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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01C
管理番号 1191105
審判番号 不服2007-17529  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-22 
確定日 2009-01-16 
事件の表示 特願2006-213941「原動機」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 2月21日出願公開、特開2008- 38745〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成18年8月4日に出願されたものであって、平成18年9月25日付け及び平成18年10月30日付けで手続補正書が提出され、平成18年11月7日付けで拒絶理由が通知され、平成19年1月15日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成19年5月11日付けで拒絶査定がなされ、平成19年6月22日付けで同拒絶査定に対する審判請求がなされ、その後、平成19年10月19日付けで手続補正書(審判請求理由の補充)が提出されたものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る発明は、平成18年9月25日付け及び平成19年1月15日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書並びに平成18年9月25日付けの手続補正書により補正された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「密閉に形成されるハウジングと、該ハウジング内に断面円形に形成される内室と、該内室にロータ軸を中心として回転可能に設けられるロータとからなり、上記ロータの回転の際上記内室が吸入膨張行程を担う1次作動室、膨張排出行程を担う2次作動室及び大気圧保持行程を担う3次作動室に区画・形成され、上記ハウジングの1次作動室に給気口を設けるとともに2次作動室に排気口を開口し、上記給気口より高圧状態の炭酸ガスが上記1次作動室に供給され、該炭酸ガスの常圧になるときの体積膨張による力により上記ロータが一方向に回転されることを特徴とする原動機。」

3.当審の判断
(1)引用例
1)特開2005-113901号公報(以下、「引用例1」という。)
2)特開2002-339858号公報(以下、「引用例2」という。)
3)特開昭56-68477号公報(以下、「引用例3」という。)

(2)引用例の記載事項
1)引用例1の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願出願前に頒布された刊行物である上記引用例1には、次の事項が記載されている。

ア.「【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気のかわりにたくわえられた圧縮空気ボンベより圧縮空気を吹き出させ、その吹き出す空気の力によりロータを回し発電器を回し発電をする装置である。…(中略)…
【発明の詳細な説明】
この発明は、電気のかわりにたくわえられた圧縮空気ボンベ(1)より出す圧縮空気の力でローター(3)を回し、発電器(4)を回して発電する発電、蓄電装置である。
従来圧縮空気は、ダイビング等や洗浄、シリンダーを動かす直線の縦、横方向の動力としての利用だけで円の回転運動はなかった。
電地(「電池」の誤記と認める。)は化学反応や燃料を使用したものだけであった。
本発明は、クリーンなエネルギーである自然界にいくらでもある空気を圧縮し圧縮空気としてエネルギーや電気をたくわえて蓄電地(「蓄電池」の誤記と認める。)として利用し、圧縮空気を開閉及び出力調節弁(2)で調節して吹き出させてその吹き出す力によりローター(3)を回転させ回転エネルギーとして効率よく利用し発電器(4)を動かし発電し電気を供給する。圧縮空気を利用しての発電は今までになかった。…(中略)…本発明は、安価にて製作でき、現代の環境問題の解決につながり、風力発電等のクリーンエネルギーと併用するとなお効果的であり非常電力としても使える。以下それを説明すると
(ア)圧縮空気ボンベ(1)より吹き出す圧縮空気を開閉及び出力調節弁(2)で調節しその吹き出す空気の力でローター(3)を回しその回転力により発電器(4)を回し発電する。
(イ)発電をし余った電力でコンプレッサー(5)を動かし圧縮空気の補充もできる。
(ウ)他の外部電力や動力でコンプレッサー(5)を動かし圧縮空気を補充できる。
(エ)外部圧縮空気注入口弁(6)より外部のボンベや外部のコンプレッサーより圧縮空気の補充ができる。
(オ)電力出力口(11)より電力を供給する。
(カ)圧縮空気ボンベ(1)は、開閉及び出力調節弁(2)の部分で取りはずせる。
(キ)コンプレッサー(5)は、開閉弁(7)の部分で取りはずせる。
(ク)圧縮空気ボンベ(1)をカセット式にし圧縮空気ボンベ(1)を交換のみでの発電も可能である。
(ケ)圧力弁(8)により圧縮空気の圧力が上がり過ぎた時は排出する。
(コ)圧力弁(8)開閉弁(7)コンプレッサー(5)、開閉及び出力調節弁(2)、電力出力や電力入力等運転調節、始動、停止等は、コンピューターなどにより調節コントロールできる。
(サ)ローター(3)は効率がよければ、羽根形など変形してもよい。
(シ)ローター(3)と発電器(4)の間に歯車やベルト等を使用し発電能力の調整もできる。
(ス)開閉及び出力調節弁(2)を分岐したり排気口(2)にローター(3)と発電器(4)を必要個数取りつけ多重発電もできる。圧縮空気ボンベ(1)もいくつかつけられる。
(セ)ローター(3)の中に発電器(4)を組み合わせることもできる。
(ソ)回転エネルギーを動力や他のエネルギーとしても利用できる。
(タ)基本的機能が同じであれば分離設置や形状は変えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の正面図である。
【図2】本発明の側面図である。
【符号の説明】
(1)は圧縮空気ボンベ(2)は開閉及び出力調節弁(3)はローター(4)は発電器(5)はコンプレッサー(6)は外部圧縮空気注入口弁(7)は開閉弁(8)は圧力弁(9)は排気口(10)は電力入力口(11)は電力出力口」(公報第2ページ第1行ないし第3ページ第6行)

