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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04D
管理番号 1191187
審判番号 不服2006-28135  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-12-14 
確定日 2009-01-15 
事件の表示 平成 8年特許願第203717号「屋根構造体」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 2月17日出願公開、特開平10- 46768〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願の手続きの経緯の概要は以下のとおりである。
平成 8年 8月 1日 出願
平成17年 4月27日 拒絶理由(最初)
平成17年 7月11日 手続補正
平成18年 2月24日 拒絶理由(最後)
平成18年 5月 8日 手続補正
平成18年11月 7日 平成18年5月8日付けの手続補正の補正の却下
平成18年11月 7日 拒絶査定
平成18年12月14日 審判請求
平成19年 1月15日 手続補正

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成19年 1月15日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正
本件補正は,特許請求の範囲の請求項1について,補正前の請求項1及び4(平成17年7月11日付けの手続補正書参照。)に,
「【請求項1】屋根下地材の上に複数並べて配置される屋根材であって、
中央部に形成された皿状部と、この皿状部の一側に連続して形成された雄型係合部と、前記皿状部の他側に連続して形成され隣り合う屋根材の雄型係合部に嵌合する雌型係合部とを有する屋根材本体を一体形成し、この屋根材本体の皿状部を太陽電池パネルの収納部とし、前記雄型係合部は、前記太陽電池パネル側に開口された第1折り返し片を備え、前記雌型係合部は、前記第1折り返し片の端部が嵌合される開口を有する第2折り返し片と、この第2折り返し片に連続して形成された第3折り返し片とを備え、
複数並べて配置される際に互いに嵌合状態で電気的接続をとる電極が前記雄型係合部および前記雌型係合部にそれぞれ設けられていることを特徴とする屋根材。
【請求項4】 請求項1から請求項3のいずれかに記載した屋根材を屋根下地材の上に少なくとも一方向に複数並べたことを特徴とする屋根構造体。」とあったものを,

「【請求項1】屋根下地材の上に屋根材が複数並べて配置される屋根構造体であって、
屋根材は、太陽電池を備えた屋根材と、太陽電池を備えていない屋根材とを備え、
太陽電池を備えた屋根材は、中央部に形成された皿状部と、この皿状部の一側に連続して形成された雄型係合部と、前記皿状部の他側に連続して形成され隣り合う屋根材の雄型係合部に嵌合する雌型係合部とを有する屋根材本体を一体形成し、この屋根材本体の皿状部を太陽電池パネルの収納部とし、前記雄型係合部は、前記太陽電池パネル側に開口された第1折り返し片を備え、前記雌型係合部は、前記第1折り返し片の端部が嵌合される開口を有する第2折り返し片と、この第2折り返し片に連続して形成された第3折り返し片とを備え、
複数並べて配置される際に互いに嵌合状態で電気的接続をとる電極が前記雄型係合部および前記雌型係合部にそれぞれ設けられ、
太陽電池を備えていない屋根材は、平板状本体の両端側に前記雄型係合部および前記雌型係合部と同様形状の係合部が形成され
ていることを特徴とする屋根構造体。」と補正することを含むものである。

なお,補正後の請求項1には「屋根材構造体」と記載されているが,「屋根材構造体」は「屋根構造体」の明らかな誤記と認められるので,補正後の請求項1に係る発明を上記のように認定した。

本件補正は,補正前の請求項1を引用する請求項4に係る発明を特定するために必要な事項のうち,屋根構造体について,「屋根材は、太陽電池を備えた屋根材と、太陽電池を備えていない屋根材とを備え」る点及び「太陽電池を備えていない屋根材は、平板状本体の両端側に前記雄型係合部および前記雌型係合部と同様形状の係合部が形成され」る点を限定するものであるから,平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで,本件補正後の上記請求項1に係る発明(以下,「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか,すなわち,補正発明が,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するかについて,以下に検討する。

