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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1191524
審判番号 不服2007-25135  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-13 
確定日 2009-01-23 
事件の表示 特願2002-320795「一眼レフカメラのAFモジュール取付装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月 3日出願公開、特開2004-157212〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成14年11月5日に出願された、特願2002-320795号であって、平成19年5月7日付けで拒絶理由通知がなされ、同年7月17日付けで手続補正がなされ、同年8月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月13日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同年10月15日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成19年10月15日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成19年10月15日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容

本件補正は、特許請求の範囲について、補正前(平成19年7月17日付け手続補正書参照)に

「【請求項1】メインミラーにハーフミラー部を設け、このハーフミラー部を透過したAF用被写体光をサブミラーによって撮影光軸と非直交の方向へ反射させてミラーボックス下面に取付固定したAFモジュールに入射させる一眼レフカメラにおいて、
上記ミラーボックスとは別体からなりミラーボックス下面に取り付けられるAFモジュール取付調整枠を設け、
このAFモジュール取付調整枠は、ミラーボックス下面に固定された状態で、上記サブミラーを介して反射されるAF用被写体光と平行な方向を向く雌ねじ穴を有する複数のガイドボスを有し、
上記AFモジュールを有するAFモジュールユニットは、上記複数のガイドボスの雌ねじ穴に螺合する複数の固定調整ねじを支持する複数のねじ座を有していて、AFモジュールは、その入射光軸を上記固定調整ねじの軸と平行にして該AFモジュールユニットに支持されており、
上記複数の固定調整ねじと上記複数のガイドボスの雌ねじ穴の螺合によってAFモジュールユニットがAFモジュール取付調整枠に固定され、かつ複数の固定調整ねじの螺合量の変化によってAFモジュール取付調整枠に対するAFモジュールユニットの位置調整が行われることを特徴とする一眼レフカメラのAFモジュール取付装置。
【請求項2】請求項1記載の一眼レフカメラのAFモジュール取付装置において、上記AFモジュール取付調整枠の複数のガイドボスと上記AFモジュールユニットのねじ座との間に圧縮ばねが挿入されている一眼レフカメラのAFモジュール取付装置。」

とあったものを、

「【請求項1】メインミラーにハーフミラー部を設け、このハーフミラー部を透過したAF用被写体光をサブミラーによって撮影光軸と非直交の方向へ反射させてミラーボックス下面に取付固定したAFモジュールに入射させる一眼レフカメラにおいて、
上記ミラーボックスの下面に、上記AF用被写体光を通すAFモジュール用開口の周囲に位置させて固定穴を3個設け、
上記ミラーボックスとは別体からなり、該ミラーボックスの上記3個の固定穴に対応する3個の固定ねじ穴を有し、該3個の固定ねじ穴と3個の固定穴を合致させて固定ねじによりミラーボックス下面に取り付けられるAFモジュール取付調整枠を設け、
このAFモジュール取付調整枠は、ミラーボックス下面に固定された状態で、上記サブミラーを介して反射されるAF用被写体光と平行な方向を向く雌ねじ穴を有する複数のガイドボスを有し、
上記AFモジュールを有するAFモジュールユニットは、上記複数のガイドボスの雌ねじ穴に螺合する複数の固定調整ねじを支持する複数のねじ座を有していて、AFモジュールは、その入射光軸を上記固定調整ねじの軸と平行にして該AFモジュールユニットに支持されており、
上記複数の固定調整ねじと上記複数のガイドボスの雌ねじ穴の螺合によってAFモジュールユニットがAFモジュール取付調整枠に固定され、かつ複数の固定調整ねじの螺合量の変化によってAFモジュール取付調整枠に対するAFモジュールユニットの位置調整が行われることを特徴とする一眼レフカメラのAFモジュール取付装置。
【請求項2】請求項1記載の一眼レフカメラのAFモジュール取付装置において、上記AFモジュール取付調整枠の複数のガイドボスと上記AFモジュールユニットのねじ座との間に圧縮ばねが挿入されている一眼レフカメラのAFモジュール取付装置。」

と補正するものであるところ、その内容は、次の補正事項1および補正事項2のとおりである。

(1)補正事項1
補正前の請求項1の「・・・一眼レフカメラにおいて、上記ミラーボックスとは別体からなり・・・」を、補正後の請求項1において「・・・一眼レフカメラにおいて、上記ミラーボックスの下面に、上記AF用被写体光を通すAFモジュール用開口の周囲に位置させて固定穴を3個設け、上記ミラーボックスとは別体からなり・・・」とする補正。

