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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G |
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管理番号 | 1191573 |
審判番号 | 不服2006-14362 |
総通号数 | 111 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-07-06 |
確定日 | 2009-01-21 |
事件の表示 | 特願2000- 88101「固体電解コンデンサの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月 5日出願公開、特開2001-274042〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成12年3月28日の出願であって、平成18年5月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年2月20日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「弁金属によって形成された陽極体(1)に誘電体皮膜(2)を形成する工程と、該誘電体皮膜(2)上に導電性材料を密着させて陰極層(3)を形成する工程を有する固体電解コンデンサの製造方法であって、 陽極体(1)は誘電体皮膜(2)を形成する以前に、キャリアバー(50)に陽極体(1)を吊るした状態で、研掃材を吹き付けることにより、陽極体(1)のコーナー部のバリ(10)を除去する工程を具える固体電解コンデンサの製造方法。」 第3 刊行物に記載された発明 1 刊行物1:特開昭61-128510号公報 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物1には、「電解コンデンサ用陽極体の製造方法」(発明の名称)に関して、第1図?第4図とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線は、引用箇所のうち特に強調する部分に付加した。以下、同様。) 「このような成型体の製造方法においては、パンチ4の機械的動きを円滑ならしめるため、ダイス1の内径とパンチ4の外径との間に、若干の隙間を持たせる必要が有り、そのため成型の際に弁作用金属粉末2がダイス1とパンチ4の隙間に入り込んだ状態で加圧成型されるので第4図(a),(b)に示す如く、陽極体隅角部には、バリ状の突出部5が形成されてしまう。」(第1頁右下欄第20行?第2頁左上欄第7行) 「以下、本発明の実施例を従来例と比較して詳細に説明する。第3図(a)に示す構造のダイスl及びパンチ4を有する成型装置を用い重量1gのタンタル粉末を第2図(a)の如く円柱状に成型する。このとき陽極引出し線として0.5φのタンタル線をタンタル粉末φに埋め込み、直径4mm×長さ6.5mm、見掛け密度8g/cm^(3)、陽極引出し線の埋め込み長さ5mm、陽極引出し線の成型体外部への露出長さ6mmの成型体を形成した。 次いで、この成型体を真空焼結炉φに入れ、温度1800℃にて30分間真空焼結して焼結体を得た。 この様にして得られた焼結体から試料を抜き取り、頂面及び底面の隅角部のバリ状の突出部5の有無を観察した結果、約6割の焼結体に厚み約0.1mm、高さ約0.2mmのバリ状の突出部が存在することが認められた。この焼結体を従来例にそのまま陽極体として用い、電解コンデンサ製造の公知手段により、その表面に誘電体酸化皮膜及び陰極層を設けて、コンデンサ素子を形成し、更に公知の手段による樹脂外装を行って製品化した。 一方本発明実施例として、第1図に示す如くバリ状の突出部の観察された焼結体11の500個と純水12の500mlとを一辺の長さが約12.5cmで、且つ内容積2000mlのテフロン製の容器13に収納し、容器13を毎秒1回転の割合で5分間回転させ、容器13内に収納した焼結体11同志を衝突・接触させてバリ状の突出部を破砕させた後、純水にて洗浄し、乾燥したものを陽極体として用い、従来例と同一の製造方法により誘電体酸化皮膜、陰極層および樹脂外装を設けて製品化した。」(第2頁右上欄第9行?左下欄第20行) 以上から、刊行物1には、 「タンタル粉末から形成された陽極体に誘電体酸化皮膜及び陰極層を設けた電解コンデンサの製造方法であって、陽極体は誘電体酸化皮膜を形成する以前に、陽極体隅角部のバリ状の突出部を破砕した電解コンデンサの製造方法。」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 2 刊行物2:特開平3-79021号公報 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物2には、「チップ状固体電解コンデンサの製造方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 「その金属板にコンデンサ素子が取付けられるように陰極引出金属端子部及び陽極引出金属端子部を形成するように打ち抜き加工して端子部を具備した一連のコム状金属板とし、形成したその両端子部にコンデンサ素子を取付けた後に樹脂外装を施し、続いて得られた樹脂外装品の周囲に発生した樹脂バリを金型で打ち抜く方法、又は高速の水流を吹きつける方法、又はサンドブラスト方法等で除去した後、コム状金属板より個片に切り離し、そして両端子を両端側面に沿って下方へ折曲げ、更に底面にて内側に向かって折曲げ、完成品としていた。」