2.刊行物に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である,特開平7-302924号公報(以下,「刊行物」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。
(イ)「【請求項1】 屋根材上に面板部と軒側係合部と棟側係合部を有しかつ上面に太陽電池を有する太陽電池付き屋根板が複数枚敷設され且つ前記太陽電池同士が電気的に接続された太陽電池付き横葺き屋根ユニットにおいて、
前記太陽電池は、可曲性であり、また弾力性を有した充填材中に埋設されるとともに表面が耐候性の透明フィルムにより保護されており、
前記軒側係合部は前記面板部から垂下した垂下部と垂下部の下端縁から棟側に折曲した下辺部とを有し、
前記棟側係合部は前記面板部から立ち上げた立ち上り部を有し、
軒側の前記太陽電池付き屋根板の棟側係合部が隣接する棟側の屋根板の軒側係合部の内側に内包されて係合されており、
前記太陽電池付き屋根板と前記屋根材との間には前記太陽電池付き屋根板上の太陽電池と母屋方向に隣接する他の前記太陽電池付き屋根板上の太陽電池とを電気的に接続する配線材を通すための空間部を有し、
前記空間部を介して一方の前記太陽電池付き屋根板上の太陽電池と母屋方向に隣接する他の太陽電池付き屋根板上の太陽電池とが電気的に接続されることを特徴とする太陽電池付き横葺き屋根ユニット。」
(ロ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、太陽電池付き横葺き屋根ユニットに関し、特に、雨仕舞いが良好で信頼性に優れた太陽電池付き横葺き屋根ユニットに関する。」
(ハ)「【0007】・・・本発明の目的は、設置が簡単で、長期信頼性が高い太陽電池付き横葺き屋根ユニットを提供することにある。」
(ニ)「【0034】(電気的接続)母屋方向に隣接する屋根材上における太陽電池同士の電気的な接続は、屋根板と屋根材との間の空間部において行う。接続方法としては、コネクター方式や圧着スリーブ接続方式、はんだ付け接続方式などの通常の電気接続方法を採用することができる。」
(ホ)「【0043】次に、図18に示したように、0.8mmの厚みの亜鉛メッキ鋼板1801/EVA1802/上記13枚直列接続した太陽電池素子1803/EVA1802/50ミクロン厚の無延伸エチレン-テトラエチレン共重合体フッ素樹脂フィルム「アフレックス(旭硝子)」からなるフッ素樹脂フィルム1804を順次重ね合わせ、真空ラミネーターを用いて150℃でEVAを溶融させることにより、み込み樹脂封止した太陽電池モジュール1800を作製した。」
(ヘ)「【0045】次に、上記のようにして作製した太陽電池モジュールを、図5のような形状に折り曲げ加工して、太陽電池付き屋根板を得た。即ち、軒側係合部においては、太陽電池の面板部1620から垂下(垂下部1621)させるとともに内側に鋭角に折曲げ(下辺部1630)、更に軒側に折り返されている(折り返し部1640)。また、棟側係合部においては、太陽電池がついた面板部1620から90度立ち上げ(立ち上がり部1650)とともに軒側に折り込み(折り込み部1660)、また端部を更に棟側に折り込んだ(折り込み部1670)。ここで、軒側の太陽電池付き屋根板1600の棟側係合部と棟側の太陽電池付き屋根板1700の軒側係合部との係合は図5のような形で係合した。」
(ト)「【0047】ここで隣接する太陽電池同士の電気接続は、太陽電池付き屋根板と断熱性の野地板の間の空間部で行った。この方法により母屋方向に隣接する太陽電池同士の電気接続の信頼性を向上させることができた。・・・」
(チ)「【0048】・・・なお、隣接する太陽電池付き屋根板を接続する配線材(ケーブル)は、図3では310で、図5では1610で、図6では6100で、図10と図11では8400で、それぞれ示した。」
(リ)「【0052】・・・また本実施例では上記の太陽電池付き屋根板を用いて、図12に示すような横葺き屋根を葺くことができた。ここで、斜線で示された屋根は太陽電池付き屋根8011、8012であり、その間にある無色の屋根8700は、通常の亜鉛銅板で葺かれた屋根である。ここで、太陽電池付き屋根と太陽電池なしの屋根板との継ぎ手は、特別な継ぎ手ではなく一般的な横葺き屋根に用いられている継ぎ手を使用した。」
(ヌ)「【0053】このように、本実施例では、太陽電池付き屋根を通常の横葺き屋根と混ぜ葺きしたため、少量の太陽電池でも屋根全面に万遍なく設置することができ、外観に優れた太陽電池付き屋根を設置することができた。」
そこで,上記記載事項(イ)ないし(ヌ)に記載された内容を総合すると,上記刊行物には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(引用発明)
「屋根材上に屋根板が複数枚敷設された横葺き屋根ユニットであって,
太陽電池付き屋根板を通常の横葺き屋根板と混ぜ葺きし,
面板部と軒側係合部と棟側係合部を有しかつ上面に太陽電池を有する太陽電池付き屋根板は,太陽電池素子1803を樹脂封止したものであって,軒側係合部に,太陽電池の面板部1620から垂下させるとともに内側に鋭角に折曲げ更に軒側に折り返されている折り返し部1640を備え,また,棟側係合部に,太陽電池がついた面板部1620から90度立ち上げるとともに軒側に折り込みその端部を更に棟側に折り込んだ折り込み部1670を備え,
隣接する太陽電池付き屋根板を,屋根板と屋根材との間の空間部においてコネクター方式や圧着スリーブ接続方式などの通常の電気接続方法で接続する配線材(ケーブル)が設けられ,
太陽電池付き屋根と太陽電池なしの屋根板との継ぎ手は,特別な継ぎ手ではなく一般的な横葺き屋根に用いられている継ぎ手を使用した
太陽電池付き横葺き屋根ユニット。」