(2)補正事項2
補正前の請求項1の「上記ミラーボックスとは別体からなりミラーボックス下面に取り付けられるAFモジュール取付調整枠」を、補正後の請求項1において「上記ミラーボックスとは別体からなり、該ミラーボックスの上記3個の固定穴に対応する3個の固定ねじ穴を有し、該3個の固定ねじ穴と3個の固定穴を合致させて固定ねじによりミラーボックス下面に取り付けられるAFモジュール取付調整枠」とする補正。

2.独立特許要件について
補正事項1は、「ミラーボックス」について「ミラーボックスの下面に、上記AF用被写体光を通すAFモジュール用開口の周囲に位置させて固定穴を3個設け」たという限定を付す補正であり、補正事項2は、「ミラーボックス下面に取り付けられるAFモジュール取付調整枠」について「ミラーボックスの上記3個の固定穴に対応する3個の固定ねじ穴を有し、該3個の固定ねじ穴と3個の固定穴を合致させて固定ねじにより」取り付けられるという限定を付す補正である。したがって、補正事項1および2は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法改正前の特許法第17条の2(以下、単に「特許法第17条の2」という。)第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。よって、本件補正は、特許法第17条の2第4項の各号に掲げる事項を目的とする補正に該当する。
したがって、本件補正は特許法第17条の2第4項第2号に掲げるいわゆる限定的減縮を目的とするものに該当するものであるから、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かを、請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)について以下に検討する。

(1)引用例
(ア)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭60-124336号(実開昭62-33033号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

(a)「2、実用新案登録請求の範囲
(1)カメラ本体のミラー収容部の下方に、被写体像の焦点整合状態もしくは被写体までの距離を光電的に検知する検知素子とその検知素子に被写体像を結像する光学ユニットとから成る検知ユニットを備えた一眼レフレックスカメラにおいて、
前記カメラ本体に着脱自在に取り付けられるとともに、前記検知ユニットと所定のブロックユニットとを支持する支持部材と、
前記検知ユニットと前記支持部材との間に介装されてそれらの相対固定位置を調整する位置調整機構とを備えた一眼レフレックスカメラ。」(明細書第1頁第4?15行参照)

(b)「産業上の利用分野
本考案は、カメラ本体のミラー収容部の下方に、被写体像の焦点整合状態もしくは被写体までの距離を光電的に検知する検知素子とその検知素子に被写体からの光を導く光学ユニットとから成る検知ユニットを備えた一眼レフレックスカメラに関する。」(明細書第2頁第10?16行参照)

(c)「カメラ本体(1)の中央部にミラー収容部(A)が形成され、このミラー収容部(A)に主ミラー(12)と、サブミラーホルダー(13)によって支持されたサブミラー(14)が設けられている。」(明細書第7頁第行13?16行参照)

(d)「前記ミラー収容部(A)の下方には、被写体像の焦点整合状態を光電的に検知する焦点検出素子(20)と、その焦点検出素子(20)に被写体像を結像する光学ユニット(21)とから成る焦点検出ユニット(B)が設けられている。前記光学ユニット(21)には、視野マスク(21a)、視野レンズ(21b)、ミラー(21c)、再結像レンズ(21d)、フィルター(21e)などが備えられ、これらの部材(21a)(21b)(21c)(21d)(21e)が、前記焦点検出素子(20)とともにホルダー(21f)に一体的に位置決めされて取付けられている。」(明細書第8頁第5?15行参照)

(e)「前記前枠(8)は、第1図および第3図に示すように、ミラー収容部(A)の底面を構成するミラーボックス底面部(8a)と、前縁部(8b)と、縦方向に突設された縦壁部(8c)とを有し、ミラー収容部(A)を囲んで袋状に構成されている。」(明細書第10頁第7?11行参照)

(f)「前記前枠(8)のミラーボックス底面部(8a)に、第2図に明示するように、台板(34)が一対のネジ(35a)、(35b)によって取付けられ、更に、この台板(34)に一対のピン(36a)、(36b)を介して支持板(37)が取付けられ、この台板(34)と支持板(37)とによって前記フレキシブル基板(28)を取り付ける支持部材が構成されている。」(明細書第11頁第4?11行参照)

