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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01J
管理番号 1191356
審判番号 不服2007-472  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-10 
確定日 2009-01-14 
事件の表示 特願2002-137720「電子顕微鏡」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月21日出願公開、特開2003-331773〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯
本願は、平成14年5月13日の出願であって、平成18年6月9日付け拒絶理由通知に対して、同年8月21日付けで手続補正がされたが、同年12月6日付けで拒絶査定され、これに対し、平成19年1月10日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同年1月31日に手続補正がなされたものである。

第2 平成19年1月31日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年1月31日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
(以下、下線は当審で付加したものである。)

1.本件補正前及び本件補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするものであり、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された範囲内でなされたものである。

特許請求の範囲の補正のうち、請求項1の補正(以下「補正1」という)について検討する。

補正1は、本件補正前の、
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 照射レンズ系により比較的大きな径の電子ビームを試料に照射し、試料を透過した電子を結像レンズ系でTVカメラのスクリーン上に結像するようにし、TVカメラから得られた映像信号をディスプレイに供給して透過電子顕微鏡像を表示するようにした透過電子顕微鏡像観察モードと、照射レンズ系のレンズ強度を変化させ、試料に照射される電子ビームプローブの径を比較的小さくし、更に試料に照射される電子ビームを2次元的に走査するようにしし、試料を透過した電子をTVカメラに代えて光軸上に配置された検出器によって検出し、検出器によって検出された映像信号を、電子ビームの走査に応じてディスプレイに供給して走査透過電子顕微鏡像を表示するようにした走査透過電子顕微鏡像観察モードとを選択的に切り替えられる電子顕微鏡であって、該電子顕微鏡は、各レンズの非点を補正する手段と電子ビームの軸合わせのためのアライメントコイルを備え、更に、各レンズの強度、電子ビームの走査、検出器とTVカメラの選択とを自動的に制御し得るシステムを備えており、該システムに対してロンチグラムの表示を指示すると、電子光学系は走査透過電子顕微鏡像観察モードに自動的に設定され、その際、電子ビームの試料上での走査を行わず、試料を透過して形成された光軸上の回折パターンをTVカメラによって検出し、TVカメラからの映像信号をディスプレイに表示すると共に、ロンチグラムの表示の指示を解除すると、電子光学系は、走査透過電子顕微鏡像観察モードのまま維持され、電子ビームの試料上の走査が行なわれ、TVカメラに代わって自動的に電子検出器が光軸上に配置されるように構成した電子顕微鏡。」
を、
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 照射レンズ系により比較的大きな径の電子ビームを試料に照射し、試料を透過した電子を結像レンズ系でTVカメラのスクリーン上に結像するようにし、TVカメラから得られた映像信号をディスプレイに供給して透過電子顕微鏡像を表示するようにした透過電子顕微鏡像観察モードと、照射レンズ系のレンズ強度を変化させ、試料に照射される電子ビームプローブの径を比較的小さくし、更に試料に照射される電子ビームを2次元的に走査するようにし、試料を透過した電子をTVカメラに代えて光軸上に配置された検出器によって検出し、検出器によって検出された映像信号を、電子ビームの走査に応じてディスプレイに供給して走査透過電子顕微鏡像を表示するようにした走査透過電子顕微鏡像観察モードとを選択的に切り替えられる電子顕微鏡であって、該電子顕微鏡は、各レンズの非点を補正する手段と電子ビームの軸合わせのためのアライメントコイルを備え、更に、各レンズの強度、電子ビームの走査、検出器とTVカメラの選択とを自動的に制御し得るシステムを備えており、該システムに対してロンチグラムの表示を指示すると、電子光学系は走査透過電子顕微鏡像観察モードに自動的に設定され、その際、電子ビームの試料上での走査を行わず、ロンチグラム用の結像条件に各レンズの強度が自動的に制御され、試料を透過して形成された光軸上の回折パターンをTVカメラによって検出し、TVカメラからの映像信号をディスプレイに表示すると共に、ロンチグラムの表示の指示を解除すると、電子光学系は、走査透過電子顕微鏡像観察モードのまま維持され、電子ビームの試料上の走査が行なわれ、TVカメラに代わって自動的に電子検出器が光軸上に配置されるように構成した電子顕微鏡。」(以下、この発明を「本願補正発明」という。)
と補正するものである。

前記補正1は、以下の補正からなる。

本件補正前の「各レンズの強度、電子ビームの走査、検出器とTVカメラの選択とを自動的に制御し得るシステム」が「ロンチグラムの表示を指示」した場合、「ロンチグラム用の結像条件に各レンズの強度が自動的に制御され」るもの、に限定する補正。

したがって、補正1は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

2.引用例

原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物であるE.M.James et.al.,"Practical aspects of atomic resolution imaging and analysis in STEM",ultramicroscopy,米国,Elsevier Science B.V.,1999年,Vol.78,pp.125-139(以下、「引用例1」という。)には、以下の技術事項が記載されている。

上記の標題部分の当審の邦訳
「STEMによる原子レベル分解能での画像化と分析に関する実用的解釈」

記載事項ア
「Here we show the procedure of aligning the probe, using an electron Ronchigram, on a JEOL JEM-2010F instrument. The Ronchigram, alternatively known as a shadow image, or microdiffraction pattern, contains a wealth of information on the specimen and also on the operating conditions of the instrument and its probe-forming optics [4]. After accurate alignment, the STEM resolution of the microscope is demonstrated to be 0.14 nm in scanned, Z-contrast (high-angle annular dark-field) images of atomic columns in single-crystal silicon.」
(第1頁右欄第3行目乃至第14行目)

上記の記載部分の当審の邦訳文
「ここで、JEOL JEM-2010F 装置に関して、電子ロンチグラム像を使って、探針の位置合わせの手順を示す。ロンチグラム像は別名シャドウイメージ(a shadow image)、又は微小干渉パターン(microdiffraction pattern)として知られており、観察する試料、(顕微鏡)装置及び探針を形成する光学系の操作条件に関して、豊富な情報を含んでいる。正確な位置あわせの後では、顕微鏡のSTEM解像度は、走査された、単結晶シリコンの原子配列のZコントラスト像(高角度環状暗視野像)において、0.14nmを達成する。」

記載事項イ
「2. Experimental STEM operation
2.1. Formation of the probe
Fig. 1 shows the electron optical arrangement of the probe-forming system in the JEOL JEM-2010F. An electrostatic gun lens and twin condenser lems system controls de-magnification of the Schottky field emmision source. The microscope is a standard model TEM with a free-lens control that is used to set suitable lens currents for small probe formation.」
(第2頁左欄第13行目乃至第17行目)

上記の記載部分の当審の邦訳文:
「2.STEM実験の操作
2.1 探針の形成
図1はJEOL JEM-2010Fにおける探針形成系の電子光学系の配置を示している。静電電子銃レンズ2つのコンデンサーレンズ系によって、ショットキー場放出電子源の非拡大を制御している。この電子顕微鏡は、TEM(透過電子顕微鏡)の基準モデルであり、さらに、小さな探針を形成するのに適したレンズ電流を設定するのに使用される、フリーレンズ制御系を有している。」

