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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1191885 |
審判番号 | 不服2006-13899 |
総通号数 | 111 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-06-30 |
確定日 | 2009-02-04 |
事件の表示 | 特願2001-262665「遊技機、遊技機用プログラム、及び遊技機用プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月11日出願公開、特開2003- 70970〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願の経緯概要は下記のとおりである。 特許出願及び出願審査請求 平成13年8月31日 拒絶理由 平成17年3月15日 手続補正 平成17年4月18日 拒絶理由 平成17年11月1日 手続補正 平成17年12月19日 補正却下及び拒絶査定 平成18年5月26日 拒絶査定不服審判請求 平成18年6月30日 手続補正 平成18年7月26日 第2 平成18年7月26日付の手続補正についての補正却下の決定 [結論] 平成18年7月26日付の手続補正を却下する。 [理由] 1.平成18年7月26日付の手続補正前後の請求項1について 平成18年7月26日付の補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は以下のとおり補正された。 「【請求項1】 周囲に複数の図柄を表示した回転リールと、 乱数を用いて当選図柄の抽選を行うための当選抽選手段と、 前記当選抽選手段の抽選結果に対応した前記回転リールの回転の停止制御を行うための制御装置とを備えるようにした遊技機において、 前記制御装置は、前記当選抽選手段の抽選結果が当選である場合に前記回転リールの当選図柄が所定の停止位置で停止することを条件として入賞して遊技メダルを払い出すことにより遊技者に利益を付与するように設定され、 遊技として、通常遊技と、特定の入賞或いは抽選結果に基づいて開始し、それぞれ所定の遊技数の経過の条件を満足することにより終了する特別遊技及び特殊遊技とを少なくとも備え、 前記制御装置は、 前記特殊遊技の所定の遊技数から当該特殊遊技の経過に伴って、当該特殊遊技の遊技数をカウントするための遊技数カウント手段と、 前記遊技数カウント手段によりカウントされた遊技数を記憶するための遊技数記憶手段とを備え、 前記遊技数カウント手段は、 前記特殊遊技の実行中に、前記特別遊技へ移行した場合、前記特殊遊技の遊技数のカウントを中断して、前記遊技数記憶手段に記憶させ、 前記特別遊技が終了した後、前記遊技数記憶手段に記憶させたカウント中断時の前記特殊遊技の遊技数を採取して、そのカウントを再開すると共に、再開させる特殊遊技が、特別遊技移行前の特殊遊技と比較して、特殊遊技中に得られる遊技者に対する利益付与としての遊技メダルの払い出しの可能性が大きくなるように設定されていることを特徴とする遊技機。」(以下「本件補正発明」という。) ところで、平成17年12月19日付の手続補正は、平成18年5月26日付で却下されており、その前の平成17年4月18日付の手続補正における特許請求の範囲の請求項1は以下のとおりである。 「【請求項1】 周囲に複数の図柄を表示した回転リールと、乱数を用いて当選図柄の抽選を行うための当選抽選手段と、前記当選抽選手段の抽選結果に対応した前記回転リールの回転の停止制御を行うための制御装置とを備えるようにした遊技機において、前記制御装置は、前記当選抽選手段の抽選結果が当選である場合に前記回転リールの当選図柄が所定の停止位置で停止することを条件として入賞して遊技者に利益を付与するように設定され、遊技として、通常遊技と、特定の入賞或いは抽選結果に基づいて開始し、それぞれ所定の遊技数の経過の条件を満足することにより終了する特別遊技及び特殊遊技とを少なくとも備え、前記制御装置は、前記特殊遊技の所定の遊技数から当該特殊遊技の経過に伴って、当該特殊遊技の遊技数をカウントするための遊技数カウント手段と、前記遊技数カウント手段によりカウントされた遊技数を記憶するための遊技数記憶手段とを備え、前記遊技数カウント手段は、前記特殊遊技の実行中に、前記特別遊技へ移行した場合、前記特殊遊技の遊技数のカウントを中断して、前記遊技数記憶手段に記憶させ、前記特別遊技が終了した後、前記遊技数記憶手段に記憶させたカウント中断時の前記特殊遊技の遊技数を採取して、そのカウントを再開すると共に、再開させる特殊遊技が、特別遊技移行前の特殊遊技と比較して、遊技者に対する利益付与の可能性が大きくなるように設定されていることを特徴とする遊技機。」 