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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B27D
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 B27D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B27D
管理番号 1191200
審判番号 不服2007-9005  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-29 
確定日 2009-01-15 
事件の表示 特願2002-326460「化粧板」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月10日出願公開、特開2004-160708〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年11月11日の出願であって、平成19年2月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年3月29日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月27日に手続補正がなされた。
その後、平成20年9月5日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、平成20年10月16日に回答書が提出された。

第2 平成19年4月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成19年4月27日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成19年4月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を、次のように補正しようとする補正事項を含む。
(補正前)
「【請求項1】
台板上に接着剤層を介して化粧シートが積層されてなる化粧板において、前記接着剤層の硬度が前記台板の硬度を上回り、前記接着剤層が一液湿気硬化型ホットメルト接着剤又は電子線硬化型接着剤からなり、前記接着剤層の厚みが50μm以上1mm以下であって、前記接着剤層のデュロメーター硬さが50?80であることを特徴とする化粧板。
【請求項2】
前記台板が木質系素材からなることを特徴とする請求項1に記載の化粧板。
【請求項3】
前記接着剤層が着色されていることを特徴とする請求項1,2のいずれかに記載の化粧板。
【請求項4】
前記化粧シート面から前記接着剤層にかけて、前記台板に達しない溝加工及び/又は面取り加工が施されていることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の化粧板。」
(補正後)
「【請求項1】
台板上に接着剤層を介して化粧シートが積層されてなる化粧板において、前記接着剤層の硬度が前記台板の硬度を上回り、前記接着剤層が一液湿気硬化型ホットメルト接着剤又は電子線硬化型接着剤からなり、前記接着剤層の厚みが50μm以上1mm以下であって、前記接着剤層のデュロメーター硬さが50?80であり、前記接着剤層が着色されており、前記化粧シート面から前記接着剤層にかけて、前記台板に達しない溝加工及び/又は面取り加工が施されていることを特徴とする化粧板。
【請求項2】
前記台板が木質系素材からなることを特徴とする請求項1に記載の化粧板。
【請求項3】
台板上に接着剤層を介して化粧シートが積層されてなる化粧板において、前記接着剤層が一液湿気硬化型ホットメルト接着剤又は電子線硬化型接着剤からなり、前記接着剤層の厚みが50μm以上135μm以下であり、前記接着剤層のデュロメーター硬さが65?80でありかつ前記台板のデュロメーター硬さよりも少なくとも5以上高い、ことを特徴とする化粧板。
【請求項4】
前記接着剤層は前記化粧シートと同系色に着色されており、
前記化粧シートの厚さと前記接着剤層の厚さとの総計よりも小なる深さの溝及び面取りが施されている、ことを特徴とする請求項3記載の化粧板。」とする。

2.補正の目的についての判断
上記補正事項の補正の目的について検討すると、審判請求人は、請求書において、補正後の本願発明の新請求項1は補正前の請求項3及び請求項4の内容を加えて限定したものであり、新請求項3は、補正前の請求項1に記載の特徴をより明確に確定したものであると説明している。
補正後の請求項1が、補正前の請求項3に請求項4の内容を加えたもの、すなわち請求項1を引用した請求項3を引用した請求項4であり、補正後の請求項3が、補正前の請求項1に係る発明を特定する接着剤層の厚み、及び接着剤層と台板の硬さの差を限定したものであるとすると、補正後の請求項2は、補正後の請求項1を引用する新たな発明(補正前の請求項2を引用した請求項3を引用した請求項4)に相当し、補正後の請求項4は、補正後の請求項3を引用する新たな発明に相当するから、上記補正事項は、新たな発明を付加したものであり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項各号のいずれを目的とする補正にもあたらない。
また、補正後の請求項1が、補正前の請求項1に請求項3及び請求項4の内容を加えて限定したものであるとすると、補正後の請求項3は、補正前の請求項3を特定する「接着剤層が着色されている」との事項を備えていないから、上記補正事項は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に相当しないし、請求項の削除、明りょうでない記載の釈明又は誤記の訂正を目的とする補正にも相当しない。