(g)「台板(34)には、左右一対のネジ穴付き支柱(38X),(38Y)が下方に突出して(図面上は上方に突出)連接され、また、台板(34)の横側の所定箇所が上方に曲げて前枠(8)に形成された凹部(8f)に入り込むように延設され、この延設部(34a)にメネジ部(34b)が形成されている。他方、測距ホルダー(21f)から左右両側それぞれにフランジ部(21X),(21Y)が突設され、このフランジ部(21X),(21Y)それぞれに、前記ネジ穴付き支柱(38X),(38Y)それぞれにねじ込みによって取り付ける、六角凹部付きの調整ネジ(39X),(39Y)が滑動用ワッシャ(40X),(40Y)を介して回転自在に取り付けられ、そして、台板(34)とフランジ部(21X),(21Y)それぞれとの間に、圧縮コイルスプリング(41X),(41Y)が介装されている。六角凹部付きの調整ネジ(39X),(39Y)それぞれは、フレキシブル基板(28)の所定箇所に形成された開口(28h),(28i)に臨まされている。一方のフランジ部(21X)の前部に板バネ(42)が一体的に連接されるとともにこの板バネ(42)の先端部に取付穴(42a)が形成され、この板バネ(42)の先端部が、スペーサ(43)と固定用ネジ(44)とを介して、台板(34)の延設部(34a)に形成されたメネジ部(34b)に取り付けられている。(45)はチップコンデンサである。これらの構成により、測光ユニット(C)を構成する集光レンズ(25)と、測光素子(22)を所定位置に保持しながら、その状態で、前記調整ネジ(39X),(39Y)それぞれを各別に調整操作し、板バネ(42)の先端部を支点として、前記サブミラー(14)との相対位置が適正になるように焦点検出ユニット(B)の固定位置を調整できるように位置調整機構が構成されている。詳述すれば、前記台板(34)としては、前枠(8)への取付姿勢が予め特定されており、この台板(34)に対して所定の姿勢で焦点検出ユニット(B)を取り付けることにより、前枠(8)に取り付けない状態であっても、焦点検出ユニット(B)とサブミラー(14)との相対位置が適正になるようにできるのである。
第3図において、(8g)は、前記集光レンズ(25)を臨ませる開口部、(8h)は、視野レンズ(21b)への光路を形成する開口、(8i),(8i)は、前枠(8)をボディ(2)に取り付けるためのフランジ部である。」(明細書第12頁第12行?第14頁第16行参照)

(h)第1図の記載から、上記(c)を参酌すれば、主ミラー(12)がハーフミラー部を有し、このハーフミラー部を透過した被写体からの光をサブミラー(14)によって撮影光軸と非直交の方向へ反射させて、被写体像の焦点整合状態を光電的に検知する焦点検出素子(20)と、その焦点検出素子(20)に被写体像を結像する光学ユニット(21)とから成る焦点検出ユニット(B)に導くことが見て取れる。

(i)第2図の記載から、上記(g)を参酌すれば、調整ネジ(39X),(39Y)とネジ穴付き支柱(38X),(38Y)の螺合によって焦点検出ユニット(B)が台板(34)に固定され、かつ調整ネジ(39X),(39Y)の螺合量の変化によって台板(34)に対する焦点検出ユニット(B)の位置調整が行われる、一眼レフレックスカメラに焦点検出ユニットの位置調整機構が見て取れる。

上記記載を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「主ミラー(12)がハーフミラー部を有し、このハーフミラー部を透過した被写体からの光をサブミラー(14)によって撮影光軸と非直交の方向へ反射させて、被写体像の焦点整合状態を光電的に検知する焦点検出素子(20)と、その焦点検出素子(20)に被写体像を結像する光学ユニット(21)とから成り、ミラー収容部(A)の下方に設けられた焦点検出ユニット(B)に導く一眼レフレックスカメラにおいて、
前記ミラー収容部(A)の底面を構成する前枠(8)のミラーボックス底面部(8a)に、台板(34)が一対のネジ(35a)、(35b)によって取り付けられ、
前記台板(34)には、左右一対のネジ穴付き支柱(38X),(38Y)が下方に突出して連接され、
前記焦点検出ユニット(B)の光学ユニット(21)の各部材が一体的に位置決めされて取り付けられたホルダー(21f)から突設されたフランジ部(21X),(21Y)それぞれに、前記ネジ穴付き支柱(38X),(38Y)にねじ込みによって取り付けられる六角凹部付きの調整ネジ(39X),(39Y)が取り付けられ、
調整ネジ(39X),(39Y)とネジ穴付き支柱(38X),(38Y)の螺合によって焦点検出ユニット(B)が台板(34)に固定され、かつ調整ネジ(39X),(39Y)の螺合量の変化によって台板(34)に対する焦点検出ユニット(B)の位置調整が行われる、一眼レフレックスカメラの焦点検出ユニットの位置調整機構」