2.本件補正の内容についての検討 本件補正は、平成17年4月18日付の手続補正における請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「入賞して遊技者に利益を付与」という点について、「遊技メダルを払い出すことにより」との限定を付加したものであり、また、「遊技者に対する利益付与の可能性」に関して、これを「特殊遊技中に得られる遊技者に対する利益付与としての遊技メダルの払い出しの可能性」と変更して、利益付与が「特殊遊技中に得られる」ものであって、かつ「遊技メダルの払い出し」である点を限定したものである。 よって、上記の補正は特許請求の範囲の減縮に該当する。 そこで、本願補正発明が独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。 3.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-277246号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に以下の技術事項が記載されている。 【0033】 より具体的には、CT遊技が中断又は終了し、制御手段が可変表示の停止制御を再開するための解除条件は、CT遊技中に行われた内部抽選の入賞判定の結果、「BB遊技」又は「RB遊技」の当選があったとき、CT遊技中のゲーム回数が所定回数に達したとき、CT遊技中の遊技媒体の前記純増枚数が所定枚数に達したときなどから選ばれた条件の1つ又は2つ以上の組み合わせが選ばれる。上記解除条件のうち、例えば、BB遊技又はRB遊技の当選があり、BB遊技またはRB遊技が開始して、内部抽選に基づいて制御手段が可変表示の停止制御を再開しても、BB又はRBの作動が終了した後、CT遊技を再開するように設定することも可能である。また、BB遊技が終了したときにはCT遊技は再開せず、RB遊技が終了したときにはCT遊技が再開するように設定することも可能である。 【0038】 図4は遊技機1で用いられる図柄列を表している。これらの図柄は、表示窓3L,3C,3Rに対応してキャビネット2の内部に配置した3つの回転リール4L,4C,4Rの円周面を形成するシートの表面に描かれている。 【0049】 図2の回路において、マイコン20からの制御信号により動作が制御される主要なアクチュエータとしては、前記リール4L,4C,4Rをそれぞれ回転駆動するステッピングモータ14L,14C,14Rと、遊技媒体のメダルを収納するホッパー(払い出しのための駆動部を含む)30と、表示部7A,7B、停止ボタン9L,9C,9R及び演出部11の光源と、スピーカ15とがあり、モータ駆動回路31、ホッパー駆動回路32、光源駆動回路37、音出力回路38を介してCPU21の出力部に接続されている。これらの駆動回路は、それぞれCPU21から出力される駆動指令などの制御信号を受けて、各アクチュエータの動作を制御する。 【0050】 また、マイコン20が制御信号を発生するために必要な入力信号を発生する主な入力信号発生手段としては、メダル投入口6に投入されたメダル、又は投入ボタン17を押すことでクレジットから投入されたメダルを検出するメダルセンサ6S、スタートレバー5の操作を検出するスタートスイッチ5S、C/Pスイッチ8、各停止ボタン9L,9C,9Rの操作に応じて停止信号を発生するリール停止信号回路34、並びに、リール回転センサからのパルス信号を受けて各リールの位置を検出するための信号をCPU21へ供給するリール位置検出回路35、メダル検出部33の計数値(ホッパー30から払い出されたメダル数)が指定された枚数データに達した時メダル払出し完了を検知するための信号をCPU21へ供給する払出し完了信号回路36がある。 【0051】 図2の回路において、乱数発生器26は、所定の数値範囲に属する乱数を発生し、乱数サンプリング回路27は、スタートレバー5が操作された後の適宜のタイミングで1個の乱数をサンプリングする。こうして抽出された乱数は、ROM22内の記憶部に格納されている予め定めた入賞領域に属しているかが判定され、判定結果に基づく信号を発生する。 【0053】 制御部は前記乱数の判定により生成した信号に基づいて各リール4L,4C,4Rの停止位置を決定し、その位置でリールが停止するように制御する信号をモータ駆動回路に送る。 【0054】 制御部は停止ボタン9L,9C,9Rの操作により発生する停止信号を検出すると各リール4L,4C,4Rをそれぞれ停止する。 