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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1191208
審判番号 不服2007-12988  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-07 
確定日 2009-01-15 
事件の表示 特願2003- 1140「画像処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月29日出願公開、特開2004-213464〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年1月7日の出願であって、平成19年3月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月6日付けで手続補正がなされたものであ
る。

2.平成19年6月6日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年6月6日付けの手続補正を却下する。

[理由]
2-1.補正の目的
平成19年6月6日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、本件補正前の平成19年3月12日付けの手続補正書の請求項1の記載
「ビットマップ形式の画像データを圧縮した圧縮画像データが記憶されると共に、前記ビットマップ形式の画像データの各々に対応する演算係数データを圧縮した圧縮演算係数データが記憶された記憶手段と、
前記記憶手段から、圧縮画像データおよび圧縮演算係数データを読み出す読出手段と、
前記読出手段によって読み出された各データを伸張する伸張手段と、
前記伸張された画像データに、伸張された演算係数データの値に対応する演算を行った後に他の画像データと合成して表示データを得る演算手段と、
を具備し、前記表示データに基づいて表示を行う画像処理装置であって、
前記圧縮画像データおよび圧縮演算係数データは、複数の工程からなり各工程を所定の順序で処理する同一のアルゴリズムに従い圧縮されたものであり、その圧縮方法は可逆圧縮と非可逆圧縮が選択可能とされた
ことを特徴とする画像処理装置。」
から、
「ビットマップ形式の画像データを圧縮した圧縮画像データが記憶されると共に、前記ビットマップ形式の画像データの各々に対応する演算係数データを圧縮した圧縮演算係数データが記憶された記憶手段と、
前記記憶手段から、圧縮画像データおよび圧縮演算係数データを読み出す読出手段と、
前記読出手段によって読み出された各データを伸張する伸張手段と、
前記伸張された画像データに、伸張された演算係数データの値に対応する演算を行った後に他の画像データと合成して表示データを得る演算手段と、
を具備し、前記表示データに基づいて表示を行う画像処理装置であって、
前記圧縮画像データおよび圧縮演算係数データは、複数の工程からなり各工程を所定の順序で処理する同一のアルゴリズムに従い圧縮されたものであり、その圧縮方法は可逆圧縮と非可逆圧縮が選択可能とされ、
前記複数の工程は、
前記画像データおよび前記演算係数データを、それぞれがm×nドットで構成される複数の2次元のブロックに分ける第1の工程と、
各ブロックの前記画像データおよび前記演算係数データを、予め決められたスキャン方法に基づきスキャンして1次元ドット列に並べ替える第2の工程と、
前記第2の工程によって並べ替えられた1次元ドット列を圧縮する第3の工程と、
前記第2、第3の工程をスキャン方法を変えて繰り返し実行する第4の工程と、
圧縮後のデータ量が最も小さいスキャン方法を選択し、選択したスキャン方法およびそのスキャン方法に基づく圧縮データを前記圧縮画像データおよび前記圧縮演算係数データとして出力する第5の工程と、からなる
ことを特徴とする画像処理装置。」
とされた。
本件補正前の「工程」は、複数あること及びそれらが所定の順序で処理されることが示されているだけで、その内容については何らの特定もされていない。
本件補正後の「工程」は、「第1の工程」ないし「第5の工程」からなること、及び「第1の工程」ないし「第5の工程」のそれぞれの処理の内容が具体的に特定されている。
そのため、本件補正後の「第1の工程」ないし「第5の工程」のそれぞれの処理の内容が、本件補正前のどのような事項を限定したものか不明であ
る。
たとえば、「第1の工程」の「前記画像データおよび前記演算係数データを、それぞれがm×nドットで構成される複数の2次元のブロックに分け
る」処理が、本件補正前のどのような処理を限定したものか特定することができない。
したがって、「第1の工程」ないし「第5の工程」のそれぞれの処理の内容を具体的に特定する本件補正は、発明を特定するために必要な事項を限定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。
このことは、たとえば、
「【請求項1】複数の工程からなる圧縮方法。」
という特許請求の範囲の記載を、
「【請求項1】画像データm×nドットで構成される複数の2次元のブロックに分ける第1の工程と、
各ブロックの前記画像データを、予め決められたスキャン方法に基づきスキャンして1次元ドット列に並べ替える第2の工程と、
前記第2の工程によって並べ替えられた1次元ドット列を圧縮する第3の工程と、
前記第2、第3の工程をスキャン方法を変えて繰り返し実行する第4の工程と、
圧縮後のデータ量が最も小さいスキャン方法を選択し、選択したスキャン方法およびそのスキャン方法に基づく圧縮データを前記圧縮画像データとして出力する第5の工程と、からなる圧縮方法。」
と補正することが、発明を特定するために必要な事項を限定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえないことからも明らかである。
そして、本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正、又は明りようでない記載の釈明を目的とするものでないことは明らかであり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項各号のいずれの目的にも該当しない。

