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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G10K
管理番号 1191929
審判番号 不服2007-28456  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-18 
確定日 2009-03-02 
事件の表示 平成10年特許願第326513号「電磁型発音体」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 5月26日出願公開、特開2000-148152、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.本願発明

本願の請求項に係る発明は、平成19年10月18日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のものである。
(以下、これを「本願発明」という。)

「【請求項1】 上側ケースと下側ケースとで一体に形成され且つ内部に発音部を有する薄型のケーシングと、
このケーシングに開設された放音孔と、
前記下側ケースの成形時に該下側ケースにインサートモールドされたコネクタ端子とを備え、
前記ケーシングから突出するコネクタ端子の先端部に外部端子と接続する円筒状の差込部を形成すると共にこの差込部には円筒の軸方向に沿ってスリットを形成し、
前記発音部を構成するコイルと接続するためのコネクタ端子の基端部を前記インサートモールド時に下側ケース内に露出させたことを特徴とする電磁型発音体。 」

2.原審拒絶査定の概要

(1)平成19年6月28日付け拒絶理由通知は、この出願の全請求項に係る発明が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である
1.特開平8-223693号公報、
2.実願昭62-26102号(実開昭63-133797号)
のマイクロフィルム(特に、第8図、第9図)、
3.特開平8-321670号公報(特に、段落【0011】等)、
に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、とするものである。

(2)平成19年9月12日付け拒絶査定は当該拒絶理由に基づくものであり、拒絶理由通知書で提示した各刊行物に記載されていない「先端に円筒状の差込部を有し、この差込部には軸方向に沿ってスリットが形成されたコネクタ端子」の構造について、これが周知である旨が付されている。

(3)審判請求に伴う補正に対する前置審査報告書において、拒絶査定において周知とした構造の根拠として、次の刊行物が示されている。
4.特開平7-201391号公報、
5.特開平6-260236号公報、
6.特開昭58-59571号公報、
7.特開平6-203897号公報、
8.特開昭60-158574号公報、
9.実開昭57-176077号公報
(刊行物番号は本審決において付与。)

3.引用刊行物の記載

(1)刊行物1(特開平8-223693号公報)には、本願発明の前提となる電磁発音体の発明が記載されている。
この発明は、上側ケースと下側ケースを備えているものではあるが、コネクタ端子を有せず、端子は表面実装用のものである。
また、この表面実装用端子について、該刊行物に「下ケースの四隅にそれぞれインサート成形されている。」とは記載されているものの、これが「下側ケースの“成形時に”該下側ケースに“インサートモールド”された」ものであるかは明確に示されていない。

(2)刊行物2(実願昭62-26102号(実開昭63-133797号)のマイクロフィルム)には、その第8図、第9図とともに、電磁音響変換器の絶縁板にピン端子が植設されている発明が記載されているが、植設はインサートモールドではなく、また、このピン端子は回路基板の取り付け孔に挿入するためのものであり、コネクタ端子ではない。

(3)刊行物3(特開平8-321670号公報)には、電磁型発音体に予め接着テープを貼付しておき、携帯電話などのケース本体に該接着テープを介して電磁型発音体を固着することが記載されている。

(4)刊行物4?9には、先端に円筒状の差込部を有し、この差込部には軸方向に沿ってスリットが形成されたコネクタ端子が示されている。

4.当審の判断

本願発明は、上側ケースと下側ケースとで一体に形成されたケーシングの内部に発音部を有する電磁発音体において、「下側ケースの成形時に該下側ケースにインサートモールドされたコネクタ端子とを備え」ることを発明を特定する構成要件とするものである。

これに対し、上記提示された何れの刊行物にも、当該構成要件に相当する構成については記載されていない。

ピンを有する素子へのピンの取り付けについて、モールド成型により行うこと自体は一般的な周知技術ではあろう。しかしながら、対応するコネクタに挿入するためのコネクタ端子を電磁型発音体自体に一体的に形成する技術思想について、各刊行物の記載は何ら示唆していない。
また、本願発明は、電磁型発音体自身がコネクタ端子を備えていることにより、電磁型発音体を機器に内装する際に、「従来のようにプリント基板上に半田付けによって表面実装することなく、コネクタ端子の差込みだけで導通が図られる。その結果、電磁型発音体から発せられた振動がプリント基板に伝播することもないので、プリント基板上に搭載された電子部品や電子回路の振動によるノイズの発生を抑えることができ」(段落0018の記載)という明細書記載の顕著な効果を奏するものである。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

また、他の拒絶理由も見いだせない。
よって、結論の如く審決する。
 
審決日 2009-02-18 
出願番号 特願平10-326513
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G10K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 新川 圭二  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 原 光明
加藤 恵一
発明の名称 電磁型発音体  
代理人 浅川 哲  

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