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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1191988
審判番号 不服2004-26398  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-27 
確定日 2009-02-05 
事件の表示 平成 7年特許願第 78138号「証券営業支援システム」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 9月27日出願公開、特開平 8-249380〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成7年3月9日の出願であって,平成16年11月26日付けで拒絶査定がされ,これに対し,平成16年12月27日に審判請求がされるとともに,平成17年1月26日に手続補正書が提出されたものである。

2 平成17年1月26日に提出された手続補正書による補正(以下,「本件補正」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

本件補正を却下する。

[理由]

(1)本件補正の内容
本件補正の前後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである(下線は,当審で付加)。

(本件補正前)
【請求項1】
「証券営業業務を支援するシステムであって,
少なくとも顧客の名称及び保有株式の銘柄を含む保有株式に関する情報を顧客毎に格納した顧客情報ファイルと,
変動する株価に関する情報を株式銘柄毎に格納した証券情報ファイルと,
顧客の名称を表示する基準としての表示条件を顧客毎に格納した設定条件ファイルと,
前記顧客情報ファイルに格納された保有株式に関する情報及び前記証券情報ファイルに格納された株価に関する情報を参照して前記表示条件が満たされる顧客を検索する検索手段と,
前記検索された顧客の名称を表示する表示手段と,
を備えたことを特徴とする証券営業支援システム。」

(本件補正後)
【請求項1】
「証券営業業務を支援するシステムであって,
少なくとも顧客の名称及び保有株式の銘柄を含む保有株式に関する情報を顧客毎に格納した顧客情報ファイルと,
変動する株価に関する情報を株式銘柄毎に格納した証券情報ファイルと,
顧客の名称を表示する基準としての表示条件を顧客毎に格納した設定条件ファイルと,
前記顧客情報ファイルに格納された保有株式に関する情報及び前記証券情報ファイルに格納された株価に関する情報を参照して前記表示条件が満たされる顧客を検索する検索手段と,
前記検索された顧客の名称を表示部に一覧表示する表示手段と, 前記表示部に一覧表示された顧客の名称に対する指示及びクリアコマンド又はレベルダウンコマンドを証券営業業務遂行者から受け付ける入力手段と, 前記クリアコマンドに応じて指示された顧客の名称を前記一覧表示から削除する削除手段と, 前記レベルダウンコマンドに応じて指示された顧客の名称を前記一覧表示の後部に移動するレベルダウン手段と, を備えたことを特徴とする証券営業支援システム。」

(2)本件補正の目的の適否
特許法17条の2第3項の規定によれば,審判の請求に伴ってする補正は,同条項1号(特許請求の範囲の削除),2号(特許請求の範囲の限定的減縮),3号(誤記の訂正),4号(明りょうでない記載の釈明))を目的とするものに限られるところ,本件補正は,上記(1)に示したように
「前記検索された顧客の名称を表示する表示手段」
とされていた記載を,
「前記検索された顧客の名称を表示部に一覧表示する表示手段と, 前記表示部に一覧表示された顧客の名称に対する指示及びクリアコマンド又はレベルダウンコマンドを証券営業業務遂行者から受け付ける入力手段と, 前記クリアコマンドに応じて指示された顧客の名称を前記一覧表示から削除する削除手段と, 前記レベルダウンコマンドに応じて指示された顧客の名称を前記一覧表示の後部に移動するレベルダウン手段」
と補正するものである。
この補正が,請求の範囲の削除,誤記の訂正,明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しないことは,明らかである。
また,本件補正は,補正前には,単に,「顧客の名称を表示する」とされていたものを,「顧客の名称を一覧表示する」と改めるとともに,その一覧表示の表示内容を変更するための手段を追加したものであり,特許請求の範囲の限定的減縮(請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるもの)にも該当しない。
そうすると,本件補正は,特許法17条の2第3項1号?4号に規定するいずれの目的にも該当しないから,平成6年改正法律第116号改正附則第6条によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第3項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により,却下すべきものである。

3 本願発明
上記2のとおり,本件補正は却下されたので,本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,本件補正前の請求項1に記載された,次のとおりのものである。