イ.上記ア.及び図面の記載から、引用例1に記載された装置は、ローター(3)の回転により動力を得る原動機を備えていることが分かり、また、ローター(3)を回転させるための構成として、開閉及び出力調整弁(2)と排気口(9)を有する筐体及び該筐体内に断面円形に形成されるローター(3)を収容する室を備えるとともに、ローター(3)はローター(3)の軸を中心として回転可能であることが分かる。

ウ.上記ア.、イ.及び図面の記載から、引用例1に記載された原動機において、開閉及び出力調整弁(2)から筺体内に導入した圧縮空気は、排気口(9)以外から漏洩することはないから、筐体は密閉に形成されているといえる。

エ.上記ア.ないしウ.及び図面の記載から、ローター(3)は四角状の形状から成り、これにより、筺体のローター(3)を収容する室が吸入行程を担う室と排出行程を担う室と大気圧保持行程を担う室とに区画・形成されていることが分かる。また、筺体の吸入行程を担う室に給気口が設けられているとともに、排出行程を担う室に排気口(9)が開口されていることが分かる。

オ.上記ア.ないしエ.及び図面の記載から、給気口より圧縮空気が吸入行程を担う室に供給され、圧縮空気の力によりローター(3)が一方向に回転されることが分かる。

上記ア.ないしオ.及び各図の記載によれば、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる。

「密閉に形成される筺体と、該筺体内に断面円形に形成される室と、該室にローター(3)の軸を中心として回転可能に設けられるローター(3)とからなり、上記ローター(3)の回転の際上記室が吸入行程を担う室、排出行程を担う室及び大気圧保持行程を担う室に区画・形成され、上記筺体の吸入行程を担う室に給気口を設けるとともに排出行程を担う室に排気口(9)を開口し、上記給気口より圧縮空気が吸入行程を担う室に供給され、圧縮空気の力によりローター(3)が一方向に回転される原動機。」(以下、「引用例1記載の発明」という。)

2)引用例2の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願出願前に頒布された刊行物である上記引用例2には、次の事項が記載されている。(なお、下線は引用箇所等を特に明示するために当審で付した。)

カ.「【0012】本発明は、上記発明技術の中、気液熱媒の断熱状態変化もしくは、系外からの熱の授受による状態変化における熱、圧、体積変化を有効仕事エネルギー(エクセルギー)として取り出す改良法を検討した結果、到達した発明に関するものである。
【0013】即ち、本発明は、所定温度(To)と圧力(Po)を有する気体及び/又は液体からなる熱媒を、断熱状態もしくは、系外から熱の授受を行いながら膨張又は収縮させ、その際生じる体積と圧力の変化を運動又は電気エネルギー(エクセルギー)として取り出すことを可能とする熱圧動力変換システムにおいて、両端がシールされ熱媒導入部と排出部をもつ外部シリンダーと該両端又は一端に公転軸をとり出し可能とした内部フランジに取り付けられた内部シリンダーと両シリンダーの中間に実質的に気密接触かつ摺動可能な状態で介在する可動性らせん状連続隔壁から構成され、外部シリンダー内壁に内部シリンダーが接触しながら遊星回転運動し、公転することにより、シリンダー長手方向に重層する隔壁と内外シリンダーで形成される空間が、連続的に変化するようになし、シリンダー一端の導入部から熱媒を取り込み、他端に排出することによって、公転回転軸から正または負のエクセルギーを取り出すことを特徴とする新規熱圧動力変換システムを第1の要旨とする。…(後略)…」(公報段落【0012】及び【0013】)

