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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F |
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管理番号 | 1191340 |
審判番号 | 不服2005-21729 |
総通号数 | 111 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-11-10 |
確定日 | 2009-01-14 |
事件の表示 | 特願2001- 30216「パチンコ機の球受皿」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月13日出願公開、特開2002-224375〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 平成13年 2月 6日 出願 平成16年 5月17日 拒絶理由通知 平成16年 7月26日 手続補正書 平成16年10月29日 拒絶理由通知(最後) 平成17年 1月11日 手続補正書 平成17年 9月30日 補正却下(平成17年1月11日手続補正書) 拒絶査定 平成17年11月10日 審判請求 平成17年12月 7日 手続補正書 平成20年 5月30日 補正却下(平成17年12月7日手続補正書) 拒絶理由通知(最後) 平成20年 8月11日 手続補正書 第2.平成20年8月11日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年8月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 平成17年12月7日付け手続補正書及び平成17年1月11日付け手続補正書は却下されているので、本件補正は、平成16年7月26日付け手続補正書で補正された明細書を補正するものであって、補正前の請求項1を引用する補正前の請求項10を補正して新たな請求項1とし、補正前の請求項4を引用する補正前の請求項10を補正して新たな請求項2とし、補正前の他の請求項を削除するものである。 そして、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「前板の前面に球排出口から流入するパチンコ球が貯留される皿部が設けられ、該貯留されたパチンコ球を流出口へと送り出すパチンコ機の球受皿であって、 前記皿部は、底部と、前記底部の前記前板側に溝状に削るようにして形成され且つ流出口に向かうに従い漸次深くなるように下傾させた整流通路と、前記整流通路の下流側であり前記底部の端部に緩やかな曲面を有する段差を介して該底部のパチンコ球を該整流通路に合流させるようにした棚部とからなり、 さらに前記整流通路は、その中流部で少なくともパチンコ球の半球の深さを有すると共にパチンコ球が1列に整列する幅でパチンコ球が幅方向に移動可能な広さとしたことを特徴とするパチンコ機の球受皿。」(以下、「本願補正発明」という。)と補正された。 また、本件補正により、特許請求の範囲の請求項2は、 「前板の前面に球排出口から流入するパチンコ球が貯留される皿部と該皿部の前面を覆うカバー部材とが設けられ、該貯留されたパチンコ球を流出口へと送り出すパチンコ機の球受皿であって、 前記皿部は、底部と、前記底部の前記カバー部材側に沿って溝状に削るようにして形成され且つ流出口に向かうに従い漸次深くなるように下傾させた整流通路とからなり、 さらに前記整流通路は、その中流部で少なくともパチンコ球の半球の深さを有すると共にパチンコ球が1列に整列する幅でパチンコ球が幅方向に移動可能な広さとしたことを特徴とするパチンコ機の球受皿。」と補正された。 請求項1において、上記補正は、補正前の請求項1を引用する補正前の請求項10に対し、「皿部」が「底部」と「整流通路」と「棚部」からなることを明りょうにし、補正前の「球出口」を発明の詳細な説明に用いられている「流出口」と補正して発明を明りょうにするものであり、更に「整流通路」に関する補正前の「その中間あたりでパチンコ球のほぼ半球程度の深さを有する」を「その中流部で少なくともパチンコ球の半球の深さを有する」と補正して発明を明りょうにするものと認める。また、上記補正は、補正前の「パチンコ機の球受皿」について「貯留されたパチンコ球を流出口へと送り出す」との限定を行い、補正前の「整流通路」について「削るようにして(形成)」及び「パチンコ球が1列に整列する幅で」との限定を行い、「棚部」について「パチンコ球を該整流通路に合流」を「段差を介して」させるとの限定をするとともに「合流させる」「パチンコ球」を「皿部のパチンコ球」から「底部のパチンコ球」に限定するものである。 