ROM22に格納されている入賞判定のためのデータとして、入賞となる図柄の組合せと、入賞のメダル配当枚数と、その入賞を表す入賞判定コードとを対応づけるための入賞図柄組合せテーブルが含まれ、それぞれのリール4L,4C,4Rの制御時及び全リール停止後の入賞確認を行うときに参照される。 【0057】 図3は、遊技機1で行われる遊技状態である一般遊技、特別増加入賞遊技(以下、BB遊技と称する)、特別入賞遊技(以下、RB遊技と称する)及びチャレンジタイム遊技(以下、CT遊技と称する)の関係を示している。 【0064】 図3に示すように、遊技機1において、一般遊技中にBB遊技、RB遊技又はCT遊技に当選すると、それぞれの遊技が開始される。BB遊技、RB遊技又はCT遊技が終了すると一般遊技へ戻る。BB遊技又はRB遊技とCT遊技の組合せ当選のときはBB遊技又はRB遊技が終了するとCT遊技に移行する。CT遊技中にBB遊技に当選するとCT遊技は終了し、BB遊技が開始される。CT遊技中にRB遊技に当選するとCT遊技は中断し、RB遊技が割り込み、RB遊技が終了すると、残りのCT遊技が再開される。 【0065】 CT遊技は、所定回数、遊技機1においては150 回遊技すると終了する。CT遊技は、また、所定の純増枚数のメダル、遊技機1においては200 枚の純増枚数のメダルを獲得すると終了する。 【0074】 図5、図6、及び図7は、CT遊技における制御手段の動作を示すフローチャートである。このフローチャートにおいて、カウンタNはメダルの純増枚数の増加の許容枚数を表示し、初期値は200 であり、カウンタNはメダルが投入されると加算され、メダルが払い出されると減算される。カウンタNが0 になるとCT遊技は終了する。カウンタTはCT遊技で許容される遊技数の残存回数を表示し、初期値は150 であり、カウンタTは遊技が1回行われる毎に1減算され、カウンタTが0 になるとCT遊技は終了する。 【0087】 ステップ19の判定において"NO"と判定されると、次にRB遊技に当選したかが判定される(ステップ21)。"YES" と判定されるとRB遊技が実行され(ステップ22)、RB遊技の終了後、ステップ2に戻りCT遊技が再開される。CT遊技再開時のカウンタN及びカウンタTの値はRB遊技が開始される前の値である。 ここで、特別増加入賞遊技をBB遊技、特別入賞遊技をRB遊技、チャレンジタイム遊技をCT遊技と言い換えることとすれば、上記引用文献1における記載事項及び図面を総合的に勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「図柄は3つの回転リール4L,4C,4Rの円周面を形成するシートの表面に描かれており、 乱数発生器26は、所定の数値範囲に属する乱数を発生し、乱数サンプリング回路27は、スタートレバー5が操作された後の適宜のタイミングで1個の乱数をサンプリングし、抽出された乱数が、ROM22内の記憶部に格納されている予め定めた入賞領域に属しているかが判定され、判定結果に基づく信号を発生し、 制御部は前記乱数の判定により生成した信号に基づいて各リール4L,4C,4Rの停止位置を決定し、その位置でリールが停止するように制御する信号をモータ駆動回路に送り、 制御部は、全リール停止後の入賞確認を行うときに、入賞となる図柄の組合せと、入賞のメダル配当枚数とを対応づけるための入賞図柄組合せテーブルを参照し、遊技媒体のメダルを収納するホッパー(払い出しのための駆動部を含む)30がホッパー駆動回路32を介してCPU21の出力部に接続されており、ホッパー駆動回路は、CPU21から出力される駆動指令などの制御信号を受けて、アクチュエータの動作を制御し、払出し完了信号回路36はメダル検出部33の計数値(ホッパー30から払い出されたメダル数)が指定された枚数データに達した時メダル払出し完了を検知するための信号をCPU21へ供給し、 一般遊技、BB遊技、RB遊技及びCT遊技を実行することができ、一般遊技中にBB遊技、RB遊技又はCT遊技に当選すると、それぞれの遊技が開始され、CT遊技は、所定回数遊技すると終了し、 CT遊技で許容される遊技数の残存回数を表示するカウンタTを備え、カウンタTは遊技が1回行われる毎に1減算され、カウンタTが0 になるとCT遊技は終了するものであって、 CT遊技中にBB遊技又はRB遊技に当選するとCT遊技は中断し、BB遊技又はRB遊技が割り込みBB遊技又はRB遊技が実行され、BB遊技又はRB遊技が終了すると、残りのCT遊技が再開され、CT遊技再開時のカウンタTの値はBB遊技又はRB遊技が開始される前の値である遊技機。」 