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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1191194
審判番号 不服2007-2894  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-25 
確定日 2009-01-15 
事件の表示 特願2003-405744「定着装置及び画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月23日出願公開、特開2005-165098〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成15年12月4日の出願であって、平成18年7月11日付けで通知した拒絶理由に対して、同年9月14日付けで手続補正書が提出され、続いて同年10月4日付けで最後の拒絶理由が通知され、これに対して同年12月7日付けで手続補正書が提出されたが、同年12月20日付けで、同年12月7日付けの手続補正についての補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされたものであって、これに対し、平成19年1月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月22日付けで手続補正書が提出されたものである。

2 平成19年2月22日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年2月22日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
平成19年2月22日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
補正前(平成18年9月14日付け手続補正書)の
「所定の経路に沿って移動するベルトと、
前記ベルトに熱を供給する発熱源を備え、前記ベルトを張架して支持する第1の支持部材と、
回転不能に固定配置され、前記第1の支持部材と共に前記ベルトを張架して支持し、発熱源を備えない第2の支持部材と、
前記ベルトを介して前記第2支持部材に圧接し、該第2支持部材と共に前記ベルトを挟むニップ部を形成する回転体とを有し、
前記第2支持部材は、前記回転体に対向し所定幅を持つ対向面と、該対向面の、前記ベルトの移動方向の下流側の端部に形成された湾曲部とを有することを特徴とする定着装置。」から、
「所定の経路に沿って移動するベルトと、
前記ベルトに熱を供給する発熱源を備え、前記ベルトを張架して支持する第1の支持部材と、
回転不能に固定配置され、前記第1の支持部材と共に前記ベルトを張架して支持し、発熱源を備えない第2の支持部材と、
前記ベルトを介して前記第2の支持部材に圧接し、該第2の支持部材と共に前記ベルトを挟むニップ部を形成する回転体とを有し、
前記第2の支持部材は、前記回転体に対向し所定幅を持つ対向面と、該対向面の、前記ベルトの移動方向の上流側の端部及び下流側の端部にそれぞれ形成された湾曲部とを有し、前記各湾曲部が略対称的であり、且つ前記ニップ部から連続することを特徴とする定着装置。」
に変更された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第2の支持部材」に対し「上流側の端部に形成された湾曲部」を有するという限定を付加し(補正事項a)、上流側の端部と下流側の端部の配置及びニップ部との関係について「各湾曲部が略対称的であり、且つ前記ニップ部から連続する」という限定を付加する(補正事項b)ものであり、これらの補正事項a、bは、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(2)先願明細書
原審における平成18年12月20日付けの補正の却下の決定で引用された、本願出願の日前にした他の特許出願(出願日:平成15年3月20日)であって、その出願を基礎とした国内優先権の主張を伴った特願2004-72493号が本願出願後に出願公開された(公開日:平成16年10月28日)、特願2003-77070号(以下、「先願」という。特開2004-302449号公報参照)の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。(なお、特願2003-77070号と特願2004-72493号に共通に記載されている事項である。また、下線は当審で付した。)

(a-1)「 本発明は、電子写真方式の画像形成装置に用いられるベルト定着装置に関する。」(公開公報(以下、同様。)の段落【0001】)。

(a-2)「定着ベルト12は、回転可能に両端が支持された加熱ローラ(支持部材)14と、この加熱ローラ14から離れた位置に回転不能に固定配置されたニップ形成部材20とに巻き掛けられている。加熱ローラ14は、例えば外径35mmの金属円筒管からなり、内部に熱源であるヒータランプ16を有している。ヒータランプ16で内部から加熱された加熱ローラ14によって定着ベルト12が加熱されるようになっている。・・・」(段落【0019】?【0020】)。

