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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02M
管理番号 1191510
審判番号 不服2007-5868  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-02-26 
確定日 2009-01-23 
事件の表示 特願2004-305290「多層樹脂配管及び多層樹脂容器」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 5月11日出願公開、特開2006-118392〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成16年10月20日の出願であって、平成18年10月20日付けで拒絶理由が通知され、平成18年12月21日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成19年1月23日付けで拒絶査定がなされ、平成19年2月26日付けで拒絶査定に対する審判請求がされたものであって、その請求項1ないし10に係る発明は、平成18年12月21日付けの手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、その請求項9に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項9】
少なくとも1のPBN共重合体層とそれ以外の層とを任意に積層して成る多層樹脂容器であって、
上記PBN共重合体層は、燃料透過遮断層としてポリブチレンナフタレートとポリブチレンテレフタレートとの共重合体を含んで成り、上記PBN共重合体層以外の層は、ポリエステル樹脂及び/又はポリエステル共重合エラストマーを含んで成ることを特徴とする多層樹脂容器。」

2.引用文献記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-100943号公報(平成16年4月2日出願公開、以下、「引用文献」という。)には、例えば、次の事項が記載されている。

ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車の燃料配管用のチューブとして好適に使用される樹脂製チューブに係わり、さらに詳細には、チューブ内層に導電性ポリエステル樹脂を具備し、導電性、軽量性、防錆性に優れ、さらに高温雰囲気中での優れた耐層間剥離性及び高い燃料バリアー性(燃料不透過性)を有すると共に、再利用も容易な樹脂製チューブに関するものである。」(段落【0001】)

イ.「【0010】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、帯電防止のために導電性を備えると共に、通常のガソリンのみならず、含アルコール燃料に対しても高い耐燃料透過性を有し、バリア層(透過遮断層)と支持層(透過遮断層を支持する層)との接着性が十分に高く、しかも端材等の再利用が容易で安価な材料からなる樹脂製チューブを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、所定のポリエステルを用いた積層構造とすることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明に係わる樹脂製チューブは、PBT、PBN、PET及びPENからなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂を含む管状樹脂層Aと、PBT共重合体及び/又はPBN共重合体からなる樹脂を含む管状樹脂層Bをそれぞれ1層以上有する多層構造を備え、当該多層構造における最内層側に位置する樹脂層が、例えば、体積固有抵抗値で10^(6)Ω・cm以下程度の導電性を備えている構成とし、樹脂製チューブにおけるこのような構成を前述した課題を解決するための手段としたことを特徴としている。」(段落【0010】?【0012】)

ウ.「【0015】
上述の如く、本発明に係わる樹脂製チューブは、多層構造を有し、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)又はPEN(ポリエチレンナフタレート)、あるいはこれらの任意の組合せに係る樹脂を含む管状樹脂層Aを少なくとも1層、さらにPBT共重合体又はPBN共重合体、あるいはこれらの組合せに係る樹脂を含む管状樹脂層Bを少なくとも1層備えると共に、多層構造をなす樹脂層のうちの最内層樹脂層が導電性を備えたものとなっている。なお、上記管状樹脂層Aは、上記のようにPBT、PBN、PET及びPENからなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂を含むものであるが、樹脂層A中における前記樹脂の含有量としては、含アルコール燃料に対する耐燃料透過性など、所期の性能を確保するために少なくとも30%以上、より好適には50%以上とすることが望ましい。同様に、管状樹脂層B中における PBT共重合体及び/又はPBN共重合体からなる樹脂の含有量についても、少なくとも30%以上、より好適には50%以上とすることが望ましい。
また、本発明に係わる樹脂チューブにおいては、上記樹脂層AおよびB以外の樹脂層を付加する(例えば、耐燃料透過性に比較的影響の少ない最外層や中間層として)ことも可能であるが、樹脂層AあるいはBとの十分な接着性を有し、樹脂層Bと同等以上の耐燃料透過性を備えたものであることが望ましい。
【0016】
上記PBT、PBN、PET又はPEN、あるいはこれらの任意の組合せに係る樹脂を含む管状樹脂層Aは、後述する管状樹脂層Bに比較して含アルコール燃料の透過性が低く、透過遮断層としての機能を有する(以下、この層を「透過遮断層」と称す)。また、上記PBT共重合体又はPBN共重合体、あるいはこれらの組合せに係る樹脂を含む管状樹脂層Bは、比較的軟らかく、チューブ全体の柔軟性を確保すると共に、透過遮断層(管状樹脂層A)を支持する機能を有する(以下、この層を「支持層」と称す)。
【0017】
具体的には、図1に示すように、燃料等の流通し得る中空部分を中央に有する透過遮断層2aの外周に支持層3aを被覆して成る樹脂製チューブ1Aが例示できる。また、図2に示すように、上記樹脂製チューブ1Aと同様の構成を有するチューブの内周に支持層3bを被覆して樹脂製チューブ1Bとすることもできる。さらに、図3に示すように、上記樹脂製チューブ1Aと同様の構成を有するチューブの内周に透過遮断層2dとは異なる成分の透過遮断層2cを被覆して樹脂製チューブ1Cとすることもできる。ここで、各樹脂製チューブ1A,1B,1Cにおける最内層である透過遮断層2a,支持層3b,透過遮断層2cには、導電性が付与されている。」(段落【0015】?【0017】)

