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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G |
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管理番号 | 1191991 |
審判番号 | 不服2005-5164 |
総通号数 | 111 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-03-24 |
確定日 | 2009-02-05 |
事件の表示 | 特願2000-208921「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年1月23日出願公開、特開2002-23467〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯等 本願は、平成12年7月10日の出願であって、平成17年2月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月25日付けで手続補正がなされ、平成19年5月15日付けで当審において拒絶理由が通知され、同年7月23日付けで意見書とともに手続補正書が提出されたものであり、「画像形成装置」に関するものである。 2.当審において通知した拒絶理由の概要 平成19年5月15日付けで当審から通知した拒絶理由の概要は、次のとおりである。 『本願は、以下の点で、特許法第36条第4項若しくは第6項に規定する要件を満たしていない。 (1)本願の「発明の詳細な説明」は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に、記載されていない。 (1-1) 本願の「発明の詳細な説明」の段落【0116】ないし【0121】に以下の記載がある。(下線は当審で付与。) 「【0116】次に、帯電装置2について詳細に説明する。 【0117】帯電ブラシローラのような接触帯電部材が1つしか配置されていない場合には、その接触帯電部材がトナーで汚染されると帯電ムラが発生するが、複数の接触帯電部材によって、段階的に表面電位を立ち上げることにより帯電ムラをなくすことができる。 【0118】ところが、例えば、図2に示すように、第1及び第2、第3の帯電ブラシローラ10,11,12を同時に立ち上げると、第3の帯電ブラシローラ12の印加を受けた感光体ドラム1の部分が最初に現像装置4に達するために、即、最終表面電位となる。このとき現像装置印加電圧の動作タイミングが少し遅れると(感光体表面電位と現像装置印加電圧との差が大になるため)キャリア上がりが発生し、少し早いと黒べたとなり余分なトナーが消費されることになる。 【0119】そこで、上記帯電装置2では、回転方向上流側に位置する第1の帯電ブラシローラ10にて帯電作用を受けた感光体ドラム1上の領域が第2の帯電ブラシローラ11の下流に通過した後、第2の帯電ブラシローラ11が作用するように、動作開始のタイミングが設定されている。 【0120】次に、回転方向上流側に位置する第1の帯電ブラシローラ10にて帯電作用を受けた感光体ドラム1上の領域が現像装置4に対向する位置に到達したときに、キャリア上がりや地かぶりのないレベルで第1段階の電圧を現像装置4に印加し、さらに第2の帯電ブラシローラ11にて帯電作用を受けた感光体ドラム1上の領域が現像装置4に対向する位置に到達したときにキャリア上がりや地かぶりのないレベルで、第2段階の電圧を現像装置4に印加する。最後に、第3の帯電ブラシローラ12にて帯電作用を受けた感光体ドラム1上の領域が現像装置4に対向する位置に到達したときにキャリア上がりや地かぶりのないレベルで第3段階の電圧を現像装置4に印加する。 【0121】また、画像形成動作終了時には、第1の帯電ブラシローラ10、第2の帯電ブラシローラ11、第3の帯電ブラシローラ12を同時に停止させることにより、現像装置4に対向する位置の感光体ドラム1の表面電位を段階的に低下させることができる。このように、感光体ドラム1の表面電位の低下に応じて、現像装置4に印加する電圧を段階的に低下させるようにすれば、キャリア上がりの発生を防ぐことができる。」 