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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J |
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管理番号 | 1192017 |
審判番号 | 不服2006-4509 |
総通号数 | 111 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-03-09 |
確定日 | 2009-02-05 |
事件の表示 | 平成11年特許願第135121号「プリントシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月21日出願公開、特開2000-318274〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 1.平成11年5月17日:出願 2.平成16年10月13日:拒絶理由の通知 3.平成16年12月17日:手続補正書の提出 4.平成17年7月12日: 拒絶理由の通知 5.平成17年9月5日:手続補正書の提出 6.平成18年1月31日:補正の却下の決定(平成17年9月5日付けの手続補正について)及び拒絶査定 7.平成18年3月9日:審判請求 8.平成18年4月10日:手続補正書の提出 9.平成20年8月15日:補正の却下の決定(平成18年4月10日付けの手続補正について)及び拒絶理由の通知 10.平成20年10月17日 手続補正書の提出 第2.本願発明 本願の請求項1乃至3に係る発明は、平成20年10月17日付けの手続補正書で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「第1印字モードで印字可能な第1印字部と、前記第1印字モードより印字速度の遅い第2印字モードで印字可能な第2印字部とを備えた印字部と、 前記印字部に連通し、前記第1印字部で印字された記録媒体と前記第2印字部で印字された記録媒体とが排出される排出部と、 印字する画像に対応する画像情報と、1つのファイルに対して設定され、頁単位に第1印字モードと第2印字モードのどちらに対応するかが設定される印字モード情報と、印字済みの記録媒体を前記排出部に排出する順序に対応する排出順序情報とからなる印字情報を送信して印字要求を行うホスト部と、 前記印字モード情報が前記第1及び前記第2印字モードとからなることを検出すると、記憶された前記第1及び前記第2印字部の印字速度差に対応する情報と、送信された前記排出順序情報とに基づき、前記第1及び第2印字部の印字制御を行う印字管理部であって、印字速度の異なる第1印字部と第2印字部とが並行に印刷処理を行い、予め指定された頁順で排出部にスタックされ、かつ前記印字速度差から排出部での干渉を防止するように給紙タイミングを制御するように第1印字部または第2印字部における印字開始時期を制御する印字管理部と、 を有するプリントシステム。」 第3.刊行物 (1)当審における拒絶の理由で引用され、本件出願前に頒布された国際公開第99/09459号(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載が図示とともにある。 なお、刊行物1に記載されるウムラウト記号とエスツェットについては、当審では、「ウムラウト記号の付いたa」を「ae」で、「ウムラウト記号の付いたu」を「ue」で、「エスツェット」を「ss」で、それぞれ代用表記することとする。 また、当該刊行物記載の日本語として、国際特許出願に対して日本国特許庁に提出された翻訳文が日本国内で公表された公表特許公報(特表2001-516067)の記載を参考として示す。 (ア)「Das in den Figuren 1 bis 9 dargestellte Druck- oder Kopiergeraetesysteme zum performanceangepassten Erstellen einer vorgegebenen Blattfolge aus monochrom und /oder farbig bedruckten Einzelblaettern enthalten im Prinzip ein mit hoher Druckgeschwindigkeit von etwa 50, 100, 200, 400 Seiten pro Minute oder mehr arbeitendes digitales monochromes Druckwerk 10 und ein langsameres, digitales Farbdruckwerk 11 mit einer ueblichen Druckgeschwindigkeit von etwa 30, 50, oder 100 Seiten pro Minute.」