4.対比 ここで、本願補正発明と引用発明とを比較する。 引用発明における一般遊技は、本願補正発明における通常遊技に、引用発明におけるBB遊技、RB遊技は、本願補正発明における特別遊技に、引用発明におけるCT遊技は、本願補正発明における特殊遊技にそれぞれ相当する。 また、引用発明においては「1個の乱数をサンプリングし、抽出された乱数が…予め定めた入賞領域に属しているかが判定」とあるが、これは本願補正発明における当選抽選手段に他ならない。 また、引用発明においては、「前記乱数の判定により生成した信号に基づいて各リールの停止位置を決定し、その位置でリールが停止するように制御する信号をモータ駆動回路に送」っているものであるから、本願補正発明における「当選抽選手段の抽選結果に対応した回転リールの回転の停止制御」を行う点に相当し、また、本願補正発明における「前記当選抽選手段の抽選結果が当選である場合に前記回転リールの当選図柄が所定の停止位置で停止する」ことも明らかである。 また、引用発明においては、全リール停止後の入賞確認において「入賞となる図柄の組合せ」と「入賞のメダル配当枚数」を対応させた入賞図柄組合せテーブルを参照してメダル払出しを行っていると認められ、これは本願補正発明における「前記回転リールの当選図柄が所定の停止位置で停止することを条件として入賞して遊技メダルを払い出す」点に相当する。 また、引用発明においては、「BB遊技、RB遊技又はCT遊技に当選すると」とあり、ここで「当選」とは、遊技機における技術常識を参酌すれば、本願補正発明における「特定の入賞或いは抽選結果」と認められる。一方、引用発明においては「CT遊技は、所定回数遊技すると終了」とあるものの、BB遊技、RB遊技については終了条件の限定はないが、BB遊技やRB遊技などのボーナス遊技が所定回数の遊技で終了することは、例を挙げるまでもない周知慣用のルールに過ぎない。 また、引用発明における「カウンタT」は、本願補正発明の「カウント手段」に相当し、また「CT遊技再開時のカウンタTの値はBB遊技またはRB遊技が開始される前の値である」ことから、CT遊技は中断時のカウンタTの値を記憶する何らかの手段を備えていることも明らかである。 よって、両者は、 「周囲に複数の図柄を表示した回転リールと、 乱数を用いて当選図柄の抽選を行うための当選抽選手段と、 前記当選抽選手段の抽選結果に対応した前記回転リールの回転の停止制御を行うための制御装置とを備えるようにした遊技機において、 前記制御装置は、当選抽選手段の抽選結果が当選である場合に前記回転リールの当選図柄が所定の停止位置で停止することを条件として入賞して遊技メダルを払い出すことにより遊技者に利益を付与するように設定され、 遊技として、通常遊技と、特定の入賞或いは抽選結果に基づいて開始し、それぞれ所定の遊技数の経過の条件を満足することにより終了する特別遊技及び特殊遊技とを少なくとも備え、 前記制御装置は、 前記特殊遊技の所定の遊技数から当該特殊遊技の経過に伴って、当該特殊遊技の遊技数をカウントするための遊技数カウント手段と、 前記遊技数カウント手段によりカウントされた遊技数を記憶するための遊技数記憶手段とを備え、 前記遊技数カウント手段は、 前記特殊遊技の実行中に、前記特別遊技へ移行した場合、前記特殊遊技の遊技数のカウントを中断して、前記遊技数記憶手段に記憶させ、 前記特別遊技が終了した後、前記遊技数記憶手段に記憶させたカウント中断時の前記特殊遊技の遊技数を採取して、そのカウントを再開すると共に、特殊遊技を再開させる遊技機。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点] 本願補正発明では、再開される特殊遊技が「特別遊技移行前の特殊遊技と比較して、特殊遊技中に得られる遊技者に対する利益付与としての遊技メダルの払い出しの可能性が大きくなるように設定されている」のに対して、引用発明ではかかる限定が付されていない点。 5.判断 [相違点について] まず、本願補正発明における「特殊遊技中に得られる遊技者に対する利益付与としての遊技メダルの払い出しの可能性」という記載について検討する。 この補正の根拠として、請求人は、平成18年7月26日付の審判請求書の手続補正書においては、出願当初の明細書(以下「当初明細書」という。)の段落【0192】を指摘すると共に、「再遊技(リプレイ)の抽選確率の違いにより、遊技者に対する利益付与としての遊技メダルの払い出しの可能性が大きくなるものです」と主張している。確かに、当初明細書の段落【0192】には「特殊遊技の内容を、中断前のATゲームから、中断後のARTゲームに変化させるものである。