すなわち、上記段落【0116】ないし【0121】には、現像バイアス印加開始時に、現像装置に対向する感光体の段階的に上昇する帯電電位に合わせて現像バイアス値を段階的に上昇させ、現像バイアス印加終了時に現像バイアス値を段階的に減少させることにより、「キャリア上がり」または「黒べた」の発生を防止できることが記載されている。 また、本願の段落【0122】ないし【0132】にも同様の事項が記載されているとともに、以下に示す段落【0167】、【0168】で参照している時間α、βの示す意味についても示されている。 (1-2) 本願の「発明の詳細な説明」の段落【0167】、【0168】に、以下の記載がある。(下線は当審で付与。) 「【0167】また、図14に示すように、感光体ドラム1の任意の位置P点で、第1の帯電ブラシローラ10に電圧を印加し、感光体ドラム1が1回転し、その後P点が感光体ドラム1の回転により第2の帯電ブラシローラ11に対応する時点、すなわち、第1の帯電ブラシローラON動作+感光体の1回転+(Tl+α)時間後に、第2の帯電ブラシローラ11に電圧を印加し、その(T2+β)時間後、現像バイアスに印加するようにする。(但し、α、β>0) このように印加のタイミングを制御することにより、感光体ドラム1が、必ず上流側の接触帯電部材(第1の帯電ブラシローラ10)による帯電を受けた後、下流側の接触帯電部材(第2の帯電ブラシローラ11)による帯電を受けるようになるので、感光体表面が不安定になるような問題が発生しない。 【0168】感光体ドラム1が帯電する際に、帯電を1回受けた面より2回受けた面の方が帯電電位が高くなる。したがって、第2の帯電ブラシローラ11のON動作を、第1の帯電ブラシローラ10のON動作から感光体ドラム1の1回転と(Tl+α)時間後に遅延させたことにより、第1の帯電ブラシローラ10により帯電を2回受けることとなり、帯電を1回受けた面の帯電不足を補うことができ、感光体表面電位が不安定になることを防ぐことができる。」 ところで、前記段落【0118】の下線を付した部分の記載や【図14】を参照すると、段落【0167】、【0168】に記載されている構成のものは、現像バイアス印加開始時点ですでに感光体表面の帯電が行われているのであるから、「黒べた」は発生せず、「キャリア上がり」を発生する構成のものであることがわかる。 そうであるとすると、段落【0167】や【0168】において、時間αやβを参照していることの技術的意義が全く不明である。 次に、上記下線部に、感光体表面電位が不安定になることを防止することについて記載されているので、この点について検討する。 もともと、複数の接触帯電部材を感光体の表面の回転方向に沿って複数配置することにより感光体表面の帯電状態を改善すること自体は、審査時に引用された実願平1-76379号(実開平3-16160号)のマイクロフィルム、特開昭56-104348号公報の他に、特開平5-72868号公報、特開平7-110616号公報、特開平10-186810号公報、特開平10-20621号公報、特開平6-130778号公報等に記載されているように、本願出願前に周知の技術的事項にすぎない。 さらに、画像形成装置において、現像開始前の前回転時に感光体の帯電を開始し、現像バイアス印加時に感光体表面を帯電させておくこと自体も、特開昭63-208881号公報、特開平5-181373号公報(【図6】、【図7】等参照)、特開平6-35242号公報(【図2】?【図5】等参照)、特開平9-80870号公報(【図3】、【図4】等参照)、特開2000-3080号公報(【図4】?【図8】)に記載されているように、本願出願前に周知の技術的事項にすぎない。 なお、上記特開昭63-208881号公報、特開平9-80870号公報には、現像バイアス印加停止後に帯電動作を停止することが記載されている点にも留意されたい。 そして、現像バイアス印加開始時に感光体表面を同一の接触帯電部材により2回以上帯電するのであれば、上記段落【0167】、【0168】の下線を付した箇所の記載を参照しても理解されるように、現像開始時の感光体表面の電位は安定している筈である。 例えば、第2の帯電ブラシローラ11のON動作を、第1の帯電ブラシローラ10のON動作から感光体ドラムのT1+α時間後に遅延させてONしたり、第1の帯電ブラシローラと同時にONさせたとしても、(第2の帯電ブラシローラが感光体表面を2回帯電した後に現像バイアスを印加するのであれば)、現像開始時の感光体表面電位は安定しているものと考えられる。 