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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03B |
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管理番号 | 1191528 |
審判番号 | 不服2007-30735 |
総通号数 | 111 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-11-14 |
確定日 | 2009-01-23 |
事件の表示 | 特願2005-201109「スキャナ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 2月 9日出願公開、特開2006- 39543〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平平成9年4月11日に出願した特願平9-93605号の一部を成17年(2005年)7月11日に新たな特許出願とした特願2005-201109号であって、平成19年10月9日付で拒絶査定がなされ、これに対して、平成19年11月14日付で拒絶査定不服審判の請求がなされ、同日付で手続補正がなされ、平成20年8月27日付で当審において拒絶理由の通知をし、これに対して平成20年10月27日付で意見書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年11月14日付手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項に特定される次のとおりのものである。 「原稿からの反射光を反射するための光折り返しミラーが走行可能に配置され、光折り返しミラーによる反射光を結像するレンズを有するスキャナ装置であって、 上記光折り返しミラーは、その長手方向に沿い、ミラー面およびこのミラー面の裏面以外の側面に補強部材が接着されていることを特徴とするスキャナ装置。」 第3 引用例 1 引用例1 当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平3-180867号公報(以下、「引用例1」という)には、次の事項が記載されている。(後述の「2 引用発明の認定」において直接引用した記載に下線を付した。) 「〔実施例〕 第3図は本発明に係る光学系ミラー防振構造を備えた画像形成装置の一実施例の構成図である。 画像形成装置はその上面にコンタクトガラス22および原稿押え23を有し、内部には光学系Lおよび像形成手段Pを備えている。 上記光学系Lはハロゲンランプ14と反射板15とミラー16からなる第1移動体1、第1ミラー3と第2ミラー4からなる第2移動体2、固定ミラー24およびレンズ部25から構成されている。 上記第1,第2移動体1,2は、第4図に示すように、各前後端を円柱状のガイドレール17,18上にスライド自在に支持され、駆動モータ19および駆動機構20,21により上記ガイドレール17,18に沿って往復動されるようになされている。そして、この第1,第2移動体1,2の往復動によりハロゲンランプ14(第4図では便宜上、示していない)等からの光がコンタクトガラス22上の原稿に反射し、ミラー16およびミラー3,4を経てレンズ部25に導かれた後、固定ミラー24を経て下記感光体ドラム26を露光する。 上記像形成手段Pは感光体ドラム26、帯電装置27、ブランクランプ28、現像装置29、転写装置30、分離装置31およびクリーニング装置32等を備え、感光体ドラム26の静電潜像を用紙に転写するようにしている。さらに、給紙機構としては、その給送方向の上流から順に、複数の給紙カセット33a、33b、給紙ローラ34a,34b、搬送ローラ対35,36およびレジストロ-ラ対37が配設され、これにより用紙が感光体ドラム26に給紙されて転写が行われる。そして、転写後の用紙の定着、排出機構として、搬送ベルト38、定着装置39、排出ローラ40および排紙トレイ41等が配設されている。 次に、上記第2移動体2に設けられた第1ミラー3および第2ミラー4の防振構造について第1図および第2図を用いて説明する。なお、第1,第2ミラー3,4はそれぞれ長手方向の両端部で支持枠9に、例えば3点支持により固定されている。また、支持枠9は軽量化のため、第1,第2ミラー3,4の後面全面に設けられているのではなく、第2図の二点鎖線に示すように、下記支持面91(92)に沿って短幅に形成されるとともに、挟持部材5(10)に対応する部分のみ上方に突設するようになされている。 第1ミラー3には、その短幅両側にそれぞれゴム等からなる防振部材6および防振部材7,7が設けられている。そして、挟持部材5の折曲部5aおよび支持枠9の支持面91によって第1ミラー3が防振部材6,7を介して適圧で挟まれる。上記挟持部材5は所定幅、且つ断面L字状に形成され、支持枠9の長手方向中央部分にビス8で固定されている。 第2ミラー4には、その短幅両側にそれぞれゴム等からなる防振部材11および防振部材12が設けられている。そして、挟持部材10の折曲部10aおよび支持枠9の支持面92によって第2ミラー4が防振部材11,12を介して適圧で挟まれる。上記挟持部材11は所定幅、且つ断面L字状に形成され、支持枠9の長手方向中央部分にビス13で固定されている。 このように、第1,第2ミラー3,4においてそれぞれ挟持部材5(10)と支持枠9の支持面91 (92)間に防振部材6,7(11,12)を介在させることにより、剛性が増加し、第1ミラー3の固有(共振)振動数が高域側にずれる。