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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G
管理番号 1192011
審判番号 不服2006-1152  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-18 
確定日 2009-02-05 
事件の表示 特願2000-585856「カラー表示装置およびカラー表示方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 6月 8日国際公開、WO00/33288〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件は、平成11年12月1日(優先権主張 特願平10-342217号、平成10年12月1日、日本国,特願平10-342218号、平成10年12月1日、日本国)を国際出願日とする出願であって、 平成17年12月16日付け(発送日:平成17年12月20日)で拒絶査定がなされ、これに対して、平成18年1月18日に拒絶査定不服審判が請求がなされるとともに、同年2月15日付けで明細書を補正対象とする手続補正がされたところ、当審において、平成20年8月26日付け(同年9月2日発送。)で拒絶の理由を通知したところ、これに対して平成20年11月4日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.当審において通知した拒絶理由通知の概要
当審において平成20年8月26日付けで通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は、
1)本件出願の下記の請求項1乃至11に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公告又は出願公開がされた特願平10-41790号(特開平11-239359号)又は特願平9-188596号(特開平10-326080号)の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない、
2)本件出願の請求項1乃至11に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された特開平7-199149号公報に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
3)本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない、
というものである。

第3.本願発明
本願の請求項1ないし11に係る発明は、平成20年11月4日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】時間順次で複数の色光を所定の周波数で繰り返し生成する色光生成部と、
該複数の色光のそれぞれに対応した画像を時間順次で生成するように、該複数の色光のタイミングに同期して各色光に対応した画像データを読み出し、該複数の色光を該画像データに応じて光強度を画素毎に変調する画像生成部と、を備えたカラー表示装置であって、
該所定の周波数は、前記複数の各色光の繰り返し周波数を250Hz以上としたことを特徴とするカラー表示装置。」

第4.引用例記載の発明
当審拒絶理由で引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平7-199149号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

(1)「【0002】
【従来の技術】本願明細書における「フィールド」と「フレーム」とを次の通り定義する。
フレーム :画像表示装置に表示される単一の完結した画像。
フィールド:「フレーム」の構成要素である画像。
液晶表示装置に代表される、マトリクス状に画素を配した画像表示装置においてアクティブマトリクス駆動方式が知られている。ここではアクティブマトリクス型液晶表示装置について説明する。
【0003】まず画像表示部分の構造について説明する。図11において複数のデータ信号線4と複数の走査信号線5とをデータ信号線と複数の走査信号線とが交差する状態で備え、隣接する2本のデータ信号線と2本の走査信号線とで包囲された部分に画素6がマトリクス状に設けられており、各画素はアクティブ素子としてのTFT(薄膜トランジスタ)等のトランジスタTRと、液晶容量Cpと、必要に応じて補助容量Csとによって構成される。同図においてトランジスタTRのドレイン、ソースを介してデータ信号線4と液晶容量Cp及び補助容量Csの一方の電極とが接続され、トランジスタTRのゲートは走査信号線5に接続され、液晶容量Cpの他方の電極(コモン電極)はコモン電源線に、補助容量Csの他方の電極(コモン電極)はコモン電源線もしくは前段の走査信号線に接続されている。(図11ではコモン電極に接続されている。)尚、データ信号線4はデータドライバ2に、走査信号線5は走査ドライバ3に接続されている。
【0004】同図においてタイミングコントロール部1で各画素6に表示すべき表示用データの電圧、及び表示を行う際の位置決めを行う為の水平及び垂直同期信号を発生させ、これらの信号を基準にしてデータドライバ2(ソースドライバとも呼称される)、走査ドライバ3(ゲートドライバとも呼称される)の駆動タイミングを決定するタイミング信号(スタートパルス、クロック等)を発生させる。これらの信号をもとに、データドライバ2において1水平走査期間分の表示用データをサンプリングし、更にサンプリングされた上記信号をタイミングコントロール部1で生成された転送信号によりデータ信号線4に出力する。一方、走査ドライバ3ではデータ信号線4上に出力された表示用データの格納画素を指定する走査信号を走査信号線5に出力し、走査信号線5がアクティブ状態である時にデータ信号線4上を送られる表示用データがトランジスタTRを介して液晶容量Cpに書き込まれる。
【0005】液晶容量Cpに書き込まれた電荷により液晶層の透過率、或いは反射率が変調され表示が維持されることになるが、実際には液晶容量Cpには比較的高抵抗ではあるが容量成分と並列に抵抗成分(リーク抵抗)が、またアクティブ素子、トランジスタTRのオフ抵抗が存在するため、蓄積された電荷がこの抵抗を介して漏れ出し、次のフィールドで再びこの画素にデータが書き込まれるまでの間に画素電極の電圧が減衰し、表示品位を低下させる事になる。そこで、このリーク電流による画素電極の電位変動を小さくするために液晶容量Cpと並列に補助容量Csを設ける事が行われている。」