3.独立特許要件の判断
上記のとおり、補正後の請求項3に係る発明は、特許請求の範囲の減縮を目的として補正前の請求項1に係る発明を限定したものといえるから、補正後の請求項3に係る発明(以下、「補正発明」という。)が、出願の際独立して特許を受けられるものであるか否かについても検討する。

(1)刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願前に頒布された特開2001-232721号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】 (a) 木材から形成される支持体;
(b) 化粧上層; および
(c) 前記上層を前記支持体に結合するための、前記支持体と前記上層との間に介在させるホットメルト接着剤、ここで、前記接着剤は、重合または共重合させると前記支持体のショアーD硬度より高いシュアーD硬度を生成する1種以上のモノマーを含有するポリマーを主成分として含む;を含む積層木材物品。」
(1b)「【0004】見栄えの良い外観を得るためには、一般に、低グレード木材や農業用物品から形成される支持体またはベースに化粧上層を接着させて、魅力的で且つ保護された仕上がり状態を得るようにする。・・・コストがより低く且つ望ましい外観が得られるにもかかわらず、化粧紙は多くのタイプの物品に対してあまりにも崩壊しやすいという欠点がある。特に、化粧紙は、比較的脆いという紙の特質のために通常の使用時に簡単に損傷を受けることがあり、このため化粧紙のもつ外観上の利点が相殺されてしまう。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、積層木材物品を製造するための従来の熱圧法を使用して、化粧上層〔例えば、ビニルカバー(vinyl covering)、ペーパーシート、もしくはベニヤシートなど〕を木材支持体もしくは農業用副産物支持体(例えば、パーティクルボードや合板など)に結合するための、より高い硬度を有するホットメルト接着剤を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、上層の化粧表面に悪影響を及ぼさないような接着剤を提供することにある。
・・・
【0008】本発明のさらに他の目的は、支持体が粗くて不均一な表面を有していて化粧上層が印刷紙であるときに(特に、木材支持体がファイバーボードまたはパーティクルボードであるときに)、積層集成木材物品により高い硬度をもたらすことにある。」
(1c)「【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明は、木材物品から形成される実質的に平面の支持体と化粧上層との間に介在させて、化粧上層を支持体に結合するホットメルト接着剤を提供する。前記ホットメルト接着剤は、重合または共重合させると前記支持体のショアーD硬度より高いシュアーD硬度を生成する1種以上のモノマーを含有するポリマーを主成分として含む。このタイプのモノマーとしては、スチレン、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル、塩化ビニル、ジフェニルメタンジイソシアネート、および20℃より高いTgを有するポリマーを生成する他のモノマーなどがある。」
(1d)「【0013】
本発明は、壁、床、高級家具、家具、および住宅やビルにおける他の表面物質(surfaces)用の、建築工業にて使用される積層化粧構造物に関する。この構造物は家具製造工業において特に有用である。本発明の積層木材物品は、木材物品から形成される実質的に平面のベースもしくは支持体、化粧上層、および支持体と上層との間に介在させて上層を支持体に結合するための、より高い硬度を有するホットメルト接着剤で構成される。」
(1e)「【0014】支持体は、木材物品から形成される実質的に平面で完全なシートもしくはボードである。・・・」
(1f)「【0016】積層木材パネルの化粧上層は、ビニル樹脂、紙、またはベニヤから形成することができる。・・・」
(1g)「【0019】ホットメルト接着剤は支持体と化粧上層との間に介在させ、上層と支持体とを結合するように機能する。ホットメルト接着剤は、重合または共重合させると支持体のショアーD硬度より高いシュアーD硬度を有するフィルムを生成する1種以上のモノマーを含有するポリマーまたはコポリマーを主成分として含む。一般には、パーティクルボードのショアーD硬度は約55である。したがって、接着剤コーティングまたは接着剤フィルムのショアーD硬度は少なくとも55でなければならず、より好ましくは少なくとも65でなければならず、そして最も好ましくは少なくとも67でなければならない。このタイプのモノマーは、20℃(すなわち293°K)以上のTgであって、結合処理時またはヒートシール処理時に接着剤によって達成される温度以下の少なくとも1つのTgを有するポリマーまたはコポリマーを生成する。このタイプのモノマーとしては、スチレン、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル、塩化ビニル、ジフェニルメタンジイソシアネート、および20℃より高い少なくとも1つのTgを有するポリマーを生成する他のモノマーなどがあるが、これらに限定されない。」
(1h)「【0031】特定の物理的性質を変えるために、任意の状態調節用添加剤を接着剤組成物中に組み込むことができる。これらの添加剤としては、着色剤(例えば、二酸化チタンや酸化亜鉛)、脱泡剤、金属イオン封鎖剤、粘着防止剤(antiblocking agent)、粘着抑制剤(anticling agent)、界面活性剤、増粘剤、蛍光剤、および広く使用されている他の添加剤などがある。」
(1I)実施例1には、ポリスチレンを含有する接着剤1296-9A、1296-9B、1296-12R、1296-12U、1296-12V、1296-12W、1296-15W、1296-188Bを製造したことが記載されている(段落【0040】【表1】)。
(1j)「【0047】 実施例4
実施例1の接着剤のショアーD硬度を試験した。実施例1の接着剤を使用して製造した積層品のショアーD硬度も測定した。
【0048】注ぎ込み、室温で24時間状態調節して得た接着剤の0.125インチ厚さの部分に対し、接着剤フィルムのD硬度を測定した。ショアーDジュロメーターを使用して6回の読み取りを行った。
【0049】紙/接着剤/パーティクルボード積層品のシュアーD硬度の測定は、6インチ×6インチ構造物を加熱段プレスにおいて250°Fにて80psiで3秒間積層することによって行った。接着剤の厚さは1.25ミルであった。次いでこの積層品を、室温にて24時間状態調節してから試験を行った。ショアーDジュロメーターを使用して、6回の読み取りを行った。
【0050】紙/接着剤/MDF積層品のシュアーD硬度の測定は、6インチ×5インチ構造物を加熱段プレスにおいて250°Fにて80psiで3秒間積層することによって行った。接着剤の厚さは2.0ミルであった。次いでこの積層品を、室温にて24時間状態調節してから試験を行った。ショアーDジュロメーターを使用して、6回の読み取りを行った。
【0051】実施例3の場合と同様に、実施例1に従って製造した接着剤のシャアーD硬度を、AtoFindleySAから市販のEVAホットメルト接着剤ARDALT8028/2のショアーD硬度と比較した。結果を表4に示す。
【0052】
【表4】