(第9頁第1?9行) 「図1から図9に示された印刷またはコピー装置システムは、モノクロ印刷またはカラー印刷される個別枚葉紙からなる所定の枚葉紙シーケンスをパフォーマンスに適合して作製するためのものであり、基本的に毎分50,100,200,400ページの高い印刷速度により動作するデジタルモノクロ印刷機構10と、通常は毎分30,50または100ページの緩慢なデジタル印刷機構11とを有している。」(特表2001-516067号公報の段落【0035】の1?6行) (イ)「wo sie als monochrom und farbig gemischter Job in einer gemeinsamen Blattsammeleinrichtung 18 (Stapler) abgelegt werden (Figuren 1, 2, 3, 5)」(第9頁第36行?第10頁第1行) 「ここで枚葉紙はモノクロとカラーの混合ジョブとして共通の枚葉紙収集装置18(ステープラー)に保管される(図1,2,3,5)。」(特表2001-516067号公報の段落【0035】の24?26行) (ウ)「Mit den beiden Datencontrollern 24/1 und 24/2 und dem Kommunikationsmodul 26 ueber Datenleitungen (Datenbusse) ist ein Printserver 27 funktionell verbunden, der einen integrierten Jobseparator 28 aufweist. Der Printserver 27 wiederum kommuniziert mit einer externen Datenquelle z. B. einem PC, einem Datennetz oder einem Host. Ebenfalls ueber Steuerleitungen mit den Druckwerken 10 und 11 gekoppelt ist das Papierweg-Koppelmodul 16. Die Funktion der Synchronsteuereinrichtung ist dabei wie folgt: Die aus der externen Quelle kommenden Druckdaten werden im Jobseparator 28 des Printservers 27 in monochrome und farbige Druckjobdaten separiert und dabei zur Sequenzverwaltung jeder Druckseite eine konkrete Adresse oder ein kennzeichnendes Merkmal zugewiesen. Diese Daten werden dann zu den Datencontrollern 24/1 und 24/2 der jeweiligen Druckwerke 10, 11 uebertragen. Gleichzeitig wird dem Master-Druckwerk, in diesem Fall dem monochromen Druckwerk 10, die Sequenz der Druckseiten als Sequenzdaten vom Printserver 27 mitgeteilt. Der Masterdrucker 10 steuert nun ueber das Kommunikationsmodul 26 den Farbdrucker 11 mit dem Papierweg-Koppelmodul 16 so an, dass dieser die bedruckten Farbseiten zum richtigen Zeitpunkt ueber das Papierweg-Koppelmodul 16 zu den monochromen Druckseiten zuliefert und zwar in der im Zusammenhang mit den Figuren 1 bis 9 beschrieben