(2)「【0009】ここで、上述したアクティブマトリクス駆動方式の液晶表示装置に一般的に用いられているTN型液晶より高速動作が可能で、データ保持率の低い(リーク抵抗の小さい)液晶を用いて、バッファ回路により該液晶のデータ保持率を維持するフィールド順次走査方式の液晶表示装置が提案されている。
【0010】ここで言うフィールド順次走査方式とは、2色以上の色を時分割で表示することによって、眼の残像効果を利用した時間継続的な加法混色を行うカラー技術であり、図16のタイミングチャートに示す様に画素表示部への表示用データの転送を極めて短い時間τで行い、残りの時間(TR、TG、TB)で表示するものである。
【0011】フィールド順次走査方式における画素回路としては図11に示す構成でも動作可能であるが、他の画素回路構成として特願平3一77983(特開平4-310925)で2つの方式が提案されている。」

(3)「【0033】[実施例2]次にフィールド順次走査方式におけるカラー化の第1の実施例について説明する。
【0034】画素回路構成としては、例えば図11における構成で補助容量Csの値が表示用データ保持率が99%未満となるような値をとる構成、もしくは補助容量Csを完全に除去した構成とする。駆動回路の基本構成例は図4(x×yマトリクスの場合)に示す。フィールドメモリA12、B13の内部を1フレーム期間分の赤画面表示用データ、緑画面表示用データ、青画面表示用データを各々記憶するブロック18?23に分け、またタイミングコントロール部14に赤、緑、青画面用表示用データをそれぞれ読み出すタイミング信号を生成する機能をもった構成とする。
【0035】次に動作について説明する。フィールド順次表示用データをA/Dコンバータ11(表示用データがフィールド順次表示用RGB信号の場合は1個のA/Dコンバータからなり、一般のRGB信号の場合は3個のA/Dコンバータからなる)に入力し、フィールドメモリに記憶するためにアナログ信号からデジタル信号に変換後、変換された信号をフィールドメモリA12で1フレーム期間分の赤、緑、青画面表示用データそれぞれ18、19、20で記憶する。これと同時に1フレーム前の赤、緑、青画面表示用データを21、22、23にそれぞれ1フレーム期間分を既に記憶しているフィールドメモリB13より、この記憶されているデータをタイミングコントロール部14で生成された読み出し信号により1フレーム期間(16.67[msec])内に1フレーム期間分の赤、緑、青画面表示用データを一定の順序でn回シリアルに読み出す。即ち図5に示すように赤、緑、青画面表示用データ3つで1セットとし1フレーム期間内にnセットの読み出しを行うことになる(表示用データ読み出し順序はいかなる順序でも良い)。次にD/Aコンバータ15にてフィールドメモリB13から読み出された表示用データをデジタル信号からアナログ信号に変換後、次に極性反転回路16にてタイミングコントロール部14で生成された極性反転信号により表示用データの極性を反転(1Hライン反転、1フィールド反転もしくはフィールド+1Hライン反転等)を行った後、データドライバ2に入力し、これをデータドライバ2においてサンプリングしデータ信号線に出力することで、所定の各画素に書き込む。
【0036】このときの書き込みのタイミングは、図5に示すようにフィールドメモリBからのn回の1フレーム期間分の表示用データ読み出しと合わせたタイミング(16.67/n[msec]以内でy本分の走査信号を出力できるようなタイミング)で走査ドライバを動作させ、それぞれの走査信号のパルス幅内でx個(1水平ライン画素数)の表示用データのサンプリング、及び書き込みを行えるような周波数でデータドライバ2も動作させる。
【0037】以上の動作を行うことで、色の時間的混色の周期が高速となり人間の視覚感度に対し異和感を感じず、特願平3-77983(特開平4-310925)で表示用データの保持率を高めるために提案された図14、図15に示す複雑な画素回路構成とせずとも、高開口率が得られる1トランジスタ構成で、高表示用データ保持率の実現及び画素回路規模の縮小(画素サイズの縮小)による歩留り向上、高精細化が可能である。」

