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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1191205
審判番号 不服2007-9670  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-05 
確定日 2009-01-15 
事件の表示 特願2003-278757号「包装材料」拒絶査定不服審判事件〔平成17年2月17日出願公開、特開2005-41539号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続の経緯
本願は、平成15年7月24日の出願であって、平成18年6月8日付け拒絶理由通知に応答して、平成18年8月17日付けで明細書を対象とする手続補正がなされたが、平成19年2月28日付けで拒絶査定され、平成19年4月5日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2. 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成18年8月17日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1は、次のとおり記載されている。

「基材の少なくとも一方の表面の全部又は一部に粘着剤層が形成され、さらに該粘着剤層の上の全部又は一部にヒートシール剤層が形成されたヒートシール用の包装材料であって、粘着剤層とヒートシール剤層の接着強度はヒートシール剤層とヒートシールの対象となる層とのヒートシール強度よりも小さく、該粘着剤はスチレン1?50質量%とジエン系炭化水素99?50質量%からなるランダム共重合体の水素添加物を含んでなるものである包装材料。」(以下この発明を「本願発明」という。)

3. 刊行物及び刊行物に記載された発明
原査定の拒絶理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平11-171250号公報(以下「刊行物1」という。)の段落【0004】、【0006】には、以下の事項が図面とともに記載されている。
A.「【0004】・・・
3.粘着性樹脂中間層を介した層間接着力(外層樹脂層と粘着性樹脂中間層との層間剥離強度、又は粘着性樹脂中間層と内層ヒートシール性樹脂層との層間剥離強度、もしくは粘着性中間樹脂層における凝集破壊強度)が、ヒートシールされた容器本体と蓋材の層間接着力よりも小さくなるように構成したことを特徴とする1又は2に記載の繰り返し開閉可能な密封プラスチック容器。・・・」
B.「【0006】このプラスチック容器1は、外層樹脂層4及び内層ヒートシール性樹脂層5からなる2層構造の積層体により構成された容器本体2と、外層樹脂層4、粘着性樹脂中間層6及び内層ヒートシール性樹脂層5からなる3層構造の積層体により構成された蓋材3からなる。容器本体2と蓋材3は、容器本体2の上面に設けたフランジ部10で容器全周面にわたってヒートシールされている。」
C.「【0018】・・・粘着性樹脂中間層を構成する材料としては特に制限はないが、通常は天然ゴム、天然ゴム変性物、合成ゴム等のゴム系樹脂、(変性)ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等が使用される。」
(下線は当審において付与したものである。)

そして、上記記載、及び図面から次の事項は明白である。
・特に、摘記事項Bから、容器本体2と蓋材3とは、容器本体2に設けられた内層ヒートシール性樹脂層5と蓋体3に設けられた内層ヒートシール性樹脂層5とがヒートシールされることで接着すること。
・特に、摘記事項Aから、「粘着性樹脂中間層6」と「蓋材の内層ヒートシール性樹脂層5」との接着強度は、容器本体2と蓋材3の層間接着力、すなわち「蓋材の内層ヒートシール性樹脂層5」と「容器本体の内層ヒートシール性樹脂層5」のヒートシール強度よりも小さいこと。
・特に、摘記事項Bから、蓋材3は外層樹脂層4、粘着性樹脂中間層6及び内層ヒートシール性樹脂層5からなる3層構造をしているから、外層樹脂層4の一方の表面の全部又は一部に粘着性樹脂中間層6が形成されており、さらに該粘着性樹脂中間層6の上の全部又は一部に内層ヒートシール性樹脂層5が形成されていること。

したがって、刊行物1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「外層樹脂層4の一方の表面の全部又は一部に粘着性樹脂中間層6が形成され、さらに該粘着性樹脂中間層6の上の全部又は一部に内層ヒートシール性樹脂層5が形成されたヒートシール用の蓋材3であって、粘着性樹脂中間層6と蓋材の内層ヒートシール性樹脂層5の接着強度は蓋材の内層ヒートシール性樹脂層5と容器本体の内層ヒートシール性樹脂層5とのヒートシール強度よりも小さく、該粘着性樹脂は(変性)ポリオレフィン系樹脂である蓋材。」