要するに、第1上記段落【0168】における、下流側の接触帯電部材による帯電の開始時点を、「第1の帯電ブラシローラ10のON動作から感光体ドラム1の1回転と(Tl+α)時間後に遅延」させることの技術的意義が全く不明である。 また、帯電、露光、現像、転写、クリーニングの各工程が連続する、画像形成装置においては、感光体ドラム1の1回転目の現像時においては、感光体表面が第1の帯電ブラシローラ10により帯電を2回受けることができたとしても、2回転目の現像に関しては、第1の帯電ブラシローラ10による帯電は1度しか行うことができない。 このことは、前記特開平9-80870号公報の【図3】ないし【図5】を参照することにより、理解される事項である。 したがって、この点においても、段落【0167】、【0168】において下線を付した部分に記載されていることの技術的意義が全く不明である。 したがって、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に、記載されていない。 (2)本願の「特許請求の範囲」の請求項1?請求項2の記載では、特許を受けようとする発明が明確でない。 本願の「特許請求の範囲」の請求項1?請求項2には、次の事項が記載されている。 「感光体の任意の位置P点で上流側に位置する第1番目の接触帯電部材の動作を開始し、その後P点が感光体が1回転して下流側に位置する第2番目の接触帯電部材に対応する位置に来たときに該第2番目の接触帯電部材電圧の動作を開始すること」 上記(1)で述べたことから明らかなように、請求項1ないし請求項2に記載された事項の技術的意義は不明であるし、請求項1ないし請求項2には2成分現像剤であることも規定していないので、請求項1ないし請求項2に係る発明は、本願発明が目的としている「キャリア上がり」の発生を防止するものでもない。 また、連続して画像を形成するためには、上記(1)で示した理由により、感光体を余分に1回転させて第1番目の接触帯電部材により2度感光体表面を帯電させることはできないから、感光体表面の帯電電位をより安定させることができるものでもない。 そうすると、本願の「特許請求の範囲」の請求項1?請求項2の記載では、特許を受けようとする発明が明確でない。 (3)本願の「特許請求の範囲」の請求項1?請求項2の記載では、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでない。 本願の「発明の詳細な説明」の段落【0167】には、「第1番目の接触帯電部材」の動作開始及び「第2番目の接触帯電部材電圧」の動作開始のそれぞれのタイミングが、「現像バイアスの印加」のタイミングに基づいて設定されることが説明されているが、本願の「特許請求の範囲」の請求項1?請求項2には、各接触帯電部材の動作開始のタイミングが「現像バイアスの印加」のタイミングに基づいて設定されることについて何ら記載されていない。 また、上記(1)で指摘したように、「キャリア上がり」、「黒べた」の発生を防止するためには、現像バイアスを段階的に変化させることが必要な筈であるが、請求項1?請求項2にはこの点についても記載されていない。 (4)請求項1及び請求項2に、それぞれ、「前記感光体の回転方向の上流側に位置する第1番目の接触帯電部材への印加電圧に前記感光体の回転方向の下流側に位置する第2番目の接触帯電部材への印加電圧を重畳する」と記載されているが、その技術的意義が全く不明であって、特許を受けようとする発明が明確でない。 (5)上記(1)?(4)で述べた理由により、本願発明は明確でなく、請求項1ないし請求項2に係る発明は、複数の接触帯電部材を感光体の表面の回転方向に沿って複数配置することにより感光体表面の帯電状態を改善するという従来技術と対比して、どのように区別できるのであるか全く不明である。』 3.審判請求人による手続補正、及び、意見書における主張 上記拒絶理由に対し、審判請求人は、平成19年7月23日付けの手続補正により、特許請求の範囲に記載の発明(以下、「本願発明」という。)を以下のものとした。(下線は補正箇所を示す。) 