(4)図面の図5から、1垂直走査期間の間に、赤画面、緑画面、青画面の3画面からなる表示出力を1セットとし、該セットをn回繰り返すことにより1フレーム期間内にn回の表示出力を行うことが、見て取れる。

ア.上記摘記事項(2)及び(3)並びに図5からから、フィールド順次方式を用いて、赤画面、緑画面、青画面を1セットとした表示出力を、1垂直走査期間の間にn回行うことを、読み取ることができる。

イ.上記摘記事項(3)から、各色の画面に対応した表示用データをフィールドメモリからタイミングコントロール部14で生成された読み出し信号により読み出し、1フレーム期間内に1フレーム期間分の赤画面、緑画面、青画面表示用データを一定の順序でn回シリアルに読み出すことにより、赤画面、緑画面、青画面表示用データ3つで1セットとし1フレームの画像を生成することを、読み取ることができる。

ウ.上記摘記事項(3)における「駆動回路の基本構成例は図4(x×yマトリクスの場合)に示す。」との記載や、段落【0025】の「17は表示用画素アレイ(x×yマトリクス)である。画素回路構成の例としては図11における構成で補助容量Csの値が表示用データ保持率が99%以下となるような値をとる構成、もしくは補助容量Csを除去した構成とする。」との記載、上記摘記事項(1)における段落【0005】の「液晶容量Cpに書き込まれた電荷により液晶層の透過率、或いは反射率が変調され表示が維持されることになるが・・・」との記載から、表示用データに応じて液晶層の透過率、或いは反射率を画素毎に変調してなる表示用画素アレイを、読み取ることができる。

したがって、上記摘記事項(1)ないし(3)及び図面の記載からみて、引用例1には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「フィールド順次方式を用いて、赤画面、緑画面、青画面を1セットとした表示出力を、1垂直走査期間の間にn回行うカラーの画像表示装置において、
各色の画面に対応した表示用データをフィールドメモリからタイミングコントロール部14で生成された読み出し信号により読み出し、1フレーム期間内に1フレーム期間分の赤画面、緑画面、青画面表示用データを一定の順序でn回シリアルに読み出すことにより、各表示用データに応じて液晶層の透過率、或いは反射率を画素毎に変調して1フレームの画像を生成してなる表示用画素アレイを備えたカラーの画像表示装置。」(以下、「引用発明」という。)