エ.「【0020】
ここで、上記透過遮断層(管状樹脂層A)の成分としてPBT、PBN、PET又はPEN、及びこれらの任意の混合物を含むことにより、通常のガソリン燃料の他、エタノールやメタノールなどのアルコールを含有混合燃料を管内に流通させても、優れた耐透過性を有する樹脂製チューブとなる。また、透過遮断層が燃料に接する場合、支持層が燃料に接する場合のいずれにおいても、ポリエステルを基本骨格とすることから、燃料中にアミン系の清浄剤が添加されていても、このような添加剤による劣化は極めて小さく、更にサワーガソリン(劣化ガソリン)に対しても極めて優れた耐性を有する。」(段落【0020】)

オ.「【0024】
また、上記支持層(管状樹脂層B)の主成分がPBT共重合体及び/又はPBN共重合体であることにより、上述の透過遮断層との積層部に高い混和性が発現され、また共押出しのみでも十分な接着性を有し、高温雰囲気下でも優れた耐層間剥離性が確保される。
【0025】
そして、上記透過遮断層と支持層の間に接着層を必要としないため、極めて安価に樹脂製チューブを得ることができる。
また、支持層としては、PBT共重合体及び/又はPBN共重合体とともにPBT及び/又はPBNを混合することができ、このときは上述の耐層間剥離性がより向上するので有効である。」(段落【0024】、【0025】)

カ.「【0028】
上記PBT共重合体やPBN共重合体がブロック型であるときは、市場での入手性及び低温時の柔軟性などの面から、ハードセグメントをPBTやPBN、ソフトセグメントをポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等のポリエーテル、エチレンアジペート、ブチレンアジペート等のアジピン酸エステル、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン及び脂肪族ポリカーボネート等のポリエステルなどとすることができる。
代表的には、低温から高温までの物性の安定性、加工性及びしなやかさの面から、PBTやPBNをハードセグメントとし、ポリエーテルをソフトセグメントとして成るポリエス
テル・エーテル共重合体エラストマーを用いることが好ましい。また、上記ポリエーテルはポリテトラメチレングリコールであることがより好ましい。
また、同様の理由から、PBTやPBNをハードセグメントとし、ポリエステルをソフトセグメントとして成るポリエステル・エステル共重合体エラストマーを用いることが好ましい。また、上記ポリエステルはポリカプロラクトンであることがより好ましい。この場合、特に優れた耐熱性を得ることができる」(段落【0028】)

キ.以上ア.乃至カ.及び図面の記載からすれば、引用文献には以下の事項が記載されていることがわかる。
PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)又はPEN(ポリエチレンナフタレート)、あるいはこれらの任意の組合せに係る樹脂を含む管状樹脂層Aを少なくとも1層とそれ以外の層としてPBT共重合体又はPEN共重合体、あるいはこれらの組み合わせに係る樹脂を含む管状樹脂層Bを少なくとも1層備える多層構造をなす樹脂層。
上記管状樹脂層Aは、透過遮断層としてPBT(ポリブチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)又はPEN(ポリエチレンナフタレート)、あるいはこれらの任意の組合せに係る樹脂を少なくとも1つ含んで成り、上記管状樹脂層A以外の層として管状樹脂層Bである支持層があり、ポリエステル・エステル共重合体樹脂及び/又はポリカプロラクトンを含んで成る多層構造をなす樹脂製チューブ。
上記管状樹脂層Aとそれ以外の層である上記管状樹脂層B、さらに上記管状樹脂層A、管状樹脂層B以外の樹脂層を任意に付加している。