「感光体の回転方向に沿って設けられた第1番目の接触帯電部材と第2番目の接触帯電部材を、露光する前の感光体に接触させて、その表面を複数回に分けて帯電させる接触帯電装置と、前記接触帯電装置により帯電された前記感光体の表面を画像情報に応じて露光する露光装置と、前記露光装置により形成された静電潜像を現像するために、現像バイアスが印加される現像装置とを具備し、2成分現像剤により現像を行う画像形成装置において、 前記感光体の回転方向の上流側に位置する第1番目の接触帯電部材への印加電圧に前記感光体の回転方向の下流側に位置する第2番目の接触帯電部材への印加電圧を重畳することにより、前記第1番目の接触帯電部材により帯電されたときの感光体帯電電圧よりも前記第2番目の接触帯電部材により帯電されたときの感光体帯電電圧が高く帯電され、さらに、その第2番目の接触帯電部材に印加される電圧は交流電圧であり、 制御部において、前記感光体の回転方向の上流側に位置する第1番目の接触帯電部材にて帯電作用を受けた前記感光体上の領域にのみ回転方向の下流側に位置する第2番目の接触帯電部材が作用するように、前記各接触帯電部材の動作開始のタイミングが設定され、 さらに、前記制御部が設定する前記各接触帯電部材の動作開始のタイミングは、 感光体の任意の位置P点で上流側に位置する第1番目の接触帯電部材の動作を開始し、その後P点が感光体が1回転して下流側に位置する第2番目の接触帯電部材に対応する位置に来たときに該第2番目の接触帯電部材電圧の動作を開始するように設定され、 さらに、前記制御部において、前記第2番目の接触帯電部材により帯電開始された感光体の位置が前記現像装置に来たときに該現像装置に対して現像バイアスが印加されるように現像バイアス印加タイミングが設定されることを特徴とする画像形成装置。」 また、審判請求人は、上記拒絶理由に対し、平成19年7月23日付け意見書において、以下のように反論している。(下線は当審で付与。) 『(第4)拒絶理由に対する意見及び対処 (1)「発明の詳細な説明」には、当業者が容易に発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない、について。 (a)「すなわち、「0116」?「0121」には、段階的に上昇する帯電電位に合わせて、現像バイアス値も段階的に上昇することで、キャリア上がり又は黒ベタの発生を防止することが記載されているが、 上記内容を参酌して図14を見ると、クレームに対応している「0167」「0168」の記述の構成のものは、現像バイアス印加時点ではすでに感光体表面の帯電が行われているのであるから、キャリア上がりが発生してしまうのではないか? そうすると、「0167」「0168」において時間αやβを参照していることの技術的意義が不明である。」について。 補正により、「0116」?「0121」に記載されている構成が、本願発明の実施形態でないことを明確にしました。すなわち、この箇所には、キャリア上がり又は黒ベタの発生を防止することが記載されていますが、本願発明の実施形態を示す「0153」以降は、感光体表面電位が不安定にならないための構成を示したものです。 なお、α、βは黒ベタを防ぐためのものであり、実施形態においては、本願発明の構成により感光体表面電位が不安定にならないようにするのに加えて、このα、βにより黒ベタも防ぐようにしています。 (b)「複数の被接触帯電部材を配置して感光体表面の帯電状態を改善することと、現像開始前の前回転時に帯電を開始して現像バイアス印加時に感光体表面を帯電しておくこと、はそれぞれ周知事項である。一方、クレームに対応している「0167」「0168」において感光体表面電位を安定にするために2回以上帯電することは、当然である。そうすると、「0168」で、第1の帯電部材の帯電開始時点を、第1の帯電ブラシローラで1回転+(T1+α)時間帯電した時にする技術的意義が不明である。」について。 現像開始前の前回転時に帯電を開始して現像バイアス印加時に感光体表面を帯電しておくことと、本願のように「第1の帯電ブラシローラで1回転+(T1+α)時間帯電する」こととは、帯電を安定化する観点から言えば同じだと思います。 しかし、このことが周知事項であるとしても、「第1番目の接触帯電部材によって帯電された領域に対して第2番目の接触帯電部材で帯電し、それらの帯電開始タイミングを変える」ことについては、引用文献に記載のない新規な構成だと思います。 「第1の帯電部材の帯電開始時点を、第1の帯電ブラシローラで1回転+(T1+α)時間帯電した時にする技術的意義が不明である。」