第5.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「各色の画面に対応した表示用データをフィールドメモリからタイミングコントロール部14で生成された読み出し信号により読み出し、1フレーム期間内に1フレーム期間分の赤画面、緑画面、青画面表示用データを一定の順序でn回シリアルに読み出す」は、本願発明の「該複数の色光のそれぞれに対応した画像を時間順次で生成するように、該複数の色光のタイミングに同期して各色光に対応した画像データを読み出し」することの、画像データの読み出しに関する構成、即ち、「出力に対応した画像を時間順次で生成するように、複数の色画面の出力タイミングに同期して各色に対応した画像データを読み出し」との限りにおいて一致する。
(2)引用発明の「表示用画素アレイ」は、本願発明の「画像生成部」に相当するから、引用発明の「各表示用データに応じて液晶層の透過率、或いは反射率を画素毎に変調して1フレームの画像を生成してなる表示用画素アレイ」は、本願発明の「該複数の色光を該画像データに応じて光強度を画素毎に変調する画像生成部」と、技術的な上位概念である「画像データに応じて光強度を画素毎に変調する画像生成部」との限りにおいて一致する。
(3)引用発明の「カラーの画像表示装置」は、本願発明の「カラー表示装置」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明の両者は、 以下の一致点で一致し、以下の相違点1ないし3で相違する。

<一致点>
「出力に対応した画像を時間順次で生成するように、複数の色画面の出力タイミングに同期して各色に対応した画像データを読み出し、画像データに応じて光強度を画素毎に変調する画像生成部と、を備えたカラー表示装置。」

<相違点1>
本願発明では、「時間順次で複数の色光を所定の周波数で繰り返し生成する色光生成部」を備えているのに対して、引用発明では、そのことが明確ではない点。

<相違点2>
本願発明では、画像生成部が「複数の色光のそれぞれに対応した画像を時間順次で生成するように、該複数の色光のタイミングに同期して各色光に対応した画像データを読み出し、該複数の色光を該画像データに応じて光強度を画素毎に変調」しているのに対して、引用発明では、そのことが明確ではない点。

<相違点3>
本願発明では、「所定の周波数は、前記複数の各色光の繰り返し周波数を250Hz以上」であるのに対して、引用発明では、そのことが明確ではない点。

第6.判断
上記相違点1について検討する。
本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平3-109596号公報(以下、「周知例1」という。)には、

ア.「2.特許請求の範囲
1.液晶パネルと、入力映像信号を原色信号に復調する復調回路と、該原色信号の極性を一定周期で切り換える切換回路と、極性を切り換えられた原色信号を前記液晶パネルに書き込む書き込み手段と、該液晶パネルを照らす光源とからなる液晶カラー表示装置に於て、
該液晶パネルとして単色表示パネルを有するとともに、原色信号を記憶する記憶回路と、記憶された原色信号を読み出す読み出し回路と、読み出された原色信号を色ごとに面順次で書き込む書き込み回路と、面順次で書き込まれる原色信号に同期して前記光源の色を切り換えて点灯する点灯回路を備えていることを特徴とする単板液晶カラー表示装置。」(公報第1頁左下欄第4行-同頁同欄第18行。)

イ.「〔産業上の利用分野〕
本発明は光源を用いて液晶パネルに画像を表示する液晶表示装置に係わり、特に単板の液晶パネルを用いて高精細なカラー画像を表示するのに好適な液晶カラー表示装置に関する。」(公報第2頁右上欄第9行-同頁同欄第13行。)

ウ.「〔作用〕
本発明で用いるパネルは1枚であるが、メモリー回路でRGB原色信号ごとにメモリーすることにより各RGB信号を異なる時刻で別々に読み出すことが可能となる。すなわち、1フイールドを時間分割してRGB原色信号毎にパネルに書き込むことができる。こうすることにより、各ドツトを1フイールド内においてRGBの色に3回点灯させ、目の残像特性による加色法を用いて1ドツトでフルカラー表示を行なうことができる。」(公報第3頁左上欄第19行-同頁右上欄第8行。)