(イ)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である実願平1-78485号(実開平3-18521号)のマイクロフィルム(以下「引用例2」という。)には、以下の技術事項が記載されている。

(a)「A.産業上の利用分野
本考案は、光軸方向の位置調整および光軸と直交する方向を中心とする角度の調整が可能なカメラの焦点検出装置に関する。」(明細書第2頁第5?8行参照)

(b)「B.従来の技術
この種の従来の自動焦点検出装置は、例えば第5図に示すように構成されている。
第5図において、撮影レンズLを通過した被写体光の一部は、ハーフミラー1を通過した後、ミラー保持部材2の反射面2a(第1の反射面)でA方向(第1の方向)に反射されて焦点検出ブロック200内に導かれる。そしてこの反射光は、その光軸上に配置された赤外カットフィルタ102、集光レンズ103および絞り107を通過した後、セパレータレンズ108で一対の光束に分割されて保持部材106上の一対のCCDラインセンサ(焦点検出素子:不図示)にそれぞれ受光される。ラインセンサは、受光した被写体光を電気信号に変換して不図示の制御回路に出力する。
第5図のVI-VI線矢視図である第6図にも示すように、焦点検出ブロック200の外面には、3つの突起部211?213が形成され、これらの突起部211?213を貫通したビス51?53の先端がカメラ本体を構成する取付け部35(第5図)にそれぞれ螺合されている。そして各突起部211?213と取付け部35との間には圧縮ばね61?63(62は不図示)がそれぞれ介装されており、焦点検出ブロック200は、このばね61?63の付勢力によりA方向と逆の方向に常に付勢されている。なお、4は焦点板、5はペンタプリズム、FIはフィルム面である。
カメラの組立時、上記のビス51?53の螺進、螺退により焦点検出ブロック200の調整が行われる。この調整は、A方向上の位置調整と、A方向と直交する方向、すなわち紙面と直交する方向を中心とする揺動角の調整である。」(明細書第2頁第9行?第4頁第1行参照)

(c)上記(b)の記載および第5図の記載から、ビス51?53の螺進、螺退方向がA方向すなわち反射面2aで反射された被写体光と平行な方向を向いていることが見て取れる。

(2)対比

本件補正発明と引用発明1とを対比する。

引用発明の「主ミラー(12)」は、本件補正発明の「メインミラー」に相当する。
引用発明の「被写体からの光」は、本件補正発明の「AF用被写体光」に相当する。
引用発明の「サブミラー(14)」は、本件補正発明の「サブミラー」に相当する。
引用発明の「一眼レフレックスカメラ」は、本件補正発明の「一眼レフカメラ」に相当する。
引用発明の「ミラー収容部(A)」は、本件補正発明の「ミラーボックス」に相当する。
引用発明の「被写体像の焦点整合状態を光電的に検知する焦点検出素子(20)と、その焦点検出素子(20)に被写体像を結像する光学ユニット(21)とから成」る「焦点検出ユニット(B)」は、本件補正発明の「AFモジュール」に相当する。
引用発明の「焦点検出ユニット(B)」を「ミラー収容部(A)の下方に設け」たことは、本件補正発明の「AFモジュール」を「ミラーボックス下面に取付固定した」ことに相当する。
引用発明の「台板(34)」は、「焦点検出ユニット(B)」が固定されているので、本件補正発明の「AFモジュール取付調整枠」に相当する。
引用発明の「ミラー収容部(A)の底面を構成するミラーボックス底面部(8a)に、台板(34)が一対のネジ(35a)、(35b)によって取り付けられ」ていることと、本件補正発明の「ミラーボックスの下面に、上記AF用被写体光を通すAFモジュール用開口の周囲に位置させて固定穴を3個設け、上記ミラーボックスとは別体からなり、該ミラーボックスの上記3個の固定穴に対応する3個の固定ねじ穴を有し、該3個の固定ねじ穴と3個の固定穴を合致させて固定ねじによりミラーボックス下面に取り付けられるAFモジュール取付調整枠を設け」たこととは、「ミラーボックスの下面に、上記ミラーボックスとは別体からなり、固定ねじによりミラーボックス下面に取り付けられるAFモジュール取付調整枠を設け」たという点で一致する。
引用発明の「左右一対のネジ穴付き支柱(38X),(38Y)」は、本件補正発明の「雌ねじ穴を有する複数のガイドボス」に相当する。
引用発明の「六角凹部付きの調整ネジ(39X),(39Y)」は、本件補正発明の「複数のガイドボスの雌ねじ穴に螺合する複数の固定調整ねじ」に相当する。
引用発明の「前記焦点検出ユニット(B)の光学ユニット(21)の各部材が一体的に位置決めされて取り付けられたホルダー(21f)から突設されたフランジ部(21X),(21Y)それぞれに、前記ネジ穴付き支柱(38X),(38Y)にねじ込みによって取り付けられる六角凹部付きの調整ネジ(39X),(39Y)が取り付けられ」ていることと、本件補正発明の「AFモジュールを有するAFモジュールユニットは、上記複数のガイドボスの雌ねじ穴に螺合する複数の固定調整ねじを支持する複数のねじ座を有してい」ることとは、「AFモジュールを有するAFモジュールユニットは、複数のガイドボスの雌ねじ穴に螺合する複数の固定調整ねじを有」するという点で一致する。
引用発明の「焦点検出ユニットの位置調整機構」は、本件補正発明の「AFモジュール取付装置」に相当する。