と指摘されている点については、帯電を安定化するという技術的意義があり、これが周知だからと言ってそのことが技術的意義が不明であるということに繋がらないと思います。 (c)「連続複写モードでは、最初のコピー時には、第1の帯電ブラシローラで1回転+(T1+α)時間帯電できたとしても、次のコピー時以降はできないのではないか? この点でも、技術的意義が不明である。」について。 連続複写モードのときに問題だと指摘されている点については、仮にそうだとしても、本願は連続複写モードのことを言っている訳ではありません。実際は、連続複写モードでは感光体の表面が安定すると思われるため、第1の帯電ブラシローラで1回転+(T1+α)時間帯電しなくても、問題はないと思います。 (2)「請求項1、2の記載では、特許を受けようとする発明が明確でない。 上記(1)のように技術的意義が不明であるし、2成分現像剤の限定がないし、目的が「キャリア上がり」の発生を防止するものでもない。また、連続コピー時には、コピー毎に「第1の帯電ブラシローラによる1回転+(T1+α)時間の帯電」を行えないから、感光体表面の帯電電位を安定化できない。」について。 2成分現像剤の限定がないという点については、補正により2成分現像剤の限定を行いました。 目的が「キャリア上がり」の発生を防止するものでもないという点については、補正により、本願の目的が「感光体表面が不安定になることを防ぐこと」にあることを明確にしました。 連続コピー時には、コピー毎に「第1の帯電ブラシローラによる1回転+(T1+α)時間の帯電」を行えないから、感光体表面の帯電電位を安定化できないという点については、本願発明は連続コピー時のことに関するものではなく、シングルコピー時の課題を解決するものであります。仮に、連続コピー時であったとしても、2回転目以降は感光体の表面は安定している可能性が高いため、「第1の帯電ブラシローラによる1回転+(T1+α)時間の帯電」処理をしなくても良いと思われます。 (3)「請求項1、2の記載では、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明中に記載されていない。 「0167」では、第1の被接触帯電部材の動作開始及び第2の被接触帯電部材の動作開始のそれぞれのタイミングが現像バイアスの印加タイミングに基づいて設定されることが記載されているが、請求項1、2にはその条件が記載されていない。 また、「キャリア上がり」「黒ベタ」の発生を防止するには、現像バイアスを段階的に変化させることが必要であるが、請求項1、2にはこのことについての記載がない。」について。 「0167」には、第2の被接触帯電部材の動作開始のタイミングと現像バイアスの印加タイミングとの関係が記載されていますので、そのことが明確になるように請求項1の補正を行いました。次に、「キャリア上がり」「黒ベタ」の発生につきましては、上述のように、請求項1が解決する課題でないことが明確になるように補正を行いました。 (4)「請求項1、2の第1の被接触帯電部材へ印加電圧に第2の被接触印加部材への印加電圧を重畳すると記載されているが、その技術的意義が不明である。」について。 この点については、「0133」「0135」図5「0166」に、その技術的意義が明確に記載されているかと思います。図5(B)から明らかなように、直流電圧に交流電圧を重畳することにより、表面電位のピーク間が緩和されて画像カブリが減少いたします。 (5)「上記(1)?(4)のように本願発明は明確ではなく、請求項1、2に係る発明は、複数の被接触帯電部材を感光体の表面の回転方向に沿って複数配置することにより感光体表面の帯電状態を改善するという従来技術に対比して、どのように区別できるのか不明である。」について。 本願発明は、「複数の被接触帯電部材を感光体の表面の回転方向に沿って複数配置することにより感光体表面の帯電状態を改善するという従来技術」に対して、第1の帯電部材と第2の帯電部材の帯電開始タイミングを変えることにより、表面電位が急激に上昇して不安定になることを防ぐようにしている点で、決定的に相違しています。引用文献に示されるものは、各帯電部材を同時に駆動しているために、帯電部材間の領域の電位については急激に上昇する問題があります。』 4.当審の判断 (1)第1番目の接触帯電部材と第2番目の接触部材の動作タイミングをずらして設定する技術的意義についての検討 前記「2.