(a-3)「前記ニップ形成部材20は定着ベルト12の内側に配置されており、このニップ形成部材20に対して定着ベルト12を挟んだ状態で加圧ローラ50が圧接されている。これにより、定着ベルト12と加圧ローラ50との接触部が定着ニップ40になっている。・・・加圧ローラ50は、例えば、外径が30mmであり、金属円筒状の芯金52の外周部に厚さ4mmのゴムまたはスポンジからなる弾性層54を有しており・・・。ニップ形成部材20は、熱伝導度が低く、かつ、加圧ローラ50の弾性層54よりも硬い材料(例えば樹脂、セラミックなど)で形成されており、・・・。」(段落【0021】?【0024】)。

(a-4)「また、ニップ形成部材20の加圧ローラ50との対向面(押圧面)22は、加圧ローラ50の外周面に沿った湾曲面としてある。具体的には、ニップ形成部材20の対向面22の曲率半径Rは、加圧ローラ50の外周面の曲率半径(15mm)よりも若干大きい例えば15.4mmとしてある。・・・」(段落【0025】)。

(a-5)「・・・。このようにニップ形成部材20の加圧ローラ50との対向面22を加圧ローラ50の外周面に沿った湾曲面とすることで、定着ニップ40内の圧力分布が通紙方向に関しておおよそフラットになるようにしてある。」(段落【0026】)。

(a-6)「上記構成からなるベルト定着装置10では、加圧ローラ50が矢印A方向に回転駆動されると、これに伴って定着ベルト12がニップ形成部材20の表面を摺動しながら移動して矢印B方向に例えば150mm/secの速度で回転する。・・・」(段落【0032】)。

(a-7)「・・・例えば9mmという幅広の定着ニップ40を容易に実現できる。このように幅広の定着ニップ40とすることで、定着に必要なニップ時間を稼ぐことができ、その結果、装置のシステム速度の高速化に対応することができる。」(段落【0037】)。

(a-8)【図1】は以下のとおり。


(a-9)【図1】をみると、ニップ形成部材20において、加圧ローラ50との対向面22(加圧ローラ50の外周面に沿った湾曲面)から、ベルト12の移動方向の上流側及び下流側に、やはり湾曲した部分(以下、それぞれ、「上流側湾曲部」「下流側湾曲部」という。)が対向面22と連続的に設けられている。対向面22(加圧ローラ50の外周面に沿った湾曲面)の曲率が変化し始める箇所があるはずであり、その箇所から、上流側湾曲部又は下流側湾曲部が始まるといえる。
また、上流側湾曲部、下流側湾曲部の湾曲形状は、巻き掛けられた定着ベルト12が加熱ローラ14に向けて円滑に回転していくような形状であるが、上流側湾曲部と下流側湾曲部は、【図1】でみる限り、湾曲の形状や大きさは同じでないとみられる。
【図1】から、ニップ形成部材20は加熱源を備えないことも確認される。

(a-10)また、上記(a-3)(a-4)の記載事項によると、加圧ローラ50とニップ形成部材20との硬さの違いがあるから、ニップ形成部材20が定着ベルト12を介して加圧ローラ50に若干食い込むような状態になって、定着ベルト12と加圧ローラ50との接触部で定着ニップ40が形成されているものということができる。したがって、定着ニップ40を構成する加圧ローラ50のニップ面による圧接が、ニップ形成部材20の上流側湾曲部の一部、下流側湾曲部の一部にも及んでいるものとみられる。

これら記載によれば、先願明細書には、次の発明(以下、「先願明細書記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「所定の経路に沿って移動する定着ベルト12と、
定着ベルト12に熱を供給するヒータランプ16を備え、定着ベルト12を張架して支持する加熱ローラ14と、
回転不能に固定配置され、加熱ローラ14と共に定着ベルト12を張架して支持し、発熱源を備えないニップ形成部材20と、
定着ベルト12を挟んだ状態でニップ形成部材20に圧接し、定着ベルト12との接触部で定着ニップ40を形成する加圧ローラ50とを有し、
ニップ形成部材20は、加圧ローラ50に対向し所定幅を持つ対向面22(加圧ローラ50の外周面に沿った湾曲面)と、対向面22の、定着ベルト12の移動方向の上流側の端部及び下流側の端部にそれぞれ形成された上流側湾曲部及び下流側湾曲部とを有し、
定着ニップ40を構成する加圧ローラ50のニップ面による圧接が、ニップ形成部材20の上流側湾曲部の一部と下流側湾曲部の一部にも及んでいる、
ベルト定着装置。」