Weise. Dabei kann es erforderlich sein, dass die Farbseiten im Papierweg-Koppelmodul 16 in dem Blattpufferspeicher 20 oder im Papiertransportkanal zwischengespeichert werden. Dieser richtige Zeitpunkt wird unter Beruecksichtigung der unterschiedlichen Druckgeschwindigkeiten der Druckwerke 10, 11 und der Blattsequenz des zu erstellenden Jobs mit einer entsprechenden mikroprozessorgesteuerten Recheneinrichtung errechnet, die Bestandteil der Geraetesteuerung 25 oder des Datencontrollers 24/1 oder auch des Jobseparators 28 sein kann. Dabei strebt die Synchronsteuerung einen Parallelbetrieb der Druckwerke an. Enthaelt der Job z.B. zunaechst 10 monochrome Seiten und dann eine Farbseite, werden die Druckwerke 10, 11 parallel betrieben und die Farbseite zwischengespeichert bis die 10. monochrome Seite erstellt wurde. Dann wird die Farbseite ueber den entsprechenden Papiertransportkanal der Blattsammeleinrichtung zugefuehrt und so der gemeinsame Job gebildet.」(第14頁第27行?第15頁第33行) 「2つのデータコントローラ24/1と24/2、および通信モジュール26によりデータ線路(データバス)を介してプリンタサーバ27が機能的に接続されている。このプリンタサーバは集積されたジョブ分離器28を有している。プリンタサーバ27はさらに外部のデータ源、例えばPC、データ網、またはホストコンピュータと通信する。同じように制御線路を介して印刷機構10と11とは紙経路結合モジュール16が接続されている。 同期制御装置の機能は次のとおりである: 外部源から到来した印刷データは、プリンタサーバ27のジョブ分離器28でモノクロ印刷ジョブデータとカラー印刷ジョブデータとに分離され、ここでは順序を管理するために各印刷ページに具体的アドレスまたは識別子が割り当てられる。これらのデータは次に、それぞれの印刷機構10,11のデータコントローラ24/1と24/2に伝送される。同時にマスタ印刷機構、この場合はモノクロ印刷機構10に印刷ページの順序が順序データとしてプリンタサーバ27から通知される。マスタ印刷機10は次に通信モジュール26を介してカラー印刷機11を次のように制御する。すなわちこのカラー印刷機が印刷されたカラーページを正しい時点で紙経路結合モジュール16を介してモノクロ印刷側に、図1から図9に関連して説明したように送出するよう制御する。ここでは、カラーページを紙経路結合モジュール16で枚葉紙バッファ保管所20または紙搬送チャネルに中間保存する必要がある。この正しい時点は、印刷機構10,11の異なる印刷速度と、作製すべきジョブの枚葉紙シーケンスを考慮して相応にマイクロプロセッサ制御される計算装置により計算される。この計算装置は、機器制御部25またはデータコントローラ24/1またはジョブ分離器28の構成部とすることができる。ここで同期制御は印刷機構の並列駆動が達成されるように努める。ジョブが例えばまず10枚のモノクロページを、次に1枚のカラーページを含んでいれば、印刷機構10,11は並列駆動され、カラーページは10番目のモノクロページが作製されるまで中間保存される。次にカラーページは相応の紙搬送チャネルを介して枚葉紙収集装置に供給され、共通のジョブが形成される。」(特表2001-516067号公報の段落【0050】?【0051】) 刊行物1の前記記載(ア)から、カラー印刷機構(11)の印刷速度は、モノクロ印刷機構(10)の印刷速度よりも遅いことが把握できる。 