(第2頁左上欄第1?12行) 「第1図に示す様に厚さ0.1mm×幅18mmのニッケル板を用意し、これに一般的な方法で厚さ1μmの銅下地めっきした後に、厚さ5μmの錫90-鉛10の電気めっきを行った。これを打ち抜き加工してコンデンサ素子を接続する部分とチップ状固体電解コンデンサの端子部となる部分を形成した。 一方、陽極導出線を具備するタンタル金属からなる多孔質体に、陽極酸化より誘電体性皮膜を形成させ、この表面に二酸化マンガンなどの電解質層を形成させ、更にカーボン層,陰極層を形成させて16V22μFのコンデンサ素子を得、そしてその素子に陰極引出金属端子を接続すると共に、陽極導出線に陽極引出金属端子を接続し、かつ両端子が両端側面から引き出されるようにトランスファーモールド方式にて方形状に樹脂外装する。続いて、樹脂バリの発生している部分にプラスチック粒子を比較的弱く吹きつけ樹脂バリの除去を行った後に、続いて金属端子部めっき表面に樹脂から滲み出して付着したワックス類の除去とめっき表面の粗面化をプラスチック粒子やガラス粒子などを強力に吹きつけて行った。めっき表面の酸化物が除去され若干薄くなり、同時に凹部が形成され、無数の酸化していない新たな金属面が露出してくるまで行う。これは顕微鏡によって観察することができる。外装樹脂表面に粒子を強力に吹きつけると、樹脂が割れたりするので注意が必要である。続いて金属端子部のみを300℃の錫90-鉛10の溶融浴に数秒間浸せきして引上げることにより、電気めっき層の表面一部を溶融させて、電気めっき層をも含めて15μmの鉛-錫系金属層を形成した。この工程はフラックスを用いることによりより確実に行うことができる。」(第3頁左下欄第12行?第4頁左上欄第4行) 以上から、刊行物2には、「チップ状固体電解コンデンサにおいて、樹脂バリをサンドブラスト法により除去すること」が記載されている。 第4 本願発明と引用発明との対比・判断 本願発明と引用発明とを対比する。 (a)引用発明の「タンタル粉末から形成された陽極体」、「誘電体酸化皮膜」は、それぞれ本願発明の「弁金属によって形成された陽極体」、「誘電体皮膜」に相当する。 (b)引用発明の「電解コンデンサ」は、タンタル粉末から形成された陽極体に誘電体酸化皮膜及び陰極層を設けた電解コンデンサであるから、本願発明の「固体電解コンデンサ」に相当する。 (c)引用発明の「陽極体の隅角部のバリ状の突出部を破砕」する工程は、本願発明の「陽極体のコーナー部のバリを除去する工程」に相当する。 (d)固体電解コンデンサの製造において、誘電体皮膜上に導電性材料を密着させて陰極層を形成することは、技術常識であるから、引用発明の「誘電体酸化皮膜及び陰極層を設け」る工程は、本願発明の「誘電体皮膜を形成する工程と、該誘電体皮膜上に導電性材料を密着させて陰極層を形成する工程」に相当する。 ゆえに、両者は、 「弁金属によって形成された陽極体に誘電体皮膜を形成する工程と、該誘電体皮膜上に導電性材料を密着させて陰極層を形成する工程を有する固体電解コンデンサの製造方法であって、 陽極体は誘電体皮膜を形成する以前に、陽極体のコーナー部のバリを除去する工程を具える固体電解コンデンサの製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1]本願発明は、「キャリアバーに陽極体を吊るした状態で、研掃材を吹き付けることにより」バリを除去する工程を備えているのに対し、引用発明は、バリを除去する手段が異なる点。 そこで、上記相違点について検討する。 [相違点1について] (a)刊行物2には、チップ状固体電解コンデンサにおいて、樹脂バリをサンドブラスト法により、除去することが記載されており、また、サンドブラスト法において、微細な粒状の研磨剤(本願発明の「研掃材」に相当。)を対象物に吹き付けて加工することは、従来周知であるから、引用発明のバリを除去する手段として、本願発明のごとく「研掃材を吹き付けること」により行うことは、当業者が適宜なし得たことである。 (b)そして、サンドブラストの作業時に、作業対象物を何らかの手段により保持する必要があることは明らかであり、保持手段として、作業対象物を置いて保持したり、作業対象物を吊して保持したりすることが考えられ、このうち、作業対象物を吊して保持する方法を選択することに、格別の困難性は認められない。また、作業対象物(陽極体)を保持して搬送する手段(本願発明の「キャリアバー」に相当。)に吊した状態で作業することは、製造技術として周知技術である。 (c)よって、引用発明において、本願発明のごとく、キャリアバーに陽極体を吊るした状態で、研掃材を吹き付けることにより、バリを除去することは当業者が容易になし得たことである。 したがって、本願発明は、刊行物1,2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1,2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-11-19 |
結審通知日 | 2008-11-25 |
審決日 | 2008-12-08 |
出願番号 | 特願2000-88101(P2000-88101) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 晃洋、桑原 清 |
特許庁審判長 |
河合 章 |
特許庁審判官 |
橋本 武 大澤 孝次 |
発明の名称 | 固体電解コンデンサの製造方法 |
代理人 | ▲角▼谷 浩 |