(3)対比、判断
本願補正発明と先願明細書記載の発明とを対比すると、
先願明細書記載の発明の「定着ベルト」「ヒータランプ16」「加熱ローラ14」「ニップ形成部材20」「加圧ローラ50」「対向面22(加圧ローラ50の外周面に沿った湾曲面)」「ベルト定着装置」は、それぞれ、本願補正発明の「ベルト」「発熱源」「第1の支持部材」「第2の支持部材」「回転体」「対向面」「定着装置」に相当し、
また、先願明細書記載の発明の「定着ニップ40」については、加圧ローラ50が定着ベルト12を挟んだ状態でニップ形成部材20に圧接し、加圧ローラ50と定着ベルト12との接触部が「定着ニップ40」というものであるが、これは、加圧ローラ50とニップ形成部材20によって定着ベルト12を挟む部分と言い換えてもよい程度のものであるから、先願明細書記載の発明の「定着ニップ40」は、本願補正発明の「ニップ部」に実質的に相当し、
先願明細書記載の発明の「上流側湾曲部」「下流側湾曲部」は、ともに、本願補正発明の「湾曲部」に相当し、
先願明細書記載の発明の「定着ニップ40を構成する加圧ローラ50のニップ面による圧接が、ニップ形成部材20の上流側湾曲部の一部と下流側湾曲部の一部にも及んでいる」は、本願補正発明の、各湾曲部が「ニップ部から連続する」に実質的に相当する。

そうすると、両者は、
「所定の経路に沿って移動するベルトと、
前記ベルトに熱を供給する発熱源を備え、前記ベルトを張架して支持する第1の支持部材と、
回転不能に固定配置され、前記第1の支持部材と共に前記ベルトを張架して支持し、発熱源を備えない第2の支持部材と、
前記ベルトを介して前記第2の支持部材に圧接し、該第2の支持部材と共に前記ベルトを挟むニップ部を形成する回転体とを有し、
前記第2の支持部材は、前記回転体に対向し所定幅を持つ対向面と、該対向面の、前記ベルトの移動方向の上流側の端部及び下流側の端部にそれぞれ形成された湾曲部とを有し、各湾曲部が前記ニップ部から連続する、
定着装置。」
の点で一致し、
本願補正発明では、上流側の端部及び下流側の端部にそれぞれ形成された湾曲部が「略対称的であり」と規定されているのに対して、先願明細書記載の発明では、そのことが明記されていない点で、一応相違する。

そこで、相違点について検討する。

まず、本願補正発明において、上流側の端部及び下流側の端部にそれぞれ形成された湾曲部が「略対称的」であることは、当初の明細書に直接的な記載がないが、請求人が、図2、図3をみて「略対称的」であることを根拠にして、「略対称的」という文章表現を請求項1に追加して本願補正発明としたものであるところ、「略対称的」とはどの程度のものまでを含むのかが曖昧で不正確な表現であり、「略対称的」であるような、湾曲部での曲率半径Rの差異、湾曲部の向きの差異は不明である。また、「略対称的」とすることの技術的意味も特に認められない。

そして、先願明細書記載の発明における上流側湾曲部と下流側湾曲部については、先願明細書の図面をみると、「完全な対称」ではないが、「略対称的」でないとまで言い切ることはできない形状である。