キ.「【0020】熱媒には、本発明のシステムが使用される系によって規定されるが、熱源温度を選べば、炭酸ガス、水、アンモニア、水・アンモニア混合系、炭化水素ガス、フロン系ガスその他が活用できることは言うまでもない。」(公報段落【0020】)

ク.「【0026】図2は本発明の装置適用システム例の概略図である。同図において、液状物の気化、高圧蒸気の断熱膨張低圧化、定積加熱、断熱圧縮などの例を表示している。ここで、系外熱源は、大気、海水、河川などの自然環境物質であり、この温度で常態となる高圧炭酸ガスを熱媒として設定している。」(公報段落【0026】)

ケ.上記カ.ないしク.及び図面の記載から、引用例2の新規熱圧動力変換システムは、シリンダーの一端の導入部から熱媒を取り込み、膨張させ、その際生じる体積と圧力の変化を運動として取り出すことが分かり、また、熱媒として高圧炭酸ガスを選択できることが分かる。

上記カ.ないしケ.及び各図の記載によれば、引用例2には、次の発明が記載されていると認められる。

「導入部を設けるとともに排出部を開口し、上記導入部より高圧炭酸ガスが内外シリンダーで形成される空間に取り込まれ、該高圧炭酸ガスの膨張による力により内部シリンダーが遊星回転運動される新規熱圧動力変換システム。」(以下、「引用例2記載の発明」という。)

3)引用例3の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願出願前に頒布された刊行物である上記引用例3には、次の事項が記載されている。(なお、下線は引用箇所等を特に明示するために当審で付した。)

コ.「第1図に示すように、シリンダ1にピストン2を内蔵し、ボンベ(図示せず)等の加圧気体源から送られるピストン作動用加圧気体(例えば50気圧程度のCO_(2))をシリンダ1内に供給する給気口3及びそれに続く給気弁4をシリンダ1の上端部に有し、シリンダ1と一体に形成されたクランクケース5の中心部に位置する回転軸6のクランク7とピストン2とを連接棒8により連結したものがある。このエンジンのピストン2は、その上端面の中心部から上向きに突出するピン9を有し、ピストン2の上昇行程の際、ピン9が給気弁4を押し上げて開く。引き続くピストン2の下降行程によつてピン9が給気弁4の位置から逃げ去ると、加圧気体の圧力により再び給気弁4が閉じる。尚、シリンダ1の側壁に排気口11が開設されている。
上記構成の玩具および模型用エンジンは、次のように作動する。先ず、第1図の通り、クランク7が上死点の手前(回転角θ_(1))の位置に至ると、ピン9の先端が給気弁4に到達し、ピストン2の上昇につれて給気弁4を押し開き、CO_(2)の給気が始まる。このとき、ピストン2は、慣性付与手段としてのフライホイルの慣性力によつて給気圧の作用に打ち勝ち、上死点に至り、引き続き下降行程に移る。クランク7が上死点からの回転角θ_(2)の位置に至ると、給気弁4が再び閉じ、給気行程が終了する。この後、シリンダ1内に供給されたCO_(2)の膨張によるピストン2の下降行程が進行し、ピストン2の上端が排気口11に到達し排気行程となる。」(公報第1ページ右下欄第7行?第2ページ右上欄第6行)

上記コ.及び各図の記載によれば、引用例3には、次の発明が記載されていると認められる。

「給気口3を設けるとともに排気口11を開口し、上記給気口3より50気圧程度のCO_(2)がシリンダ1とピストン2で形成される空間に取り込まれ、該50気圧程度のCO_(2)の膨張による力によりピストン2が下降するエンジン。」(以下、「引用例3記載の発明」という。)