エ.「こうして、液晶パネル7にはRGBの単色画像が面順次で表示されるが、RGB原色信号の書込に合わせて光源8の色を切り換えることにより、人間の目の残像によって1枚のカラー画像として認識される。
第2図は、上記第1図に示すブロック図における各信号の時間関係を説明するためのタイミングチャート図である。
第1フィールド期間の映像信号をクロマ回路2で復調して得られるRGB原色信号をそれぞれR1,G1,B1とおき、第2フイールドの映像信号を復調して得られるRGB原色信号をそれぞれR2,G2,B2とおく。
これらの原色信号R1,G1,B1,R2,G2,B2をディジタル遅延回路5で遅延し、液晶パネル7への書き込み信号R1,G1,B1,R2,・・・として極性交番回路6を介して液晶パネル7に印加する。なお、第2図には第1フイールド以前の映像信号に基づく原色信号R0,G0,B0も示すが、以下の説明は第1フイールド以降の映像信号に基づいて行なう。
第2図において原色信号の復調はR1,G1,B1の3つが第1フィールド期間内で同時に行なうが、書き込みはR1,G1,B1の順に第2フィールド期間内で3回行なう。
各原色信号の書込を時間twで行なうものとし、ざらに書込時間と書込時間との時間間隔を設けてこれをtlと置く。これらの時間には映像信号の周期,液晶の応答時間に基づく制限があり、3回の書込の合計時間3(tw+tl)が1フイ一ルド期間(?16.5ms)比短くなり、かつ時間tlが液晶の応答時間比長くなるようにする。
液晶の応答時間について「液晶応用編」(培風館)の25頁に「1?20ms」(TN形LCD)の具体値を記載しており、例えば、応答時間2ms程度のパネルの場合上記時間の設定値をtw=3ms,tl=2.5msと選べる。
あるいは、高速の強誘電性液晶ではμS程度の応答時間となるので、例えば、応答時間100μsのパネルの場合上記時間の設定値tw=5ms,tl=0.5msと選ぶことも可能となる。
こうして、R1書込終了後の時間tlの間にR光源を点灯させ、G1書込終了後の時間tlの開にG光源を点灯させ、B1書込終了後の時間tlの間にB光源を点灯させることにより、各単色画像を面順次で表示することができる。
目には残像特性があって1フイールドで書き込まれる画像を時間的に区別できないため、1フイ一ルド期間内に表示される3枚の単色画像を1枚のカラー画像として認識することになる。」(公報第4頁左上欄第11行-同頁左下欄第20行。)

本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平5-107541号公報(以下、「周知例2」という。)には、

オ.「【0011】これに対し、本発明液晶表示装置における駆動例のタイムチャートを図2A及びBに示す。図2Aは一画素の透過率のタイムチャートを示し、図2Bはそれぞれ赤R、緑G及び青Bのそれぞれのバックライト光源5による光強度のタイムチャートを示す。図2Bからわかるようにこの場合、バックライト光源5からR,G,Bの各光が、継時的に1/3フレーム(或いは1/3フィールド)毎に100%の光強度をもって切り換え照射される。一方液晶表示素子においては、これに対応して液晶1のダイレクタの傾きを継時的に変化させる。即ち図2Aに示すように透過光強度即ち透過率を1/3フレーム(或いは1/3フィールド)毎に各色光源にそれぞれ同期して各色の表示信号に対応して透過率が変化するようになされる。このようにすることによって、図2AにおいてTfで示す1フレーム(1フィールド)時間内に、所定の信号に対応した比率をもって赤、緑及び青の光が透過されて、これによりフルカラー表示がなされることとなる。」

本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平6-67149号公報(以下、「周知例3」という。)には、