すなわち、例えば第1ミラー3が駆動モータ19等の振動により90Hzで共振していた場合、上記防振機構を設けたことにより、第1ミラー3の共振振動数が120Hzに変わる。従って、駆動モータ19等の振動周波数とずれ、共振しなくなる。 なお、防振部材7,12は、第2図に示すように、支持枠9の長手方向両端側の2箇所に設けてもよく、第1,第2ミラー3,4と支持枠9の支持面91,92間に一様に充填されるように設けてもよい。また、挟持部材5,10の固定位置は第1,第2ミラー3,4の長手方向中央部分が望ましいが、それ以外の位置であってもよい。さらに、本実施例では、第2移動体2に防振構造を設けたが、第1移動体1のミラー16も同様に防振構造を設けて、上述した第2移動体2と同様の効果を得ることもできる。」(第2ページ右上欄第7行?第3ページ右上欄第9行) 2 引用発明の認定 上記「1 引用例1」の記載事項から、引用例1には、 「光学系Lはハロゲンランプ14と反射板15とミラー16からなる第1移動体1、第1ミラー3と第2ミラー4からなる第2移動体2、固定ミラー24およびレンズ部25から構成され、 この第1,第2移動体1,2の往復動によりハロゲンランプ14からの光がコンタクトガラス22上の原稿に反射し、ミラー16およびミラー3,4を経てレンズ部25に導かれた後、固定ミラー24を経て下記感光体ドラム26を露光し、 第1ミラー3には、その短幅両側にそれぞれゴム等からなる防振部材6および防振部材7,7が設けられ、そして、挟持部材5の折曲部5aおよび支持枠9の支持面91によって第1ミラー3が防振部材6,7を介して適圧で挟まれ、 第2ミラー4には、その短幅両側にそれぞれゴム等からなる防振部材11および防振部材12が設けられ、そして、挟持部材10の折曲部10aおよび支持枠9の支持面92によって第2ミラー4が防振部材11,12を介して適圧で挟まれ、 このように、第1,第2ミラー3,4においてそれぞれ挟持部材5(10)と支持枠9の支持面91 (92)間に防振部材6,7(11,12)を介在させることにより、剛性が増加し、第1ミラー3の固有(共振)振動数が高域側にずれる画像形成装置の光学系。」の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。 3 引用例2 当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭60-244921号公報(以下、「引用例2」という)には、次の事項が記載されている。 「以上の構成によれば、スキャンモータ47やレジストローラ26等の振動源からの振動による反射ミラー50のたわみ振動は緩衝部材57および金属板58によって完全に吸収されるため、ポリゴンミラー46で走査されたレーザ光Lは外的な影響なく感光体2に導かれる。したがって、高い印字品質を保つことができる。また、緩衝部材57は両端とも粘着性があるので、取付けが容易である。 なお、上記実施例では、緩衝部材57および金属板58はミラーホルダ53,53の取付け部分を除いた全面に設けたが、第4図に示すように、部分的に数箇所に別けて設けてもよく、また、金属板58を反射ミラー50の短手方向に長くし、ベース56にねじ等で固定してもよい。 また、緩衝部材57は両面に粘着性があるものとしたが、第5図に示すように、両面に両面テープ59,59を張付けたものでもよい。」(第4ページ左上欄第20行?右上欄第17行) 4 引用例3 当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平4-149401号公報(以下、「引用例3」という)には、次の事項が記載されている。 「ミラー5,6の長さは約260mmであり、ミラーの変形の影響を評価するため、中央部に反射面に垂直方向に100g(0,98N)の荷重が加わつた場合を仮定すると、ミラーのたわみは中央部で約27μmとなる。ミラー5と感光体13の間の光路長は約185mmであつて、上記のたわみによつて、同一画角に対する感光体13上の走査幅は約0.1mm変化する。一方ミラーの平面度の変化によるスポツト形状の悪化などはほとんど無視できる。従つて通常は前記の走査幅の変化の影響を考慮すれば良い。本実施例においては、ミラーの変位を静止摩擦力の範囲で拘束すると共に、振動等による変位を当接部の摩擦によつて熱として消散する。また防振板7の位置の保持は、ミラーに当接する辺の曲げと、上カバー12との圧接力によるものであるが、ミラーとの当接部7b,7cの一方を、接続、粘着テープ等により固定しても良い。但し、実験によれば、固定材のせん断方向のばね定数は十分大であることが必要である。また、7b,7cの両方を固定することは、組立作業時にミラーに初期たわみ変形を与えることになり、好ましくない。」(第3ページ右上欄第18行?左下欄第19行) 第4 対比 1 対比 引用発明と本願発明を対比する。 引用発明の「ミラー16およびミラー3,4」は、原稿に反射した光をレンズ部25に導くものであるから本願発明の「折り返しミラー」に相当する。したがって、引用発明において「ミラー16からなる第1移動体1、第1ミラー3と第2ミラー4からなる第2移動体2」が「往復動」することが、本願発明の「原稿からの反射光を反射するための光折り返しミラーが走行可能に配置され」ることに相当する。 引用発明において「光がコンタクトガラス22上の原稿に反射し、ミラー16およびミラー3,4を経てレンズ部25に導かれた後、固定ミラー24を経て下記感光体ドラム26を露光する」ことから引用発明の「レンズ部25」は、本願発明の「光折り返しミラーによる反射光を結像するレンズ」に相当する。 