3.対比
補正発明と引用発明を対比すると,引用発明の「屋根材」は補正発明の「屋根下地材」に,以下同様に,「屋根板」は「屋根材」に,「横葺き屋根ユニット」は「屋根構造体」に,「面板部」は「中央部」に,「太陽電池素子」は「太陽電池パネル」に,それぞれ相当する。
そして,引用発明の「軒側係合部」と補正発明の「雄型係合部」とは共に「下側係合手段」である点で,また,引用発明の「棟側係合部」と補正発明の「雌型係合部」とは共に「上側係合手段」である点で共通している。
また,引用発明の「太陽電池付き屋根板」は,面板部に対して軒側係合部と棟側係合部とを折り返して形成したものであるから,引用発明の「面板部と軒側係合部と棟側係合部を有しかつ上面に太陽電池を有する太陽電池付き屋根板は,太陽電池素子1803を樹脂封止したものであって」と補正発明の「太陽電池を備えた屋根材は、中央部に形成された皿状部と、この皿状部の一側に連続して形成された雄型係合部と、前記皿状部の他側に連続して形成され隣り合う屋根材の雄型係合部に嵌合する雌型係合部とを有する屋根材本体を一体形成し、この屋根材本体の皿状部を太陽電池パネルの収納部とし」とは共に「太陽電池を備えた屋根材は、中央部の一側に連続して形成された下側係合手段と、中央部の他側に連続して形成され隣り合う屋根材の下側係合手段に嵌合する上側係合手段とを有する屋根材本体を一体形成し、この屋根材本体に太陽電池パネルを収納し」た点で共通している。
さらに,引用発明の「屋根板と屋根材との間の空間部においてコネクター方式や圧着スリーブ接続方式などの通常の電気接続方法で接続する配線材(ケーブル)」と補正発明の「互いに嵌合状態で電気的接続をとる電極」とは共に「電気的接続をとる接点」である点で共通している。
加えて,引用発明の「太陽電池付き屋根板を通常の横葺き屋根板と混ぜ葺きし、・・・太陽電池付き屋根と太陽電池なしの屋根板との継ぎ手は、特別な継ぎ手ではなく一般的な横葺き屋根に用いられている継ぎ手を使用した」と補正発明の「屋根材は、太陽電池を備えた屋根材と、太陽電池を備えていない屋根材とを備え、・・・太陽電池を備えていない屋根材は、平板状本体の両端側に前記雄型係合部および前記雌型係合部と同様形状の係合部が形成され」とは共に「屋根材は、太陽電池を備えた屋根材と、太陽電池を備えていない屋根材とを備え、・・・太陽電池を備えていない屋根材は、太陽電池を備えた屋根材と同様形状の係合部が形成され」る点で共通している。
してみれば,両者の一致点及び相違点は,次のとおりである。