記載事項ウ
「In particular, by using the C1 lens near maximum excitation, a cross-over is formed between the two condensers and a large source de-magnification can then be achieved. This isprobably a factor of ten greater than is necessary in the cold-field emission STEM [6]. C2 and the gun lens can be used to tune the probe coherence further, depending on the probe sizethat is required. Once these lens settings have been preset, it is trivial to switch between STEM and optimum conventional TEM (CTEM) operating conditions.」
(第2頁右欄第14行目乃至第3頁左欄第2行目)

上記の記載部分の当審の邦訳文:
「特に、最大励磁に近い状態のC1レンズを使うことによって、2対のコンデンサレンズ間に、(電子ビームの)交差(クロスオーバー)が形成され、そして電子源の高縮小化が達成される。これは、冷陰極電界放射型STEMで必要とされるものの10倍大きいものである。さらに、C2(コンデンサレンズ)と電子銃レンズは、要求される探針サイズに依存する探針のコヒーレンス性の調整に使用される。一旦、これらのレンズ設定が予め設定されると、STEM(走査透過電子顕微鏡)と従来型のTEM(透過電子顕微鏡)(CTEM)の最適操作設定条件との間での切り替えは、通常行われている程度(trivial)のものである。」


記載事項エ
「2.2. Probe alignment optimization
The electron “Ronchigram”, or “shadow image” is one of the most useful ways of characterizing and optimizing the probe. This is because the intensity, formed at the microscope Fraunhofer diffraction plane, varies considerably with angle, and this variation is a very sensitive function of lens aberrations and defocus [4]. When the excitation of each illumination electron optical component is slightly changed, very small misalignments become apparent by translations in the pattern that depart from circular symmetry. Furthermore, the presence or absence of interference fringes in the pattern indicates the amount of incoherent probe broadening due to instabilities and the effect of a finite source size. Fig. 2 shows schematically the ray diagram for Ronchigram formation. The probe remains stationary and the post-specimen intensity is recorded as a function of angle by a CCD camera or equivalent device. Very high illumination convergence angles are allowed. Examples, where this alignment method has been used, include the impressive atomic resolution Z-contrast images from the 300 kV STEM [7 and 8], “super-resolution” aperture synthesis experiments [9], and analysis of the performance of STEM spherical aberration correctors [10. O.L. Krivanek, N. Dellby, A.J. Spence, L.M. Brown, Spherical aberration correction in dedicated STEM, in: H.A.C. Benavides (Ed.), Electron Microscopy 1988, Proceedings of ICEM14, vol. 1, IoP, Bristol, 1998.10]. Experimentally, to observe the Ronchigram, apertures are removed after the specimen and a large probe convergence angle (>100 mrad) is selected by inserting the largest STEM objective aperture: in the JEM-2010F, this corresponds to the CTEM condenser aperture. The Ronchigram can then be directly observed on the microscope phosphor screen. Camera length and positioning are controlled with the projector lenses and shift coils. Alternatively, the Ronchigram can be observed on a TV-rate CCD camera positioned beneath the phosphor screen.」
(第3頁左欄第3行目乃至第41行目)

上記の記載部分の当審の邦訳文:
「2.2 探針調整の最適化
電子「ロンチグラム(Ronchigram)」、もしくは、「シャドウイメージ(
shadow image)」と呼ばれる像は、探針の特性付けと最適化のための最も有効な手段の一つである。このことは、フラウンホーファー回折面で形成される明暗像が、角度によって大きく変化するからであり、この変化は、レンズの収差や焦点ずれに関して、非常に敏感に作用するものである[4]。各照射電子光学要素の励磁状態が少しでも変化すると、非常に微細な位置あわせのずれが、パターン像上で円対象性のくずれとなって現れる。さらに、パターン像上で、干渉縞が現れたり、消えてしまったりすることは、状態不安定である事に起因する、インコヒーレントな探針の広がり量、と電子源の有限サイズを示している。図2はロンチグラム像形成の光路図を図式化したものである。探針は静止状態であり、(電子ビームが)試料を通過した後にできる明暗像は、CCDカメラか、それと同種の装置によって、角度関数として記録される。非常に高い照射集束角度が許容される。この位置あわせ手段が使用された、具体例としては、300kVのSTEM(走査透過電子顕微鏡)から得られる原子レベル解像度のZコントラスト像[7と8]、「超解像度」開口合成実験[9]、そして、STEMの球面収差補正に関する性能分析 [10. O.L. Krivanek, N. Dellby, A.J. Spence, L.M. Brown, Spherical aberration correction in dedicated STEM, in: H.A.C. Benavides (Ed.), Electron Microscopy 1988, Proceedings of ICEM14, vol. 1, IoP, Bristol, 1998.10].などが挙げられる。 実験的に、ロンチグラム像を観察するためには、試料の下流に配置されている絞りは取り外され、最大径のSTEM用の対物絞りを挿入することにより、大きい探針収束角(>100mrad)が選択される(JEM-2010Fでは、CTEM(従来型の透過電子顕微鏡)用のコンデンサー絞りに相当する。)。ロンチグラム像は、顕微鏡の蛍光スクリーン上で直接観察される。カメラ長と像位置の調整は、投影レンズとシフトコイルによって、制御される。別の観察方法として、ロンチグラム像は、蛍光スクリーンの真下に配置されたTV-rate CCDカメラによっても観察される。」

記載事項オ
「Axial astigmatism can be very accurately corrected by exciting the stigmator coils so that these Ronchigram features are circularly symmetric.」
(第3頁右欄第9行目乃至第12行目)

上記の記載部分の当審の邦訳文:
「軸上非点収差は、非点収差(軸上)補正コイルを励磁することによって、かなり正確に補正可能であり、その結果、ロンチグラム像は回転対称な像になる。」

記載事項カ
「If there is a misalignment of the beam between condenser and objective lenses, there will be a periodic translation of Ronchigram features as the wobbling takes place. This can be corrected using the condenser alignment coils (CTEM bright tilt) so that the features only oscillate in and out symmetrically about the coma-free axis.」
(第4頁左欄第3行目乃至同頁右欄第3行目)

上記の記載部分の当審の邦訳文:
「コンデンサと対物レンズの間で、電子ビームの位置ずれ(ミスアライメント)があると、ロンチグラム像特性がぶれるといった周期的な変化として現れる。これは、コンデンサアライメントコイル(CTEM bright tilt)を使って補正可能であり。その結果、像特性はコマフリー軸の周りに対象的に振動するだけになる。」

記載事項キ
「Z-contrast images can be formed by detecting intensity on a large post-specimen annular detector as the probe is rastered.」
(第5頁右欄第17行目乃至第19行目)