(2)対比
本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、機能又は構成からみて、引用例1記載の発明の「筺体」が本願発明の「ハウジング」に相当する。同様に、引用例1記載の発明の「該筺体内に断面円形に形成される室」が本願発明の「該ハウジング内に断面円形に形成される内室」に、「ローター(3)」が「ロータ」に、「ローター(3)の軸」が「ロータ軸」に、「給気口」が「給気口」に、「排気口(9)」が「排気口」に、それぞれ相当する。
また、引用例1記載の発明の「吸入行程を担う室」が、「吸入行程を担う作動室」という限りにおいて、本願発明の「吸入膨張行程を担う1次作動室」又は「1次作動室」に、引用例1記載の発明の「排出行程を担う室」が、「排出行程を担う作動室」という限りにおいて、本願発明の「膨張排出行程を担う2次作動室」又は「2次作動室」に、「大気圧保持行程を担う室」は、「大気圧保持行程を担う作動室]という限りにおいて、本願発明の「大気圧保持行程を担う3次作動室」に相当する。
また、引用例1記載の発明の「上記給気口より圧縮空気が吸入行程を担う室に供給され、圧縮空気の力によりローター(3)が一方向に回転される」は、「上記給気口よりガスが上記吸入行程を担う作動室に供給され、該ガスの力により上記ロータが一方向に回転される」という限りにおいて、本願発明の「上記給気口より高圧状態の炭酸ガスが上記1次作動室に供給され、該炭酸ガスの常圧になるときの体積膨張による力により上記ロータが一方向に回転される」に相当する。

してみると、両者は、
「密閉に形成されるハウジングと、該ハウジング内に断面円形に形成される内室と、該内室にロータ軸を中心として回転可能に設けられるロータとからなり、上記ロータの回転の際上記内室が吸入行程を担う作動室、排出行程を担う作動室及び大気圧保持行程を担う作動室に区画・形成され、上記ハウジングの吸入行程を担う作動室に給気口を設けるとともに排出行程を担う作動室に排気口を開口し、上記給気口よりガスが上記吸入行程を担う作動室に供給され、該ガスの力により上記ロータが一方向に回転される原動機。」の点で一致し、以下の1)及び2)の点で相違する。

・相違点
1)内室に各作動室を区画・形成するロータに関して、本願発明では、「吸入膨張行程を担う1次作動室、膨張排出行程を担う2次作動室及び大気圧保持行程を担う3次作動室」なる3つの作動室を区画・形成するもの(すなわち、三角状の形状)であるのに対して、引用例1記載の発明では、「吸入行程を担う室、排出行程を担う室及び大気圧保持行程を担う室」を含む4つの作動室を区画・形成するもの(四角状の形状)である点(以下、「相違点1」という。)。

2)ガス、回転力の発生原理及び各作動室に関して、本願発明では、「高圧状態の炭酸ガス」を用い、「炭酸ガスの常圧になるときの体積膨張による力」により回転力を発生する原理を用いるものであり、これに伴い、1次作動室及び2次作動室は「吸入膨張行程」及び「膨張排出行程」と特定されているのに対して、引用例1記載の発明では、「圧縮空気」を用い、「圧縮空気の力」により回転力を発生する原理を用いるものであり、これに伴い、作動室は、「吸入行程を担う室」及び「排出行程を担う室」と特定される点(以下、「相違点2」という。)。

(3)判断
上記相違点1及び相違点2について検討する。
1)相違点1について
ガスの力によりロータが一方向に回転される原動機である引用例1記載の発明に接した当業者であれば、同様の動作を可能とするロータの形状については、種々想定し得るところであるから、引用例1記載の発明において、4つの作動室を形成するロータに換えて、3つの作動室を形成するロータとすることは、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。よって、当業者であれば、引用例1記載の発明に基いて、上記相違点1に係る本願発明のように構成することは、容易になし得ることである。