2-2.独立特許要件
上記のように本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号のいずれの目的にも該当しないものであるが、仮に、発明を特定するために必要な事項を限定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとして、前記2-1.の本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2-2-1.引用例
原査定の拒絶理由に引用された特開2002-92628号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がなされている。

(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 圧縮された色データを伸張するデコード手段を有するゲームシステムであって、
色データとは異なる第1のデータを色データに設定し圧縮することで生成された圧縮データを、前記デコード手段を用いて伸張し、得られた伸張データを第1のデータに設定する手段と、
設定された第1のデータを用いて、画像を生成するための所与の処理を行う手段と、
を含むことを特徴とするゲームシステム。
【請求項2】 請求項1において、
前記第1のデータがα値であり、
画像データが含む色データを圧縮することで生成された第1の圧縮データ
を、前記デコード手段を用いて伸張し、色データを得ると共に、前記画像
データが含むα値を色データに設定し圧縮することで生成された第2の圧縮データを、前記デコード手段を用いて伸張し、得られた伸張データをα値に設定し、
得られた色データとα値とを用いたα合成処理を行うことを特徴とするゲームシステム。」

(2)「【0027】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて説明する。
【0028】1.構成
図1に、本実施形態のゲームシステム(画像生成システム)の機能ブロック図の一例を示す。なお同図において本実施形態は、少なくとも処理部100を含めばよく(或いは処理部100と記憶部170を含めばよく)、それ以外のブロックについては任意の構成要素とすることができる。
【0029】操作部160は、プレーヤが操作データを入力するためのものであり、その機能は、レバー、ボタン、マイク、或いは筺体などのハード
ウェアにより実現できる。
【0030】記憶部170は、処理部100や通信部196などのワーク領域となるもので、その機能はRAMなどのハードウェアにより実現できる。
【0031】情報記憶媒体180(コンピュータにより使用可能な記憶媒
体)は、プログラムやデータなどの情報を格納するものであり、その機能
は、光ディスク(CD、DVD)、光磁気ディスク(MO)、磁気ディス
ク、ハードディスク、磁気テープ、或いはメモリ(ROM)などのハード
ウェアにより実現できる。処理部100は、この情報記憶媒体180に格納される情報に基づいて本発明(本実施形態)の種々の処理を行う。即ち情報記憶媒体180には、本発明(本実施形態)の手段(特に処理部100に含まれるブロック)をコンピュータに実現(実行、機能)させるためのプログラムが格納され、このプログラムは、1又は複数のモジュール(オブジェクト指向におけるオブジェクトも含む)を含む。
【0032】なお、情報記憶媒体180に格納される情報の一部又は全部
は、システムへの電源投入時等に記憶部170に転送されることになる。また情報記憶媒体180には、本発明の処理を行うためのプログラム、画像
データ、音データ、表示物の形状データ、本発明の処理を指示するための情報、或いはその指示に従って処理を行うための情報などを含ませることができる。
【0033】表示部190は、本実施形態により生成された画像を出力するものであり、その機能は、CRT、LCD、或いはHMD(ヘッドマウントディスプレイ)などのハードウェアにより実現できる。」

