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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M |
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管理番号 | 1191769 |
審判番号 | 不服2006-1706 |
総通号数 | 111 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-01-27 |
確定日 | 2009-02-06 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第527654号「管体及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成7年11月 2日国際公開、WO95/28982、平成9年12月16日国内公表、特表平9-512445号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、1995年4月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1994年4月20日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成17年10月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年1月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項35に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成17年5月6日付けの手続補正により補正された明細書の、特許請求の範囲の請求項35に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「基部と末端部とを有する細長い管を備えた医療用装置であって、 前記管は、外面と前記管の略全長にわたって延在する中央通路を画成する内面とを有し、前記管は第1の材料、及び、前記第1の材料よりも剛性でない第2の材料よりなり、前記管の壁は、前記第1の材料から前記第2の材料に漸進的に変化し前記基部と前記末端部との間に遷移部を形成し、前記第1と前記第2の材料とは、前記遷移部において漸進的に結合し互いと自然に接着し、前記第1の材料から実質的になる部位から前記第2の材料から実質的になる部位に漸進的に変化する壁を形成し、急な接続部を伴うことなく異なる特性を有する材料よりなる連続的な壊れない管を形成し、前記末端部は、前記第2の材料よりなり、従って前記基部より剛性でない医療用装置。」 3.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、特開平2-280765号公報(以下、「引用例」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ア.「本発明は、カテーテルを熱可塑性樹脂の連続押出成形体によって構成し、かつ長手方向に材料自身を軟質材をもって構成してなる軟質部と材料自身を硬質材をもって構成してなる硬質部とを有する構成とすることを第1の要旨とし、上記カテーテルのチューブ押出を行なうに当り、押出ヘッドに樹脂を供給する押出機を2基設置し、一方の押出機からは軟質材料を他方の押出機からは硬質材料をそれぞれ加圧供給し、押出ヘッド部分において上記供給される樹脂の混合比を選択変化させることにより長手方向に軟質部と硬質部とを有するチューブを連続的に押出成形する押出製造方法を第2の要旨とし、・・・(略)・・・」(第2ページ左下欄第6?18行) イ.「第1図は、本発明に係るカテーテル1の構成を示す説明図であり、全体が熱可塑性樹脂により一体的に押出成形されている。しかして、その先端側は軟質樹脂la自体をもって軟質部に構成され、本体側は硬質樹脂1b自体をもって硬質部に構成され、これら軟質部と硬質部は一体物として成形されている。 なお、ここにいう軟質樹脂としては低密度ポリエチレン(LDPE:密度=0.922、MI=1.0)が適当であり、硬質樹脂としては高密度ポリエチレン(HDPE:密度=0.942、MI=0.2)が適当であって、これらをHDPE:LDPE=100:0から50:50に、さらに0:100といった混合比となるように連続的に変化させ、外径1.3mmから2.7mmのカテーテルチューブに押出製造することができる。」(第2ページ右下欄下から第1行?第3ページ左上欄第16行) ウ.「従来は剛性を有するカテーテル本体と曲げ易い先端部とを別な材料によって別個に製造し、それらを熱融着、溶剤接合、接着剤による接着などにより接合していた。 しかし、この接合方法による場合には、カテーテルの内腔相互を精度よく突き合せることが困難であったり、外表面に段差が形成されて円滑な挿入が妨げられたり、使用中に接合部で破損したりするおそれがある。」