上記の記載部分の当審の邦訳文:
「Zコントラスト像は、探針の走査に従って、試料の下流に設置された、大きな環状型検出器上に現れる明暗像を検出することによって、形成される。」

記載事項ク
「To form a Z-contrast image, the STEM objective aperture must be inserted to cut out high-angle rays, and an annular detector inserted after the projector lens system.」
(第6頁左欄第5行目乃至第8行目)

上記の記載部分の当審の邦訳文:
「Zコントラスト像を形成するためには、大角度の光線を遮断するために、STEMの対物絞りを挿入しなければならない。また、投影レンズの後には環状型検出器が挿入される。」

記載事項ケ
「The use of the electron Ronchigram for alignment allows the introduction of the STEM objective aperture to be postponed until the operator is ready to begin scanning and image acquisition from a well defined and accurately tilted specimen area.」
(第6頁右欄第7行目乃至第12行目)

上記の記載部分の当審の邦訳文:
「電子ロンチグラム像を使って(電子光学系の)位置調整を行うことにより、操作者が、探針の走査及び設定通り正確に傾斜された試料部からの画像取得を始める準備が整うまで、STEM対物絞りを挿入しなくてもすむ。」

記載事項コ
「Fig. 2. A ray diagram showing formation of an electron Ronchigram. Only one probe-forming lens is shown: experimentally, this is the objective lens pre-field. For simplicity, beam compression caused by the objective lens post-field, and the effects of any post specimen lenses are not shown.」
(第3頁 右欄 Fig.2に関する説明箇所)

上記の記載部分の当審の邦訳文:
「Fig.2 電子ロンチグラム像の(観察時の)構造を示す光線図。(電子ビーム)探針を形成するレンズが一つだけ描かれている。実験的には、これはプレフィールド(Pre-field)対物レンズが該当する。簡略化のために、ここでは、ポストフィールド(Post-field)対物レンズによる電子ビームの圧縮や、試料下流のレンズ系による影響は示していない。」

ここで、引用例1に記載された事項ついて、考察すると、

(1) 記載事項イの
「・・・The microscope is a standard model TEM・・・(<邦訳> この顕微鏡はTEM(透過電子顕微鏡)の基準モデルであり、)」との記載、及び、
記載事項ウの
「Once these lens settings have been preset, it is trivial to switch between STEM and optimum conventional TEM (CTEM) operating condition(<邦訳> 一旦、これらのレンズ設定が予め設定されると、STEM(走査透過電子顕微鏡)と従来型のTEM(透過電子顕微鏡)(CTEM)の最適操作設定条件との間での切り替えは、通常行われている程度(trivial)のものである。)」との記載からみて、
引用例1には、透過電子顕微鏡と、走査透過電子顕微鏡との間の設定を、選択的に切り替えられる電子顕微鏡が記載されていると言える。

(2) 記載事項イの
「2. Experimental STEM operation
2.1. Formation of the probe
Fig. 1 shows the electron optical arrangement of the probe-forming system in the JEOL JEM-2010F.(<邦訳> 2.STEM実験の操作 2.1 探針の形成 図1は、JEOL JEM-2010Fにおける探針形成系の電子光学系の配置を示している。)」との記載、及び、
記載事項コの
「Fig. 2. A ray diagram showing formation of an electron Ronchigram. Only one probe-forming lens is shown: experimentally, this is the objective lens pre-field.(<邦訳> Fig.2 電子ロンチグラム像の(観察時の)構造を示す光線図。(電子ビーム)探針を形成するレンズが一つだけ描かれている。実験的には、これはプレフィールド(Pre-field)対物レンズが該当する。)」との記載、及びFig.1、2との対応関係(Fig.2はFig1の簡略図)からみて、STEM(走査透過電子顕微鏡)における探針の形成(Fig.1、2中の試料(specimen)の直上部に形成された電子ビームの収斂部を参照のこと)は、対物レンズ系によってなされることは自明である。

したがって、引用例1には、試料に照射される電子ビーム探針を形成する対物レンズ系が記載されている、と言える。

(3) 記載事項アの
「After accurate alignment, the STEM resolution of the microscope is demonstrated to be 0.14 nm in scanned, Z-contrast (high-angle annular dark-field) images of atomic columns in single-crystal silicon.(<邦訳> 正確な位置あわせの後では、顕微鏡のSTEM解像度は、走査された、単結晶シリコンの原子配列のZコントラスト像(高角度環状暗視野像)において、0.14nmを達成する。)」との記載から、
引用例1には、Zコントラスト像は、STEM(走査透過電子顕微鏡)によって、得られるものであること、また、
記載事項キの
「Z-contrast images can be formed by detecting intensity on a large post-specimen annular detector as the probe is rastered.(<邦訳> Zコントラスト像は、探針の走査に従って、試料の下流に設置された、大きな環状型検出器上に現れる明暗像を検出することによって、形成される。)」との記載、
Fig.7で示された2つの「annular dark-field detector(邦訳:環状暗視野像検出器)」、「specimen(邦訳:試料)」、及び実線で描かれた、電子ビームの進行線との配置関係、
及び、Fig8の、電子ビームの走査によって取得されたZコントラスト像、からみて、
引用例1には、
○ Zコントラスト像(STEMによる像)を得る際には、試料に電子ビーム探針による照射がなされ、その電子ビーム探針は2次元的に走査されること、
○ Zコントラスト像は、試料を透過した電子を、光軸上(Fig.7参照)に配置された(環状の)検出器により検出するものであること、
が記載されている、と言える。さらに、
○ 取得されるZコントラスト像(Fig8を参照)は、試料の2次元画像であるので、電子ビーム探針の走査は2次元的に走査されたものであること、は自明である。

(4) 記載事項オの
「Axial astigmatism can be very accurately corrected by exciting the stigmator coils so that these Ronchigram features are circularly symmetric.(<邦訳> 軸上非点収差は、非点収差(軸上)補正コイルを励磁することによって、かなり正確に補正可能であり、その結果、ロンチグラム像は回転対称な像になる。)」の記載及び、
記載事項カの
「If there is a misalignment of the beam between condenser and objective lenses, there will be a periodic translation of Ronchigram features as the wobbling takes place. This can be corrected using the condenser alignment coils (CTEM bright tilt) so that the features only oscillate in and out symmetrically about the coma-free axis.(<邦訳> コンデンサと対物レンズの間で、電子ビームの位置ずれ(ミスアライメント)があると、ロンチグラム像特性がぶれるといった周期的な変化として現れる。これは、コンデンサアライメントコイル(CTEM bright tilt)を使って補正可能であり。その結果、像特性はコマフリー軸の周りに対象的に振動するだけになる。)」との記載から、
引用例1の電子顕微鏡は、
○ 軸上非点収差を補正する、非点収差(軸上)補正コイル、
○ 電子ビームの位置ずれ(ミスアライメント)を補正するコンデンサアライメントコイル
(CTEM bright tilt)
を共に備えている点、記載されている。