カ.「【0018】次に、実施例1の動作を説明する。図2において、画像信号(図3(a) )はRGB変換器17によりR,G,B画像信号に分離される。図3(b) ,(c) ,(d) はそれぞれ一画面分のR,G,B変換後のR,G,B画像信号を示している。なお、ビデオカメラの場合はR,G,B画像信号がそのまま取り出される場合があるが、この場合はRGB変換器17は必要でない。
【0019】R,B,G画像信号はA/D変換器18によってそれぞれデジタル値に変換され、フィールドメモリ19に格納される。他方、入力画像信号は同期分離回路20に入力されて同期信号HD,VDが分離され、タイミングンパルスジェネレータ21に送られる。タイミングパルスジェネレータ21内では、水平同期信号HD(NTSC-TVシステムの場合15.73KHz)に同期したR,G,B画像信号のメモリへの書き込み・読みだしタイミングを制御するクロック信号がPLL24により作成され、カウンタ25と時間軸圧縮処理回路を構成するフィールドメモリ19のリードクロックRCLK端子に入力される。
【0020】カウンタ25およびコンパレータ26は、PLL24から入力されるクロック信号にもとづいてR,G,B画像信号のフィールドメモリ19への書き込みタイミング信号、読みだしタイミング信号、R,G,B画像信号供給切り換えタイミング信号、バックライトドライバ23の発光タイミング信号を作成する。フィールドメモリ19の書き込みしクロック(WCLK)は、PLL24からのクロック信号をカウンタ25により3分周することにより得られ、画像信号のサンプリング信号(例えば3.58MHz )となる。
【0021】RGB供給切り換えタイミング信号はスイッチ22に入力され、LCDドライバ9に図3(e) に示すようなタイミングで時間軸圧縮されたRGB画像信号を送出する。このR,G,B画像信号はフィールドメモリ19の読みだしクロック(RCLK)の周波数を書き込みクロック(WCLK)の周波数の3倍にすればR,G,B画像信号の時間軸を1/3倍に圧縮でき、読み出しタイミングをずらすことによって図3(e) のように所定の順序で一垂直走査期間内に順次送出することができる。
【0022】他方、バックライトドライバ23には、バックライトドライバ23から図3(f) のような発光タイミング信号が供給される。図中のBR はRバックライト13の発光タイミング信号、BG はGバックライト14の発光タイミング信号、BB はBバックライト15の発光タイミング信号である。以上のようにしてLCD1に時間圧縮された一垂直走査期間分(一画面分)のR,G,B画像信号が一垂直走査期間内に順次供給され、この供給タイミングに同期して同色光のR,G,Bバックライト13,14,15が発光してカラー画像が得られる。」

本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平4-310925号公報(以下、「周知例4」という。)には、

キ.「【0019】
【実施例】本発明は、白黒表示を行う反射型液晶表示素子の上に電圧印加手段によって透過光の波長変換が可能な色彩可変フィルタを設置し、このフィルタの色彩変化に同期して上記反射型液晶表示素子の表示パターンを変化させることによってマルチカラー表示もしくはフルカラー表示を行うものである。すなわち、前記色彩可変フィルタとして、たとえば赤、青、緑に対応する光の波長を電圧印加状態で透過変化できるものを選択すると、色彩可変フィルタの透過変化にタイミングを合わせて液晶表示素子の表示パターンを代えることによって、所望のカラー表示が可能である。液晶表示素子が中間階調表示が可能であればフルカラー表示が可能となり、白黒表示のみであれば8色のマルチカラー表示が可能となる。」

ク.「【0029】一方、アクティブマトリクス型の反射型液晶表示素子2において、走査電極数(ゲート電極数)をNとし、信号電極数(ソース電極数)をMとすると、駆動方法として下記の2つの駆動方法が提案される。
【0030】図4は、第1の駆動方法を説明するためのタイミングチャートである。この第1の駆動方法は、期間τ+期間TR(TG,TB)の期間に比べて極めて短時間でN個の走査電極を走査し、N×Mの画素に所望の電荷を注入し、上記期間TR,TG,TBにほぼタイミングを合わせて表示する方法である。
【0031】図4(1)に示すようにまず期間τにおいて反射型液晶表示素子2の走査電極N本すべてを走査し、N×Mの画素に順次電荷を注入する。前記走査期間τの開始時刻から信号電極に所望の駆動信号が印加され、液晶に所定の電圧が印加される。
【0032】液晶分子は、前述のように電圧無印加時における配向状態から、電圧印加時における配向状態に変化して安定するまでには一定の過渡期間が必要とされる。したがって、図4(2)に示すように、反射型液晶表示素子2が安定した表示状態に至るまでには期間W1を必要とする。期間W1は、期間τと反射型液晶表示素子2に適用した表示モードの応答時間との総和とされる。
【0033】したがって、液晶表示素子2の走査期間の開始時刻から期間W1経過後の時刻から、次の走査期間の開始時刻までの表示期間DR,DG,DB,…において、赤色、緑色、青色の3色の表示が順次行われる。これによって、絵素毎に透過光を選択することによって、加法混色の原理によって8色のマルチカラー表示が可能である。また、液晶表示素子2において、中間階調表示が可能である場合は、フルカラー表示が可能となる。
【0034】なお、図4では、走査電極N本をすべて走査する期間として、前記光選択手段3における遷移期間τを選んだけれども、期間τに限定するものではなく、走査期間τは可能な限り短時間の方が、良好な色彩でかつ明るい表示を得る上で好ましい。また、走査期間τでは、3色のうち2色が混在した光漏れが生じているため、この期間τでは液晶表示素子2の表示を黒色とし、期間TR,TG,TBにおいて所望の表示パターンの走査を行ってもよい。ただし、この場合でも、より明るい表示を得る上では、遷移期間τと、走査期間τとができる限り短時間の方が望ましい。さらに、図4において期間W1は、走査期間τと液晶表示素子2に適用した表示モードの応答時間との総和となっており、期間W1を短くする必要から、走査期間τとともに表示モードの応答速度も高速であることが望ましい。」