(1k)「【0055】3. 表4のカラム3のデータは、パーティクルボードと実施例1の接着剤を使用して製造した積層品が、EVAホットメルト接着剤を使用して製造した積層品またはパーティクルボード支持体自体より高いD硬度を有することを示している。例えば、1296-15Wを使用した接着剤積層品は75のショアーD硬度を有するが、EVAホツトメルト接着剤(T8028/2)を使用した積層品のショアーD硬度はわずか49である。パーティクルボード自体のD硬度は59.3である。・・・
【0056】4. 表4のカラム5のデータは、ファイバーボードと実施例1の接着剤を使用して製造した積層品が、EVAホットメルト接着剤を使用して製造した積層品またはファイバーボード支持体自体より高いD硬度を有することを示している。例えば、1296-15Wを使用した接着剤積層品は76.4のショアーD硬度を有するが、EVAホツトメルト接着剤(T8028/2)を使用した積層品のショアーD硬度はわずか47.8である。ファイバーボード自体のD硬度は64.8である。」
(1l)「【0057】本発明の積層集成木材物品は種々の方法を使用して製造することができる。例えば、木材支持体を製造し、これに接着剤を塗被し、次いで接着剤に化粧上層を施す。こうして得られる積層品を、好ましくはプレス中もしくはロール間にて加圧下で加熱して化粧上層を木材支持体に結合する。・・・
【0058】これとは別に、接着剤組成物を化粧上層に施し、冷却し、次いでこの化粧上層を巻き上げてその後の使用に備えることもできる。接着剤被膜と一体になった化粧上層を後で木材支持体と接触させ、熱と圧力を加えて上記のように結合を起こさせる。
【0059】さらに他の方法においては、接着剤をフィルム状にし、冷却し、そして後で使用できるように巻き上げることもできる。このプロセスでは、木材支持体、接着剤フィルム、ならびに紙、ビニル、もしくはベニヤの化粧上層を互いに接触させ、熱と圧力を加えて上記のように結合を起こさせる。」