以上のことから、引用文献には以下の発明が記載されているといえる。
「 少なくとも1つのPBT(ポリブチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)又はPEN(ポリエチレンナフタレート)、あるいはこれらの任意の組合せに係る樹脂を含む管状樹脂層Aを少なくとも1層とそれ以外の層である支持層とを任意に積層して成る多層樹脂製チューブであって、
上記管状樹脂層Aは、遮断層としてPBT(ポリブチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)又はPEN(ポリエチレンナフタレート)、あるいはこれらの任意の組合せに係る樹脂を含んで成り、
上記管状樹脂層A以外の層は、ポリエステル・エステル共重合体エラストマー及び/又はポリカプロラクトンを含んで成る多層構造をなす樹脂層からなる多層樹脂製チューブ。」(以下、「引用文献記載の発明」という。)

3.対比
本願発明と引用文献記載の発明とを対比すると、引用文献記載の発明における「透過遮断層」は本願発明における「燃料透過遮断層」に、以下同様に引用文献記載の発明における「それ以外の層である支持層」、「ポリエステル・エステル共重合体エラストマー」及び「ポリカプロラクトン」は、本願発明における「PBN共重合体以外の層」、「ポリエステル共重合体エラストマー」及び「ポリエステル樹脂」に各々相当する。そして、引用文献記載の発明における「PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)又はPEN(ポリエチレンナフタレート)、あるいはこれらの任意の組合せに係る樹脂を含む管状樹脂層A」は、「PBNを含む樹脂層」である限りにおいて、本願発明における「PBN共重合体層」に相当し、また、引用文献記載の発明における「多層樹脂製チューブ」は、「多層樹脂製物品」である限りにおいて、本願発明における「多層樹脂容器」に相当する。
よって、本願発明と引用文献記載の発明とは
「少なくとも1つのPBN樹脂層とそれ以外の層とを任意に積層して成る多層樹脂製物品であって、
上記PBNを含む樹脂層は、燃料透過遮断層を含んで成り、
上記PBNを含む樹脂層以外の層は、ポリエステル樹脂及び/又はポリエステル共重合エラストマーを含んで成る多層樹脂物品。」の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点)
(1)本願発明においては、PBNを含む樹脂層は、燃料透過遮断層としてポリブチレンナフタレートとポリブチレンテレフタレートとの共重合体を含んで成るのに対して、引用文献記載の発明においては、PBNを含む樹脂層としてPBNとPBTの組み合わせの開示はあるものの共重合体を含んでいるのかどうか明らかではない点(以下、「相違点1」という。)。

(2)本願発明においては、多層樹脂製物品が「多層樹脂容器」であるのに対して、引用文献記載の発明においては「多層構造をなす樹脂製チューブ」である点(以下、「相違点2」という。)。


4.判断
相違点1について検討する。
審判請求人は審判請求書【請求の理由】(ロ)で「燃料透過遮断層としてPBNとPBTとの共重合体を含むものではありません。・・・混合物であります。(段落0020)参照」と主張しており、なるほど、引用文献には「混合物」である旨の記載もある。ところで、二種以上のモノマーを使用して合成樹脂を製造するにあたって、化学的に結合する共重合を用いるか、異種モノマー同士を混合するポリマーアロイ(混合)を用いるかは、コスト、製品等を考慮して適宜なされるものであり、さらに、引用文献には、支持層としてPBNとPBTの共重合体も開示されていることを考慮すれば、PBNを含む樹脂層としてPBNとPBTの組み合わることの具体化にあたり、燃料透過遮断層として相違点1に係る発明のように特定することは、当業者が適宜なし得るものといえる。

相違点2について検討する。
燃料透過遮断層を有する多層樹脂容器は周知技術(例えば、特開2003-227431号公報参照)であり、上記周知技術を引用文献記載の発明に適用して相違点2に係る本願発明のように特定することは、当業者が容易に推考し得るものである。

また、本願発明を全体として検討しても、引用文献記載の発明及び周知技術から予測される以上の格別の効果を奏するとも認めることができない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用文献及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-20 
結審通知日 2008-11-25 
審決日 2008-12-10 
出願番号 特願2004-305290(P2004-305290)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 角田 貴章  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 森藤 淳志
中川 隆司
発明の名称 多層樹脂配管及び多層樹脂容器  
代理人 的場 基憲  
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