したがって、上記相違点は、実質的な相違点でないといわざるを得ない。

よって、本願補正発明は、先願明細書記載の発明と同一であり、しかも、本願補正発明の発明者が先願明細書記載の発明の発明者と同一の者でなく、また、本願の出願時において、本願の出願人が先願の出願人と同一の者でないので、本願補正発明は、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正付則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3 本願発明について
平成19年2月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?6に係る発明は、平成18年9月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。

「所定の経路に沿って移動するベルトと、
前記ベルトに熱を供給する発熱源を備え、前記ベルトを張架して支持する第1の支持部材と、
回転不能に固定配置され、前記第1の支持部材と共に前記ベルトを張架して支持し、発熱源を備えない第2の支持部材と、
前記ベルトを介して前記第2支持部材に圧接し、該第2支持部材と共に前記ベルトを挟むニップ部を形成する回転体とを有し、
前記第2支持部材は、前記回転体に対向し所定幅を持つ対向面と、該対向面の、前記ベルトの移動方向の下流側の端部に形成された湾曲部とを有することを特徴とする定着装置。」

(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開平2-123387号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)

(b-1)「〔産業上の利用分野〕本発明は、一般的には、複写機または印刷機に関し、より詳細には、加熱された融着部材に直接接触させることによる微粒子熱可塑性トナーの熱および圧力固定に関する。」(2頁左上欄第2?6行)。

(b-2)「第4図に示す本発明の他の実施例に係る融着器38もベルト16を備えている。ベルト16は内部が加熱されたローラー40によって加熱される。この実施例では、第3図に示した実施例のローラー36に代えて、静止マンドレル42が用いられている。静止マンドレル42はローラー40と共働してベルト16を作動的に支持する。ベルト16及びマンドレル42は圧力ローラー30と共働してニップ28を形成する。トナー像20を形成しているコピー基質22はトナー像20を加熱されたベルトに接触させつつ、ニップ28を通過する。」(4頁左上欄15行?右上欄6行)。

(b-3)「マンドレル42、ベルト16及び圧力ローラー30間にニップ圧力を形成するために必要な力はロータリーカム44により供給される。マンドレル42の形状は、カム44を介して力が作用したときのニップ28内の圧力分布が第4a図のようになるように形成される。第4a図に示したように、ニップ28前後の圧力分布は左右非対称である。」(4頁右上欄6?13行)。

(b-4)FIG.4(第4図)をみると、内部が加熱されたローラー40と静止マンドレル42との間にはベルト16が回転可能に掛け渡されている。
また、ニップ28は定着するためにある程度の幅を有することは当然であり、FIG.4aをみてもニップ圧力のかかる範囲には幅があり、静止マンドレル42は圧力ローラー30に対向し所定幅の対向面(ベルト16を介して圧力ローラー30にある程度の幅で接触している対向面)を有しているものといえる。
FIG.4をみると、静止マンドレル42の対向面においてベルト16の移動方向の下流側の端部には湾曲部が形成されている(なお、静止マンドレル42の側端部は、ベルト16が曲がる部分でもあり、ベルト16の円滑な回転のためには、多少なりとも湾曲していることは当然である。)ことが理解される。
また、静止マンドレル42は発熱源を備えないことも確認される。

これら記載によれば、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「所定の経路に沿って移動するベルト16と、
内部を加熱されてベルト16を加熱する、ベルト16を張架して支持するローラー40と、
ローラー40と共にベルト16を作動的に支持し、発熱源を備えない静止マンドレル42と、
ベルト16及び静止マンドレル42と共働してニップ28を形成する圧力ローラー30とを有し、
静止マンドレル42に、ロータリーカム44が作用して、静止マンドレル42、ベルト16及び圧力ローラー30間にニップ圧力を形成するようになっており、
静止マンドレル42は、圧力ローラー30に対向し所定幅を持つ対向面と、該対向面の、ベルト16の移動方向の下流側の端部に形成された湾曲部とを有する、
複写機の融着器。」