引用発明においては「第1,第2ミラー3,4においてそれぞれ挟持部材5(10)と支持枠9の支持面91 (92)間に防振部材6,7(11,12)を介在させることにより、剛性が増加」するのであるから、引用発明の「防振部材6,7(11,12)」とミラーを挟持するための「挟持部材5(10)」が、本願発明の「補強部材」に相当する。 また、引用発明の「短幅両側」は「ミラー面およびこのミラー面の裏面以外の側面」であることは明らかであるから、引用発明において、第1ミラー3には、「その短幅両側」にそれぞれゴム等からなる防振部材6および防振部材7,7が設けられていること、及び、第2ミラー4には、「その短幅両側」にそれぞれゴム等からなる防振部材11および防振部材12が設けられていることが、本願発明において、上記光折り返しミラーは、「その長手方向に沿い、ミラー面およびこのミラー面の裏面以外の側面に」補強部材が設けられていることに相当する。 したがって、引用発明の「第1ミラー3には、その短幅両側にそれぞれゴム等からなる防振部材6および防振部材7,7が設けられ、そして、挟持部材5の折曲部5aおよび支持枠9の支持面91によって第1ミラー3が防振部材6,7を介して適圧で挟まれ、第2ミラー4には、その短幅両側にそれぞれゴム等からなる防振部材11および防振部材12が設けられ、そして、挟持部材10の折曲部10aおよび支持枠9の支持面92によって第2ミラー4が防振部材11,12を介して適圧で挟まれこのように、第1,第2ミラー3,4においてそれぞれ挟持部材5(10)と支持枠9の支持面91 (92)間に防振部材6,7(11,12)を介在させることにより、剛性が増加し、第1ミラー3の固有(共振)振動数が高域側にずれる」ことと、本願発明の「上記光折り返しミラーは、その長手方向に沿い、ミラー面およびこのミラー面の裏面以外の側面に補強部材が接着されている」こととは、「上記光折り返しミラーは、その長手方向に沿い、ミラー面およびこのミラー面の裏面以外の側面に補強部材が設けられている」ことで一致する。 引用発明の「画像形成装置の光学系」が本願発明の「スキャナ装置」に相当する。 2 一致点 したがって、本願発明と引用発明は、 「原稿からの反射光を反射するための光折り返しミラーが走行可能に配置され、光折り返しミラーによる反射光を結像するレンズを有するスキャナ装置であって、 上記光折り返しミラーは、その長手方向に沿い、ミラー面およびこのミラー面の裏面以外の側面に補強部材が設けられているスキャナ装置。」の発明である点で一致し、次の点で相違している。 3 相違点 光折り返しミラーの長手方向に沿い、ミラー面およびこのミラー面の裏面以外の側面に補強部材を設ける手法に関し、本願発明が「接着」によって設けているのに対して、引用発明においてはその点の限定がない点。 第5 当審の判断 上記の相違点について検討する。 光走査装置のミラーに膨振部材を設ける際の固着の手法として「接着」により固着して設けることは、例えば、引用例2(第4ページ左上欄第20行?右上欄第17行)、引用例3(第3ページ右上欄第18行?左下欄第19行)にも記載されているように周知の技術である。 引用発明のミラーへの防振部材の固定の手法としても、技術分野の共通性から、上記引用例2及び3に記載の周知技術を採用し、接着によって防振部材(補強部材)をミラーに設けることとすることに格別の困難性は認められない。すなわち、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、上記周知技術から当業者が容易になし得た事項である。 そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明、上記引用例2及び3に記載された周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。 したがって、本願発明は、引用発明、上記引用例2及び3に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。 なお、審判請求人は、平成20年10月27日付で提出された意見書において 「本願発明における補強部材は、ミラーの長手方向に沿ってミラー面およびこのミラー面の裏面以外の側面に接着されていて、その他のミラーを補強するための部材、例えば狭持部材の類を必要としません。 これに対して引用発明における補強部材は、ミラーをその幅方向両側から挟みこむ狭持部材と、この狭持部材とミラーの側面との間に介在する防振部材からなるものであって、ミラーの防振を図るための構造が本願発明における防振構造とはまったく異なっています。」 と主張しているが、本願の請求項1の記載では、「防振構造」については「補強部材」が接着されていること以外の特定はなく、そして、「補強部材」について「ミラーをその幅方向両側から挟みこむ狭持部材と、この狭持部材とミラーの側面との間に介在する防振部材からなる」補強部材を排除する規定とはなっていない。 したがって、上記審判請求人の主張は、請求項の記載に基づく主張ではないから、採用することができない。 第6 むすび 以上より、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-11-18 |
結審通知日 | 2008-11-25 |
審決日 | 2008-12-08 |
出願番号 | 特願2005-201109(P2005-201109) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G03B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 渡邊 吉喜 |
特許庁審判長 |
末政 清滋 |
特許庁審判官 |
安田 明央 森林 克郎 |
発明の名称 | スキャナ装置 |
代理人 | 石橋 佳之夫 |