(5) 記載事項ウの
「In particular, by using the C1 lens near maximum excitation, a cross-over is formed between the two condensers and a large source de-magnification can then be achieved. ・・・ C2 and the gun lens can be used to tune the probe coherence further, depending on the probe size that is required. Once these lens settings have been preset, it is trivial to switch between STEM and optimum conventional TEM (CTEM) operating conditions.(<邦訳> 特に、最大励磁に近い状態のC1レンズを使うことによって、2対のコンデンサレンズ間に、(電子ビームの)交差(クロスオーバー)が形成され、そして電子源の高縮小化が達成される。・・・さらに、C2(コンデンサレンズ)と電子銃レンズは、要求される探針サイズに依存する探針のコヒーレンス性の調整に使用される。一旦、これらのレンズ設定が予め設定されると、STEM(走査透過電子顕微鏡)と従来型のTEM(透過電子顕微鏡)(CTEM)の最適操作設定条件との間での切り替えは、通常行われている程度(trivial)のものである。)」との記載から、
引用例1の電子顕微鏡の電子光学系のレンズは、各レンズの強度の制御について記載されている(励磁の大きさによりレンズの強度が変化することは技術常識である。)。

(6) 記載事項アの
「Here we show the procedure of aligning the probe, using an electron Ronchigram, on a JEOL JEM-2010F instrument.・・・After accurate alignment, the STEM resolution of the microscope is demonstrated to be 0.14 nm in scanned, Z-contrast (high-angle annular dark-field) images of atomic columns in single-crystal silicon.(<邦訳> ここで、JEOL JEM-2010F 装置に関して、電子ロンチグラム像を使って、探針の位置合わせの手順を示す。・・・正確な位置あわせの後では、顕微鏡のSTEM解像度は、走査された、単結晶シリコンの原子配列のZコントラスト像(高角度環状暗視野像)において、0.14nmを達成する。」との記載、及び、
記載事項エの
「・・・Experimentally, to observe the Ronchigram, apertures are removed after the specimen and a large probe convergence angle (>100 mrad) is selected by inserting the largest STEM objective aperture: in the JEM-2010F, this corresponds to the CTEM condenser aperture. The Ronchigram can then be directly observed on the microscope phosphor screen. Camera length and positioning are controlled with the projector lenses and shift coils. Alternatively, the Ronchigram can be observed on a TV-rate CCD camera positioned beneath the phosphor screen.(<邦訳> ・・・実験的に、ロンチグラム像を観察するためには、試料の下流に配置されている絞りは取り外され、最大径のSTEM用の対物絞りを挿入することにより、大きい探針収束角(>100mrad)が選択される(JEM-2010Fでは、CTEM(従来型の透過電子顕微鏡)用のコンデンサー絞りに相当する。)。ロンチグラム像は、顕微鏡の蛍光スクリーン上で直接観察される。カメラ長と像位置の調整は、投影レンズとシフトコイルによって、制御される。別の観察方法として、ロンチグラム像は、蛍光スクリーンの真下に配置されたTV-rate CCDカメラによっても観察される。)」との記載から、
引用例1には、
○ 電子顕微鏡をロンチグラム像が観察可能な状態に設定する手段、
(STEM(走査透過電子顕微鏡)の探針電子ビームの位置あわせ(アライメント)用)
○ ロンチグラム像を観察するために、カメラ長と像位置の調整を、投影レンズとシフトコイルによって、制御する手段、
○ ロンチグラム像の観察時は、電子顕微鏡の電子光学系の設定が、STEM(走査透過電子顕微鏡)の設定であること。
(ロンチグラム像を用いた電子光学系の位置合わせは、STEMの電子ビーム探針の調節設定のために行われ、その電子光学系の設定完了後、STEM像(Zコントラスト像)の取得に移行することから、STEMの設定状態にあると言える)。
が記載されていると言える。

(7) 記載事項アの
「The Ronchigram, alternatively known as a shadow image, or microdiffraction pattern, contains a wealth of information on the specimen and also on the operating conditions of the instrument and its probe-forming optics (<邦訳> ロンチグラム像は別名シャドウイメージ(a shadow image)、又は微小干渉パターン(microdiffraction pattern)として知られており、観察する試料、(顕微鏡)装置及び探針を形成する光学系の操作条件に関して、豊富な情報を含んでいる。)」及び、
記載事項エの
「2.2. Probe alignment optimization
The electron “Ronchigram”, or “shadow image” is one of the most useful ways of characterizing and optimizing the probe. ・・・Fig. 2 shows schematically the ray diagram for Ronchigram formation. The probe remains stationary and the post-specimen intensity is recorded as a function of angle by a CCD camera or equivalent device. ・・・Examples, where this alignment method has been used, include the impressive atomic resolution Z-contrast images from the 300 kV STEM [7 and 8],・・・, and analysis of the performance of STEM spherical aberration correctors.・・・ The Ronchigram can then be directly observed on the microscope phosphor screen. ・・・Alternatively, the Ronchigram can be observed on a TV-rate CCD camera positioned beneath the phosphor screen.(<邦訳> 2.2 探針調整の最適化 電子「ロンチグラム(Ronchigram)」、もしくは、「シャドウイメージ(shadow image)」と呼ばれる像は、探針の特性付けと最適化のための最も有効な手段の一つである。・・・ 図2はロンチグラム像形成の光路図を図式化したものである。探針は静止状態であり、(電子ビームが)試料を通過した後にできる明暗像は、CCDカメラか、それと同種の装置によって、角度関数として記録される。・・・この位置あわせ手段が使用された、具体例としては、300kVのSTEM(走査透過電子顕微鏡)から得られる原子レベル解像度のZコントラスト像[7と8]、・・・、そして、STEMの球面収差補正に関する性能分析・・・などが挙げられる。・・・ロンチグラム像は、顕微鏡の蛍光スクリーン上で直接観察される。・・・別の観察方法として、ロンチグラム像は、蛍光スクリーンの真下に配置されたTV-rate CCDカメラによっても観察される。」)との記載、及びFig.7からみて、
引用例1には、
○ ロンチグラム像の観察時には、電子ビーム探針は静止状態にあること。
○ (電子ビームが)試料を通過した後にできる、明暗像(微小干渉パターン)は、蛍光スクリーン上に映し出され、その真下に配置されたCCDカメラ、それと同種の装置によって、記録及び観察されること。
がそれぞれ記載されている。