(3)「【0043】処理部100は、デコード(伸張)部110、伸張
データ処理部120、ヒットチェック部122、移動制御部124、画像制御部126、テクスチャマッピング部130、陰面消去部132、α合成部134を含む。
【0044】ここで、デコード部110は、JPEG、MPEG等の圧縮方法で圧縮された色データを伸張(展開)する処理を行う。
【0045】例えば、データ圧縮は以下のようにして実現できる。
【0046】即ち、まずデータが複数のマクロブロックに分割される。そして、分割された各ブロックに対して、DCT(離散コサイン変換。広義に
は、アダマール変換、固有値変換等を含む直交変換)が施される。これにより、データが周波数(空間周波数)分解される。次に、DCTにより得られた各DCT係数(広義には直交変換係数)が量子化される。そして、ハフマン符号化(エントロピー符号化、可変長符号化)が行われ、これにより圧縮データが得られる。
【0047】一方、データの伸張は以下のようにして実現できる。
【0048】即ち、まず圧縮データが情報記憶媒体180から読み込まれ
る。或いは、圧縮データがネットワーク(伝送ライン、通信回線)、通信部196を介して外部から読み込まれる。デコード部110は、この読み込まれた圧縮データに対してハフマン復号化(エントロピー復号化、可変長復号化)を行う。次に、デコード部110は、ハフマン復号化後のデータに対して逆量子化を行う。そして、逆DCTを行い、これにより伸張データが得られる。
【0049】なおMPEG(MPEG2、MPEG4等)の場合に、例えば時間的相関関係を利用した予測符号化、予測復号化(動き補償フレーム間予測)を行ってもよい。
【0050】そして本実施形態では、元の画像データが含む色データ(例えばRGB)を圧縮することで生成された圧縮データ(ビットストリーム)をデコード部110を用いて伸張(展開)し、色データを得る。更に本実施形態では、元画像のデータが含むα値(広義には色データとは異なる第1の
データ)を色データに設定し圧縮することで生成された圧縮データ(ビットストリーム)を、色データ用のデコード部110を用いて伸張し、得られた伸張データをα値(第1のデータ)として設定する。このようにすること
で、色データとは異なるα値(第1のデータ)についても、圧縮された状態で情報記憶媒体180に記憶したりネットワーク、通信部196を介して外部から読み込んだりすることができるようになる。」

(4)「【0068】α合成部134は、α値を用いたα合成処理(αブレンディング、α加算又はα減算等)を行う。なお、α値(A値)は、各ピクセルに関連づけられて記憶されるデータであり、例えば色データ(RGB)以外のプラスアルファのデータである。α値は、半透明度(透明度又は不透明度と等価)、マスクデータ、バンプデータなどとして使用できる。」

(5)「【0073】2.1 画像データの構造
図2に、本実施形態により生成されたゲーム画像の例を示す。
【0074】このゲーム画像は、図3のF1、F2、F3に示すような3つのパーツの絵により構成されている。F1は背景の絵であり、F2は木(図2の画面左において上から下に横切る木)の絵であり、F3はキャラクタ
(登場人物)の絵である。
【0075】そして、図3のF2に示す木の絵の画像データは、図4のG1に示すような色データ(RGB)とG2に示すようなα値のデータとにより構成されている。また図3のF3に示すキャラクタの絵の画像データは、図4のG3に示すような色データとG4に示すようなα値のデータとにより構成されている。
【0076】より具体的には図3のF2の木の絵は、図4のG1の色データとG2のα値とをテクセルデータとして持つテクスチャを、例えば板状のポリゴン(広義にはプリミティブ面)にマッピングすることで表現されてい
る。同様に、図3のF3のキャラクタの絵は、図4のG3の色データとG4のα値とをテクセルデータとして持つテクスチャを、例えば板状のポリゴン(プリミティブ面)にマッピングすることで表現されている。
【0077】そして図4のG2、G4に示すように、木やキャラクタの輪郭の外側領域では、α値が透明に設定されており、木やキャラクタの輪郭の内側領域では、α値が不透明又は半透明に設定されている。これにより、図3のF2、F3に示すような木やキャラクタの絵を表現できる。また、例えば木やキャラクタの輪郭付近においてα値を透明から不透明に徐々に変化させることで、木やキャラクタの輪郭をぼやかすアンチエリアシングを実現で
き、ジャギーの発生等を低減できる。」