上記周知例1ないし周知例4に示されているように、面順次での駆動によりカラー表示を行う液晶表示装置に関する駆動技術において、各原色信号である、赤色、緑色、青色の信号の書き込みに応じて赤色、緑色、青色の光源を所定の周波数でくり返し点灯することにより目の特性を利用してカラー表示を行う技術は、周知・慣用技術である。
そして、上記引用発明と上記周知・慣用技術は、共に面順次での駆動によりカラー表示を行う液晶表示装置の技術に関する発明である点で共通している。上記引用例1には、如何にしてカラーの表示出力を得ているのか明確には記載されていないが、一般に、面順次での駆動によりカラー表示を行う液晶表示装置において、各原色信号である、赤色、緑色、青色の信号の書き込みに応じて赤色、緑色、青色の光源を所定の周波数でくり返し点灯する技術は、上記周知例1ないし周知例4に示されているように、周知・慣用技術であり、上記引用発明において、上記周知・慣用技術を採用し、各原色信号である、赤色、緑色、青色の信号の書き込みに応じて赤色、緑色、青色の光源を所定の周波数でくり返し点灯する構成を採用することに特段の困難性はない。
よって、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明に上記周知・慣用技術を適用することにより当業者が容易に想到し得たものである。

上記相違点2について検討する。
上記相違点2における、画像生成部が、複数の色光のそれぞれに対応した画像を時間順次で生成するように、該複数の色光のタイミングに同期して各色光に対応した画像データを読み出し、該複数の色光を該画像データに応じて光強度を画素毎に変調する構成、即ち、各色光のタイミングに同期して、画像生成部が該各色光に対応した画像データの光強度を画素毎に変調するような構成は、上記周知例1ないし周知例4に示されているように、面順次での駆動によりカラー表示を行う液晶表示装置に関する駆動技術において、当然に採用されていると勘案される周知・慣用技術である。
してみると、上記引用発明と上記周知・慣用技術は、共に面順次での駆動によりカラー表示を行う液晶表示装置の技術に関する発明である点で共通しており、上記引用発明においては、如何にしてカラーの表示出力を得ているのか明確には示されていないが、各色光のタイミングに同期して、画像生成部が該各色光に対応した画像データの光強度を画素毎に変調するような構成は、所望のカラー表示を得るためには、当然に採用されるべき構成にすぎない。
よって、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明に上記周知・慣用技術を適用することにより当業者が容易に想到し得たものである。