【請求項1】
「証券営業業務を支援するシステムであって,
少なくとも顧客の名称及び保有株式の銘柄を含む保有株式に関する情報を顧客毎に格納した顧客情報ファイルと,
変動する株価に関する情報を株式銘柄毎に格納した証券情報ファイルと,
顧客の名称を表示する基準としての表示条件を顧客毎に格納した設定条件ファイルと,
前記顧客情報ファイルに格納された保有株式に関する情報及び前記証券情報ファイルに格納された株価に関する情報を参照して前記表示条件が満たされる顧客を検索する検索手段と,
前記検索された顧客の名称を表示する表示手段と,
を備えたことを特徴とする証券営業支援システム。」

4 引用刊行物1の記載内容と引用発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願前に頒布された刊行物である,特開平5-89143号公報(以下,「引用刊行物1」という。)には,図1とともに,次の記載がある。

ア 従来の技術,発明の目的等(下線は,当審で付加)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,顧客が希望する株価情報,債券情報,為替情報等の金融情報を顧客に通報する金融情報通報システムおよびその制御装置に関し,特に,携帯用受令器(以下「ポケットベル」と呼ぶ)を所持する顧客が,上記ポケットベルに発信すべき条件をプッシュ式電話機またはパーソナルコンピュータ端末を通じて指定できる金融情報通報システムおよびその制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より,株価情報,債券情報等を一覧性あるいは個別的に表示装置を介して通報する金融情報通報装置が実用化されている。また,金融情報を通報する媒体として,日々発刊される新聞情報がある。
【0003】一方,金融情報を受け取る側は,金融情報のすべてに目を向けているのではなく,膨大な情報のうちの限られた特定の情報を欲しているのが常である。そのため,一覧性表示装置に表示される情報および新聞情報であれば,自分で特定の情報を探すことになり,個別的情報であれば,端末操作により特定情報を選択することになる。
【0004】
【発明により解決しようとする課題】ところで,金融情報を受け取る側は,いつどこにいても,値動きが気になるものである。したがって片時も目を離さずに値動きを追っていたのに反し,従来は,金融情報通報装置が設置してある証券会社店舗に足を運ぶことにより,あるいは当日の新聞情報から所望の情報を得ていた。すなわち,金融情報を受け取る側の立場からすると,新聞情報は即時性の欲求を満たしておらず,また,従来の金融情報通報装置では,機動性および携帯性に欠け,特に一覧性表示装置においては,任意選択性の欲求を満たしていないものである。
【0005】昨今の24時間トーディング業務の状況下,ディーラー,トレーダーにとっては,たとえ昼食中あるいは会議中であっても,金融情報の値動きが気になるものであるが,ひとたび,金融通報装置の表示面を視認できる位置から離れてしまえば,あとは値動きに激変があったとしても知る術がなかった。
【0006】また,個人投資家にとっても,一旦,金融商品,証券等を取得すると,片時も目を離さずに値動きを追っていたのに反し,従来は,昼休みに証券会社店舗に足を運ぶか,あるいはその日の新聞情報に依存せざるを得なくなっている。
【0007】そこで本発明は,金融情報を受け取る側が,いつどこにいても,先に指定した希望する金融情報を受け取ることができる携帯型金融情報通報システムおよびその制御装置を提供することを目的とする。」