刊行物1の前記記載(イ)から、カラー印刷機構(11)とモノクロ印刷機構(10)で印字された個別枚葉紙は、各印刷機構に連通される枚葉紙収集装置(18)に排出されることが把握できる。 刊行物1の前記記載(ウ)から、外部のデータ源(例えば、PC、データ網、またはホストコンピュータ)は、プリンタサーバ(27)に印刷データを送信することが把握できる。 刊行物1の前記記載(ウ)から、印刷データは、モノクロ印刷ジョブデータとカラー印刷ジョブデータとに分離され、モノクロ印刷ジョブデータの印刷をモノクロ印刷機構(10)で行い、カラー印刷ジョブデータの印刷をカラー印刷機構(11)で行うことが把握できる。 刊行物1の前記記載(ウ)から、カラー印刷機構(11)とモノクロ印刷機構(10)とは並列駆動され、カラー印刷機構(11)で印刷されるカラーページは、中間保存された後、モノクロページを印字するモノクロ印刷機構(10)側に、正しい時点で送出されることが把握できる。また、「正しい時点」とは、モノクロ印刷機構(10)とカラー印刷機構(11)の異なる印刷速度と、作製すべきジョブの枚葉紙シーケンスとを考慮して計算されるものであって、順序データ通りの頁順となるようにしていることが把握できる。 したがって、前記記載及び図面を含む刊行物1全体の記載から、刊行物1には、以下の発明が開示されていると認められる。 「モノクロ印字を行うモノクロ印刷機構(10)と、モノクロ印字より印字速度の遅いカラー印字を行うカラー印刷機構(11)とを備えた印字部と、 印字部に連通し、前記モノクロ印刷機構(10)で印字された個別枚葉紙と前記カラー印刷機構(11)で印字された個別枚葉紙とが排出される枚葉紙収集装置(18)と、 印刷データを送信する外部のデータ源(例えば、PC、データ網、またはホストコンピュータ)と、 モノクロ印刷機構(10)とカラー印刷機構(11)の異なる印刷速度と、作製すべきジョブの枚葉紙シーケンスとに基づき、カラー印刷機構(11)で印刷されるカラーページとモノクロ印刷機構(10)で印刷されるモノクロページとを順序データ通りの頁順となるように、モノクロ印刷機構(10)とカラー印刷機構(11)を制御するマスタ印刷機構であって、印刷速度の異なるモノクロ印刷機構(10)とカラー印刷機構(11)とが並行に印刷処理を行い、予め指定された頁順で枚葉紙収集装置(18)に排出されるようにモノクロ印刷機構(10)とカラー印刷機構(11)を制御するマスタ印刷機構と、 を有するシステム。」 (2)当審における拒絶の理由で引用され、本件出願前に頒布された特開平6-259204号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の記載が図示とともにある。 (エ)「また、記録部に白黒記録部とカラー記録部を設け、コンピュータ4から白黒の頁とカラーの頁が混在したページ記述言語の記録要求を受けたとき、それぞれの頁をフォーマッタ部で展開させ、ページ整合を保つために、白黒記録部とカラー記録部のそれぞれの記録時間を考慮したタイミングで画像データの出力指示を行なうようにしてもよい。例えば、カラー記録の方が白黒記録より時間がかかる構成で、1頁目がカラー頁、2頁目が白黒頁の場合は、1頁目の出力指示を出してから1頁目のカラー記録が完了する時より2頁目の白黒記録が完了する時が少し遅くなるタイミングで2頁目の出力指示を出すようにすれば、ページの整合性が保たれる。」(段落【0037】) 刊行物2の前記記載(エ)から、刊行物2には、記録速度の異なる白黒記録部とカラー記録部とを有し、両記録部で並行して印刷処理を行い、印刷データの頁順で排出部に記録媒体を排出するシステムが記載されていると認められる。 また、刊行物2の前記記載(エ)に記載されている「少し遅くなるタイミング」とは、白黒記録部とカラー記録部から出力される記録媒体が合流するときの干渉を防止するタイミングであると認められる。 したがって、前記記載及び図面を含む刊行物2全体の記載から、刊行物2には、以下の発明が開示されていると認められる。 「記録速度の異なる白黒記録部とカラー記録部とを有し、両記録部で並行して印刷処理を行い、印刷データの頁順で排出部に記録媒体を排出するシステムにおいて、白黒記録部とカラー記録部から出力される記録媒体が合流するときの干渉を防止するタイミングで、出力指示を出す点。」 第4.本願発明と刊行物1記載の発明との対比 刊行物1記載の発明の「個別枚葉紙」、「枚葉紙収集装置(18)」、「外部のデータ源(例えば、PC、データ網、またはホストコンピュータ)」及び「マスタ印刷機構」は、本願発明の「記録媒体」、「排出部」、「ホスト部」及び「印字管理部」に相当する。 