<一致点>
「屋根下地材の上に屋根材が複数並べて配置される屋根構造体であって、
屋根材は、太陽電池を備えた屋根材と、太陽電池を備えていない屋根材とを備え、
太陽電池を備えた屋根材は、中央部の一側に連続して形成された下側係合手段と、中央部の他側に連続して形成され隣り合う屋根材の下側係合手段に嵌合する上側係合手段とを有する屋根材本体を一体形成し、この屋根材本体に太陽電池パネルを収納し、
複数並べて配置される際に電気的接続をとる接点が設けられ、
太陽電池を備えていない屋根材は、太陽電池を備えた屋根材と同様形状の係合部が形成され
ている屋根構造体。」

<相違点1>
太陽電池を備えた屋根材が,補正発明は「中央部に形成された皿状部と、この皿状部の一側に連続して形成された雄型係合部と、前記皿状部の他側に連続して形成され隣り合う屋根材の雄型係合部に嵌合する雌型係合部とを有する屋根材本体を一体形成し、この屋根材本体の皿状部を太陽電池パネルの収納部とし」た構成であるのに対し,引用発明は太陽電池パネルを樹脂封止した中央部に軒側係合部と棟側係合部を一体形成して屋根材本体としたものであって,中央部には皿状部を持たない点。
<相違点2>
下側係合手段と上側係合手段とで構成される係合構造が,補正発明は「雄型係合部は、太陽電池パネル側に開口された第1折り返し片を備え、雌型係合部は、第1折り返し片の端部が嵌合される開口を有する第2折り返し片と、この第2折り返し片に連続して形成された第3折り返し片とを備え」るのに対し,引用発明は「軒側係合部に,太陽電池の面板部1620から垂下させるとともに内側に鋭角に折曲げ更に軒側に折り返されている折り返し部1640を備え,また,棟側係合部に,太陽電池がついた面板部1620から90度立ち上げるとともに軒側に折り込みその端部を更に棟側に折り込んだ折り込み部1670を備え」る構成であって,補正発明の第3折り返し片に対応する構成が明らかでない点。
<相違点3>
電気的接続をとる接点が,補正発明は「雄型係合部および前記雌型係合部にそれぞれ設けられ,複数並べて配置される際に互いに嵌合状態で電気的接続をとる電極」であるのに対し,引用発明は屋根板と屋根材との間の空間部においてコネクター方式や圧着スリーブ接続方式などの通常の電気接続方法で接続する配線材(ケーブル)であって,下側係合手段と上側係合手段とに設けられたものではない点。

