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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A23L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 A23L |
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管理番号 | 1191571 |
審判番号 | 不服2006-5011 |
総通号数 | 111 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-03-16 |
確定日 | 2009-01-21 |
事件の表示 | 特願2001-401573「起泡組成物の製造方法および焼成菓子の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年7月15日出願公開、特開2003-199536〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成13年12月28日の出願であって、平成16年12月22日付けの拒絶理由通知に対して平成17年3月11日に意見書及び手続補正書が提出され、その後、平成18年2月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年3月16日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、同年4月13日付けで手続補正書が提出された後、平成19年12月4日付けで審尋がなされ、平成20年2月8日に回答書が提出されたものである。 第2 平成18年4月13日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成18年4月13日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容 平成18年4月13日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項6における、 「油脂または油脂含有原料に含まれる乳化剤が、親油性であることを特徴とする請求項5記載の焼成菓子の製造方法。」 を、 「油脂または油脂含有原料に含まれる乳化剤が、親水性であることを特徴とする請求項5記載のソフトクッキーの製造方法。」 に補正する事項を含むものである。 2 補正の目的の適否 補正前の「親油性」を「親水性」とする補正事項は、乳化剤の性質を正反対に補正することであるから、上記補正は平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項2号に規定する要件(いわゆる、限定的減縮)には該当せず、また、本願明細書の段落【0017】には「油脂又は油脂含有原料に添加する乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン又はショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等のHLB10以下の親油性乳化剤を用いることが好ましい。」と記載されていることからみて、「親油性」を「親水性」とすることは誤記の訂正に該当するともいえず、更に、かかる補正事項が明りょうでない記載の釈明に該当するとも認められないし、また請求項の削除に該当するとも認められない。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、この出願の発明は、平成17年3月11日付けの手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。 「卵白、乳化剤及び増粘剤を混合し、起泡させた起泡組成物を含む原料混合物を調整した後、焼成することを特徴とする焼成菓子の製造方法。」 (以下、この発明を「本願発明」という。) 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由の概要は、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物である、引用文献1(特開平2-177873号公報)及び引用文献2(特開平4-135440号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 3 刊行物及び刊行物の記載事項について (1)刊行物1に記載された事項 本願出願前に頒布された刊行物である特開平4-135440号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。 (1-a) 「卵白原料及びλ-カラギーナン0.1?2.2重量%を混合、泡立てた後、これに他の原料を加えて得られた卵白起泡物が耐熱性容器に密封されたものを、加熱殺菌処理してなる容器入りスポンジ状食品。」(特許請求の範囲、請求項1)、 (1-b) 「本発明者の研究の結果、増粘性物質として特にλ-カラギーナンを採用すると共に、予めこれと卵白原料とを混合、泡立てた後、他の原料を加えて得られた卵白起泡物によると、加熱殺菌処理を施しても、殺菌から保存時を通して気泡が極めて安定に保持されて、焼成時によく膨らみ、これが保持されるとの知見を得た。」(2頁左上欄4?10行)、 (1-c) 「本発明では、特に増粘剤としてλ-カラギーナンを起泡物中に0.1?2.2%、好ましくは0.3?1.5%用いる。