上記記載事項、特に実施例4に関する記載によれば、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「支持体上に接着剤層を介して化粧上層が積層されてなる積層集成木材物品において、前記接着剤層がホットメルト接着剤からなり、前記接着剤層のショアーD硬度が支持体のショアーD硬度より硬い積層集成木材物品。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

(2)対比、判断
補正発明と刊行物1記載の発明とを比較すると、刊行物1記載の発明の「支持体」、「化粧上層」、「積層集成木材物品」は、それぞれ、補正発明の「台板」、「化粧シート」、「化粧板」に相当する。
また、補正発明の「デュロメーター硬さ」について、明細書の段落【0015】には「JIS K 7215」によると、木質系素材の硬さが50前後程度である記載されていることから、補正発明の「デュロメーター硬さ」は、Dタイプのデュロメーターによる測定値(D硬さ)であることは明らかであり、刊行物1記載の発明の「ショアーD硬度」は、補正発明の「デュロメーター硬さ」と同じである。
そうすると、両者は、
「台板上に接着剤層を介して化粧シートが積層されてなる化粧板において、前記接着剤層の硬度が前記台板の硬度を上回り、前記接着剤層がホットメルト接着剤からなり、前記接着剤層のデュロメーター硬さが前記台板のデュロメーター硬さよりも高い化粧板。」
の点で一致し、次の点で相違している。
相違点1:ホットメルト接着剤が補正発明では、一液湿気硬化型ホットメルト接着剤であるのに対し、刊行物1記載の発明では、熱圧法により接着するポリスチレン系の接着剤である点。
相違点2:前記接着剤層の厚みが、補正発明では50μm以上135μm以下であるのに対し、刊行物1記載の発明では厚みが限定されておらず、実施例には、補正発明の範囲に含まれる2.0ミル(約51μm)のものの他、厚さが1.25ミル(約31μm)のものも記載されている点。
相違点3:接着剤層のデュロメーター硬さが、補正発明では65?80でありかつ台板のデュロメーター硬さよりも少なくとも5以上高いのに対し、刊行物1記載の発明では、接着剤層のデュロメーター硬さの上限、台板のデュロメーター硬さとの差は限定されておらず、実施例には、デュロメーター硬さが81.5のもの、接着剤層と台板のデュロメーター硬さの差が5以下のもの(支持体の硬度が64.8で接着剤層の硬度が68のもの等)が含まれている点。

上記相違点1について検討すると、化粧板の製造において、常温で接着可能な一液湿気硬化型ホットメルト接着剤を用いることは、本願出願前周知であり(例えば、特開平8-25305号公報、特開平10-286931号公報参照)、刊行物1記載の発明において、ホットメルト接着剤として、熱圧法により接着するポリスチレン系の接着剤に代えて周知の一液湿気硬化型ホットメルト接着剤を採用することは当業者が容易になしうることである。