上記相違点3について検討する。
上記引用例1における、「【0031】ここで表示用データ保持率の99%という数字の根拠は、従来の駆動法では自然画表示の実用レベルに相当する64階調の表示用データを1フレーム期間にわたって安定して表示するにはマージンを含めて99%以上のデータ保持率を必要としていたことによる。」との記載や、「【0036】このときの書き込みのタイミングは、図5に示すようにフィールドメモリBからのn回の1フレーム期間分の表示用データ読み出しと合わせたタイミング(16.67/n[msec]以内でy本分の走査信号を出力できるようなタイミング)で走査ドライバを動作させ、それぞれの走査信号のパルス幅内でx個(1水平ライン画素数)の表示用データのサンプリング、及び書き込みを行えるような周波数でデータドライバ2も動作させる。 【0037】以上の動作を行うことで、色の時間的混色の周期が高速となり人間の視覚感度に対し異和感を感じず、・・・高精細化が可能である。」などとの記載から、1フレーム期間内にn回、即ち多数回の表示を行うことにより、データ保持率が99%以上となるような値をとり、また、色の時間的混色の周期が高速となり人間の視覚感度に対し異和感を感じることがなくなるとの技術思想を、読み取ることができる。
また、図5からは、赤、緑、青からなる1セットの表示が1,2,・・・n回繰り返されて1垂直走査期間(1フレームに相当する。)となっていることから、該1セットの表示を少なくとも4回以上繰り返す構成を、読み取ることができる。
してみると、1フレーム期間内にn回の表示を行うことにより、データ保持率が99%以上となるような値をとり、また、色の時間的混色の周期が高速となり人間の視覚感度に対し異和感を感じなくさせるための回数として、引用発明においては、n=5以上の回数に関して具体的には述べられていないが、データ保持率や色の時間的混色を良くし表示品位を高めるためには、回数を多くすればより良いことは技術的に明白である。よって、表示品位をより高めるために、例えば、n=5を採用することは、引用発明の技術的課題などを勘案するに、引用発明の技術的射程の範囲内であり、さらに、n=5を採用することが、引用発明において示された技術思想から特段に乖離したものともいえない。
よって、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明から当業者が容易に想到し得たものである。

なお、上記周知例1には、「すなわち、第4図においてlライン目の走査期間内で書き込む1ライン分のビデオ信号を時間軸方向にk分割する。これら分割して得られる1番目の信号をVideo-1,2番目の信号をVideo-2,・・・Video-kとおき、それぞれの信号を各水平駆動回路76-1,76-2,・・・76-kに並列に印加して駆動する。 この並列駆動によって、各水平駆動回路76-1,76-2,・・・76-kにはk分の1に分割したビデオ信号を走査期間内に書き込むことになるので、水平方向の走査クロックをk分の1に低減することができる。 従って、本発明での単板カラー表示に於て各単色画面の書込スピードが従来比6倍以上になるが、並列駆動を採用することにより水平方向についても十分書き込むことができる。 以上第1図?第4図を用いて説明した本発明の実施例は1例であって、その構成を変えた実施例も可能である。」(公報第5頁右下欄第17行-公報第6頁左上欄第15行。)と記載されており、水平駆動回路へ分割してビデオ信号を供給することにより、高速な書き換えを可能とした技術も示されている。
すなわち、n=5を採用することに伴うデータドライバの負担も、例えば、上記周知例1において示された構成を採用することにより解決できることは技術的に明白である。

そして、本願発明の奏する効果も、引用例1の記載及び周知・慣用技術から当業者が予測可能な範囲内のものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知・慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7.むすび
以上のとおりであるから、本件出願の請求項1に係る発明(本願発明)は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その余の請求項2乃至11に係る発明についての判断を示すまでもなく、本件出願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-26 
結審通知日 2008-12-02 
審決日 2008-12-15 
出願番号 特願2000-585856(P2000-585856)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 濱本 禎広  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 小松 徹三
西島 篤宏
発明の名称 カラー表示装置およびカラー表示方法  
代理人 藤綱 英吉  
代理人 岩▲崎▼ 孝治  
代理人 細井 貞行  
代理人 上柳 雅誉  
代理人 須澤 修  
代理人 石渡 英房  
代理人 特許業務法人英知国際特許事務所  

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