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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B22F
管理番号 1191577
審判番号 不服2006-26767  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-28 
確定日 2009-01-21 
事件の表示 特願2001- 59769「高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月26日出願公開、特開2002-206103〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一 手続の経緯
本件審判に係る出願は、平成13年3月5日に出願されたものであって、平成18年10月23日付けで拒絶査定されたものである。
この拒絶査定を不服として、平成18年11月28日付けで本件審判請求がなされ、同年12月1日付けで手続補正がなされたものの、当該手続補正は、当審において、平成20年7月15日付けで補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶理由通知がなされ、平成20年9月19日付けで手続補正がなされたものである。

第二 本願発明について
1.本願発明
本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、平成20年9月19日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであって、以下のとおりのものである。

「ジルコニウム若しくはハフニウム原料を電子ビーム溶解し高純度化してインゴット化する工程、得られた高純度ジルコニウム若しくはハフニウムインゴットを水素雰囲気中で700°C以上に加熱して水素化する工程、該水素化したインゴットを不活性ガスを導入しつつ500°C以下に冷却して水素化ジルコニウム若しくはハフニウム粉をインゴットから剥落させ、水素化高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉を得る工程、インゴットから剥落した高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉を、さらに粉砕する工程、及び水素化高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉の水素を真空下又は不活性雰囲気中で加熱することにより除去する工程からなることを特徴とする高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉の製造方法。」

2.当審の拒絶理由の概要
当審より通知された拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

この出願の請求項1?11に係る発明(以下、それぞれ、本願発明1?11という。)は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1 特開昭63-143209号公報
引用文献2 特開平4-350105号公報
引用文献4 特開平4-358030号公報
引用文献A 特開平10-91941号公報
引用文献B 特開昭63-47344号公報
引用文献C 特開平10-17908号公報
引用文献ア 特開平7-278601号公報
引用文献イ 特開平6-128613号公報
引用文献ウ 特開平5-105917号公報

3.刊行物及び刊行物に記載された事項
引用文献1(【発明の名称】IVa族金属粉末の製造方法)には、〈背景技術〉として、以下の記載がある(以下、明瞭化のため適宜下線を引いた。)。
(1a)
「〈背景技術〉
・・・
IVa族金属粉末の製造手段としては、・・・上記金属が水素を吸蔵して脆化し易い性質を利用したところの「水素化して破砕され易くなったIVa族金属を粉砕し、その後脱水素処理を施す方法(水素化-脱水素法)」等が知られている。
・・・
”水素化-脱水素法”によるIVa族金属粉末の製造は、現在、概ね上記原理に基づいて行われており、実際には次のような工程・条件を柱として粉末が製造されている。
第1工程〔水素化〕
・・・
H_(2)ガス中加熱温度:500℃以上、
第2工程〔粉砕〕
雰囲気ガス:アルゴン、
第3工程〔脱水素〕
処理槽内の真空度:10^(-4)Torr以下、
加熱温度:700℃以上。」
(1頁右下欄末行、2頁右上欄2行?2頁左下欄下から2行)
(1b)「ここで、「IVa族金属」とはTi、 Zr及びHfのみならずこれらを基とする合金をも含む」(3頁右下欄末行?4頁左上欄1行)

引用文献2(【発明の名称】高融点活性金属・合金微粉末の製造方法)
(2a)「【0007】
【作用】・・・本発明は特に、チタン,チタン合金,ジルコニウム,ニオブ合金に適用される。これら金属および合金の溶解方法は公知の方法でよく、例えば電子ビーム溶解などが用いられる。」

「【0012】以下に従来の製造方法で合金粉末を製造した従来例について説明する。真空中での電子ビーム溶解炉で製造した酸素量0.2%以下のTi-6%Al-4%Vのブロックをハンマーミルで大気中粉砕で約数mm程度に粉砕後、」

引用文献2の4頁表1には、700℃、800℃で水素化する実施例5、6、比較例3、4が記載されている。

引用文献4(【発明の名称】高純度金属材およびその製造方法と、それを用いたスパツタターゲツト、およびそれを用いて形成した配線網と半導体パツケージ)
(4a)「【0015】すなわち、本発明の高純度金属材の第1の製造方法は、チタン、ジルコニウムおよびハフニウムから選ばれた1種の金属を主とする粗金属材をヨウ化物分解法によって精製する工程と、この精製された金属材を高真空下で電子ビーム溶解する工程とを有することを特徴としている。 ・・・
【0016】
【作用】本発明においては、・・・高真空下で電子ビーム溶解を行って金属材を得ているため、Alの含有量を 10ppm以下というように、極めて減少させたチタン材、ジルコニウム材、あるいはハフニウム材を得ることができる。このように、Al含有量を低減した高純度金属材を用いて、」

(4b)「【0026】本発明の第1の製造方法においては、・・・高真空下で電子ビーム溶解(以下、EB溶解と記す)することにより、最終的にAlやNa、Kが除去され、高純度金属材が得られる。」

(4c)「【0028】このようにヨウ化物分解法で精製されたTi、Zr、Hf等の金属材は、EB溶解によりさらに精製される。また、溶解は高真空下で行われるため、酸素や窒素による汚染も少なく、高純度の金属材が得られる。」

引用文献B(【発明の名称】低酸素合金成形体の製造法)
「水素化物を形成しうる金属としては、周期律表の2A,3A,4A,5A,6Aなどに属する金属、とくに希土類金属やチタン、ジルコニウムなどが好ましく用いられる・・・
このような、水素化物を形成しうる金属を含む金属配合物は、粉状、粒状あるいはインゴット等であってもよいが、・・・一旦溶融され、・・・これを冷却固化する。
・・・
固化合金は、固化に引き続いて、または固化後適宜の時に水素と接触させて水素化する。かかる水素化は合金の種類によってそれぞれ適した条件の下に行うことができる。合金は高純度の水素を吸収して水素化することにより膨張し、内部応力によって破砕する。そして水素化物を形成しうる金属の配合量が少な過ぎない限り水素化と共に破砕も進行し、すべて粉末となる。」(2頁左下欄3行?右下欄8行)

