」で述べたように、補正の用意のあることが表明されているものの、他の釈明事項については、このような表明はなく、明確であることを主張するに止まる回答となっている。そして、このような回答振りを勘案し、しかも、原査定の拒絶理由が、先に「5)」で述べたように、妥当である以上、審理手続を更に進めることなく、本件審判の請求は成り立たないと、結論せざるを得ないものである。

7)なお、ここでは、釈明事項aに関連して簡単に触れておく。
特許請求の範囲には、「粉末冶金的な材料」との記載がある。その一方で、「粉末冶金」とは、「金属粉末をプレスし、結合し、焼結して成形品を作る方法」(マグローヒル科学技術用語大辞典改訂第3版、粉末冶金の項、1650頁、2001年5月31日、株式会社日刊工業新聞社発行)であり、また、「的」とは、「まと。めあて:あきらかなこと。間違いのないこと。:(中国語の「的」(助詞「の」にあたる)をそのまま音読した語) 名詞に添えて、その性質を帯びる、その状態をなす意を表す。:人名や人を表す語などに付いて、親しみや軽蔑の意を添える。」(前出の広辞苑第五版)とあるような意味であるが、これらのことを勘案しても、「粉末冶金的な材料」がどのような材料まで含むのか、その技術的内容を明確に理解することはできない。
また、本件明細書等には、上記技術的内容を説明する記載は見当たらない。
してみると、特許請求の範囲の「粉末冶金的な材料」との記載は不明確といわざるを得ないものである。

4.結び
原査定は、妥当である。
したがって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-28 
結審通知日 2008-07-29 
審決日 2008-08-21 
出願番号 特願2004-149701(P2004-149701)
審決分類 P 1 8・ 534- Z (B22F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河口 展明小川 武  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 山本 一正
坂本 薫昭
発明の名称 内部に少なくとも1本の螺旋状管路を有する押し出し方法により製造された焼結ブランク(半加工品)  
代理人 志賀 正武  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  
代理人 渡邊 隆  

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