2)相違点2について
本願発明と引用例2記載の発明とを対比すると、機能又は構成からみて、引用例2記載の発明の「導入部」が本願発明の「給気口」に相当する。同様に、引用例2記載の発明の「排出部」が本願発明の「排気口」に、「高圧炭酸ガス」が「高圧状態の炭酸ガス」に、それぞれ相当する。また、引用例2記載の発明の「高圧炭酸ガスが内外シリンダーで形成される空間に取り込まれ、該高圧炭酸ガスの膨張による力により内部シリンダーが遊星回転運動される新規熱圧動力変換システム」は、「高圧状態の炭酸ガスが作動室に供給され、該炭酸ガスの常圧になるときの体積膨張による力によりロータが一方向に回転される原動機」という限りにおいて、本願発明の「高圧状態の炭酸ガスが上記1次作動室に供給され、該炭酸ガスの常圧になるときの体積膨張による力により上記ロータが一方向に回転される原動機」に相当する。してみると、引用例2には、本願発明に合わせて書くと、「給気口を設けるとともに排気口を開口し、給気口より高圧状態の炭酸ガスが作動室に供給され、該炭酸ガスの常圧になるときの体積膨張による力により上記ロータが一方向に回転される原動機。」(以下、「引用例2記載の技術事項」という。)が記載されているといえる。
また、本願発明と引用例3記載の発明とを対比すると、機能又は構成からみて、引用例3記載の発明の「給気口3」が本願発明の「給気口」に相当する。同様に、引用例3記載の発明の「排気口11」が本願発明の「排気口」に、「50気圧程度のCO_(2)」が「高圧状態の炭酸ガス」に、それぞれ相当する。また、引用例3記載の発明の「50気圧程度のCO_(2)がシリンダ1とピストン2で形成される空間に取り込まれ、該50気圧程度のCO_(2)の膨張による力によりピストン2が下降するエンジン」は、「高圧状態の炭酸ガスが作動室に供給され、該炭酸ガスの常圧になるときの体積膨張による力により被駆動体が駆動される原動機」という限りにおいて、本願発明の「高圧状態の炭酸ガスが上記1次作動室に供給され、該炭酸ガスの常圧になるときの体積膨張による力により上記ロータが一方向に回転される原動機」に相当する。してみると、引用例3には、本願発明に合わせて書くと、「給気口を設けるとともに排気口を開口し、給気口より高圧状態の炭酸ガスが作動室に供給され、該炭酸ガスの常圧になるときの体積膨張による力により被駆動体が駆動される原動機。」(以下、「引用例3記載の技術事項」という。)が記載されているといえる。
このように、引用例2記載の技術事項又は引用例3記載の技術事項からみて、いずれからも「給気口を設けるとともに排気口を開口し、給気口より高圧状態の炭酸ガスが作動室に供給され、該炭酸ガスの常圧になるときの体積膨張による力により被駆動体が駆動される原動機。」なる技術事項を把握することができ、かかる技術事項は、本願出願前に周知の技術(以下、「周知技術」という。)といえる。なお、例えば、特開昭49-109748号公報(特に、第1図ないし第4図のスペース(A)を参照されたい。)に記載されるように、ロータの回転の際内室が吸入膨張行程を担う作動室、膨張排出行程を担う作動室に区画・形成され、ガスの体積膨張による力によりロータが一方向に回転される原動機も周知の技術である。
そして、引用例1記載の発明と上記周知技術は、「給気口を設けるとともに排気口を開口し、給気口よりガスが作動室に供給され、該ガスの力により被駆動体が駆動される原動機」である点で共通するから、当業者であれば、引用例1記載の発明において、ガスとして圧縮空気に換えて高圧状態の炭酸ガスを用い、炭酸ガスの常圧になるときの体積膨張による力によりロータを回転させる原理を用いることとし、これに伴い、1次作動室及び2次作動室に相当する作動室について、それぞれ「吸入膨張行程」及び「膨張排出行程」と特定すること、すなわち、上記相違点2に係る本願発明と同様の構成とすることは、当業者にとって格別の創作力を要することもなく、なし得る程度のことにすぎない。

また、本願発明を全体として検討しても、引用例1記載の発明及び周知技術から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-05 
結審通知日 2008-11-11 
審決日 2008-11-25 
出願番号 特願2006-213941(P2006-213941)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 泰  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 森藤 淳志
早野 公惠
発明の名称 原動機  
代理人 浅野 勝美  

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