以上、記載事項ア?コ、及び各図(Fig.)と、上記考察(1)?(7)を勘案すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「透過電子顕微鏡と、試料に、対物レンズ系によって形成された電子ビーム探針による照射がなされ、その電子ビーム探針が2次元的に走査され、試料を透過した電子を、光軸上に配置された(環状の)検出器により検出することによって、Zコントラスト像(走査透過電子顕微鏡像)を得る走査透過電子顕微鏡との間の設定を、選択的に切り替えられる電子顕微鏡であって、該電子顕微鏡は、軸上非点収差を補正する非点収差(軸上)補正コイルと電子ビームの位置ずれ(ミスアライメント)を補正するコンデンサアライメントコイル(CTEM bright tilt)を備え、更に、各レンズの制御、電子ビーム探針の走査を制御し得るものであり、ロンチグラム像を観察可能な状態になるよう設定する手段と、同ロンチグラム像の観察時は、電子顕微鏡の電子光学系の設定が、STEM(走査透過電子顕微鏡)に設定され、その際、電子ビーム探針は静止状態であり、ロンチグラム像を観察するために、カメラ長と像位置の調整を、投影レンズとシフトコイルによって制御し、電子ビームが、試料を通過した後にできる、明暗像(微小干渉パターン)を、CCDカメラ、それと同種の装置によって、記録及び観察されるように構成した電子顕微鏡。」

3.対比

引用発明と本願補正発明とを対比する。

(1) 引用発明の「透過電子顕微鏡と、試料に、対物レンズ系によって形成された電子ビーム探針による照射がなされ、その電子ビーム探針が2次元的に走査され、試料を透過した電子を、光軸上に配置された(環状の)検出器により検出されることによって、Zコントラスト像(走査透過電子顕微鏡像)を得る走査透過電子顕微鏡との間の設定を、選択的に切り替えられる電子顕微鏡であって、」と、
本願補正発明の「照射レンズ系により比較的大きな径の電子ビームを試料に照射し、試料を透過した電子を結像レンズ系でTVカメラのスクリーン上に結像するようにし、TVカメラから得られた映像信号をディスプレイに供給して透過電子顕微鏡像を表示するようにした透過電子顕微鏡像観察モードと、照射レンズ系のレンズ強度を変化させ、試料に照射される電子ビームプローブの径を比較的小さくし、更に試料に照射される電子ビームを2次元的に走査するようにし、試料を透過した電子をTVカメラに代えて光軸上に配置された検出器によって検出し、検出器によって検出された映像信号を、電子ビームの走査に応じてディスプレイに供給して走査透過電子顕微鏡像を表示するようにした走査透過電子顕微鏡像観察モードとを選択的に切り替えられる電子顕微鏡であって、」とを対比すると、両者は、以下の各構成要素で相当又は一致関係にある、と言える。

ア 引用発明の「透過電子顕微鏡」の「設定」(像観察用であることは自明)と、本願補正発明の「照射レンズ系により比較的大きな径の電子ビームを試料に照射し、試料を透過した電子を結像レンズ系でTVカメラのスクリーン上に結像するようにし、TVカメラから得られた映像信号をディスプレイに供給して透過電子顕微鏡像を表示するようにした透過電子顕微鏡像観察モード」とは、共に「透過電子顕微鏡像観察モード」である点、一致する。

イ 引用発明の「試料に、対物レンズ系によって形成された電子ビーム探針による照射がなされ、その電子ビーム探針が2次元的に走査され、試料を透過した電子を、光軸上に配置された(環状の)検出器により検出することによって、Zコントラスト像(走査透過電子顕微鏡像)を得る走査透過電子顕微鏡」の「設定」(像観察用であることは自明)と、本願補正発明の「照射レンズ系のレンズ強度を変化させ、試料に照射される電子ビームプローブの径を比較的小さくし、更に試料に照射される電子ビームを2次元的に走査するようにし、試料を透過した電子をTVカメラに代えて光軸上に配置された検出器によって検出し、検出器によって検出された映像信号を、電子ビームの走査に応じてディスプレイに供給して走査透過電子顕微鏡像を表示するようにした走査透過電子顕微鏡像観察モード」とは、

(ア) 引用発明の「試料」、「電子ビーム探針」、「(環状の)検出器」、「Zコントラスト像(走査透過電子顕微鏡像)」が、本願補正発明の「試料」、「電子ビームプローブ」又は「電子ビーム」、「検出器」、「走査透過電子顕微鏡像」にそれぞれ相当し、かつ、

(イ) 引用発明の電子ビーム探針を形成する「対物レンズ系」は、電子ビームの照射系レンズであることは、 引用例1のFig1(特に「objective lens」(対物レンズ)の配置を参照のこと)から明らかであり、同探針の形成は、同レンズの強度の調整によってなされることは、当業者にとって自明であるので
両者は、「照射レンズ系のレンズ強度を変化させ、試料に照射される電子ビームプローブを形成し、更に試料に照射される電子ビームを2次元的に走査するようにし、試料を透過した電子を、光軸上に配置された検出器によって検出し、走査透過電子顕微鏡像を得る走査透過電子顕微鏡像観察モード」である点、一致する。

以上ア、イの考察をまとめると、両者は、
「透過電子顕微鏡像観察モードと、照射レンズ系のレンズ強度を変化させ、試料に照射される電子ビームプローブを形成し、更に試料に照射される電子ビームを2次元的に走査するようにし、試料を透過した電子を、光軸上に配置された検出器によって検出し、走査透過電子顕微鏡像を得る走査透過電子顕微鏡像観察モードとを切り替える、選択的に切り替えられる電子顕微鏡」である点、一致する。

(2) 引用発明の「該電子顕微鏡は、軸上非点収差を補正する非点収差(軸上)補正コイルと電子ビームの位置ずれ(ミスアライメント)を補正するコンデンサアライメントコイル(CTEM bright tilt)を備え、更に、各レンズの制御、電子ビーム探針の走査を制御し得るものであり、」と、本願補正発明の「該電子顕微鏡は、各レンズの非点を補正する手段と電子ビームの軸合わせのためのアライメントコイルを備え、更に、各レンズの強度、電子ビームの走査、検出器とTVカメラの選択とを自動的に制御し得るシステムを備えており、」とを、対比すると、両者は、以下の各構成要素で相当又は一致関係にある。

ア 引用発明の電子顕微鏡で発生する「軸上非点収差」が、引用例1に記載された電子光学系のレンズ系に起因することは、当業者にとって自明なことであるから、引用発明の「軸上非点収差を補正する非点収差(軸上)補正コイル」は、本願発明の「各レンズの非点を補正する手段」に相当する。

イ 引用発明の「電子ビームの位置ずれ(ミスアライメント)」は、電子ビームの軸合わせの「ずれ」を含むことは、当業者にとって自明なことであるから、引用発明の「電子ビームの位置ずれ(ミスアライメント)を補正するコンデンサアライメントコイル(CTEM bright tilt)」は、本願補正発明の「電子ビームの軸合わせのためのアライメントコイル」に相当する。

ウ 引用発明の「各レンズの制御、電子ビーム探針の走査を制御し得るもの」とは、一種のシステムを想定していることは、当業者にとって自明の事項であるから、引用発明の「各レンズの制御、電子ビーム探針の走査を制御し得るもの」と、本願補正発明の「各レンズの強度、電子ビームの走査、検出器とTVカメラの選択とを自動的に制御し得るシステム」とは、「各レンズの強度、電子ビームの走査、とを制御し得るシステム」である点で一致する。