当審において通知した拒絶理由の概要」で摘記している段落【0118】は、接触帯電部材を3つ設けた場合について記載したものであるが、ここでは、請求項1に係る発明と同じく第1番目の接触帯電部材と第2番目の接触帯電部材を設けた場合について記載されている、本願の発明の詳細な説明の以下の記載を参照することとする。(下線は当審で付与。) 「【0029】通常、複数の接触帯電部材を備え、複数回に分けて帯電を行う構成の接触帯電装置では、各接触帯電部材による帯電作用を全て受けることで、良好に帯電されるように、各接触帯電部材の印加電圧等が設計されているので、上流側の接触帯電部材により帯電作用を受けることなく、下流側の接触帯電部材による帯電を受けると、感光体表面電位が急激に立上り、感光体へ流れ込む電流が過電流となって、表面電位が不安定になる。 【0030】例えば、図26乃至28に示すように、第1の帯電ブラシローラ31及び第2の帯電ブラシローラ32を、両方同時に立ち上げると、区間1の領域にある感光体33の表面は、第2の帯電ブラシローラ32の印加電圧を第1の帯電ブラシローラ31による前帯電なしに直接受けるため、感光体33の表面電位が急激に立上り、感光体33へ流れ込む電流が過電流となって、表面電位が不安定になったりする。なお、34は定電圧電源、35は交流電源を示す。 【0031】2成分現像では、現像装置に接する位置での感光体表面電位と現像部に印加する高圧の電位差が大きくなると現像剤中のキャリアがその電位差で感光体上にひきつけられ、画像劣化や装置内汚染を引き起こしてしまう。逆に電位差が小さくなると地かぶりが発生する。」 上記段落【0030】において言及している図26は、以下に示すものである。 上記段落【0029】、【0030】の記載を参照すると、上記図26において、第1の帯電ブラシローラ31と第2の帯電ブラシローラ32の両方を同時に立ち上げ、感光体33を1回転以上回転させないで直ちに露光し現像する場合には、図1に示される区間1は、第2の帯電ブラシローラ32による帯電しか行われないので、感光体33の表面電位が不安定になり、区間1の感光体表面に対して露光・現像を行うと良好な画像形成はできないが、区間2以降は良好な画像形成が行えることが理解される。 そして、上記図26において、第1の帯電ブラシローラ31の立ち上げ時に区間2の右端の点が回転して第2の帯電ブラシローラ32に到達したときに第2の帯電ブラシローラ32を立ち上げて再度感光体33の表面が帯電された部分に対して1回転以上回転させないで直ちに露光・現像することにより、感光体33の表面電位が不安定な状態のものに対して露光・現像することが防止できることがわかる。 すなわち、第2の帯電ブラシローラ32のみによって1度だけ帯電させた感光体33表面の領域の帯電電位は不安定であり、良好な画像形成を行うことができない。 しかしながら、請求項1に係る発明は、第1番目の接触帯電部材の動作を開始した時点から感光体を1回転以上回転させてから、露光・現像が行われることを前提としているものであり、第1の帯電ブラシローラ31と第2の帯電ブラシローラ32を同時に立ち上げたときに、第2の帯電ブラシローラ32のみによって1度だけ帯電される感光体33の表面領域は存在しない。 請求項1に係る発明は、露光・現像を開始した直後の最初の1回転時には、露光・現像ざれる感光体の全ての点は、第1の帯電ブラシローラ31により2度帯電されることができるものの、第2の帯電ブラシローラ32によって1度だけ帯電されることとなるが、このようなタイミングにすることが、第1の帯電ブラシローラ31と第2の帯電ブラシローラ32を同時に立ち上げた場合、または、第2の帯電ブラシローラ32を図26における区間1の回転分だけ遅らせてから立ち上げた場合と比較してどのような技術的意義を有するのか、不明である。 そして、感光体の前回転時に感光体の帯電を開始するという周知の技術的事項と比べて、どのような技術的意義を有するのか全く不明である。 また、現像開始時には、感光体表面はすでに第1の帯電ブラシローラ31により2回帯電されているのであるから、現像開始時に黒ベタ画像が発生することもない。 以上のことから、先の拒絶理由において、「そして、現像バイアス印加開始時に感光体表面を同一の接触帯電部材により2回以上帯電するのであれば、上記段落【0167】、【0168】の下線を付した箇所の記載を参照しても理解されるように、現像開始時の感光体表面の電位は安定している筈である。 