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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04F |
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管理番号 | 1191126 |
審判番号 | 不服2007-4430 |
総通号数 | 111 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-02-13 |
確定日 | 2009-01-13 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第228651号「石材調化粧面の形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 3月 5日出願公開、特開平11- 62163〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【1】手続きの経緯 本願は、平成9年8月25日の出願であって、平成19年1月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月13日に審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。 【2】本願発明 1.本願発明 本願の請求項1に係る発明は、平成19年2月13日付けの手続補正により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。 「種々の方法を用いて石材調の下地層を形成する工程と、得た下地層の上へ透明ないし半透明塗料を2層以上に塗装する工程とを有し、この塗装表面が石材調の色むらを有するようにしたことを特徴とする石材調化粧面の形成方法。」 (以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。) 2.刊行物に記載された発明 (1)刊行物1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特開昭58-15092号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。 (1a)「1.素材にまたは素材に下塗を行なつた後、着色雲母と樹脂液または塗料を重量比で1:99?40:60に混合した着色雲母入り塗料をスプレーまたはローラーで塗装して石造模様層を形成することを特徴とする石造模様仕上方法。 2.(省略) 3.石造模様層上に上塗としてクリアー塗料を塗布する特許請求の範囲第1項または第2項記載の石造模様仕上方法。」(特許請求の範囲、請求項1?3) (1b)「石造模様は着色雲母と樹脂液または塗料とを混合した塗材の塗装によつて作り出されるが、塗装後、要すればローラーその他の押圧手段で塗面を押え塗面の凸凹をならし、さらにその上に各種光沢に調合したクリアー塗料や撥水剤を塗布してもよい。そうすることによつて石造模様層の外観や耐久性が一段と向上する。」(2頁右上欄5?11行) (1c)「なお着色雲母と樹脂液または塗料との混合に際して、硅砂、通常の雲母、あるいはプラスチツク着色材などの他の骨材を添加することもできる。しかし、その場合は着色雲母を全骨材中20%(重量%、以下同様)以上含んでいることが必要であり、とくに着色雲母を40%以上含んでいることが望ましい。」(2頁左下欄19行?右下欄5行) (1d)「着色雲母入り塗材の塗装はスプレーまたはローラーを用いて行なわれる。本発明の特徴の一つは、このようにスプレーやローラーで塗装できるという点にあり、それによつて御影石、テラゾー石などの高級石造模様仕上が能率的に行なえる。塗装量としては300?3,000l/m^(2)、とくに1,000?2,500l/m^(2)にするのが好ましく、また素材に下塗を行なう場合には、下塗塗材が充分に乾燥してから塗装を行なうのが好ましい。 この着色雲母入り塗材の塗装により、石造模様が作り出されるが、該塗装後、適宜の押圧手段により塗面を押えて塗面の凸凹をならしておくことが好ましい。その際の押圧手段としては、通常ローラーが使用され、ローラーに塗料用シンナーあるいは水をつけ、ローラーを塗面に軽く押しつけながら転動させる。また塗面に圧縮空気を吹き付けることによって塗面の凸凹をならしてもよい。 また着色雲母入り塗材の塗装により形成される石造模様層の上塗としてクリアー塗料や撥水剤を塗布すると、石造模様層の外観や耐久性が向上する・・・」(3頁左上欄11行?右上欄11行) そして、上記記載事項(1a)?(1d)からみて、刊行物1には、以下の発明が記載されているものと認められる。 「スプレーまたはローラを用いて石造模様層を形成する工程と、形成された石造模様層の上へクリアー塗料を塗布する工程とを有する石材模様仕上方法。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。) 3.対比・判断 本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「スプレーまたはローラを用いて石造模様層を形成する工程」、「形成された石造模様層の上へクリアー塗料を塗布する工程」及び「石材模様仕上方法」は、それぞれ、本願発明の「種々の方法を用いて石材調の下地層を形成する工程」、「得た下地層の上へ透明ないし半透明塗料を塗装する工程」及び「石材調化粧面の形成方法」に相当しており、両者は、 「種々の方法を用いて石材調の下地層を形成する工程と、得た下地層の上へ透明ないし半透明塗料を塗装する工程とを有する石材調化粧面の形成方法。