よって、本件補正発明と引用発明とは、
「メインミラーにハーフミラー部を設け、このハーフミラー部を透過したAF用被写体光をサブミラーによって撮影光軸と非直交の方向へ反射させてミラーボックス下面に取付固定したAFモジュールに入射させる一眼レフカメラにおいて、
上記ミラーボックスの下面に、上記ミラーボックスとは別体からなり、固定ねじによりミラーボックス下面に取り付けられるAFモジュール取付調整枠を設け、
このAFモジュール取付調整枠は、雌ねじ穴を有する複数のガイドボスを有し、
上記AFモジュールを有するAFモジュールユニットは、上記複数のガイドボスの雌ねじ穴に螺合する複数の固定調整ねじを有していて、
上記複数の固定調整ねじと上記複数のガイドボスの雌ねじ穴の螺合によってAFモジュールユニットがAFモジュール取付調整枠に固定され、かつ複数の固定調整ねじの螺合量の変化によってAFモジュール取付調整枠に対するAFモジュールユニットの位置調整が行われる一眼レフカメラのAFモジュール取付装置。」の点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
「AFモジュール取付調整枠」が、本件補正発明では「AF用被写体光を通すAFモジュール用開口」を有するのに対して、引用発明ではこのことが明らかでない点。

(相違点2)
「ミラーボックスの下面に、上記ミラーボックスとは別体からなり、固定ねじによりミラーボックス下面に取り付けられるAFモジュール取付調整枠を設け」る際に、本件補正発明では「ミラーボックスの下面にAFモジュール用開口の周囲に位置させて固定穴を3個設け」、「AFモジュール取付調整枠」に「ミラーボックスの上記3個の固定穴に対応する3個の固定ねじ穴」を設け、「該3個の固定ねじ穴と3個の固定穴を合致させて」ミラーボックス下面にFモジュール取付調整枠を取り付けるのに対して、引用発明ではこのことが明らかでない点。

(相違点3)
「複数のガイドボス」の「雌ねじ穴」が、本件補正発明では「ミラーボックス下面に固定された状態で、上記サブミラーを介して反射されるAF用被写体光と平行な方向を向く」のに対して、引用発明ではこのことが明らかでない点。

(相違点4)
「AFモジュールユニット」が、本件補正発明では「複数の固定調整ねじを支持する複数のねじ座」を有するのに対して、引用発明ではこのことが明らかでない点。

(相違点5)
「AFモジュール」が、本件補正発明では「入射光軸を固定調整ねじの軸と平行にしてAFモジュールユニットに支持されて」いるのに対して、引用発明ではこのことが明らかでない点。

(3)判断
上記相違点1について検討する。
引用例1には、ミラーボックス底面部(8a)を有する前枠(8)が、光学ユニット(21)の視野レンズ(21b)への光路を形成する開口(8h)を有することも記載されており(上記摘記事項(ア)(g)参照)、引用発明において、台板(34)にAF用被写体光を通すAFモジュール用開口を設けることは、台板(34)の前枠(8)に対する位置、大きさ及び形状に応じて当業者が適宜なし得る設計的事項に過ぎない。