4.判断
まず,<相違点1>について検討する。屋根材の中央部に皿状部を設け,この皿状部を太陽電池パネルの収納部とする技術は,原査定の拒絶理由で提示した実願平2-95380号(実開平4-52126号)のマイクロフィルム(特に,明細書第3頁第14?17行の「・・・該瓦本体3の起立壁2・・・に囲まれた凹入部3Aで、かつ瓦本体3の働き幅部分に強化ガラス等の透明材料4(第4図)に封入された太陽電池5が嵌合され・・・」及び第1図参照。)のみならず,原査定の補正の却下の決定で提示した実公昭63-11747号公報(特に,明細書第3欄第26?31行の「・・・凹部25の表面に耐水性,難燃性で太陽電池接着に適する材料をもつて基板層21を塗布形成する。この基板層21の上に太陽電池群22の搭載を行い、その後凹部全体にわたつて透明で耐水性をもつた材料で被覆層23を塗布形成する。・・・」,第3図及び第4図参照。)及び実願昭60-78358号(実開昭61-194039号)のマイクロフィルム(特に,実用新案登録請求の範囲の「屋根瓦本体の受光面に収納部が凹状・・・に設けられ、該収納部内に太陽電池及び該太陽電池を被覆する透明保護板が嵌め込まれていることを特徴とする太陽電池を備えた屋根瓦。」,第1図及び第2図参照。)等に見られるように周知技術である。 引用発明において,太陽電池パネルを中央部に樹脂封止する構造に代えて,上記周知技術を採用し,中央部に皿状部を設けた構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。そして,引用発明において,中央部に皿状部を設ければ,必然的に,下側係合手段と上側係合手段とは皿状部に連続して形成されたものとなる。
次に,<相違点2>について検討する。屋根材の連結構造として,下側係合手段と上側係合手段とで構成される係合構造であって,下側係合手段に中央部側に開口する第1折り返し片を設け,上側係合手段に前記第1折り返し片の端部が嵌合する開口を有する第2折り返し片と,この第2折り返し片に連続して形成された第3折り返し片を備えた構造は,例えば原査定の拒絶理由で提示した実公平6-63310号公報(特に,明細書第6欄第29?40行及び第2図(a)参照。),及び実願平3-104258号(実開平5-45114号)のCD-ROM(特に,段落【0009】及び【図3】参照。)等に見られるように周知である。引用発明の屋根材の連結構造として,上記周知な構造を採用することは,当業者が容易になし得たことである。
さらに,<相違点3>について検討する。太陽電池を備えた屋根材を複数並べて配置する際に,互いの接触部分に電気的接続をとる接点を設ける技術は,原査定の拒絶理由で提示した特開昭59-152670号公報(特に,第2頁右上欄第17?19行,第4図及び第5図参照。),及び特公平5-31832号公報(特に,特許請求の範囲,第1図及び第4図参照。)のみならず,原査定の補正の却下の決定で提示した実公昭63-11747号公報(特に,特許請求の範囲,第6図及び第7図参照。)等にみられるように周知技術である。また,引用発明のコネクター方式や圧着スリーブ接続方式は,嵌合状態で電気的接続をとるものといえる。したがって,引用発明において,嵌合状態で電気的接続をとる電極を,上記周知技術のように,互いの接触部分に設けること,すなわち,互いの接触部分である「軒側係合部」と「棟側係合部」にそれぞれ設けることは,当業者が容易になし得たことである。
また,補正発明が奏する作用・効果を検討してみても,引用発明及び周知技術から当業者が予測し得た範囲のものであって,格別なものとはいえない。
したがって,補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1
項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものであり,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって,[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成19年1月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので,本願の請求項4に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成17年7月11日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項4に記載された事項により特定される,上記のとおりのものである。

2.刊行物とそれに記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1に記載された事項は,上記「第2.2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は,上記「第2.」にて検討した補正発明の屋根構造体について,「屋根材は、太陽電池を備えた屋根材と、太陽電池を備えていない屋根材とを備え」る点及び「太陽電池を備えていない屋根材は、平板状本体の両端側に前記雄型係合部および前記雌型係合部と同様形状の係合部が形成され」る点の限定を削除したものである。
そうすると,本願発明を特定する事項をすべて含み,さらに限定したものに相当する補正発明は,上記「第2.4.」に記載したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-13 
結審通知日 2008-11-18 
審決日 2008-12-02 
出願番号 特願平8-203717
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 住田 秀弘  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 関根 裕
宮崎 恭
発明の名称 屋根構造体  
代理人 中山 寛二  
代理人 木下 實三  
代理人 木下 實三  
代理人 中山 寛二  
代理人 特許業務法人樹之下知的財産事務所  
代理人 特許業務法人樹之下知的財産事務所  

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