4. 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、その文言上の意義、構造及び機能等からみて、引用発明における「粘着性樹脂中間層6」は、本願発明の「粘着剤層」に相当し、以下同様に、「内層ヒートシール性樹脂層5」は「ヒートシール剤層」に、「容器本体の内層ヒートシール性樹脂層5」は「ヒートシールの対象となる層」に、「粘着性樹脂」は「粘着剤」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「外層樹脂層4」は、本願発明の「基材」に相当するから、引用発明の「外層樹脂層4の一方の表面」は、本願発明の「基材の少なくとも一方の表面」に含まれる。
さらに、引用発明の「蓋材」は、本願発明の「包装材料」に含まれる。
したがって、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
〈一致点〉
「基材の少なくとも一方の表面の全部又は一部に粘着剤層が形成され、さらに該粘着剤層の上の全部又は一部にヒートシール剤層が形成されたヒートシール用の包装材料であって、粘着剤層とヒートシール剤層の接着強度はヒートシール剤層とヒートシールの対象となる層とのヒートシール強度よりも小さい包装材料。」
〈相違点〉
本願発明においては、「粘着剤はスチレン1?50質量%とジエン系炭化水素99?50質量%からなるランダム共重合体の水素添加物を含んでなるもの」であるのに対して、引用発明においては粘着性樹脂は(変性)ポリオレフィン系樹脂である点。

5. 相違点についての検討及び判断
本願発明の相違点に係る構成の技術的意義について検討する。
本願の明細書の段落【0005】、【0007】、【0009】、【0010】には、本願発明の技術的課題に関して次のように記載されている。
a.「【0005】
本発明の目的は、ほぼ完全にヒートシールすることが可能で且つ再粘着性が優れた包装材料を提供することである。本発明の他の目的は加工が簡単な蓋材を提供することである。」
b.「【0007】
本発明の包装材料は、ヒートシール強度が優れており、かつ一旦剥離した後も容易に再粘着可能である。また、容器の蓋材として用いる場合に易封加工部を設けることが不要で製造加工が容易である。また、蓋のみならず袋等の包装材料としても使用することができる。」
c.「【0009】
本発明においては、粘着剤層ヒートシール剤層との層間接着強度はヒートシール剤層とヒートシールの対象となる層とのヒートシール強度よりも相対的に小さくなるように、ヒートシール剤と粘着剤を選択する。特に粘着剤の選択が重要である。」
d.「【0010】
このような粘着剤としては、例えば、スチレン1?50質量%とジエン系炭化水素99?50質量%からなるランダム共重合体の水素添加物が例示できる。好ましくはASTM D1238(230℃、2.16kg)によるメルトフロー・インデックスが2?10のものである。ジエン系炭化水素としてはブタジエン、イソプレン等が例示できる。このようなスチレン・ジエンランダム共重合体の水素添加物としては、例えばJSR株式会社のDYNARON(登録商標)HSBRシリーズが挙げられる。このようなスチレンとジエン系炭化水素からなるランダム共重合体の水素添加物は、一旦粘着させた後剥離したものを、再度粘着させても、粘着強度はあまり変化せず、粘着と剥離を繰り返し行うことができる。スチレン・ジエンランダム共重合体の水素添加物は、ポリオレフィン樹脂のブレンド等により変性されていてもよい。ポリオレフィン樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとα-オレフィンの共重合体、エチレン-メチル(メタ)アクリレート共重合体、アイオノマー等が用いられる。スチレン・ジエンランダム共重合体の水素添加物とポリオレフィン樹脂の比率は、質量比で100?60:0?40が好ましい。」

これらの記載からみて、本願発明の相違点に係る構成の技術的意義は、粘着剤層とヒートシール剤層との層間接着強度を、ヒートシール剤層とヒートシールの対象となる層とのヒートシール強度よりも相対的に小さくすることで、剥離時に分離する界面を決定するとともに、粘着剤層とヒートシール剤層とを繰り返し粘着・剥離可能とすることにあると解することができる。
しかしながら、再粘着性を有する粘着剤として、スチレン1?50質量%とジエン系炭化水素99?50質量%からなるランダム共重合体の水素添加物を含んでなるものを用いることは、特開2003-112768号公報、特開2003-129015号公報、特開平7-241960号公報、特開2003-119435号公報に記載されているように従来より周知の技術である。
したがって、引用発明の粘着剤として、(変性)ポリオレフィン系樹脂に代えて、「スチレン1?50質量%とジエン系炭化水素99?50質量%からなるランダム共重合体の水素添加物を含んでなるもの」を採用し、本願発明の相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、本願発明を全体構成でみても、その作用効果は当業者の予測の範囲内であって格別顕著なものとはいえない。

6. むすび
以上のとおり、本願発明は、上記刊行物1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-12 
結審通知日 2008-11-18 
審決日 2008-12-04 
出願番号 特願2003-278757(P2003-278757)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 勝司  
特許庁審判長 松縄 正登
特許庁審判官 遠藤 秀明
佐野 健治
発明の名称 包装材料  
代理人 佐々 紘造  

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