以上ア?ウの考察をまとめると、両者は、
「該電子顕微鏡は、各レンズの非点を補正する手段と電子ビームの軸合わせのためのアライメントコイルを備え、更に、各レンズの強度、電子ビームの走査、とを制御し得るシステムを備えており、」との点で、一致する。

(3) 引用発明の「ロンチグラム像を観察可能な状態になるよう設定する手段と、同ロンチグラム像の観察時は、電子顕微鏡の電子光学系の設定が、STEM(走査透過電子顕微鏡)に設定され、その際、電子ビーム探針は静止状態であり、ロンチグラム像を観察するために、カメラ長と像位置の調整を、投影レンズとシフトコイルによって制御し、電子ビームが、試料を通過した後にできる、明暗像(微小干渉パターン)を、CCDカメラ、それと同種の装置によって、記録及び観察される」と、本願補正発明の「該システムに対してロンチグラムの表示を指示すると、電子光学系は走査透過電子顕微鏡像観察モードに自動的に設定され、その際、電子ビームの試料上での走査を行わず、ロンチグラム用の結像条件に各レンズの強度が自動的に制御され、試料を透過して形成された光軸上の回折パターンをTVカメラによって検出し、TVカメラからの映像信号をディスプレイに表示する」とを、比較すると、両者は、以下の各構成要素で相当又は一致関係にある。

ア 引用発明の「ロンチグラム像を観察可能な状態になるよう設定する手段と、同ロンチグラム像の観察時は、電子顕微鏡の電子光学系の設定がSTEM(走査透過電子顕微鏡)に設定され、」と本願補正発明の「該システムに対してロンチグラムの表示を指示すると、電子光学系は走査透過電子顕微鏡像観察モードに自動的に設定され、」とは、「ロンチグラムの表示設定がなされると、電子光学系は走査透過電子顕微鏡モードに設定される」点で一致する。

イ 引用発明の「その際、電子ビーム探針は静止状態であり、」と本願補正発明の「その際、電子ビームの試料上での走査を行わず、」とを対比すると、 両者ともに、試料に照射する電子ビーム(探針)を、(ロンチグラム観察中は)動かさないこと、を意味するので、両者は相当するものであると言える。

ウ 引用発明の「ロンチグラム像を観察するために、カメラ長と像位置の調整を、投影レンズとシフトコイルによって制御し」と、本願補正発明の「ロンチグラム用の結像条件に各レンズの強度が自動的に制御され」とを比較すると、引用発明の当該構成要素は、ロンチグラム用に、投影レンズの強度を結像条件に合うよう制御すること、を意味するから、両者は、「ロンチグラム用の結像条件に各レンズの強度が制御され」る点で一致する。

エ 引用発明の「電子ビームが、試料を通過した後にできる、明暗像(微小干渉パターン)」は、引用例1のFig.2(ロンチグラム像観察における電子ビーム光線図)からも明らかなように、電子ビームの光軸上に形成されるものであるので、本願補正発明の「試料を透過して形成された光軸上の回折パターン」に相当する。

オ 引用発明の「CCDカメラ、それと同種の装置」として、TVカメラが含まれることは、当業者にとって自明なことであるので、引用発明の同構成要素は、本願補正発明の「TVカメラ」に相当する、と言える。
また、引用発明では、ロンチグラム像である明暗像(微小干渉パターン)をCCDカメラで撮って観察する以上、同カメラで取得した観察用の映像信号は、当然に、ディスプレイ等に表示することを前提にしたもの、であると言える。

以上ア?オの考察をまとめると、両者は、
「該システムに対してロンチグラムの表示設定がなされると、電子光学系は走査透過電子顕微鏡モードに設定され、その際、電子ビームの試料上での走査を行わず、ロンチグラム用の結像条件に各レンズの強度が制御され、試料を透過して形成された光軸上の回折パターンをTVカメラによって検出し、TVカメラからの映像信号をディスプレイに表示する」との点で一致すると言える。

以上(1)?(3)の対比考察から、本願補正発明と引用発明とは、
「透過電子顕微鏡像観察モードと、照射レンズ系のレンズ強度を変化させ、試料に照射される電子ビームプローブを形成し、更に試料に照射される電子ビームを2次元的に走査するようにし、試料を透過した電子を、光軸上に配置された検出器によって検出し、走査透過電子顕微鏡像を得る走査透過電子顕微鏡像観察モードとを切り替える、選択的に切り替えられる電子顕微鏡であって、該電子顕微鏡は、各レンズの非点を補正する手段と電子ビームの軸合わせのためのアライメントコイルを備え、更に、各レンズの強度、電子ビームの走査、とを制御し得るシステムを備えており、該システムに対してロンチグラムの表示設定がなされると、電子光学系は走査透過電子顕微鏡モードに設定され、その際、電子ビームの試料上での走査を行わず、ロンチグラム用の結像条件に各レンズの強度が制御され、試料を透過して形成された光軸上の回折パターンをTVカメラによって検出し、TVカメラからの映像信号をディスプレイに表示するように構成した電子顕微鏡。」である点一致し、以下の点で相違する。

相違点1
試料に照射する電子ビーム(電子ビームプローブ)径が、本願補正発明の「透過電子顕微鏡像観察モード」では、「比較的大きな径」であり、一方「走査透過電子顕微鏡像観察モード」では、「照射レンズ系のレンズ強度を変化させ、試料に照射される電子ビームプローブの径を比較的小さく」なるように、設定されているのに対し、引用発明では、その点について明示されていない点。

相違点2
各観察モードの観察用の構成、及びその設定として、本願補正発明の「透過電子顕微鏡像観察モード」では、「試料を透過した電子を結像レンズ系でTVカメラのスクリーン上に結像するようにし、TVカメラから得られた映像信号をディスプレイに供給して透過電子顕微鏡像を表示するようにし」、一方「走査透過電子顕微鏡像観察モード」では、「試料を透過した電子をTVカメラに代えて光軸上に配置された検出器によって検出し、検出器によって検出された映像信号を、電子ビームの走査に応じてディスプレイに供給して走査透過電子顕微鏡像を表示するようにし」ているのに対し、引用発明には、そのような構成について、明示されていない点。

相違点3
各観察モードにおける検出器の設定制御について、本願補正発明では、「検出器とTVカメラの選択とを自動的に制御し得るシステムを備えて」いるのに対し、引用発明には、そのような構成について、明示されていない点。

相違点4
ロンチグラムの表示設定に関して、本願補正発明は、「システムに対してロンチグラムの表示を指示」する手段と、同指示に基づいて、電子光学系は走査透過電子顕微鏡像観察モードに「自動的に設定」されるのに対し、引用発明には、そのような構成について、明示されていない点。