刊行物1記載の発明の「システム」は、印刷する機構を含むシステムであるから、本願発明に倣って「プリントシステム」ということができる。 刊行物1記載の発明の「モノクロ印字」を行うモードを「第1印字モード」といい、「モノクロ印刷機構(10)」を「第1印字部」というと共に、刊行物1記載の発明の「カラー印字」を行うモードを「第2印字モード」といい、「カラー印刷機構(11)」を「第2印字部」ということができる。 刊行物1記載の発明の「印刷データ」は、外部のデータ源から印字要求によりプリンタに送信されるデータであるから、「印字する画像に対応する画像情報」からなることは明らかである。 また、刊行物1の前記記載(ウ)から、各印刷ページの順序が順序データとしてマスタ印刷機構に通知されるものであるから、刊行物1記載の発明の「印刷データ」は、「排出順序情報」を備えていると認められる。 また、刊行物1の前記記載(ウ)から、刊行物1記載の発明の「印刷データ」は、モノクロ印刷ページを構成するモノクロ印刷ジョブデータとカラー印刷ページを構成するカラー印刷ジョブデータとに分離されるものであるから、該「印刷データ」は、「1つのファイルに対して設定され、頁単位にモノクロ印字(第1の印字モード)とカラー印字(第2印字モード)のどちらに対応するかが設定される印字モード情報」を備えていると認められる。 よって、刊行物1記載の発明の「印刷データ」は、「印字する画像に対応する画像情報」と、「1つのファイルに対して設定され、頁単位に第1印字モードと第2印字モードのどちらに対応するかが設定される印字モード情報」と、「印字済みの記録媒体を前記排出部に排出する順序に対応する排出順序情報」とからなる印字情報であると認められる。 刊行物1記載の発明の「モノクロ印刷機構(10)とカラー印刷機構(11)の異なる印刷速度」は、2つの印字部の印字速度差に対応する情報であって、マスタ印刷機構は、この異なる印刷速度に基づき、カラーページとモノクロページを順序データ通りの頁順となるように、モノクロ印刷機構(10)とカラー印刷機構(11)を制御するものである。 また、刊行物1記載の発明の「カラー印刷機構(11)で印刷されるカラーページとモノクロ印刷機構(10)で印刷されるモノクロページとを順序データ通りの頁順となるように、モノクロ印刷機構(10)とカラー印刷機構(11)を制御する」ことは、本願発明の「送信された前記排出順序情報とに基づき、前記第1及び第2印字部の印字制御を行う」ことに相当している。 よって、両者は、以下の点で一致し、また相違する。 <一致点> 「 第1印字モードで印字可能な第1印字部と、前記第1印字モードより印字速度の遅い第2印字モードで印字可能な第2印字部とを備えた印字部と、 前記印字部に連通し、前記第1印字部で印字された記録媒体と前記第2印字部で印字された記録媒体とが排出される排出部と、 印字する画像に対応する画像情報と、1つのファイルに対して設定され、頁単位に第1印字モードと第2印字モードのどちらに対応するかが設定される印字モード情報と、印字済みの記録媒体を前記排出部に排出する順序に対応する排出順序情報とからなる印字情報を送信して印字要求を行うホスト部と、 記憶された前記第1及び前記第2印字部の印字速度差に対応する情報と、送信された前記排出順序情報とに基づき、前記第1及び第2印字部の印字制御を行う印字管理部であって、印字速度の異なる第1印字部と第2印字部とが並行に印刷処理を行い、予め指定された頁順で排出部にスタックされるように第1印字部または第2印字部を制御する印字管理部と、 を有するプリントシステム。」 <相違点1> 本願発明では、「前記印字モード情報が前記第1及び前記第2印字モードとからなることを検出する」と特定されているのに対して、刊行物1記載の発明では、そのような特定を有しない点。 <相違点2> 印字管理部に関して、本願発明では、「予め指定された頁順で排出部にスタックされ、かつ前記印字速度差から排出部での干渉を防止するように給紙タイミングを制御するように第1印字部または第2印字部における印字開始時期を制御する」ことが特定されているのに対して、刊行物1記載の発明では、予め指定された頁順で排出部にスタックされることが特定されているだけで、前記特定を有しない点。 第5.