(2)対比
本願発明1と引用例1記載の発明とを対比すると、
引用例1記載の発明の「ベルト16」「ローラー40」「ローラー40と共にベルト16を作動的に支持し、発熱源を備えない静止マンドレル42」「ベルト16及び静止マンドレル42と共働してニップ28を形成する圧力ローラー30」「複写機の融着器」は、
それぞれ、本願発明1の「ベルト」「第1の支持部材」「前記第1の支持部材と共に前記ベルトを張架して支持し、発熱源を備えない第2の支持部材」「該第2支持部材と共に前記ベルトを挟むニップ部を形成する回転体」「定着装置」に相当し、
また、引用例1記載の発明のローラー40(第1の支持部材)が「内部を加熱されてベルト16を加熱する」と、本願発明1の第1の支持部材が「前記ベルトに熱を供給する発熱源を備え」るとは、第1の支持部材がベルトを加熱する点では共通するといえる。

そうすると、両者の一致点および相違点は以下のとおりと認められる。

[一致点]
「所定の経路に沿って移動するベルトと、
前記ベルトを加熱し、前記ベルトを張架して支持する第1の支持部材と、
前記第1の支持部材と共に前記ベルトを張架して支持し、発熱源を備えない第2の支持部材と、
該第2支持部材と共に前記ベルトを挟むニップ部を形成する回転体とを有し、
前記第2支持部材は、前記回転体に対向し所定幅を持つ対向面と、該対向面の、前記ベルトの移動方向の下流側の端部に形成された湾曲部とを有する、
定着装置。」

[相違点1]
本願発明1では、第1の支持部材がベルトに熱を供給する発熱源を備えるのに対して、
引用例1記載の発明では、ローラー40(第1の支持部材)における発熱源の存在を明らかにしていない点。

[相違点2]
本願発明1では、第2の支持部材は回転不能に固定配置されており、回転体は移動するベルトを介して第2の支持部材を圧接するのに対して、
引用例1記載の発明では、静止マンドレル42(第2の支持部材)に、ロータリーカム44が作用して、静止マンドレル42、ベルト16及び圧力ローラー30(回転体)間にニップ圧力を形成するようになっている点。

(3)判断
上記相違点について検討する。

(相違点1について)
一般に、ベルト定着方式の定着装置において、ベルト支持部材であるローラーの内部に、ベルトに熱を供給する発熱源を設けることは、文献を示すまでもなく、本願出願前に周知であるので、この点に格別の創意は認められない。
したがって、引用例1記載の発明において、相違点1に係る本願発明1のごとく、ローラー40(第1の支持部材)の内部を加熱してベルトを加熱するために、ローラー40がベルトに熱を供給する発熱源を備えるものとすることは、当業者が容易になし得ることである。

(相違点2について)
一般に、ベルト定着方式の定着装置において、ベルト支持部材(第2の支持部材)とローラー(回転体)とでニップ部が形成されるときに、ローラーがベルトを介してベルト支持部材を圧接する構成とする技術は、本願出願前に周知であり(例えば、特開平11ー52767号公報の段落【0039】参照)、しかも、この周知技術を引用例1記載の発明に応用することに、何ら困難性はない。
そうすると、引用例1記載の発明において、静止マンドレル42(第2の支持部材)に、ロータリーカム44が作用して、静止マンドレル42、ベルト16及び圧力ローラー30(回転体)間にニップ圧力を形成することに代えて、本願発明1のごとく、圧力ローラー30がベルトを介して静止マンドレル42を圧接する構成にすることは、当業者が適宜容易になし得ることである。

したがって、本願発明1は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-14 
結審通知日 2008-11-18 
審決日 2008-12-01 
出願番号 特願2003-405744(P2003-405744)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
P 1 8・ 575- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼橋 祐介  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 紀本 孝
大森 伸一
発明の名称 定着装置及び画像形成装置  
代理人 山形 洋一  
代理人 前田 実  

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