請求項2において、上記補正は、補正前の請求項4を引用する補正前の請求項10に対し、「皿部」が「底部」と「整流通路」とからなることを明りょうにし、補正前の「球出口」を発明の詳細な説明に用いられている「流出口」と補正して発明を明りょうにするものであり、更に「整流通路」に関する補正前の「その中間あたりでパチンコ球のほぼ半球程度の深さを有する」を「その中流部で少なくともパチンコ球の半球の深さを有する」と補正して発明を明りょうにするものと認める。また、上記補正は、補正前の「パチンコ機の球受皿」について「貯留されたパチンコ球を流出口へと送り出す」との限定を行い、補正前の「整流通路」について「削るようにして(形成)」及び「パチンコ球が1列に整列する幅で」との限定を行うものである。 以上により、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(上記改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2.引用文献 平成20年5月30日付けの当審の拒絶の理由に引用された特開平11-76554号公報(公開日:平成11年3月23日)(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。 ・記載事項1 「表機構板の正面に、前方に向けて突設され、左右の一端から他端に向けて下り傾斜した底面を有する凹状の貯留部を上面に形成し、該貯留部内の一端側に臨ませて開口した球排出口から排出された遊技球を貯留部内に貯留し、この貯留した遊技球を貯留部の他端に開口した球送出口から球供給装置側に供給する球供給皿を備えた遊技機において、 前記球供給皿は、 貯留部内に設けられて、底面が球送出口に向けて下り傾斜し、遊技球を徐々に整列して球送出口の手前では一列に整列させる整列部と、 整列部の前方に隣接して設けられ、上面の案内面が整列部底面の傾斜方向とは逆方向に下り傾斜して、傾斜下端部分では貯留部底面と連続し、傾斜上端部分では整列部底面との間で案内面が高くなる段差が形成される補助貯留部とを少なくとも備え、 前記補助貯留部上の遊技球を、案内面の下り傾斜により、整列部における遊技球の進行方向とは逆方向に案内するようにしたことを特徴とする遊技機。」(【特許請求の範囲】【請求項1】) ・記載事項2 「皿本体32の皿部32Bは、左端(図5中、左側に相当)から右端(同右側に相当)に向かって緩やかに下り傾斜した底面50を有している。この底面50の周縁は、上方に向けて立設した壁部51や取付基板31の前面により区画してあり、これらの底面50、壁部51、及び取付基板31の前面が貯留部23を構成する。」(段落【0023】) ・記載事項3 「そして、この貯留部23における左端側(即ち、上流側)には、取付基板31に開口した球排出口36を臨ませてある。この球排出口36は、接続管52(図2参照)等を通じて、パチンコ機本体11に設けた球排出機構(図示せず)に連通しており、貸し球或いは賞球として球排出機構から排出された遊技球が、この球排出口36を通じて貯留部23内に流入する。また、貯留部23における右端(即ち、下流端)には、取付基板31に開口した球送出口37を臨ませてある。この球送出口37は、貯留部23内に一旦貯留された遊技球の出口であり、この球送出口37から排出された遊技球は、一列に連なった状態で球供給装置に供給される。」(段落【0024】) ・記載事項4 「また、この貯留部23内における右端側(即ち、球送出口37側である下流側)には、整列部53を設けてある。この整列部53は、底面50と後述する補助貯留部23との間の段差壁面54と、取付基板31の前面とにより構成されている。具体的には、段差壁面54を右端側(即ち、球送出口37側である下流側)に行くにしたがって徐々に取付基板31側(即ち、表機構板側である後方側)に近づけ、即ち、球の流下方向に対する流路の幅を次第に狭め、球送出口37付近においては、段差壁面54を、遊技球の直径よりもやや広い間隔を隔てて取付基板31の前面と略平行に設けてある。従って、球送出口37に向かって流下する遊技球は、この整列部53により徐々に列数が減らされて、球送出口37の手前では一列に整列する。」(段落【0025】) ・記載事項5 「なお、この球均し部55の手前においては、一列に整列された遊技球列の上に載った上段の遊技球は、自重により、進行方向前方の遊技球については前進を促進すると共に後方の遊技球の前進を抑制しようとするので、球均し部55によらなくとも、自然に、遊技球同士の間に形成された隙間に割り込んで下段に合流したりもする。」(段落【0028】) ・記載事項6 「この他に、貯留部23内には、補助貯留部61と誘導棚部62とを設けてある。