引用文献C(【発明の名称】希土類焼結磁石用合金粉末の製造方法)
「【0036】水素吸収後、容器内を真空引きし1kg/cm^(2)になるまで純度99.999%Ar置換し25℃まで水素化粉が冷却される時間を測定したところ、本発明例に比べ大幅に増加した。これらの水素化粉を本発明例と同様の方法で微粉砕し、」

4.引用発明の認定・判断
引用文献1の(1a)の
「〈背景技術〉
・・・
IVa族金属粉末の製造手段としては、・・・上記金属が水素を吸蔵して脆化し易い性質を利用したところの「水素化して破砕され易くなったIVa族金属を粉砕し、その後脱水素処理を施す方法(水素化-脱水素法)」等が知られている。
・・・
”水素化-脱水素法”によるIVa族金属粉末の製造は、現在、概ね上記原理に基づいて行われており、実際には次のような工程・条件を柱として粉末が製造されている。
第1工程〔水素化〕
・・・
H_(2)ガス中加熱温度:500℃以上、
第2工程〔粉砕〕
雰囲気ガス:アルゴン、
第3工程〔脱水素〕
処理槽内の真空度:10^(-4)Torr以下、
加熱温度:700℃以上。」
との記載によれば、引用文献1には、IVa族金属粉末の製造に関して、その背景技術として、
(1)IVa族金属原料を用意し、これを、水素雰囲気中で500℃以上に加熱する第1工程、
(2)これを、アルゴンガス雰囲気で粉砕する第2工程及び、
(3)水素化したIVa族金属粉の水素を真空中で加熱することにより除去する第3工程、
からなるIVa族金属粉末の製造方法が記載されているといえる。

そして(1b)の「ここで、「IVa族金属」とはTi、 Zr及びHfのみならずこれらを基とする合金をも含む」との記載によれば、上記「IVa族金属」を、ジルコニウム若しくはハフニウムとすることができる。
したがって、引用文献1には、以下の発明が記載されている。

「ジルコニウム若しくはハフニウム原料を水素雰囲気中で500℃以上に加熱して水素化する工程、該水素化した原料を不活性ガスを導入しつつ粉砕する工程、及び水素化ジルコニウム若しくはハフニウム粉の水素を真空下で加熱することにより除去する工程からなるジルコニウム若しくはハフニウム粉の製造方法。」(以下「引用発明」という。)

よって、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致し、相違する。
(一致点)
「ジルコニウム若しくはハフニウム原料を水素雰囲気中で700℃以上に加熱して水素化する工程、該水素化した原料を不活性ガスを導入しつつ粉砕する工程、及び水素化ジルコニウム若しくはハフニウム粉の水素を真空下で加熱することにより除去する工程からなるジルコニウム若しくはハフニウム粉の製造方法。」

(相違点1)
本願発明1は、「ジルコニウム若しくはハフニウム原料を電子ビーム溶解し高純度化してインゴット化する工程」を備えた「高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉の製造方法」であるのに対して、
引用発明は、そのような工程を備えていない「ジルコニウム若しくはハフニウム粉の製造方法」である点。

(相違点2)
本願発明1は、「該水素化したインゴットを不活性ガスを導入しつつ500°C以下に冷却して水素化ジルコニウム若しくはハフニウム粉をインゴットから剥落させ、水素化高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉を得る工程、インゴットから剥落した高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉を、さらに粉砕する工程」を備えているのに対して、
引用発明は、それらの工程を備えているか不明である点。

(相違点についての判断)
相違点1について
ジルコニウム若しくはハフニウム原料を電子ビーム溶解し、高純度化した後、固化、インゴット化することは、本願出願前周知であるから(引用文献2の(2a)、引用文献4(4a)?(4c)、引用文献B)、引用発明において、高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉を製造するため、その原料段階から高純度化すべく、〔水素化〕工程前に、「ジルコニウム若しくはハフニウム原料を電子ビーム溶解し高純度化してインゴット化する工程」をを備え、「高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉の製造方法」とすることは、当業者であれば容易になし得たものである。

相違点2について
水素化-脱水素法において、水素化工程後、不活性ガス中で冷却し、粉砕を行うことは、周知である(引用文献C、特開平4-131309号公報 3頁右下欄下から9行?4頁左上欄5行)。

引用発明において、上記のようにして、水素化する工程後のインゴットを不活性ガスを導入しつつ、冷却する際、500℃以下の適当な温度に冷却することは、当業者が適宜なし得たことである。
そうすると、インゴットは水素脆化しており、冷却時の熱収縮等により、水素化ジルコニウム若しくはハフニウム粉は、インゴットから剥落し、水素化高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉を得ることができるといえる(引用文献B参照)。
そして、インゴットから剥落した高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉を、さらに粉砕することは、当業者が適宜なし得たことである。
したがって、引用発明において、相違点2の構成を備えることは、当業者であれば容易になし得たものである。

以上のとおり、引用発明において、相違点1、2の構成を備えることは、当業者であれば容易に想到し得たものである。
したがって、本願発明は、引用文献1、2、4、Cに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-12 
結審通知日 2008-11-18 
審決日 2008-12-02 
出願番号 特願2001-59769(P2001-59769)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B22F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近野 光知小川 武  
特許庁審判長 山田 靖
特許庁審判官 山本 一正
守安 太郎
発明の名称 高純度ジルコニウム若しくはハフニウム粉の製造方法  
代理人 小越 勇  

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