(第2ページ左上欄第7?16行) エ.「本発明に係る上記構成のカテーテルによれば、軟質部と硬質部に接合部分がなく連続的に押出成形されているから、先の従来例における接合部の問題点は存在しない」(第3ページ右上欄第11?14行) また、上記ア、イ、ウ、エの記載及び第1、2図から、カテーテル1は本体側と先端側とを有する細長いチューブによって構成されるものであり、前記チューブは、当然、外面と前記チューブの全長にわたって延在する中央通路を画成する内面とを有するものであり、前記チューブを構成する壁については、硬質樹脂1bから軟質樹脂1aに連続的に変化し前記本体側と前記先端側との間に硬質樹脂1bと軟質樹脂1aが混在した部分を形成し、硬質樹脂1bからなる部位から軟質樹脂1aからなる部位に連続的に変化する壁を形成するものであり、上記チューブは、急な接続部を伴うことなく硬質樹脂1bと軟質樹脂1aという異なる特性を有する材料よりなる連続的な破損するおそれがないものであると認められる。 これら記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。 「本体側と先端側とを有する細長いチューブによって構成されたカテーテル1であって、 前記チューブは、外面と前記チューブの全長にわたって延在する中央通路を画成する内面とを有し、前記チューブは硬質樹脂1b、及び、硬質樹脂1bよりも軟らかい軟質樹脂1aよりなり、前記チューブの壁は、硬質樹脂1bから軟質樹脂1aに連続的に変化し前記本体側と前記先端側との間に硬質樹脂1bと軟質樹脂1aが混在した部分を形成し、硬質樹脂1bからなる部位から軟質樹脂1aからなる部位に連続的に変化する壁を形成し、急な接続部を伴うことなく異なる特性を有する材料よりなる連続的な破損するおそれがないチューブを形成し、前記先端側は、軟質樹脂1aよりなり、硬質樹脂1bより軟らかいカテーテル。」 4.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明の「本体側」は、本願発明の「基部」に相当し、以下同様に、「先端側」は「末端部」に、「チューブ」は「管」に、「チューブによって構成された」は「管を備えた」に、「カテーテル1」は「医療用装置」に、「硬質樹脂1b」は「第1の材料」に、「軟らかい」は「剛性でない」に、「軟質樹脂1a」は「第2の材料」に、「連続的」は「漸進的」に、「硬質樹脂1bと軟質樹脂1aが混在した部分」は「遷移部」に、「破損するおそれがない」は「壊れない」に、それぞれ相当する。 そこで、本願発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。 (一致点) 「基部と末端部とを有する細長い管を備えた医療用装置であって、 前記管は、外面と前記管の略全長にわたって延在する中央通路を画成する内面とを有し、前記管は第1の材料、及び、前記第1の材料よりも剛性でない第2の材料よりなり、前記管の壁は、前記第1の材料から前記第2の材料に漸進的に変化し前記基部と前記末端部との間に遷移部を形成し、前記第1の材料から実質的になる部位から前記第2の材料から実質的になる部位に漸進的に変化する壁を形成し、急な接続部を伴うことなく異なる特性を有する材料よりなる連続的な壊れない管を形成し、前記末端部は、前記第2の材料よりなり、従って前記基部より剛性でない医療用装置。」 そして、両者は次の相違点で相違する。 (相違点) 遷移部について、本願発明は、第1と第2の材料とが、遷移部において漸進的に結合し互いと自然に接着しているのに対し、引用発明は、そのような構成ではない点。 5.相違点の判断 上記相違点について検討する。 基部が硬質材料で先端部が軟質材料でなるカテーテルにおいて、硬質材料と軟質材料の比が連続的に変化する部分で、押し出し成形や被覆等の一体成形によって硬質材料と軟質材料を自然に接着させることは、例えば、特開平3-177682号公報、特開昭60-31765号公報等に示されるように、本願の優先日前の周知技術に過ぎない。 したがって、引用発明において、上記周知技術を適用し、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願発明による効果も、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。 6.むすび したがって、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-12-03 |
結審通知日 | 2007-12-04 |
審決日 | 2007-12-17 |
出願番号 | 特願平7-527654 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 門前 浩一 |
特許庁審判長 |
阿部 寛 |
特許庁審判官 |
八木 誠 北村 英隆 |
発明の名称 | 管体及びその製造方法 |
代理人 | 伊東 忠彦 |