これらの補助貯留部61と誘導棚部62は、整列部53の手前側、即ち、皿状部24Bの上面における前方右側部分に設けてあり、遊技者が下皿26や球箱に貯留された遊技球を貯留部23に投入する際に、遊技球を投じ易くする。」(段落【0032】) ・記載事項7 「まず、補助貯留部61について説明する。この補助貯留部61は、図5及び図6に示すように、整列部53の手前(即ち、前方)に隣接して設けてあり、この補助貯留部61の上面は、下り傾斜により遊技球を案内する案内面61Aとして機能する。具体的には、図8(a)?(g)、即ち、図5におけるA?G断面図に示すように、この案内面61Aは、整列部53側の底面50との間で案内面61Aが高くなる段差をつけた状態で形成されている。また、本実施形態においては、この案内面61Aは、球送出口37側である傾斜上端部分(球均し部55の始点)において、図8(a)に示すように、整列部53の底面50よりも球径の2個分程度上方に設けてあり、この傾斜上端部分から球排出口36側である左側に向けて(即ち、整列部53の下り傾斜方向とは反対向きに)緩やかに下り傾斜している。従って、案内面61Aと整列部53の底面50との間につけられた段差は、図8(b)乃至図8(f)に示すように、案内面61Aの傾斜上端部分から傾斜下端部分に向けて、徐々に小さくなる。そして、この案内面61Aの傾斜下端部分では、図8(g)に示すように、貯留部23の底面50と滑らかに連続している。従って、案内面61Aの下り傾斜によって補助貯留部61上の遊技球は、整列部53における遊技球の進行方向とは逆方向に案内され、傾斜下端部分で貯留部23の底面50に到達する。なお、この案内面61Aの傾斜下端は、貯留部23の底面50と滑らかに連続していることが好ましいが、底面50との間に案内面61Aが少し高い段差を設けても構わない。」(段落【0033】) ・記載事項8 「この段差壁面54は、上記したように整列部53の主要部を構成しており、遊技球を徐々に一列に整列させる。即ち、球送出口37側に行くにつれて段差壁面54を徐々に取付基板31側に近づけて形成し、球送出口37の手前においては(具体的には、図8(a)乃至図8(d)の範囲では)、段差壁面54は、遊技球の直径よりもやや広い間隔で取付基板31の表面と略平行に設けてある。」(段落【0035】) ・記載事項9 「そして、この段差壁面54の高さに関し、遊技球が一列に整列している部分については、遊技球の直径よりも高いことが好ましい。換言すれば、整列部53で一列に整列している遊技球の列上に他の遊技球が載ることを許容し、横方向及び斜め上方向から他の遊技球が当接することを禁止する段差をつけて補助貯留部61の案内面61Aを設けることが好ましい。これは、一列に整列された遊技球の側面或いは斜め上部に、補助貯留部61の案内面61Aを転動してきた他の遊技球が当接することを防ぎ、一列に整列された遊技球の列上に、列の幅方向へのずれをできる限り小さくして他の遊技球を載せるためである。そして、一列に整列された遊技球の列上に他の遊技球が載ると、この他の遊技球は、自重或いは球均し部55により、下段の遊技球列内に円滑に合流する。」(段落【0036】) ・記載事項10 「次に、誘導棚部62について説明する。この誘導棚部62は、図5に示すように、補助貯留部61の前方側に隣接して設けてある。・・・なお、この誘導面62Aは、案内面61Aとの間に段差をつけて設けてある。」(段落【0037】) ・記載事項11 「球排出口36からさらなる遊技球が貯留部23内に流入すると、貯留部23内の下流側から遊技球が順次貯留される。そして、貯留部23がある程度遊技球で満たされると、図10に示すように、上流側の遊技球に押されて、案内面61Aの傾斜下端付近の遊技球は、補助貯留部61の案内面61A上に乗り上がる。即ち、この案内面61A上でも遊技球を貯留する。この貯留状態においては、図11に示すように、整列部53側の底面50と案内面61Aとの間につけられた段差により、案内面61A上の遊技球は、一列に整列した遊技球の横方向或いは斜め上方向には当接しない。また、案内面61A上から整列した遊技球の列上に落下した遊技球は、段差壁面54と取付基板31の前面とにより、列方向のずれを最小限に抑えられた状態で遊技球の列上に載るので、この落下してきた上段の遊技球は、下段の遊技球列の前進に伴って遊技球列内に円滑に割り込む。これは、一列に整列している部分の段差を遊技球の直径よりも高くしているためである。」(段落【0040】) ・記載事項12 図5及び図6には、誘導棚部62の誘導面62Aと、案内面61A及び底面50との間に緩やかな曲面を有する段差を設けてあることが図示されている。 以上の記載事項1?12を含む全記載及び図示によれば、引用文献には次の発明が記載されていると認められる。 