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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01L
管理番号 1191520
審判番号 不服2007-16479  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-13 
確定日 2009-01-22 
事件の表示 特願2002-566089「電磁式バルブ駆動装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月29日国際公開、WO02/66797、平成16年 6月24日国内公表、特表2004-518846〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は、2001年10月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年2月17日、ドイツ)を国際出願日とする出願であって、平成14年10月7日に国内書面が提出され、平成18年12月27日付けで拒絶理由が通知され、平成19年2月8日に意見書が提出されたが、同年4月19日付けで拒絶査定がなされ、同年6月13日に同拒絶査定に対して審判請求がなされたものであって、その請求項1?5に係る発明は、出願当初の明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「内燃機関用ガス交換バルブの電磁式バルブ駆動装置であって、電磁式アクチュエータと、このアクチュエータを作動させるパワー部、制御・調整装置、並びに電力供給部のような他の電気装置とを有する電磁式バルブ駆動装置において、
2つの装置間の少なくとも1つの情報接続部がガラスファイバー接続部を用いて製造されていることを特徴とする電磁式バルブ駆動装置。」

2.原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第00/71861号(以下、「引用文献1」という。なお、ファミリー文献の特表2003-500587号公報参照。)
(A)引用文献1には、次の事項が図面と共に記載されている。なお、ウムラウト「u」は、単なる「u」で代用している。
(a)" In Fig.1 ist das Grundprinzip ・・・ und her bewegbar gefuhrt ist."(第3頁第4?14行)
(仮訳:図1には、このような電磁式動弁機構の基本原理がその制御装置と共に概略的に示してある。
ガス交換弁2を操作するための動弁機構は実質的に、閉鎖磁石3と開放磁石4を備えたアクチュエータ1からなっている。これらの磁石は互いに間隔をおいて配置され、その間で、アーマチュア5が、戻しばねすなわち開放ばね7と閉鎖ばね8の力に抗して往復運動可能に案内されている。)
(b)" Dem Aktuator 1 ist ・・・ gesteuert werden kann."(第4頁第10?20行)
(仮訳:アクチュエータ1にはセンサ10が付設されている。このセンサ10はアクチュエータ機能を検出することができる。センサ10はここでは概略的に示してある。センサの設計に応じて、例えばアーマチュア5の変位を検出することができるので、その都度のアーマチュア位置をエンジン制御装置9に伝送することができる。エンジン制御装置9内で、場合によっては適当な計算操作によってアーマチュア速度を算出することもできるので、アーマチュア位置に依存しておよびまたはアーマチュア速度に依存して、両電磁石3,4への通電を制御することができる。)
(c)" Die Motorsteuerung 9 weist ・・・ im Bereich kleiner Drehzahlen)."(第4頁第28行?第5頁第14行)
(仮訳:エンジン制御装置9は更に、それぞれの電磁石3,4のための電流と電圧を検出するためおよび電流と電圧を変化させるための適当な手段を備えている。ガス交換弁2のアクチュエータ1は、エンジン制御装置9を介して、設定可能な運転プログラムに依存して、場合によっては特性マップで支援して、例えば開放時間の開始および終了に関して、完全可変に制御可能である。開放ストロークの高さまたは閉鎖時間中の開放ストロークの数の制御も行うことができる。
アーマチュア5の低い当接速度を達成するために、電流制御が必要である。この電流制御は入力信号として、アーマチュアの現在の運動または位置に関する情報を必要とする。弁隙間が存在しないかぎり、アーマチュア位置による制御で充分である。弁隙間が存在する場合勿論、閉鎖側の状態が問題である。アーマチュアひいては弁の速度は、弁が弁座に当接する際に、約0.2m/sまたはそれ以下の小さな値でなければならない(少なくとも低い回転数の範囲内で)。)
(d)" Fig.7 zeigt ein Blockschaltbild ・・・ plus Ventilspiel."(第7頁第13?33行)
(仮訳: 図7はアクチュエータを制御するためのブロック回路図である。エンジン制御装置9は、運動(弁閉鎖)が開始される時点を設定する。これは、ドライバ12において電流遮断によって行われる(ここでは閉鎖コイルへの電流供給は示していない)。位置検出装置13、例えばセンサ10と処理回路によって検出されるその都度のアーマチュア位置に依存して、例えばアーマチュアが設定可能な変位-速度-プロフィルをできるだけ守るように、電流が制御される。
図8には、2つの調整または制御が行われることが示してある。先ず最初に、ガス交換弁の飛行(ストローク運動)中、弁位置コントローラ14として示したブロックによって制御が行われる。このブロックは図7のブロック14と同一に形成可能であるがしかし、遅い速度で達する目標が磁極面ではなく、弁座である、すなわち磁極面の位置に弁隙間を加えたものであることに留意しなければならない。)
(e)" 1. Verfahren zur Ansteuerung ・・・herangefuhrt wird."(第20頁第3?12行)
(仮訳:1.ガス交換弁に作用連結されたアーマチュアを備え、このアーマチュアが少なくとも1個の戻しばねの力に抗して2個の電磁石の間で往復運動可能に案内され、アーマチュアが“忍び寄り走行”で磁極面に達するように、電磁石の通電がセンサ装置によってエンジン制御装置を介して制御される、ピストン式内燃機関のガス交換弁を操作する電磁アクチュエータを制御するための方法。)