イ 実施例
「【0009】
【実施例】以下,本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明による携帯型金融情報通報システム制御装置の構成を示すブロック図である。この制御装置Uは,インターフェース制御部1と,情報抽出管理部2と,リアルタイムデータ一時保持配列3と,受信処理制御部4A,4Bと,データ抽出管理部5と,主記録部6と,発信条件管理部7と,発信処理制御部8とから構成されている。
【0010】上記インターフェース制御部1は,複数の異なった電文のデジタル回線を介し,時々刻々と変化する金融情報(株価情報,債券情報,為替情報)を受信し,当システムで処理可能な型のデータ(共用データ)に変換する機能を有する。
【0011】上記情報抽出管理部2は,インターフェース制御部1より送られてくる共用データから,当システムにおいて必要とするデータのみを取り出し,圧縮,コード化する機能を有する。
【0012】上記リアルタイムデータ一時配列3は,情報抽出管理部2より送られてきた圧縮,コード化されたデータを根拠に常時更新を続ける機能を有する。
【0013】上記受信処理制御部4A,4Bは,プッシュ式電話機9またはパーソナルコンピュータ端末10から送られてきた顧客電話番号,ポケットベル11に対する単数または複数の発信条件,発信電話番号をあらわすデータを当システムで処理可能なデータ(共用データ)に変換する機能を有する。
【0014】上記データ抽出管理部5は,受信処理制御部4A,4Bより送られてきた共用データから当システムが必要とするデータのみを取り出し,圧縮,コード化する機能を有する。
【0015】上記主記録部6は,データ抽出管理部5より送られてきたデータを記録保持する機能を有する。この主記録部6に格納されるデータ内容は,顧客コード,顧客電話番号,ポケットベル11あるいはファクシミリ等に対する発信電話番号および発信条件である。
【0016】上記発信条件管理部7は,主記録部6より送られた顧客コードおよび発信条件をあらわすデータを根拠に,リアルタイムデータ一時保持配列3に対し常時問合せを繰り返し,回答とデータ(発信条件)が一致するか否かを調べ,一致したと判断したとき上記発信処理制御部8に対し発信指示データ(顧客コード)を出力する機能を有する。
【0017】上記発信処理制御部8は,発信条件管理部7から送られてくる発信指示データ(顧客コード)を受け取り,そのデータを根拠に主記録部6に問合せ,該当する発信電話番号を受け取り,液晶表示パネル付ポケットベル11に対し発信を行なう。」

ウ 発信条件の設定
「【0021】次に本実施例の携帯型金融情報通報システム制御装置Uの制御方法について説明する。
【0022】いま,金融情報を受け取る側(以下“A”と略称する)が電話番号YYYYのポケットベル11を保有していたとする。
【0023】まず,Aが制御装置Uに対し電話をかける。電話は,自宅の電話でも公衆電話でもよい(但し,プッシュ式あるいはプッシュ式と同等のプッシュ音を発信できるダイヤル式であることが条件)。これに対して受信処理制御部4Aが下記のように応答する。
【0024】(1)「お客様の連絡先電話番号を押して最後に*を押して下さい。」
【0025】(2)「お客様のポケットベルの番号を押して最後に*を押して下さい。」
【0026】(3)「お客様のお知りになりたい金融情報は何ですか?株価情報なら1,債券情報なら2,為替情報なら3,終了なら*を押して下さい。」
【0027】(4)「あなたのお知りになりたい上場会社の株式会社コードを押して下さい。」
【0028】(5)「お知らせするのが高値なら1,安値なら2を押して下さい。」
【0029】(6)「お知らせするのは,株価がいくらになった時ですか?」
【0030】以上のような質問に対して,Aは指示されたとおりの手順で電話機のボタンを押下する(なお,本実施例では株価情報選択を想定している)。
【0031】(7)「他にお知りになりたい金融情報は何ですか?株価情報なら1,債券情報なら2,為替情報なら3,終了なら*を押して下さい。」
【0032】これによって,複数の金融情報の選択および終了が可能となる。
【0033】受信処理制御部4Aは,Aからの電話を受けるたびに繰り返し,受付けたデータ(顧客電話番号,発信条件,発信電話番号)を当システムにて処理可能な共用データに変換する。
【0034】データ抽出管理部5は,受信処理制御部4Aより送られてきた共用データから,必要となるデータのみを取り出し,圧縮コード化して主記録部6に送る。・・・」

(2)以上の記載事項から,引用刊行物1には,顧客が希望する株価情報,債券情報,為替情報等の金融情報を顧客に通報する金融情報通報システムであって,顧客情報(顧客コード,顧客電話番号,発信条件)を顧客毎に格納した記憶部(主記録部6)と,変動する株価情報,債券情報,為替情報を格納した記憶部(リアルタイムデータ一次保持配列)を有し,顧客情報に基づいて,記憶部(リアルタイムデータ一次保持配列)に問い合わせをし,発信条件と一致するか否かを調べ,一致したときは,発信指示データ(顧客コード)を出力する機能を備えたものが記載されているといえる(以下,「引用発明」という。)。
ここで,上記発信条件には,顧客が指定した通報の対象と条件(上場会社の株式会社コード,発信条件(高値,安値,株価がいくらになったときかなど))が含まれている。