かかる場合、BBゲームへ移行後、中断して、再開させる特殊遊技であるARTゲームが、BBゲーム移行前の特殊遊技であるATゲームと比較して、リプレイの抽選確率の違いにより、遊技者に対する利益付与の可能性が大きくなる。」とあるが、その一方で、当初明細書の段落【0182】には、「ART遊技用判定テーブルの再遊技(リプレイ)の抽選確率は、通常遊技用判定テーブル115、BB遊技用判定テーブル116及びRB遊技用判定テーブル117の再遊技(リプレイ)の抽選確率と比較して、最も高く設定されているものである。そして、AT遊技用判定テーブルは、ART遊技用判定テーブルの再遊技(リプレイ)の抽選確率を、通常遊技用判定テーブル115の再遊技(リプレイ)の抽選確率と同一に設定し、その他の抽選確率は、ART遊技用判定テーブルと同一に設定してあるものである。」とあるから、ART遊技用判定テーブルとAT遊技用判定テーブルは、リプレイの抽選確率には差があるものの、リプレイ以外の役についての抽選確率に差はないと認められる。 しかし、リプレイとは、「次の遊技において、遊技メダルを新たに投入することなく、再度、遊技を行うことができるもの」(当初明細書の段落【0098】)であって、他の小役等とは異なり、実際に遊技メダルの払い出しが行われるものではない。とすれば、ARTゲームがATゲームに比べて、リプレイの抽選確率が高いものであったとしても、他の小役等の抽選確率には差がないものであって、そしてリプレイにおいては遊技メダルが払い出されるものではないから、実際の遊技メダルの払い出しの可能性数量が大きくなるものではない。 となると、本願補正発明における「遊技メダルの払い出し」とは、実際の遊技メダルの払い出しではなく、リプレイに入賞すれば次回ゲームにおける遊技メダルの投入が不要になることから、「払い出し枚数から投入枚数を差し引いた獲得枚数」ということを意味していると理解するか、リプレイ入賞とは実質的に次回ゲーム分の遊技メダルの払い出しを行うもの、と擬制して、「リプレイ入賞によって実質的に得られた次回ゲーム分の遊技メダル枚数分を含む」というものと理解するしかない。いずれにしても、本願の明細書等からは、特別遊技後の特殊遊技が、特別遊技前の特殊遊技に比べてリプレイ確率を大きくすること、といった技術事項しか理解できないのであるから、本願補正発明における「遊技者に対する利益付与としての遊技メダルの払い出しの可能性が大きくなる」とは、リプレイ確率を大きくすることを含むものであるとして、以下検討することとする。 なお、本願補正発明における「遊技メダルの払い出し」が、純粋に遊技機から払い出される遊技メダル枚数を意図しているのであれば、この点は新規事項であるから、以下の検討とは関係なく本件補正は却下されるべきものである。 当審で新たに引用する特開2001-137430号公報(以下「引用文献2」という。)においては、図面と共に以下の技術事項が記載されている。 「確率テーブル62は、本実施形態では第1確率テーブル62aと、第2確率テーブル62bとの2種類設けられている。これらの確率テーブル62は、抽出された乱数の当選領域等を記憶したものである。」(段落【0026】) 「第2確率テーブル62bは、第1確率テーブル62aと比較して、リプレイの当選確率のみが異なる。第2確率テーブル62bでは、リプレイの当選確率は1/1.6(62.5%)であり、第1確率テーブル62aのリプレイの当選確率より大幅に高く設定されている。」(段落【0029】) 「電源投入後の最初の遊技では、第1確率テーブル62aが選択され、この第1確率テーブル62aを用いて役の抽選が行われる」(段落【0037】) 「ビックボーナスゲーム終了後の所定回数の遊技では、第2確率テーブル62bの選択確率を100%として、必ず第2確率テーブル62bを使用するようにしても良い。」 (段落【0058】) よって、引用文献2には、 「抽出された乱数の当選領域等を記憶したものである確率テーブル62として、第1確率テーブル62aと、第2確率テーブル62bとの2種類を設け、 第2確率テーブル62bは、第1確率テーブル62aと比較して、リプレイの当選確率のみが異なり、第1確率テーブル62aのリプレイの当選確率より大幅に高く設定されており、 電源投入後の最初の遊技では、第1確率テーブル62aが選択され、この第1確率テーブル62aを用いて役の抽選が行われ、 ビックボーナスゲーム終了後の所定回数の遊技では、第2確率テーブル62bの選択確率を100%として、必ず第2確率テーブル62bを使用する」 点が記載されている。(以下、「引用文献2記載の技術」という。) また、遊技機において、通常遊技、ボーナス遊技の他に、通常遊技より有利である特殊遊技を備えることは、そもそも例を挙げるまでもなく周知慣用のルールに過ぎないものである。