請求人は、請求の理由において、刊行物1記載の発明について「積層木材物品を製造するための従来の熱圧法を使用して、化粧上層を木材支持体もしくは農業用副産物支持体に結合するための、より高い硬度を有するホットメルト接着剤を提供するものであります。」と主張しているが、刊行物1には、硬化したときに台板より硬い接着剤を用いることにより、台板より硬い化粧板(積層構造体)を得ることができることが記載され(記載事項(1j)(1k))、また、化粧紙が損傷を受けることがあるとの問題点が解消されることが示唆されており(記載事項(1b))、このような作用効果は、熱圧法を使用して接着されたか否かに拘わらず奏されるものであるから、他の接着剤であっても、台板より硬い接着剤を用いれば硬い化粧板が得られ、化粧板の耐傷性が向上することは容易に予測することができ、他の接着剤を採用することが格別困難であるとはいえない。

上記相違点2について検討すると、接着剤の厚さを、接着剤の性能が安定して発揮できるものとすることは当然であり、50μm以上135μm以下とした点は接着剤の種類等に応じて適宜に設定しうることであり、またその数値範囲は、刊行物1記載の発明とも重複しているものであって、格別のものとはいえない。

上記相違点3について検討すると、刊行物1には、パーティクルボードのショアーD硬度は約55であるから、接着剤コーティングまたは接着剤フィルムのショアーD硬度は、より好ましくは少なくとも65、最も好ましくは少なくとも67でなければならないと記載され(記載事項(1g))、実施例には、硬さ59.3のパーティクルボード、硬さ64.8のファイバーボードに対して、硬さ68?81.5の接着剤層を設けることが記載されており、台板のデュロメーター硬さの差を5以上とすることが実質的に示されている。
また、補正発明において、接着剤層の硬度の上限をデュロメーター硬さ80としたのは、あまり硬くなると柔軟性を失って硬くなるためであって(段落【0015】)、80という数値に臨界的意義があるものとはいえない。そして、刊行物1記載の発明の実施例で、最も硬い接着剤層は硬さ81.5と80に近いものであり、接着剤層のデュロメーター硬さを65?80とすることは、台板の硬さ、接着剤層と台板の硬さの差及び接着剤の性能を考慮して適宜設定しうることである。

そして、補正発明の効果は、刊行物1記載の発明及び上記周知技術から容易に予測することができるものであり、補正発明は、刊行物1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定、及び同法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成19年4月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成18年9月15日付けの手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される、上記第2 1.に記載したとおりのものである。

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記第2 3.(1)に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願請求項1に係る発明は、上記第2 3.で検討した補正発明を特定するために必要な事項である「接着剤層の厚み」の範囲を拡大し、「接着剤層の硬度」と「台板の硬度」の差についての数値限定を省略したものに相当する。
そして、本願請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する補正発明が、上記第2 3.(2)で述べたとおり、刊行物1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願請求項1に係る発明も、同様の理由により、刊行物1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、請求人は回答書に添付して特許請求の範囲の補正案を提出し、「化粧シート」をポリオレフィン系樹脂化粧シートに限定し、接着剤層を、化粧シートと同系色に着色されたものに限定し、さらに化粧シート面から接着剤層内に達し、台板に達しない溝加工及び/又は面取り加工が施されているものに限定しようとしているが、化粧板の表面化粧シートとして、ポリオレフィン系樹脂化粧シートは本願出願周知であり(例えば、上記特開平10-286931号公報参照)、また、接着剤層を化粧シートと同系色に着色し、化粧シート面から接着剤層内に達し、台板に達しない溝加工を施すことは、審尋で提示した特開昭56-21805号公報に記載されている公知技術を適用して適宜なしうることであり、補正案の請求項1及び2に係る発明も、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、刊行物1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-14 
結審通知日 2008-11-18 
審決日 2008-12-01 
出願番号 特願2002-326460(P2002-326460)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B27D)
P 1 8・ 121- Z (B27D)
P 1 8・ 57- Z (B27D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関根 裕  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 宮崎 恭
草野 顕子
発明の名称 化粧板  

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