相違点5
ロンチグラムの表示設定の解除について、本願補正発明は、「ロンチグラムの表示の指示を解除する」手段と、その解除に応じて、「電子光学系は、走査透過電子顕微鏡像観察モードのまま維持され、電子ビームの試料上の走査が行なわれ、TVカメラに代わって自動的に電子検出器が光軸上に配置される」ように制御されるのに対し、引用発明には、そのような構成について、明示されていない点。

4.当審の判断

前記相違点について検討する。

(1) 相違点1について

試料に照射する電子ビーム(電子ビームプローブ)に関して、透過電子顕微鏡の電子ビーム径の方が、走査透過電子顕微鏡の電子ビームプローブ径に比べて、大きな径であることは、電子顕微鏡の分野において、従来周知の事項である(例えば、本願出願前に頒布された刊行物である特表2000-513487号公報の第4頁第25行目乃至第5頁第10行目までの記載を参照のこと。TEMとSEM(STEMも同様の電子ビーム形状)との、電子ビーム形状について言及されている(「2つの主要な種類の電子顕微鏡がある。透過型電子顕微鏡(TEM)として知られる第1の、より古い種類では、非常に薄い試料の全体が、ちょうど光学顕微鏡で光で照明されるように電子で照明され(これはどちらかと言えば部屋の中で電球を点灯することに似ている)、試料を通過した電子がスクリーンに当たり、電子が可視画像に変換されるようになる。本発明が主として関連する種類である、走査型電子顕微鏡(SEM)として知られる第2のより新しい種類では、電子の非常に狭いビームからなる点が、どちらかと言えば部屋中に懐中電灯を振るように、試料と交差する細い帯に沿って走査され、(完全なテレビの画像が、テレビ画面の蛍光体が点を形成する電子ビームによって帯に沿って走査される際、放射される光からなるのと同じ方法で)画像が走査点から発する電子から構成される。
SEMでは目標(試料)に衝突する電子のビームは多数の多様な放散する電子を生じる。最も明らかには、試料を透過し反対側から「見られる」電子が存在する。このモードでは顕微鏡は走査型透過電子顕微鏡、すなわちSTEMとして機能する。」。)
したがって、引用発明における各観察モードそれぞれの電子ビーム径の大小関係についても、上記した従来周知の設定がなされることは、当業者にとって当然想起する程度のものである。
また、走査透過電子顕微鏡の電子ビームプローブ径の調整は、3.対比 (1)イで述べたとおり、照射レンズ系の強度の変化によってなされるものである。
以上から、相違点1は実質的なものではない。

(2) 相違点2、3について

ア 透過電子顕微鏡の分野において、試料を透過した電子ビームによる透過電子観察像を、蛍光板スクリーン上に投影結像し、これをTVカメラなどの撮像手段によって映像信号化し、同信号をディスプレイに供給して、透過電子像を画面上に表示する手段は、従来周知の手段である(例えば、本願出願前に頒布された刊行物である特開平7-65770号公報の段落【0009】の記載(「・・・このような透過電子信号は、試料の下方に設置した中間レンズ10、投影レンズ11を経て、蛍光板スクリーン12上にTEM像として写しだされる。・・・」)、同公報の段落【0021】の記載「図10は、図8で示した実施例に加えて、テレビ像観測システムおよび高速画処理システムを付加した実施例である。従来の螢光板スクリーン12上での像観測およびフィルムへの像記録装置20でも電子線の曲がりを観測可能であるが、テレビ像観測システム21および高速画像処理システム22を付加することにより、画像情報をデジタル化しコンピュータで処理することが可能になり、複雑な経路をもつ電流分布を解析することが可能になる。・・・」等を参照のこと。)。
また、引用例1には、ロンチグラム像の観察の際に、投影レンズなどの結像レンズ系により、ロンチグラム像を蛍光スクリーン上に結像し、これをTV-rateCCDカメラによって観察する手段が開示されている。
(記載事項エの「・・・The Ronchigram can then be directly observed on the microscope phosphor screen. Camera length and positioning are controlled with the projector lenses and shift coils. Alternatively, the Ronchigram can be observed on a TV-rate CCD camera positioned beneath the phosphor screen.(<邦訳> ロンチグラム像は、顕微鏡の蛍光スクリーン上で直接観察される。カメラ長と像位置の調整は、投影レンズとシフトコイルによって、制御される。別の観察方法として、ロンチグラム像は、蛍光スクリーンの真下に配置されたTV-rate CCDカメラによっても観察される。)」の記載を参照のこと。)
してみれば、同じ機能を有する部材は兼用するなどして、装置内の部材の点数を極力少なくすることは、一般的に周知の課題であることから、引用例1に記載されたロンチグラム像の観察用蛍光スクリーンを、投影レンズによるレンズ長の調節などによって、上記周知手段のような透過電子観察像を投影結像する蛍光板スクリーンとして代用し、TVカメラ及びディスプレイによって観察する程度のことは、当業者であれば適宜なす程度の事項である。

イ また、本願補正発明の、走査透過電子顕微鏡モードにおいて、検出器によって検出された映像信号を、「電子ビームの走査に応じてディスプレイに供給して走査透過電子顕微鏡像を表示する」とは、電子ビームの2次元走査に基づいて、試料を透過した電子を光軸上に配置された像検出器によって検出し、その透過電子信号を、映像信号としてディスプレイに供給され、表示することを意味する(本願明細書の「【0039】試料上の電子ビームの2次元走査に基づいて試料11を透過した電子は、光軸上に配置された暗視野像用検出器29か明視野像用検出器30のいずれかによって検出される。検出された透過電子信号は、映像信号として増幅器41を介してコンピュータ44に供給される。コンピュータ44に供給された映像信号は、ディスプレイ49に供給され、その結果、像表示領域50には、明視野か暗視野の走査透過電子顕微鏡像が表示されることになる。」を参照。)。
また、このように、走査透過電子顕微鏡モードにおいて、検出器によって検出された映像信号から、ディスプレイ表示することは、走査透過電子顕微鏡の分野において従来周知に行われていることである(例えば、本願出願前に頒布された刊行物である特開2002-83564号公報の段落「【0017】・・・対物レンズ4の下方には、暗視野STEM像観察用の円環状検出器13が配置されている。円環状検出器13は、信号増幅器14を介しSTEM像表示用CRT11に接続されている。」等の記載を参照のこと)。
したがって、引用発明における走査透過顕微鏡においても、検出器によって得られた透過電子信号(引用発明の「試料に、対物レンズ系によって形成された電子ビーム探針による照射がなされ、その電子ビーム探針が2次元的に走査され、試料を透過した電子を、光軸上に配置された(環状の)検出器により検出することによって、Zコントラスト像(走査透過電子顕微鏡像)を得る」を参照)をもとに、上記の従来周知の手法に従って、走査透過電子顕微鏡像をディスプレイに表示する程度のことは、当業者であれば、適宜行う程度の設計的事項にすぎない。