そして、特殊遊技としては、CT遊技の他にも様々な種類が周知であって、例えば、内部抽選された小役を報知するいわゆるアシストタイム遊技(AT遊技)も周知であり、また、AT遊技がボーナス遊技(引用発明における「BB遊技」及び「RB遊技」)に当選した場合は一旦中断し、ボーナス遊技の終了後に再開されるというルールも周知である(例えば、「パチスロ必勝ガイド2001年4月号,白夜書房,平成13年4月1日発行」における「獣王」には、「ドットに表示された絵柄を各リールに目押しするだけで15枚役が揃いまくる…スーパーAT機能・サバンナチャンスに突入すれば一気にコインが増加するぞ」(35ページ左側下部)という記載があり、サバンナチャンスというAT遊技を備えるものであって、また、35ページの右側下部にある「メーカー発表のサバンナチャンス仕様」との表中には、「突入率」や「終了条件」といった記載や「但し途中でBIGorREGを引いた場合は一旦中断し、ボーナス消化後に再開する」といった記載があることから、AT遊技は、通常遊技やボーナス遊技の他に備えられているものであることは明らかであり、また、当該AT遊技の途中でボーナス遊技に当選した場合は一旦中断し、ボーナス遊技の終了後に当該AT遊技を再開するものである。)。(以下、「周知技術」という。) したがって、特殊遊技として引用発明におけるCT遊技に代えてAT遊技を採用することは、周知技術から適宜なし得る程度のことであって、また、ビッグボーナスの終了後には抽選に用いる確率テーブルをリプレイの抽選確率の高い確率テーブルに切り換えることは引用文献2に記載されており、さらに、AT遊技において、使用する確率テーブルを切り換えた2種類のAT遊技を備えることも周知(例えば「パチスロ必勝ガイドMAX2001年1月号,白夜書房,平成13年1月1日発行」における「キャッツアイ」には、「12枚役のアシスト機能(AT)とリプレイの高確率状態(RT)が同時進行するAR」(65ページ右側)、「AT(12枚役の告知機能)が発動する。ARと違ってリプレイの確率アップは無いが」(62ページ中央)と記載されており、「AR」と「AT」というリプレイの確率に差のある2種類のAT遊技を備えていることが開示されている。)であるから、引用発明に周知技術及び引用文献2記載の技術を適用し、特殊遊技としてCT遊技に代えてAT遊技を採用すると共に、ボーナス遊技の終了後は抽選確率テーブルをリプレイの抽選確率の高い確率テーブルに切り換えることによって、ボーナス遊技の後のAT遊技では遊技メダルの払い出しの可能性を大きくすることは、当業者にとって容易に想到できることである。 そうすると、相違点にかかる本願補正発明の構成は、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術から当業者が容易に想倒できた範囲のものというべきである。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 [むすび] したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 第3. 本願発明について 1.本願発明 平成18年7月26日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1にかかる発明は、上記「第2[理由]1.」に平成17年4月18日付の手続補正における請求項1として記載したとおりのもの(以下「本願発明」という。)である。 2.引用例 原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1及びその記載事項は、上記「第2[理由]3.」に記載したとおりのものである。 3.対比 ここで、本願発明と引用発明とを比較する。 上記「第2[理由]4.」を参照すれば、両者は 「周囲に複数の図柄を表示した回転リールと、乱数を用いて当選図柄の抽選を行うための当選抽選手段と、前記当選抽選手段の抽選結果に対応した前記回転リールの回転の停止制御を行うための制御装置とを備えるようにした遊技機において、前記制御装置は、当選抽選手段の抽選結果が当選である場合に前記回転リールの当選図柄が所定の停止位置で停止することを条件として入賞して遊技者に利益を付与するように設定され、遊技として、通常遊技と、特定の入賞或いは抽選結果に基づいて開始し、それぞれ所定の遊技数の経過の条件を満足することにより終了する特別遊技及び特殊遊技とを少なくとも備え、前記制御装置は、前記特殊遊技の所定の遊技数から当該特殊遊技の経過に伴って、当該特殊遊技の遊技数をカウントするための遊技数カウント手段と、前記遊技数カウント手段によりカウントされた遊技数を記憶するための遊技数記憶手段とを備え、前記遊技数カウント手段は、前記特殊遊技の実行中に、前記特別遊技へ移行した場合、前記特殊遊技の遊技数のカウントを中断して、前記遊技数記憶手段に記憶させ、前記特別遊技が終了した後、前記遊技数記憶手段に記憶させたカウント中断時の前記特殊遊技の遊技数を採取して、そのカウントを再開すると共に、特殊遊技を再開させる遊技機。」 