判断 <相違点1について> 刊行物1には、外部のデータ源から送信された印刷データが、モノクロ印刷ジョブデータとカラー印刷ジョブデータとからなることを検出することについて明記されていないが、刊行物1記載の発明は、プリンタサーバの外部のデータ源から送信された印刷データを、モノクロ印刷ジョブデータとカラー印刷ジョブデータとに分離するジョブ分離器を備え、モノクロページの印刷をモノクロ印刷機構で行い、カラーページの印刷をカラー印刷機構で行うものであるから、刊行物1記載の発明においても、印刷データがモノクロ印字(第1印字モード)とカラー印字(第2印字モード)とからなるものであるかを検出していることは明らかである。 よって、相違点1は実質的な相違点でない。 <相違点2について> 前記「第3.刊行物」の「(2)」で示したように、刊行物2には、「白黒記録部とカラー記録部から出力される記録媒体が合流するときの干渉を防止するタイミングで、出力指示を出す点。」が記載されている。 そして、刊行物2記載の「出力指示」がどのようなものであるかは特に明記されていないが、刊行物2の前記記載(エ)には、「白黒記録部とカラー記録部のそれぞれの記録時間を考慮したタイミングで画像データの出力指示を行うようにしてもよい。」と記載されている。この記載によると、各記録部での記録時間を考慮しているので、「出力指示」は、各記録部で記録を行うよりも前の時点での指示であることが理解できる。また、刊行物2の前記記載(エ)には、「画像データの出力指示」と記載されているので、画像データを各記録部に出力する指示であることも理解できる。つまり、刊行物2に記載される「出力指示」は、白黒記録部とカラー記録部に送信される印字開始の指示と解することができる。 また、ホスト装置等から印字開始の指示を受けた画像記録装置が、印字開始の指示に基づいて印字を開始することは、技術常識である。 さらに、給紙部(給紙カセット)から記録部まで記録紙を搬送するのに所定の時間を要することから、記録部での記録開始に対応させて給紙部での給紙を開始させることも技術常識である。 してみれば、刊行物1記載の発明におけるモノクロ印刷機構(10)から出力される記録媒体と、カラー印刷機構(11)から出力される記録媒体とを頁順に排出部に排出するときに、刊行物2に記載されるように、白黒記録部とカラー記録部から出力される記録媒体が合流するときの干渉を防止するような給紙タイミングとなるように印字開始の指示を行う(つまり、印字開始時期を制御する)ことは、当業者が容易に想到し得たものである。 よって、刊行物1及び2記載の発明及び技術常識から、本願発明の相違点2に係る構成とすることは当業者が容易に想到することである。 なお、請求人は、平成20年10月17日付けの意見書において、 「これらより、刊行物1,2に記載の発明は、ページ順序を正しく排出することを目的としていることは明らかである。 これに対して本発明は、印字処理時間の短縮を目的としており、そのために、印字速度の異なる第1印字部と第2印字部とが並行に印刷処理を行い、予め指定された頁順で排出部にスタックされかつ第1印字部と第2印字部の印字速度の差から排出部での干渉を防止するように給紙タイミングを制御しているのである。 これにより、第1印字部により印字された記録媒体の排出と第2印字部により印字された記録媒体の排出との間に間隔が存在せず、連続的に排出することができるので、最短時間で印刷処理を行うことができる。 刊行物1,2記載の発明は、ページ順に排出することを目的としているため、たとえば、一旦カラーページを中間保存したり、全ページの画像データをメモリに記憶させてページ順に読み出して印刷処理を行っている。 このような印刷処理によりページ順の整合性は保たれるが、一旦メモリに保存した後、読み出して印刷処理を行うために、印刷完了までの時間は長くなる。 刊行物1,2記載の発明は、ページ順序を正しく排出することを目的としているのであるから、刊行物1,2記載の発明に基づいて、印刷処理を短縮しようとする本発明の構成には容易に想到することは決してありえない。 このように刊行物1,2に係る発明の目的と、本発明の目的とは大きく相違しており、刊行物1,2には、本発明特有の、構成および効果は、開示も、示唆されていない。刊行物1と刊行物2とを組合わせてもみても、前述のように本発明の効果を達成し難く、前記技術的思想を想到できるとは到底考えられない。」 と主張している。 そこで、本願発明の構成である「印字速度の異なる第1印字部と第2印字部とが並行に印刷処理を行い、予め指定された頁順で排出部にスタックされ、かつ第1印字部と第2印字部の印字速度の差から排出部での干渉を防止するように給紙タイミングを制御するように第1印字部または第2印字部における印字開始時期を制御する」点について再検討するとともに、請求人が主張している印刷完了までの時間を短縮するとの効果について検討する。 ・本願発明の前記構成について 本願発明の前記構成は、以下の2つの点から構成されている。 (a)印字速度の異なる第1印字部と第2印字部とが並行に印刷処理を行う点。 (b)予め指定された頁順で排出部にスタックされ、かつ前記印字速度差から排出部での干渉を防止するように給紙タイミングを制御するように第1印字部または第2印字部における印字開始時期を制御する点。 (a)について、前記「第3.刊行物」の「(1)」で示したように、刊行物1の前記記載(ウ)から、カラー印刷機構(11)とモノクロ印刷機構(10)とは並列駆動されるものであると認められるから、刊行物1記載の発明は(a)の構成を有している。 (b)について、刊行物1記載の発明は、請求人が主張するように中間保存を行うものである。しかし、前記「第5.判断」の「<相違点2について>」で検討したように、刊行物2記載の発明及び技術常識を適用することで、印字済み記録紙を中間保存することなく、記録開始時期を制御することは当業者が容易に想到し得ることであるといえるのだから、刊行物1記載の発明が中間保存を行うものであるからといって、本願発明の前記構成(b)が想到容易でないとまではいえないのである。 さらに、前記(b)に係る本願発明の記載についてみても、「予め指定された頁順で排出部にスタックされ、かつ前記印字速度差から排出部での干渉を防止するように給紙タイミングを制御するように第1印字部または第2印字部における印字開始時期を制御する」ことが特定されているのであって、印字済み記録紙の中間保存を行わないことを特定するものではない。 つまり、前記(b)で特定されているのは、予め指定された頁順で排出部にスタックされるように第1印字部または第2印字部における印字開始時期を制御することと、印字速度差から排出部での干渉を防止するように給紙タイミングを制御するように第1印字部または第2印字部における印字開始時期を制御すること、つまり、結果として「予め指定された頁順で排出部にスタックされ」ることと、「排出部での干渉を防止するように給紙タイミングを制御する」ことを満足するように、第1印字部または第2印字部における印字開始時期を制御することであると解するのが妥当であって、この記載によって印字済み記録紙を中間保存する場合でないことまでは特定しているとはいえない。 したがって、前記(b)については、刊行物1,2及び技術常識から当業者が容易に想到する構成といえるのであるし、そもそも、本願発明は印字済み記録紙を中間保存しないことが特定されていないのであるから、その点で相違するとの請求人の主張は採用できない。 ・印刷完了までの時間を短縮するとの効果について 本願発明は、中間保存を行わないことを特定するものではないが、中間保存処理を行わない場合に請求人が主張する効果(印刷完了までの時間を短縮する効果)が得られるかについて、本願明細書の段落【0035】?【0036】に記載される例(1?4、6頁が高速のモノクロ印字で、5頁が低速のカラー印字を行う例)に関してみてみるに、待ち合わせ処理を行わない本願発明では、4頁目のモノクロ印字後すぐに5ページ目のカラー印字を出力するタイミングで、カラー印字を開始するものである(つまり、3,4頁のモノクロ印字中に5頁のカラー印字を行ってる)のに対して、待ち合わせ処理を行う場合は、刊行物1記載のように2つの印字装置が並行して印字動作を行う限り、1,2頁のモノクロ印字中に5頁のカラー印字を行い、5頁のカラー印字された記録紙の排出を4頁のモノクロ印字後すぐに行うことになるのであって、1?6頁の印字に係る総合的な時間は同等である。 したがって、印刷完了までの時間を短縮するとの効果は不明であると言わざるを得ない。 以上のとおりであるから、請求人の前記主張は採用できるものではない。 そして、本願発明の作用効果も、刊行物1及び2記載の発明及び技術常識から当業者が予測できる程度のものである。 したがって、本願発明は、出願前に頒布された刊行物1及び2記載の発明及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-11-27 |
結審通知日 | 2008-12-02 |
審決日 | 2008-12-15 |
出願番号 | 特願平11-135121 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B41J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 名取 乾治 |
特許庁審判長 |
酒井 進 |
特許庁審判官 |
菅藤 政明 江成 克己 |
発明の名称 | プリントシステム |
代理人 | 杉山 毅至 |
代理人 | 西教 圭一郎 |