例えば、第2の帯電ブラシローラ11のON動作を、第1の帯電ブラシローラ10のON動作から感光体ドラムのT1+α時間後に遅延させてONしたり、第1の帯電ブラシローラ11と同時にONさせたとしても、(第2の帯電ブラシローラが感光体表面を2回帯電した後に現像バイアスを印加するのであれば)、現像開始時の感光体表面電位は安定しているものと考えられる。 以上のことにより、第1上記段落【0168】における、下流側の接触帯電部材による帯電の開始時点を、「第1の帯電ブラシローラ10のON動作から感光体ドラム1の1回転と(Tl+α)時間後に遅延」させることの技術的意義が全く不明である。」と指摘したことが妥当であることは明らかである。 したがって、本願の発明の詳細な説明は、依然として当業者が発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。 また、上述の理由により、本願の請求項1に係る発明は依然として明確でない。 (当審注:拒絶理由において参照した上記段落【0167】、【0168】は、平成19年7月23日手続補正により、それぞれ、段落【0098】、【0099】とされた。) (2)接触帯電部材に対する印加電圧について 前記拒絶理由において、請求項1及び請求項2に、それぞれ、「前記感光体の回転方向の上流側に位置する第1番目の接触帯電部材への印加電圧に前記感光体の回転方向の下流側に位置する第2番目の接触帯電部材への印加電圧を重畳する」ということの技術的意義が不明であると指摘した。 これに対して、審判請求人は意見書において、上記したように、 『(4)「請求項1、2の第1の被接触帯電部材へ印加電圧に第2の被接触印加部材への印加電圧を重畳すると記載されているが、その技術的意義が不明である。」について。 この点については、「0133」「0135」図5「0166」に、その技術的意義が明確に記載されているかと思います。図5(B)から明らかなように、直流電圧に交流電圧を重畳することにより、表面電位のピーク間が緩和されて画像カブリが減少いたします。』 と反論しているのでこの点について検討する。 上記図26に、第1の帯電ブラシローラ31への印加電圧は定電圧電源34から得られ、第2の帯電ブラシローラ32への印加電圧は定電圧電源34と交流電源34を直列接続したものから得られることが示されている。 そして、本願発明の実施例を示すものである図9、図10、図23、図24に、上記図26と同様の構成が示されている。 したがって、本願発明の実施例は、「感光体の回転方向の上流側に位置する第1番目の接触帯電部材への印加電圧は直流電圧であり、前記感光体の回転方向の下流側に位置する第2番目の接触帯電部材への印加電圧は前記第1番目の接触帯電部材への印加電圧に交流電圧を重畳する」ものである。 請求項1に記載の、「前記感光体の回転方向の上流側に位置する第1番目の接触帯電部材への印加電圧に前記感光体の回転方向の下流側に位置する第2番目の接触帯電部材への印加電圧を重畳する」という事項が、「感光体の回転方向の上流側に位置する第1番目の接触帯電部材への印加電圧は直流電圧であり、前記感光体の回転方向の下流側に位置する第2番目の接触帯電部材への印加電圧は前記第1番目の接触帯電部材への印加電圧に交流電圧を重畳する」ことを意味するということはできない。 したがって、前記拒絶理由における上記指摘は妥当であって、本願の請求項1に係る発明は、依然として明確でない。 5.むすび 以上のとおり、本願は特許法第36条第4項、及び、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-11-28 |
結審通知日 | 2008-12-02 |
審決日 | 2008-12-15 |
出願番号 | 特願2000-208921(P2000-208921) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(G03G)
P 1 8・ 536- WZ (G03G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 神 悦彦 |
特許庁審判長 |
山下 喜代治 |
特許庁審判官 |
赤木 啓二 大森 伸一 |
発明の名称 | 画像形成装置 |
代理人 | 小澤 壯夫 |
代理人 | 小森 久夫 |