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 (相違点) 本願発明は、透明ないし半透明塗料が2層以上に塗装されており、塗装表面が石材調の色むらを有するようにしているのに対し、刊行物1記載の発明は、透明塗料が何層塗装されているか不明であり、塗装表面が色むらを有するか否かについても明かではない点。 上記相違点について検討する。 透明ないし半透明塗料を塗装するにあたり、2層以上塗装することは、例えば、原査定時に周知例として提示された、特開平2-26670号公報(2頁右下欄参照)に記載されているように、周知の技術であり、該周知の技術を刊行物1記載の発明の「下地層の上へ透明ないし半透明塗料を塗装する工程」に採用することは当業者が容易になし得たことである。 そして、本願発明の「塗装表面が石材調の色むらを有するよう」という構成について検討するために、本願明細書の発明の詳細な説明を見ると、その段落【0009】に「この発明は、従来例の上記欠点を解消するため、透明ないし半透明塗料を多層に塗装した際に発生する塗装表面の色むらが、石材調の下地層上においては自然な感じの石材調化粧面となることを利用して石材調化粧面を形成するようにしたもので、天然の砂岩等に近い石材調化粧面が得られる石材調化粧面の形成方法を提供しようとするものである。」と、段落【0027】?【0028】に「上記透明ないし半透明の塗料は、通常の手法で下地層2表面へスプレー式に吹き付け、あるいは刷毛塗りやスポンジ等を用いた塗布等により、できるだけ薄く塗布される。ちなみに、スポンジ等を透明ないし半透明の塗料に浸し、ある程度搾って拭く程度、いいかえると軽く濡らす程度でよい。その際、刷毛等の動きに応じて下地層2上に形成される塗膜の厚さや、部分的に密度にばらつきのある下地層2表面の塗料のノリの良さ、水分の吸収速度の差によって生じる塗料の濃度差等に応じて濃淡が現れ、いわゆる色むら6となる。 本発明では、この色むらを利用するものである。すなわち、石材の粉状物あるいは粒状物をベースとして形成された下地層2上に、このように透明ないし半透明の塗料を塗装することにより、上記色むら6が下地層2の模様を生かしつつ、自然な感じの石材と同様の濃淡となって現れるのである。」と記載されている。 上記記載から考えると、本願発明は、「塗装表面が石材調の色むらを有する」ための特別な工程を備えるものではなく、上記「石材調の色むら」は、透明あるいは半透明の塗料を多層に塗装することによって、あるいは、石材調の下地層の状態のばらつき、透明塗膜層の状態のばらつきによって自然に生じる状態に過ぎない。 そうすると、刊行物1記載の発明の「下地層の上へ透明ないし半透明塗料を塗装する工程」に上記「2層以上塗装する」という周知の技術を採用することが当業者にとって容易になし得たことは上記のとおりであるところ、「石材調の色むら」は該採用によって当然に生じる構成に過ぎないということができる。 また、刊行物1記載の発明の「石材調の下地層」は、着色雲母と樹脂液または塗料とを混合した塗材であり、上記記載事項(1c)に、さらに硅砂、通常の雲母、あるいはプラスチック着色材などの他の骨材を添加することができる旨記載されており、たとえ、上記記載事項(1b)にあるように、ローラ等によって塗面の凸凹をならしたとしても完全な平滑状態となるものではなく、数種の骨材を含んだ塗材によって形成される石材調の下地層が部分的に密度にばらつきのある下地層として形成されることは明かであって、また、クリアー塗料の塗膜厚が完全な均一になるとは考えがたく、多少なりとも塗膜厚にばらつきが生じることは技術的に明かである。 してみると、石材調の下地層の状態のばらつきや透明塗膜層の状態のばらつきによって自然と生じている本願発明における「石材調の色むら」は、その構成から石材調の下地層の状態のばらつきや透明塗膜層の状態のばらつきを有することが明らかである刊行物1記載の発明においても、当然生じているということができる。 以上のことから考えると、上記「塗装表面が石材調の色むらを有する」という構成は、刊行物1記載の発明自体において、もしくは周知技術を採用することによって当然生じる構成であって、上記相違点に係る本願発明の構成は、刊行物1記載の発明および上記周知技術から、当業者が容易になし得たものである。 そして、本願発明全体の効果も刊行物1記載の発明および周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものということができない。 3.むすび 以上より、本願発明は、刊行物1記載の発明および周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-11-13 |
結審通知日 | 2008-11-14 |
審決日 | 2008-12-01 |
出願番号 | 特願平9-228651 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E04F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 油原 博 |
特許庁審判長 |
石川 好文 |
特許庁審判官 |
宮崎 恭 草野 顕子 |
発明の名称 | 石材調化粧面の形成方法 |
代理人 | 土橋 博司 |