上記相違点2について検討する。
固定ねじ穴と固定穴を合致させて固定ねじによりミラーボックス下面に取り付けられるAFモジュール取付調整枠を有する一眼レフカメラにおいて、上記固定ねじ穴および固定穴をそれぞれ3個以上設けることは、例えば特開2000-180701号公報に記載されるように周知である(段落【0028】?【0031】および図2並びに図3を参照)。また、ミラーボックス下面にAFモジュールを取付固定する一眼レフカメラにおいて、ミラーボックスとAFモジュールを固定する際に3点において固定することは、例えば、引用例2および特開2000-19832号公報(段落【0012】?【0014】および図1ないし図3を参照)に記載されるように周知である。したがって、引用発明において、ミラーボックスの下面にAFモジュール取付調整枠を設ける際に、上記周知技術を適用してミラーボックスの下面にAFモジュール用開口の周囲に位置させて固定穴を3個設け、AFモジュール取付調整枠にミラーボックスの上記3個の固定穴に対応する3個の固定ねじ穴を設け、該3個の固定ねじ穴と3個の固定穴を合致させてミラーボックス下面にFモジュール取付調整枠を取り付けることは、当業者が容易に想到しうることである。

上記相違点3について検討する。
引用例2には、ビス51?53の螺進、螺退により焦点検出ブロック200の調整が行われ、前記ビス51?53の螺進、螺退方向が反射面2aで反射された被写体光と平行な方向を向いていることが記載されており、ビス51?53が螺合するねじ穴を反射面2aで反射された被写体光と平行な方向に向くようにすることは当業者が当然なし得ることであるから、引用発明において、引用例2に記載された発明を適用して複数のガイドボスの雌ねじ穴を、ミラーボックス下面に固定された状態でサブミラーを介して反射されるAF用被写体光と平行な方向を向くようにすることは当業者が容易に想到しうることである。

上記相違点4について検討する。
ねじを支持する際にねじ座を設けることは周知慣用技術であって、引用発明においても、複数の固定調整ねじを支持する複数のねじ座をAFモジュールユニットに設けることは、当業者が必要に応じて適宜なし得ることである。

上記相違点5について検討する。
上記相違点3において検討したように、引用発明において、複数のガイドボスの雌ねじ穴を、ミラーボックス下面に固定された状態でサブミラーを介して反射されるAF用被写体光と平行な方向を向くようにすることは当業者が容易に想到しうることであるから、前記雌ねじ穴に螺合する固定調整ねじの軸がサブミラーを介して反射されるAF用被写体光と平行な方向を向くようにすること、すなわち、AFモジュールが、入射光軸を固定調整ねじの軸と平行になるようにAFモジュールユニットに支持することは容易に想到しうることである。

そして、本件補正発明の作用効果は引用発明及び引用例2に記載の発明並びに周知技術から当業者が予期できたものである。

したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用例2に記載の発明並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.本件補正についての結び

よって、本件補正発明は、上記引用発明及び引用例2に記載された発明並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に違反する。

したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、「第2[理由]1.」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

本願発明1は、前記「第2[理由]2.」で検討した本件補正発明から、「ミラーボックス」について「ミラーボックスの下面に、上記AF用被写体光を通すAFモジュール用開口の周囲に位置させて固定穴を3個設け」たという限定を省き、「ミラーボックス下面に取り付けられるAFモジュール取付調整枠」について「ミラーボックスの上記3個の固定穴に対応する3個の固定ねじ穴を有し、該3個の固定ねじ穴と3個の固定穴を合致させて固定ねじにより」取り付けられるという限定を省いたものに相当する。

2.対比

本願発明を、引用発明と対比すると、本願発明と引用発明とは、本件補正発明と引用発明との一致点において一致し、上記相違点1および3ないし5で相違する。

3.判断

相違点1および3ないし5については、上記「第2[理由]2.」で検討したとおりである。

そして、本願発明の作用効果が引用発明及び引用例2に記載の発明並びに周知技術から予期し得ない格別のものであるとも認められない。

したがって、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載の発明並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載された発明並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-20 
結審通知日 2008-11-25 
審決日 2008-12-08 
出願番号 特願2002-320795(P2002-320795)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 安田 明央
森林 克郎
発明の名称 一眼レフカメラのAFモジュール取付装置  
代理人 安藤 大介  
代理人 三浦 邦夫  

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