(6)「【0078】2.2 α値の圧縮
さて、例えば家庭用のゲームシステムなどにおいては、圧縮データを効率よく伸張するために、MPEG、JPEG用のデコード部を専用のハードウェアとして内蔵しているものもある。
【0079】ところが、この種のゲームシステムが有するデコード部は、色データ(RGB)のみを伸張処理の対象としており、α値などの色データ以外のデータについては伸張処理の対象としていないのが一般的である。その理由は以下の通りである。
【0080】即ち、この種のゲームシステムが有するデコード部は、ゲームのオープニング、幕間、エンディングで表示されるCGムービー(CG画
像)のデータを伸張するために設けられているのが通常である。そして、このようなCGムービーのデータは、α合成などのレンダリング処理が既に完了した後のデータ(いわゆるベタ絵のデータ)であり、α値などを含まない色データ(RGB)だけのデータになっている。従って、デコード部は、色データだけを伸張できれば十分であり、α値などの色データ以外のデータを伸張できる構成にはなっていない。
【0081】また、MPEG、JPEG方式では一般的に色データを圧縮及び伸張処理の対象としているため、これらのMPEG、JPEG方式でデータを伸張するデコード部も、沿革的に色データのみを伸張処理の対象とするようになっている。
【0082】以上のように、この種のゲームシステムが有するデコード部は色データのみを伸張処理の対象としているため、図4のG2、G4に示すようなα値などのデータについては伸張できない。従って、α値を圧縮して情報記憶媒体などに記憶しておくことができず、データの使用記憶容量を今一つ節約できないという課題があった。
【0083】このような課題を解決するために、本実施形態では次のような手法を採用している。
【0084】即ち、色データとは異なる第1のデータ(α値、ヒットチェック用データ、オブジェクトの移動制御用データ、オブジェクトの画像制御用データ又は奥行き値のデータ等)を色データに設定し圧縮することで生成された圧縮データを、例えば情報記憶媒体やネットワークから読み込む。そして、読み込まれた圧縮データをデコード部を用いて伸張し、得られた伸張データを第1のデータに設定し直す。そして、設定された第1のデータを用いて、画像を生成するための種々の処理(α合成、ヒットチェック、オブジェクトの移動制御又はオブジェクトの画像制御の処理等)を行う。
【0085】より具体的には図5に示すように、元画像データが含む色データをエンコード部で圧縮することで生成される圧縮データCP1(ビットストリーム)と、元画像データが含むα値(広義には第1のデータ)を色データに設定してエンコード部で圧縮することで生成された圧縮データCP2とを用意する。
【0086】そして、圧縮データCP1をデコード部で伸張したデータEX1に基づき色データを得る。また、圧縮データCP2をデコード部で伸張したデータEX2をα値に設定することで、α値を得る。そして、得られた色データとα値とを用いてα合成処理を行うことで、図2に示すようなゲーム画像を生成する。
【0087】このようにすることで、デコード部の伸張処理の対象とはならないα値(第1のデータ)についても、情報記憶媒体に圧縮して記憶しておくことができるようになる。従って、データの使用記憶容量を節約できるようになり、より高品質な画像を少ないデータ使用記憶容量で生成できる。」

また、図5には、「色データ」を「色データ用」とされた「エンコード部(圧縮)」で「圧縮データCP1」とするとともに、「α値(第1のデー
タ)」を「色データとして圧縮」として同じ「エンコード部(圧縮)」で
「圧縮データCP2」とし、「圧縮データCP1」及び「圧縮データCP
2」を「色データ用」とされた同じ「デコード部(伸長)」で「伸長データEX1」及び「伸長データEX2」とし、「伸長データEX1」は「色データ」とされ、「伸長データEX2」は「α値に設定」として「α値(第1のデータ)」とされ、その「色データ」及びその「α値(第1のデータ)」が「α合成処理」される「本実施形態の原理について説明するための図」が示されている。

したがって、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「画像データを構成する色データをエンコード部で圧縮した圧縮データCP1、及び画像データの各ピクセルに関連づけられて記憶されるα値を前記エンコード部で色データとして圧縮した圧縮データCP2とが、情報記憶媒体から読み込まれ記憶部に転送され、
前記圧縮データCP1及び前記圧縮データCP2をデコード部で伸長し、
伸長された色データ及び伸長されたα値とを用いてα合成処理を行い、複数のパーツの絵により構成されるゲーム画像を生成し、
生成した画像の表示を行うゲームシステム。」

2-2-2.対比
引用発明の「画像データを構成する色データをエンコード部で圧縮した圧縮データCP1」及び「画像データの各ピクセルに関連づけられて記憶されるα値を前記エンコード部で色データとして圧縮した圧縮データCP2」
は、それぞれ本願補正発明の「ビットマップ形式の画像データを圧縮した圧縮画像データ」及び「前記ビットマップ形式の画像データの各々に対応する演算係数データを圧縮した圧縮演算係数データ」に対応し、引用発明の「圧縮データCP1」及び「圧縮データCP2」は、情報記憶媒体から読み込まれ記憶部に転送されるので、引用発明は本願補正発明の「記憶手段」と同様の機能を有するといえる。
引用発明の「デコード部」は本願補正発明の「伸張手段」に対応し、その「デコード部」で「圧縮データCP1」及び「圧縮データCP2」を伸長するので、引用発明は、「デコード部」で伸長するための「圧縮データCP
1」及び「圧縮データCP2」を読み出す、本願補正発明の「読出手段」と同様の機能を有するといえる。
引用発明は、「伸長された色データ及び伸長されたα値とを用いてα合成処理を行い、複数のパーツの絵により構成されるゲーム画像を生成」するので、本願補正発明の「演算手段」と同様の機能を有するといえる。
引用発明の「α値」は、色データを圧縮するエンコード部と同じエンコード部で、色データとして圧縮されるので、「色データ」と「α値」とは同一のアルゴリズムに従い圧縮されたものといえる。
引用発明は、α合成処理を行い、複数のパーツの絵により構成されるゲーム画像を生成し、生成した画像の表示を行うゲームシステムであるから、画像処理装置といえるものである。
したがって、本願補正発明と引用発明とを対比すると、次の点で一致す
る。