λ-カラギーナンを上記の量用いることにより、加熱殺菌処理中を通して、起泡物中の気泡を安定に保持し、食品が焼成時によく膨らみ、焼成後も膨らみが保持され、またソフトな食感となる。」(2頁右下欄5?11行) (1-d) 「上記の増粘剤を、予め卵白材料と混合、泡立てた後、これに他の原料を加えて卵白気泡物を調製する。これにより、気泡安定効果、これに基づく焼成時の膨らみ及びその保持効果を奏し得る。」(3頁左上欄7?10行) (1-e) 「[実施例1] 濃縮卵白15部(卵白に由来する固形分3部)、3%λ-カラギーナン溶液15部及びキサンタンガム0.07部を混合し、泡立て器で卵白起泡物25.07部を得た。 上記の起泡物にココアパウダー2部、チーズペースト(クリームチーズ/水-1/1の混合物)5部、液糖30部、1096クエン酸溶液2部、水24.93部、生クリーム10部及びブランデー少量を加えて、10℃以下で1分間攪拌混合した(起泡物のpHは約5.8、オーバーランは約100%であった)。 得られた卵白起泡物65gを容量約130ccの金属製鉢型容器に充填、密封した。容器をレトルトに入れ120℃で30分間加熱処理してスポンジ状菓子を得た。 本品は常温で約12カ月の保存が可能で、常温で約6カ月保存後に容器を開けてオーブントースタ-で5分間加熱調理した。本品をトースターから取り出すとスポンジ状組織が容器の上端より約2cm盛り上がると共に、菓子は褐変なく焼成されていた。これを喫食したところ、こくのあるチョコレート風味を有し、きめの細かい組織で、滑らかな舌触りと口溶けのよい食感のものであった。そして、焼成後もスポンジ状組織の盛り上が保持されていた。」(3頁左下欄8行?右下欄13行) (2)刊行物2に記載された事項 本願出願前に頒布された刊行物である特開平2-177873号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。 (2-a) 「卵白に界面活性剤と多糖類とを添加してなることを特徴とする卵白組成物。」(特許請求の範囲、請求項1)、 (2-b) 「本発明は起泡力のよい卵白組成物に関する。」(1頁左下欄17行)、 (2-c) 「本発明は・・・充分な泡の高さと泡の固さとを併せ持つ起泡力のよい卵白組成物を提供することを目的とする。」(1頁右下欄16?19行)、 (2-d) 「界面活性剤とは、サポニン、ユッカホーム、レシチン、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の天然あるいは合成の界面活性剤を挙げることができる。」(2頁左上欄15?19行) (2-e) 「いずれの場合においても、界面活性剤と多糖類とを添加した卵白は、これを液状として単独に、又は他の原料に混合させて高速攪拌すると、著しい起泡性を生じる。」(2頁右下欄11?14行) (2-f) 「試験例4 卵白1kgに対し、界面活性剤としてサポニン2gを単独で添加・混合して無糖のサンプル(4-1)を得た。 この無糖のサンプル(4-1)500gに砂糖500gを添加・混合して加糖のサンプル(4-2)を得た。 卵白1kgに対し、多糖類としてプルラン2gを単独で添加・混合して無糖のサンプル(4-3)を得た。 この無糖のサンプル(4-3)500gに砂糖500gを添加・混合して加糖のサンプル(4?4)を得た。 卵白1kgに界面活性剤としてサポニン1gと多糖類としてプルラン1gとを併用して添加・混合して、無糖のサンプル(4-5)を得た。 この無糖のサンプル(4-5)500gに砂糖500gを添加・混合して加糖のサンプル(4-6)を得た。 上記得られた種のサンプルについて試験例1と同様に各々の起泡力の測定を行った。 尚、無糖の卵白(4-7)及び加糖の卵白(4-8)を対照とした。 これらの結果を第4表に示す。 第4表に示すように界面活性剤と多糖類とを併用して添加したものが最も起泡力がよかった。」(4頁右上欄下から4行?右下欄下から7行) 4 当審の判断 (1) 刊行物1に記載された発明 刊行物1には、「卵白原料及びλ-カラギーナン0.1?2.2重量%を混合、泡立てた後、これに他の原料を加えて得られた卵白起泡物が耐熱性容器に密封されたものを、加熱殺菌処理してなる容器入りスポンジ状食品。」(摘示(1-a))に関する発明が記載されており、また、「得られた卵白起泡物65gを容量約130ccの金属製鉢型容器に充填、密封した。容器をレトルトに入れ120℃で30分間加熱処理してスポンジ状菓子を得た。本品は常温で約12カ月の保存が可能で、常温で約6カ月保存後に容器を開けてオーブントースタ-で5分間加熱調理した。本品をトースターから取り出すとスポンジ状組織が容器の上端より約2cm盛り上がると共に、菓子は褐変なく焼成されていた。」(摘示(1-e))ことが記載されている。 そして、「λ-カラギーナン」は増粘剤の一種である(摘示(1-c))。 してみると、刊行物1には、 「卵白原料及び増粘剤を混合、泡立てた後、これに他の原料を加えて得られた卵白起泡物を得、これに他の原料を加えて得られた卵白起泡物が耐熱性容器に密封されたものを、加熱殺菌処理した後、焼成する、容器入りスポンジ状菓子の製造方法」 (以下、「引用発明」という。)という発明が記載されていると認められる。 (2) 本願発明と引用発明との対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「卵白原料」、「泡立てた」、「これに他の原料を加えて得られた卵白起泡物が耐熱性容器に密封されたものを、加熱殺菌処理した後」及び「容器入りスポンジ状菓子」は、それぞれ、本願発明の「卵白」、「起泡させた」、「起泡組成物を含む原料混合物を調整した後」及び「焼成菓子」に対応することを考慮すれば、両者は、 「卵白及び増粘剤を混合し、起泡させた起泡組成物を含む原料混合物を調整した後、焼成する焼成菓子の製造方法」で一致するが、以下の点で相違すると認められる。 (相違点) 卵白及び増粘剤以外に、本願発明では更に「乳化剤」を併用するのに対して、引用発明では更に「乳化剤」を併用する点は特に記載されていない点 (3) 判断 ア 相違点についての判断 刊行物2には、 (ア) 「卵白に界面活性剤と多糖類とを添加してなることを特徴とする卵白組成物」(摘示(2-a))が記載されており、 (イ) 界面活性剤の例として、乳化剤として周知の「ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル」が例示されており(摘示(2-d)。なお、「ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル」が乳化剤として周知であることについて、必要なら、例えば、特開平9-271329号公報の【0015】、特開平11-113533号公報の【0015】、及び特開2000-14358号公報の【0017】参照。)、 (ウ) 界面活性剤と多糖類とを添加した卵白は、これを液状として単独に、又は他の原料に混合させて高速攪拌すると、著しい起泡性を生じることが記載されており(摘示(2-e)。他に摘示(2-b)及び摘示(2-c)も参照。)、また (エ) 試験例4、特に、第4表の「本試験例*2」と「本試験例*3」との比較から、卵白に対し多糖類を単独で加えたもの等と比較して、卵白に対し界面活性剤と多糖類とを併用して添加したものが最も起泡力がよかったことが記載されている(摘示(2-f))。 そして、引用発明で増粘剤として用いられているλ-カラギーナンは、多糖類であることが周知である(必要なら、例えば、特開平4-252136号公報の【0007】、特開平5-236919号公報の【0016】及び特開平5-317001号公報の【0005】参照)。 してみると、引用発明において、卵白に対し多糖類であるλ-カラギーナン(増粘剤)を単独で加えるのに替えて、より気泡力を高めるために、卵白及びλ-カラギーナン(増粘剤)以外に、更に界面活性剤であるとともに乳化剤として周知の「ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル」を併用することは、当業者が容易に想到し得ることである。 イ 効果についての判断 本願発明が上記相違点により格別顕著な効果を奏するものとは認められない。 すなわち、引用発明を記載した刊行物1には、ココアパウダー、チーズペースト、及び生クリームのような油脂含有材料を含む卵白起泡物を含む卵白起泡物を焼成したスポンジ状菓子がよく盛り上がるとともに、焼成後もスポンジ状組織の盛り上がりが保持されていた(すなわち、比重を小さく維持することができる)ことが記載されている(摘示(1-e))し、しかも、刊行物2には、卵白に対し多糖類を単独で加えたもの等と比較して、卵白に対し界面活性剤と多糖類とを併用して添加したものが最も起泡力がよかったことが記載されている(摘示(2-f))から、引用発明において、卵白に対し多糖類であるλ-カラギーナン(増粘剤)を単独で加えるのに替えて、より気泡力を高めるために、卵白及びλ-カラギーナン(増粘剤)以外に、更に界面活性剤であるとともに乳化剤として周知の「ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル」を併用することにより、油脂を多く含む焼成菓子に配合して比重を小さく維持することができたとしても、そのことは予想の範囲内のことである。 また、本願明細書のその他の記載をみても、本願発明が上記相違点により格別顕著な技術的効果を奏し得たものとは認められない。 (4) 小括 以上のとおり、上記相違点は当業者が容易に想到し得るものであり、本願明細書を検討しても、本願発明が格別顕著な効果を奏するものとは認められないから、本願発明は、刊行物1に記載された発明(引用発明)、及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。 (5) 請求人の主張について 請求人は、平成17年5月17日付け上申書において、「本願発明では増粘剤を使用するが、その作用は、乳化剤との作用で、油脂と接触しても起泡組成物の比重が安定的に維持されることにある(段落番号0016参照)」((2)の項)と主張している。 しかしながら、上記(3)の「イ 効果についての判断」で述べたように、請求人が主張する点は格別顕著な効果とは認められない。 のみならず、本願発明では「油脂」は発明特定事項には含まれていないから、請求人の主張は特許請求の範囲の記載に基づかない主張であって採用できない。 したがって、請求人の主張は上記(4)の判断を左右するものではない。 第4 結語 したがって、本願は、その余の請求項に係る発明について判断するまでもなく、拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-11-13 |
結審通知日 | 2008-11-18 |
審決日 | 2008-12-02 |
出願番号 | 特願2001-401573(P2001-401573) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A23L)
P 1 8・ 573- Z (A23L) P 1 8・ 572- Z (A23L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 巌、内田 淳子、小石 真弓 |
特許庁審判長 |
唐木 以知良 |
特許庁審判官 |
橋本 栄和 杉江 渉 |
発明の名称 | 起泡組成物の製造方法および焼成菓子の製造方法 |