5 対比
(1)本願発明の「顧客情報ファイル」には,顧客の保有する株式の銘柄が含まれるとされているのに対し,引用発明の「顧客情報」には,顧客が指定した株式会社コードが含まれるとされており,表現上異なるが,両者とも,顧客が知りたい銘柄(株式会社コード)の株式情報であるという点,及び,この銘柄(株式会社コード)に基づいて,証券情報を検索し(問い合わせをし),条件に合致したときに顧客を特定する情報を出力するという点で,共通する。
したがって,引用発明の「記憶部(主記録部6)」は,本願発明の「顧客情報ファイル」に相当する。
また,引用発明の「記憶部(リアルタイムデータ一次保持配列)」は,本願発明の「証券情報ファイル」に相当する。
さらに,引用発明の「発信条件」が記憶されている部分は,本願発明の「設定条件ファイル」に相当する。
そして,引用発明は,顧客に金融情報を通知するものではあるが,証券営業業務の一環としてなされるものであるから,証券営業業務にかかわるシステムである点で,本願発明と共通する。

(2)そうすると,本願発明と引用発明とは,

「証券営業業務にかかわるシステムであって,
少なくとも顧客を特定するための情報及び顧客が知りたい株式の銘柄を含む株式に関する情報を顧客毎に格納した顧客情報ファイルと,
変動する株価に関する情報を株式銘柄毎に格納した証券情報ファイルと,
顧客を特定するための情報を出力する基準としての出力条件を顧客毎に格納した設定条件ファイルと,
前記顧客情報ファイルに格納された株式に関する情報及び前記証券情報ファイルに格納された株価に関する情報を参照して前記出力条件が満たされる顧客を検索する手段と,
前記検索された顧客を特定するための情報を出力する出力手段と,
を備えたことを特徴とするシステム。」

である点で一致し,次の点で相違する。

(相違点1)
本願発明では,顧客情報ファイルに格納される銘柄が,顧客の保有する株式銘柄であるのに対し,引用発明では,顧客が指定した株式銘柄である点。

(相違点2)
本願発明では,検索された顧客の名称を表示する表示手段を備えているのに対し,引用発明では,顧客を特定するための情報に基づいて,顧客の電話番号を発信するようにしている点。

6 検討
(1)相違点1について
上に述べたように,両者とも,顧客が知りたい銘柄(株式会社コード)の株式情報であるという点,及び,この銘柄(株式会社コード)に基づいて,証券情報を検索し(問い合わせをし),条件に合致したときに顧客を特定する情報を出力するという点で,共通する。顧客が保有する銘柄がデータとして格納されているのであれば,そのデータに基づいて証券情報を提供するようにすることは,当業者が自然に思いつくことである。

(2)相違点2について
引用発明では,ある顧客が知りたい条件に合致する証券情報があった場合,その顧客を特定する情報(顧客コード)を出力し,これに基づいて顧客の電話番号を発信するようにしているのに対し,本願発明では,顧客の名称を表示するようにしている。(本願の請求項10によれば,顧客への電話連絡は,その後に行われる。)
これは,本願発明は,証券業務を支援することを第一の目的としており,証券業務を担当する者に顧客名を提示することが要請されるためと考えられる。
しかしながら,原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-149822号公報の従来の技術の説明(段落【0002】?【0006】及び図4)にもあるように,証券業務で用いられる情報端末は,顧客へのサービスに必要な株式情報を表示するように構成されており,証券業務を行う者は,顧客が知りたい株式情報を適時にフォローすることが求められている。そうすると,引用発明では,いずれにしても,顧客を特定する情報が出力されるのであるから,これに基づいて顧客名を情報端末に表示するように構成することは,当業者が容易になし得る設計変更にすぎないものと判断される。

7 むすび
以上の次第で,本願発明(請求項1に係る発明)は,引用発明(引用刊行物1に記載された発明)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。
したがって,本願の他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
 
審理終結日 2008-12-01 
結審通知日 2008-12-02 
審決日 2008-12-15 
出願番号 特願平7-78138
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G06Q)
P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 相澤 聡菅原 浩二  
特許庁審判長 相田 義明
特許庁審判官 山本 穂積
小山 満
発明の名称 証券営業支援システム  
代理人 松本 裕幸  

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