(B)上記(A)及びFIG.1,7,8によると、引用文献1には、
「ピストン式内燃機関のガス交換弁2の電磁式動弁機構であって、アクチュエータ1と、このアクチュエータ1を作動させるドライバ(出力段)12、位置検出装置13、並びに位置コントローラ14等とを有する電磁式動弁機構において、
2つの装置間の少なくとも1つの情報接続部が接続部を用いて製造されている電磁式動弁機構。」
という発明(以下、「引用文献1記載の発明」という。)が記載されている。

3.対比
本願発明と引用文献1記載の発明を対比すると、引用文献1記載の発明における「ピストン式内燃機関のガス交換弁2の電磁式動弁機構」及び「アクチュエータ1」が本願発明における「内燃機関用ガス交換バルブの電磁式バルブ駆動装置」及び「電磁式アクチュエータ」にそれぞれ相当する。
そして、引用文献1記載の発明における「アクチュエータ1を作動させるドライバ(出力段)12、位置検出装置13、並びに位置コントローラ14等」は、「アクチュエータを作動させる電気装置」という限りにおいて、本願発明における「アクチュエータを作動させるパワー部、制御・調整装置、並びに電力供給部のような他の電気装置」に相当する。
したがって、本願発明と引用文献1記載の発明は、
「内燃機関用ガス交換バルブの電磁式バルブ駆動装置であって、電磁式アクチュエータと、このアクチュエータを作動させる電気装置とを有する電磁式バルブ駆動装置において、
2つの装置間の少なくとも1つの情報接続部が接続部を用いて製造されている電磁式バルブ駆動装置。」
という発明で一致し、次の(1)及び(2)の点で相違している。
(1)「アクチュエータを作動させる電気装置」が、本願発明においては、「アクチュエータを作動させるパワー部、制御・調整装置、並びに電力供給部のような他の電気装置」であるのに対して、引用文献1記載の発明においては、「アクチュエータ1を作動させるドライバ(出力段)12、位置検出装置13、並びに位置コントローラ14等」である点(以下、「相違点1」という。)。
(2)「接続部」が、本願発明においては、「ガラスファイバー接続部」であるのに対して、引用文献1記載の発明においては、その詳細が不明な点(以下、「相違点2」という。)。

4.当審の判断
上記相違点1及び相違点2について、以下に検討する。
(相違点1について)
「アクチュエータを作動させる電気装置」として、何を採用するかは、必要に応じて当業者が適宜選択可能な設計事項にすぎない。しかも、本願発明における「アクチュエータを作動させるパワー部、制御・調整装置、並びに電力供給部のような他の電気装置」は、普通に採用されているものである。
(相違点2について)
原査定の拒絶の理由に引用した国際公開第98/36167号(以下、「引用文献2」という。なお、ファミリー文献の特表2001-527614号公報参照。)には、内燃機関の制御装置において、「対応の測光器及び光検出器に連結された光ファイバケーブル」を用いることが記載されている("Referring to Fig.1, ・・・ from the engine." (第12頁第12?32行、仮訳:第1図に示されているように、モジュール10は好ましくは電子アセンブリ200を備えて、それが発生するデジタル駆動パルスが流体制御弁を切り換えて、燃料噴射器18と吸気20及び排気22弁とを作動させる。電子アセンブリ200は、印刷回路板204に取り付けられた多数の集積回路202を有している。印刷回路板204は、モジュール10内部の内部電線206で流体制御弁のソレノイドに接続されている。回路板204は、モジュール10から延出する3本の電線208にも接続されている。電線のうちの2本が一般的に集積回路202に電力を供給しており、残りの電線は電子アセンブリ200に対して出入力されるデジタル論理信号用のダクトである。
変更実施形態として、デジタル信号を搬送する電線を、対応の測光器及び光検出器に連結された光ファイバケーブルにすることができる。光ファイバ系は比較的高速で作動できると共に、エンジンからの電磁干渉などの電気ノイズの作用を受け難い。以下、「引用文献2記載の事項」という。)。なお、内燃機関の制御系において、光ファイバを用いることは周知技術でもある(必要であれば、特開平1-148645号公報の公報第3頁右下欄第15行?第4頁左上欄第1行の「なお、伝送線路としてはツイストペア線等があるが、シールド線、光ファイバでもよい。シールド線、光ファイバを使用することにより、伝送速度を速くすることができる。また、光ファイバを使用すれば、電磁ノイズ、静電気ノイズなどの影響を受けずに伝送できるので、自動車内でのコントロールボックス間の配線が容易になる。」に注意。)。
そして、引用文献2記載の事項を引用文献1記載の発明に適用することにより、上記相違点2に係る本願発明の構成を得る程度のことは、当業者が容易に想到することができたものである。

しかも、本願発明の作用効果も、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の事項から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-20 
結審通知日 2008-08-26 
審決日 2008-09-08 
出願番号 特願2002-566089(P2002-566089)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久島 弘太郎  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 金澤 俊郎
森藤 淳志
発明の名称 電磁式バルブ駆動装置  
代理人 藤田 アキラ  

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