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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F04D |
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管理番号 | 1191754 |
審判番号 | 不服2006-21415 |
総通号数 | 111 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-09-25 |
確定日 | 2009-01-26 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第528828号「循環送風機、真空ポンプ又はこれに類似するもの」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年10月 3日国際公開、WO96/30649、平成11年 9月28日国内公表、特表平11-511219〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯・本願発明 本願は、平成8年2月10日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 1995年3月29日、ドイツ国)を国際出願日とする出願であって、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年7月11日付の手続補正書によって補正された明細書および図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。 「循環送風機、真空ポンプ又はこれに類似するものを運転する方法において、 自由に設定できるしきい値を越えるとスイッチング出力がセットアップされて、該スイッチング出力は警告信号の送出を引き起こして、前記しきい値を下回ると再びテークダウンされることを特徴とする、循環送風機、真空ポンプ又はこれに類似するものを運転する方法。」 2.引用刊行物記載の発明 これに対して、当審における、平成20年1月22日付で通知した拒絶の理由に引用した実願平1-56608号(実開平2-145696号)のマイクロフィルム(平成2年12月11日公開、以下「引用例1」という。)には、「ターボ分子ポンプ」に関する発明が開示されており、そこには、図面とともに次の事項が記載されている。 ・「ターボ分子ポンプにおいて、ポンプ内部に取り付けられ回転による機械的損傷を検知する振動センサーと、このセンサーからの信号に基づき警報を発する手段及びポンプの回転を停止せしめる手段とを備えたことを特徴とするターボ分子ポンプ。」(実用新案登録請求の範囲) ・「[考案が解決しようとする課題] 上述した従来のターボ分子ポンプは安全装置として温度警報器のみしか備えてない為、ベアリング損傷などにおける異常振動が検知できず、故障を大きくする上に、予知保全ができないという欠点がある。」(明細書第2頁第3行から第8行) ・「[実施例] 以下本考案について図面を参照して説明する。 第1図は本考案の第1の実施例の構成図でターボ分子ポンプ1は、半導体のエッチングに使用するガスを排気するポンプである。 この実施例では、ガスを排気する為に使用するターボ分子ポンプ1の内部に振動検出センサー2を設け、検出量をケーブル4を通じてセンサー表示コントローラー3で表示する。 又、センサー表示コントローラー3においては、表示だけではなく、振動がある設定値以上になったら警報を出す機能を持ち、それが、ある設定時間続いたらターボ分子ポンプを停止する。この作用により、予知保全ができ、ポンプの破損を未然に防ぐことが可能となり、工数もかからなくなる。」(明細書第2頁第15行から第3頁第9行) これらの記載事項によると、引用例1には、 「ターボ分子ポンプを運転する方法において、ポンプ内部に取り付けられ回転による機械的損傷を検知する振動センサーの検出する振動がある設定値以上になったら警報を出し、それが、ある設定時間続いたらターボ分子ポンプを停止する、ターボ分子ポンプを運転する方法。」の発明(以下「引用例1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。 3.対比 本願発明と引用例1記載の発明を対比すると、後者における「ターボ分子ポンプ」は、前者における「循環送風機、真空ポンプ又はこれに類似するもの」に相当する。また、後者において「ポンプ内部に取り付けられ回転による機械的損傷を検知する振動センサーの検出する振動がある設定値以上になったら警報を出」すことは、前者において、「しきい値を越えるとスイッチング出力がセットアップされて、該スイッチング出力は警告信号の送出を引き起こ」すことに相当する。 したがって、両者は、 「循環送風機、真空ポンプ又はこれに類似するものを運転する方法において、しきい値を越えるとスイッチング出力がセットアップされて、該スイッチング出力は警告信号の送出を引き起こす、循環送風機、真空ポンプ又はこれに類似するものを運転する方法。」である点で一致し、次の各点において相違する。 [相違点1] 「しきい値」について、本願発明においては、「自由に設定できるしきい値」であるのに対し、引用例1記載の発明においては、「ある設定値」である点。 [相違点2] 本願発明においては、さらに「しきい値を下回ると再びテークダウンされる」のに対し、引用例1記載の発明においては、設定値を下回った場合については記載がなく、設定値以上になった状態が「ある設定時間続いたらターボ分子ポンプを停止する」とされている点。 4.判断 上記相違点1について検討すると、引用例1記載の発明は、従来のターボ分子ポンプは安全装置として温度警報器のみしか備えてない為、ベアリング損傷などにおける異常振動が検知できず、故障を大きくする上に、予知保全ができないという欠点を解決するものであり、「振動センサを用いることにより、ポンプの全体破損の前に、所定の限界値を越えたらポンプを遮断して軸受を交換することができる」という本願発明の目的と同様の目的を持つものである。そして、警告信号を送出するしきい値については、実験、過去の経験等により得られた適宜な値に設定することは、当業者にとって設計上の事項にすぎず、これを自由に設定できるようにすることが、当業者にとって格別なことであるとは認められない。 上記相違点2について検討すると、引用例1記載の発明は、設定値以上になった状態が「ある設定時間続いたらターボ分子ポンプを停止する」ものであるから、設定値以上になった状態が続かなかった場合はターボ分子ポンプを停止させず、運転を継続するものであるといえる。その際に警報を継続するかどうかは明らかでないが、センサの検出値が設定値を超えたとき警報を行うものにおいて、検出値が設定値以下になったときに警報を継続するか否かは、警報の種類により適宜選択し得る事項であると認められる上、検出値が設定値以下になったときには警報をしないものも周知であるので(例えば、実願昭57-56186号(実開昭58-158107号)のマイクロフィルム(明細書第2頁第1行から第10行に記載された従来例)、特開平5-91652号公報(図4に記載されたものは、第2コンパレータを介して警報信号が出力されていることから、検出値が設定値以下となれば警報信号は出力されない)参照)、警報を継続しないようにすることも、当業者にとって容易に想到し得ることであり、本願発明のように「しきい値を下回ると再びテークダウンされる」ようにすることも、当業者にとってなんら格別なことではない。 そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1に記載されたものから当業者が予測し得る程度のものである。 5.むすび したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-08-20 |
結審通知日 | 2008-08-27 |
審決日 | 2008-09-10 |
出願番号 | 特願平8-528828 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(F04D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 刈間 宏信、中野 宏和 |
特許庁審判長 |
丸山 英行 |
特許庁審判官 |
田良島 潔 米山 毅 |
発明の名称 | 循環送風機、真空ポンプ又はこれに類似するもの |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
代理人 | 久野 琢也 |
代理人 | 山崎 利臣 |
代理人 | 矢野 敏雄 |