ウ さらに、ロンチグラム像形成のための電子光学系及び検出器の構成として、引用例1のFig.7には、「removable phosphor screen(取り外し可能な蛍光スクリーン)」と、Zコントラスト像(STEM像)検出用の「removable annular dark-field detector(取り外し可能な環状暗視野像検出器)」が記載されており、これらはどの像を撮像するかによって、選択的に光軸上に出し入れすることは、当業者にとって自明であると言える。
また、それぞれのモードに対応する検出器を、モードに切り替えに応じて、選択的に出し入れする際に、便宜上、その動作を自動化する程度のことは、当業者であれば適宜なす程度事項にすぎない。

以上、ア?ウの考察から、相違点2および3は、引用発明からみて自明な事項、もしくは従来周知の事項により、当業者が容易に想到する程度のものである。

(3) 相違点4について

引用発明の、「ロンチグラム像を観察可能な状態になるように設定」する際には、電子顕微鏡のシステムに対し、何らかの「指示」手段による「指示」を与えて設定動作を開始することは、当業者にとって自明の事項である。
また、電子顕微鏡の分野において、各種観察モード時の切り替えに応じて、各観察モードの電子光学系の設定状態を自動的に行うことは、従来周知の手段であるから(例えば、例えば、本願出願前に頒布された刊行物である特開平5-62631号公報の段落「【0007】【課題を解決するための手段】 上記の課題を解決するために、本発明の像観察分析装置等における条件設定方式は、互いに異なる条件設定が必要な複数のモードを備える像観察分析装置において、各モードの複数の設定条件を蓄積しておき、モードの切り替えが指示されたことを条件として、当該新たに指示されたモードの複数の設定条件を抽出してこれらの条件を像観察分析装置に設定することを特徴とする。」等の記載を参照のこと。)、
引用発明における、ロンチグラム像の表示設定においても、自動化することは、当業者であれば容易に想到する程度の事項である

以上の考察から、相違点4は、引用発明からみて自明な事項、もしくは従来周知の事項により、当業者が容易に想到する程度のものである。

(5) 相違点5について

引用発明の、ロンチグラム像の観察によるアライメントは、走査電子顕微鏡像の観察のための調整作業であるので、ロンチグラム像の観察終了した後には、走査透過電子顕微鏡による試料観察に移行することは、当業者であれば当然想起する程度の事項であり、また引用例1の記載からも、当然想定されているものと言える(記載事項アの「Here we show the procedure of aligning the probe, using an electron Ronchigram, on a JEOL JEM-2010F instrument. The Ronchigram, alternatively known as a shadow image, or microdiffraction pattern, contains a wealth of information on the specimen and also on the operating conditions of the instrument and its probe-forming optics [4]. After accurate alignment, the STEM resolution of the microscope is demonstrated to be 0.14 nm in scanned, Z-contrast (high-angle annular dark-field) images of atomic columns in single-crystal silicon.(<邦訳> ここで、JEOL JEM-2010F 装置に関して、電子ロンチグラム像を使って、探針の位置合わせの手順を示す。ロンチグラム像は別名シャドウイメージ(a shadow image)、又は微小干渉パターン(microdiffraction pattern)として知られており、観察する試料、(顕微鏡)装置及び探針を形成する光学系の操作条件に関して、豊富な情報を含んでいる。正確な位置あわせの後では、顕微鏡のSTEM解像度は、走査された、単結晶シリコンの原子配列のZコントラスト像(高角度環状暗視野像)において、0.14nmを達成する。)」等の記載を参照のこと。)
また、このロンチグラム像の観察モードから、通常の走査透過電子顕微鏡観察モードに切り替える際には、電子顕微鏡装置に何らかの指示(ロンチグラム像観察モードの解除)を与えることは、当業者にとって自明であり、また同切り替え動作が自動的になされることも、当業者にとって容易になし得る程度の事項である(上記(4) 相違点4について のモード設定の自動化に関する考察を参照のこと。)。

以上の考察から、相違点5は、引用発明からみて自明な事項、もしくは従来周知の事項により、当業者が容易に想到する程度のものである。

また、本願補正発明によってもたらされる効果は引用例1の記載及び周知の事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。

まとめ
よって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.本件補正についての結び

以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たさないものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明
平成19年1月31日付けの手続補正は上記の通り却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成18年8月21日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 照射レンズ系により比較的大きな径の電子ビームを試料に照射し、試料を透過した電子を結像レンズ系でTVカメラのスクリーン上に結像するようにし、TVカメラから得られた映像信号をディスプレイに供給して透過電子顕微鏡像を表示するようにした透過電子顕微鏡像観察モードと、照射レンズ系のレンズ強度を変化させ、試料に照射される電子ビームプローブの径を比較的小さくし、更に試料に照射される電子ビームを2次元的に走査するようにしし、試料を透過した電子をTVカメラに代えて光軸上に配置された検出器によって検出し、検出器によって検出された映像信号を、電子ビームの走査に応じてディスプレイに供給して走査透過電子顕微鏡像を表示するようにした走査透過電子顕微鏡像観察モードとを選択的に切り替えられる電子顕微鏡であって、該電子顕微鏡は、各レンズの非点を補正する手段と電子ビームの軸合わせのためのアライメントコイルを備え、更に、各レンズの強度、電子ビームの走査、検出器とTVカメラの選択とを自動的に制御し得るシステムを備えており、該システムに対してロンチグラムの表示を指示すると、電子光学系は走査透過電子顕微鏡像観察モードに自動的に設定され、その際、電子ビームの試料上での走査を行わず、試料を透過して形成された光軸上の回折パターンをTVカメラによって検出し、TVカメラからの映像信号をディスプレイに表示すると共に、ロンチグラムの表示の指示を解除すると、電子光学系は、走査透過電子顕微鏡像観察モードのまま維持され、電子ビームの試料上の走査が行なわれ、TVカメラに代わって自動的に電子検出器が光軸上に配置されるように構成した電子顕微鏡。」

2.引用例

原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及びその記載事項は、前記「第2 2.引用例」において、「引用例1」に関し、記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2 3.対比及び4.当審の判断」で検討した本願補正発明から、本件補正前の「各レンズの強度、電子ビームの走査、検出器とTVカメラの選択とを自動的に制御し得るシステム」が「ロンチグラムの表示を指示」した場合に、「ロンチグラム用の結像条件に各レンズの強度が自動的に制御され」るものとする限定を省いたもの、に該当する。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明について、前記「第2 4.当審の判断」で記載した内容と同様の理由により、本願発明は、当業者からみて、原査定の拒絶の理由に引用された引用例1に記載された発明、及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、本願発明によってもたらされる効果は引用例1の記載及び周知の事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、原査定の拒絶の理由に引用された引用例1に記載された発明、及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。

よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-03 
結審通知日 2008-10-28 
審決日 2008-11-11 
出願番号 特願2002-137720(P2002-137720)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01J)
P 1 8・ 121- Z (H01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松岡 智也  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 越河 勉
村田 尚英
発明の名称 電子顕微鏡  

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