「取付基板31の前面に球排出口36から流入する遊技球が貯留される皿部32Bが設けられ、該貯留された遊技球を球送出口37に向かって流下させるパチンコ機の球供給皿であって、 前記皿部32Bは、球送出口37に向かって緩やかに下り傾斜した底面50と、底面50と補助貯留部61との間の段差壁面54と取付基板31の前面とにより構成される整列部53と、底面50との間に緩やかな曲面を有する段差を介する誘導棚部62とからなり、 案内面61Aと整列部53の底面50との間につけられた段差壁面54は、案内面61Aの傾斜上端部分から傾斜下端部分に向けて徐々に小さくなり、案内面61Aの傾斜下端部分では貯留部23の底面50と滑らかに連続するものであって、遊技球が一列に整列している部分において遊技球の直径よりも高くしたものであり、 更に、段差壁面54は、球送出口37側である下流側に行くにしたがって徐々に取付基板31側に近づけ、即ち、球の流下方向に対する流路の幅を次第に狭め、球送出口37付近においては、段差壁面54を、遊技球の直径よりもやや広い間隔を隔てて取付基板31の前面と略平行に設けることによって、球送出口37に向かって流下する遊技球をこの整列部53により徐々に列数を減らさせ、球送出口37の手前では一列に整列させるようにした、 パチンコ機の球供給皿。」(以下、「引用発明」という。) 3.対比 本願補正発明と引用発明を対比する。 引用発明の「取付基板31」は本願補正発明の「前板」に相当し、以下同様に、「球排出口36」は「球排出口」に、「遊技球」は「パチンコ球」に、「皿部32B」は「皿部」に、「球送出口37」は「流出口」に、「球供給皿」は「球受皿」に、「底面50」は「底部」に相当する。 引用発明について以下のことがいえる。 引用発明の「整列部53」は、皿部32Bに貯留された遊技球を1列に整列させて球送出口37へと送り出しているものであるから、本願補正発明の「整流通路」に相当する。 そして、「整列部53」は、段差壁面54と取付基板31の前面とにより構成されるものであるから取付基板31に沿って形成された溝状となっていることは明らかである。また、「段差壁面54は案内面61Aの傾斜上端部分から傾斜下端部分に向けて徐々に小さく」なるものであって、底面50は「球送出口37に向かって緩やかに下り傾斜した」ものであるから、「整列部53」は球送出口37に向かうに従い漸次深くなるように下傾させたものということができる。 また、段差壁面54は遊技球が一列に整列している部分は、上記記載事項7及び引用文献の図5、8、9からみて「整列部53」の中流部及び下流部ということができ、遊技球が一列に整列している部分においては遊技球の直径よりも深くなっている(記載事項9)から、「整列部53」はその中流部で少なくとも遊技球の半球の深さを有するということができる。 一方、「球送出口37付近においては、段差壁面54を、遊技球の直径よりもやや広い間隔を隔てて取付基板31の前面と略平行に設け」たものであり、「やや広い」ということから「整列部53」は遊技球が幅方向に移動可能な広さとしたものと認められ、更に、遊技球を「球送出口37の手前では一列に整列させるようにした」ものであるから、「整列部53」は中流部及び下流部において遊技球が1列に整列する幅で遊技球が幅方向に移動可能な広さとしたものということができ、この点で引用発明と本願補正発明は一致している。 更に、誘導棚部62は「底面50との間に緩やかな曲面を有する段差を介する」ものであるが、段差が接する「底面50」の部分を「端部」ということができることは明らかである。 そうすると、両者は、 「前板の前面に球排出口から流入するパチンコ球が貯留される皿部が設けられ、該貯留されたパチンコ球を流出口へと送り出すパチンコ機の球受皿であって、 前記皿部は、底部と、前記底部の前記前板側に溝状に形成され流出口に向かうに従い漸次深くなるように下傾させた整流通路と、前記底部の端部に緩やかな曲面を有する段差を介する棚部とからなり、 前記整流通路は、その中流部で少なくとも遊技球の半球の深さを有していると共に中流部及び下流部においてパチンコ球が1列に整列する幅でパチンコ球が幅方向に移動可能な広さとしたパチンコ機の球受皿。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 「整流通路」が、本願補正発明では底部に溝状に削るようにして形成されるのに対し、引用発明では底面50と補助貯留部61との間の段差壁面54と取付基板31の前面とにより構成される点。 <相違点2> 「整流通路」の「パチンコ球が1列に整列する幅でパチンコ球が幅方向に移動可能な広さ」が、本願補正発明では中流部下流部に限られないのに対し、引用発明では中流部下流部である点。 <相違点3> 「底部の端部に緩やかな曲面を有する段差を介する棚部」が、本願補正発明では整流通路の下流側であり、底部のパチンコ球を該整流通路に合流させるようにしたものであるのに対し、引用発明ではそのような構成か明らかでない点。 4.判断 上記各相違点について検討する。 <相違点1>について 「貯留部23がある程度遊技球で満たされると、・・案内面61Aの傾斜下端付近の遊技球は、補助貯留部61の案内面61A上に乗り上がる。即ち、この案内面61A上でも遊技球を貯留する。」(上記記載事項11)との記載からみて、引用発明の補助貯留部61は遊技球を貯留する点で底面50と同じ機能を有していることから、底面50と補助貯留部61を1つの底部とし、「整列部53」を底部に溝状に削るようにして形成したものとすることは当業者であれば容易に想到し得たものである。 <相違点2>について 引用発明において、整列部53の上流部の幅が中流部下流部に比べて幅広になっているのは、底面50上に貯留されている遊技球の列数を減少させて1列にするに際して円滑に行われるようにするためであるが、これを幅広とせず中下流部と同じ幅としても、案内面61Aは滑らかに底面50に連続するものであるから、整列部53が徐々に深くなるにつれて溝内に遊技球が誘導され1列とされるという作用効果に格別差異があるとは認められない。そして、溝というものは幅を同じとすることが最も単純かつ安直な選択であるから、また、パチンコ球の誘導における溝を幅が同じものとすることが従来周知(特開平7-148328号公報、特開平8-182836号公報)であるから、引用発明においてその整列部53の上流部を中下流部と同じ幅とし、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは当業者であれば容易に成し得たことである。 <相違点3>について 引用文献において「誘導棚部62」が「底部のパチンコ球を該整流通路に合流させるようにしたもの」とは明記されていない。しかし、「誘導棚部62」を含む球供給皿の構造から、特に底面50と誘導棚部62との間の段差が、底面50上に貯留された遊技球を球送出口37に向かう方向及び取付基板31に向かう方向に誘導し、「整列部53」に合流させる作用を有することは、当業者にとって自明である。そして、球整列部へのパチンコ球の合流(1列化)を球整列部の下流で行うこと、またパチンコ球をそのように誘導する段部を皿部に設けることは従来周知(特開平6-246056号公報(段部13)を参照)であるから、相違点1、2において検討したように「整列部53」を本願補正発明と同様のものとした時に、底部のパチンコ球を該整流通路に合流させるようにした棚部を整流通路の下流側に位置付けるようにすることは適宜採用する設計事項に過ぎない。 そして、本願補正発明の効果は、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5.むすび 以上のとおり、本件補正は、上記改正前の特許法17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法159条第1項で準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成20年8月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年7月26日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「前板の前面に球排出口から流入するパチンコ球が貯留される皿部が設けられ、前記皿部の底部の前記前板側にパチンコ球を整列させる整流通路が球出口に向って下傾して設けられるパチンコ機の球受皿であって、 前記整流通路の下流側であり前記皿部の底部に該皿部のパチンコ球を該整流通路に合流させるように緩やかな曲面を有する棚部を設け、前記整流通路は下流側に向うに従い漸次深くなる溝状に形成すると共にその中間あたりでパチンコ球のほぼ半球程度の深さを有することを特徴とするパチンコ機の球受皿。」 2.引用文献 当審の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項並びに引用発明は、前記第2の2.に記載したとおりである。 3.対比 本願発明と引用発明を対比する。 引用発明の「取付基板31」は本願発明の「前板」に相当し、以下同様に、「球排出口36」は「球排出口」に、「遊技球」は「パチンコ球」に、「皿部32B」は「皿部」に、「球送出口37」は「球出口」に、「球供給皿」は「球受皿」に、「底面50」は「底部」に相当する。 引用発明について以下のことがいえる。 引用発明の「整列部53」は、皿部32Bに貯留された遊技球を1列に整列させて球送出口37へと送り出しているものであるから、本願発明の「整流通路」に相当する。 