で一致し、以下の点で相違している。 [相違点] 本願発明では、再開される特殊遊技が「特別遊技移行前の特殊遊技と比較して、遊技者に対する利益付与の可能性が大きくなるように設定されている」のに対して、引用発明ではかかる限定が付されていない点。 4.判断 [相違点について] 原査定の拒絶の理由においても引用されている「獣王」(以下「周知遊技機」という。)においては、上記「第2[理由]5.[相違点について]」において周知技術として既に行った説明に加えて、「パチスロ必勝ガイド2001年4月号,白夜書房,平成13年4月1日発行」の37ページの左側上部には、AT遊技の抽選については、「高確率でサバチャンに当選し、尚且つ連チャンへの発展率も高い「ビッグ後約100G間」であろう」という記載があることから、つまり、ビッグボーナス終了後にはAT遊技に当選し易いものである。また、この点に関して、「パチスロ必勝ガイド2001年8月号増刊,獣王究極攻略,白夜書房,平成13年8月1日発行」の26ページの左側上部においても、「サバチャン消化中及び内部的にサバチャンに当選している状態でも、通常時同様ハズレフラグ成立時にはサバチャンを抽選している」、「サバ連中にハズレフラグを引いた場合も、通常時同様サバンナチャンス初当り抽選が行われ、当選した場合は選択された連チャン回数を「上乗せ」して放出する。サバ連中の高確率・低確率状態移行の条件は通常時と全く同じ。たとえ低確率状態に転落しても、ビッグを引けば必ず高確率状態に移行するので、サバ連中のビッグは新たに連チャン回数を上乗せするチャンスとなるのだ。」といった記載があることから、周知遊技機はAT遊技中にもさらにAT遊技の抽選が行われるものであって、ビッグボーナス終了後に再開されたAT遊技は、ビッグボーナス突入前のAT遊技に比べて、更なるAT遊技に当選し易いものであると認めることができる。 引用発明におけるCT遊技も、周知遊技機におけるAT遊技も、いずれも特殊遊技であるから、特殊遊技として引用発明におけるCT遊技を周知遊技機のAT遊技に変更することによって、AT遊技中にボーナス遊技に当選した場合、ボーナス遊技突入前のAT遊技に比べて、ボーナス遊技終了後に再開されたAT遊技において更なるAT遊技に当選し易くすることは、当業者にとって容易に想到できることである。そして、AT遊技は、通常遊技に比べて遊技者にとって利益付与の可能性が大きいものであるから、よって、ボーナス遊技突入前のAT遊技に比べて、ボーナス遊技終了後に再開されたAT遊技は、更なるAT遊技に当選し易くすることによって遊技者にとって利益付与の可能性が大きくなるように設定されているものであると云える。 よって、上記相違点にかかる構成は、引用発明及び周知遊技機から、当業者が容易に想倒できたものである。 そうすると、相違点にかかる本願発明の構成は、引用発明及び周知遊技機から当業者が容易に想倒できた範囲のものというべきである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知遊技機から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 第4 むすび 以上のとおり、平成18年7月26日付の補正は却下され、そして、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項2以下について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-11-26 |
結審通知日 | 2008-11-27 |
審決日 | 2008-12-10 |
出願番号 | 特願2001-262665(P2001-262665) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 一宮 誠、山崎 仁之 |
特許庁審判長 |
津田 俊明 |
特許庁審判官 |
三原 裕三 池谷 香次郎 |
発明の名称 | 遊技機、遊技機用プログラム、及び遊技機用プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体 |
代理人 | 黒田 博道 |