「ビットマップ形式の画像データを圧縮した圧縮画像データが記憶されると共に、前記ビットマップ形式の画像データの各々に対応する演算係数データを圧縮した圧縮演算係数データが記憶された記憶手段と、
前記記憶手段から、圧縮画像データおよび圧縮演算係数データを読み出す読出手段と、
前記読出手段によって読み出された各データを伸張する伸張手段と、
前記伸張された画像データに、伸張された演算係数データの値に対応する演算を行った後に他の画像データと合成して表示データを得る演算手段と、
を具備し、前記表示データに基づいて表示を行う画像処理装置であって、
前記圧縮画像データおよび圧縮演算係数データは、同一のアルゴリズムに従い圧縮されたものである
ことを特徴とする画像処理装置。」

また次の点で相違する。

相違点1
本願補正発明は、圧縮のアルゴリズムについて「複数の工程からなり各工程を所定の順序で処理する」としているのに対して、引用発明にはそのような特定がない点。

相違点2
本願補正発明は、圧縮のアルゴリズムについて「その圧縮方法は可逆圧縮と非可逆圧縮が選択可能とされ」としているのに対して、引用発明にはそのような特定がない点。

相違点3
本願補正発明は、圧縮のアルゴリズムについて
「前記複数の工程は、
前記画像データおよび前記演算係数データを、それぞれがm×nドットで構成される複数の2次元のブロックに分ける第1の工程と、
各ブロックの前記画像データおよび前記演算係数データを、予め決められたスキャン方法に基づきスキャンして1次元ドット列に並べ替える第2の工程と、
前記第2の工程によって並べ替えられた1次元ドット列を圧縮する第3の工程と、
前記第2、第3の工程をスキャン方法を変えて繰り返し実行する第4の工程と、
圧縮後のデータ量が最も小さいスキャン方法を選択し、選択したスキャン方法およびそのスキャン方法に基づく圧縮データを前記圧縮画像データおよび前記圧縮演算係数データとして出力する第5の工程と、からなる」
と具体的な処理の内容を付加しているのに対して、引用発明にはそのような特定がない点。

2-2-3.相違点に対する判断
相違点1について
方法は普通、複数の工程からなり各工程を所定の順序で処理するものであり、圧縮方法であってもそのようにすることが特別なこととはいえないか
ら、引用発明にはそのような特定がないとしても、その点に実質的な相違はない。

相違点2について
複数の方法を選択可能とすることに格別の点はなく、圧縮方法に可逆圧縮と非可逆圧縮があることは周知のことであるから、引用発明において相違点2を本願補正発明のようにすることに困難な点はない。

相違点3について
画像データを2次元のブロックに分けて、各ブロックをスキャンして1次元のデータにして圧縮する場合に、適切なスキャン方法を選択することは、下記のように周知のことである。
したがって、引用発明において相違点3を本願補正発明のようにすることに困難な点はない。



周知例1.特開平10-93966号公報
周知例2.特開平7-162859号公報
周知例3.特開2002-27474号公報
周知例4.特開平6-125278号公報

上記のとおり、引用発明において各相違点を本願補正発明のようにすることに困難な点はないから、仮に、本件補正が発明を特定するために必要な事項を限定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても、本願補正発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないので、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものである。

2-3.むすび
前記2-1.のとおり、本件補正は、発明を特定するために必要な事項を限定する特許請求の範囲の減縮、請求項の削除、誤記の訂正、又は明りようでない記載の釈明を目的とするものではないから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであ
る。

3.本願発明について
平成19年6月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年3月12日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、前記2-1.のとおりのものである。

原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-92628号公報の記載事項は、前記2-2-1.のとおりである。
そして、本願補正発明では「第1の工程」ないし「第5の工程」として、それぞれの処理の具体的な内容が付加されているのに対して、本願発明は、そのような処理の具体的な内容を付加する限定がないものであるから、本願補正発明と同様、引用発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-12 
結審通知日 2008-11-18 
審決日 2008-12-01 
出願番号 特願2003-1140(P2003-1140)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G06T)
P 1 8・ 121- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 月野 洋一郎  
特許庁審判長 加藤 恵一
特許庁審判官 畑中 高行
原 光明
発明の名称 画像処理装置  
代理人 志賀 正武  
代理人 渡邊 隆  

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