そして、「整列部53」は、段差壁面54と取付基板31の前面とにより構成されるものであるから皿部32Bの底面50の取付基板31側に形成された溝状となっていることは明らかである。また、「段差壁面54は案内面61Aの傾斜上端部分から傾斜下端部分に向けて徐々に小さく」なるものであって、底面50は「球送出口37に向かって緩やかに下り傾斜した」ものであるから、「整列部53」は球送出口37に向かうに従い漸次深くなるように下傾させたものということができる。 また、遊技球が一列に整列している部分においては遊技球の直径よりも深くなっている(記載事項9)から、引用発明の「整列部53」の中間あたりでは遊技球の直径よりも深い深さとなっているものと認められる。 更に、誘導棚部62は「底面50との間に緩やかな曲面を有する段差を介する」ものであるが、これは「皿部の底部に緩やかな曲面を有する棚部を設け」たものということができる。 そうすると、両者は、 「前板の前面に球排出口から流入するパチンコ球が貯留される皿部が設けられ、皿部の底部の前板側にパチンコ球を整列させる整流通路が球出口に向って下傾して設けられるパチンコ機の球受皿であって、 皿部の底部に緩やかな曲面を有する棚部を設け、 整流通路は、下流側に向うに従い漸次深くなる溝状に形成したパチンコ機の球受皿。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点4> 「皿部の底部に緩やかな曲面を有する棚部」が、本願発明では整流通路の下流側であり、皿部のパチンコ球を整流通路に合流させるようにしたものであるのに対し、引用発明ではそのような構成か明らかでない点。 <相違点5> 「整流通路」の中間あたりの深さが、本願発明ではパチンコ球のほぼ半球程度であるのに対し、引用発明ではパチンコ球の直径より深いものとなっている点。 4.判断 上記各相違点について検討する。 <相違点4>について 引用文献において「誘導棚部62」が「底部のパチンコ球を該整流通路に合流させるようにしたもの」とは明記されていない。しかし、「誘導棚部62」を含む球供給皿の構造から、特に底面50と誘導棚部62との間の段差が、底面50上に貯留された遊技球を球送出口37に向かう方向及び取付基板31に向かう方向に誘導し、「整列部53」に合流させる作用を有することは、当業者にとって自明である。 そして、球整列部へのパチンコ球の合流(1列化)を球整列部の下流で行うこと、またパチンコ球をそのように誘導する段部を皿部に設けることは従来周知(特開平6-246056号公報(段部13)を参照)であるから底部のパチンコ球を該整流通路に合流させるようにした棚部を整流通路の下流側に位置付けるようにすることは適宜採用する設計事項に過ぎない。 <相違点5>について 本願発明における整流通路の溝により「整流通路23の中流から下流にかけての底部20aのパチンコ球は、側方からの割り込みではなく整流通路23を流下するパチンコ球の上に載って入り込む」(本願明細書段落0021)ものであり、引用発明の整列部53の溝も「案内面61A上から整列した遊技球の列上に落下した遊技球は、段差壁面54と取付基板31の前面とにより、列方向のずれを最小限に抑えられた状態で遊技球の列上に載るので、この落下してきた上段の遊技球は、下段の遊技球列の前進に伴って遊技球列内に円滑に割り込む。」(上記記載事項11、図7、図11)との作用を奏するものである。 そして、整流通路(整列部53)の溝の深さはある程度の深さがあれば、整流通路内を流下するパチンコ球の間に底部(案内面61)からのパチンコ球が入り込み、合流がスムーズに行われるものであることは明らかである。 そうすると、整流通路の溝の深さをどのようにするかは設計事項であり、「整流通路」の中間あたりの深さをパチンコ球のほぼ半球程度のものとし、相違点5に係る本願発明の構成とすることは当業者であれば容易に想到したことである。 そして、本願発明の効果は、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。 第4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-11-04 |
結審通知日 | 2008-11-11 |
審決日 | 2008-11-25 |
出願番号 | 特願2001-30216(P2001-30216) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
WZ
(A63F)
P 1 8・ 121- WZ (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井海田 隆 |
特許庁審判長 |
伊藤 陽 |
特許庁審判官 |
三原 裕三 有家 秀郎 |
発明の名称 | パチンコ機の球受皿 |
代理人 | 伊藤 浩二 |