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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
管理番号 1192023
審判番号 不服2006-9538  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-11 
確定日 2009-02-05 
事件の表示 平成 9年特許願第273598号「プリンタ制御装置およびその方法並びに記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 7月 7日出願公開、特開平10-181161〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年9月19日(優先権主張:平成8年11月1日)に出願したものであって、平成18年4月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月11日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月12日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。
当審においてこれを審理した結果、平成20年6月6日付けで平成18年6月12日付け手続補正を補正却下するとともに同日付けで拒絶の理由を通知したところ、請求人は同年8月18日付けで意見書及び手続補正書を提出した。
更に、当審で審理し、同年9月2日付けでいわゆる最後の拒絶理由を通知しところ、請求人は同年11月10日付けで意見書を提出した。

2.本願発明
本願の請求項1?9に係る発明は、平成20年8月18日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるものであり、その内、請求項1?3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」、「本願発明3」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】 所定のプリンタにおける印刷のための各種情報を設定するプリンタ制御装置であって、
前記各種情報を複数組に分けて得られる各組毎に、当該組に含まれる各種情報の入力を可能としたデータ入力欄を備える設定用カードを表わす画像データを用意し、前記設定用カードのインデックスを選択する外部からの指令に応じて、これら複数の設定用カードの画像データから1枚の設定用カードの画像データを選択するカード画像選択手段と、
前記複数の設定用カードの画像データの内の前記カード画像選択手段で選択された設定用カードの画像データ以外の他の設定用カードの画像データにおける前記インデックス以外を表示させることなく、前記カード画像選択手段で選択された設定用カードの画像データを、表示装置の表示画面に表示させる表示制御手段と、
を備え、
前記他の設定用カードの画像データは、印刷したい部数を入力するデータ入力欄を少なくとも備える設定用カードの画像データであり、
前記表示制御手段は、
前記他の設定用カードの画像データに備えられるデータ入力欄から入力された情報の内の前記部数を表示するデータ表示欄を、前記表示される設定用カードの画像データ内に設けることにより、前記表示される設定用カードでは入力し得ない前記部数を、前記表示される設定用カードで表示する情報表示付加手段
を備えるプリンタ制御装置。
【請求項2】 所定のプリンタにおける印刷のための各種情報を設定するプリンタ制御装置であって、
前記各種情報を複数組に分けて得られる各組毎に、当該組に含まれる各種情報の入力を可能としたデータ入力欄を備える設定用カードを表わす画像データを用意し、前記設定用カードのインデックスを選択する外部からの指令に応じて、これら複数の設定用カードの画像データから1枚の設定用カードの画像データを選択するカード画像選択手段と、
前記複数の設定用カードの画像データの内の前記カード画像選択手段で選択された設定用カードの画像データ以外の他の設定用カードの画像データにおける前記インデックス以外を表示させることなく、前記カード画像選択手段で選択された設定用カードの画像データを、表示装置の表示画面に表示させる表示制御手段と、
を備え、
前記他の設定用カードの画像データは、印刷部数が複数であるときに印刷順を部単位で印刷するか否かを指定するデータ入力欄を少なくとも備える設定用カードの画像データであり、
前記表示制御手段は、
前記他の設定用カードの画像データに備えられるデータ入力欄から入力された情報の内の前記部単位で印刷するか否かの情報を表示するデータ表示欄を、前記表示される設定用カードの画像データ内に設けることにより、前記表示される設定用カードでは入力し得ない前記部単位で印刷するか否かの情報を、前記表示される設定用カードで表示する情報表示付加手段
を備えるプリンタ制御装置。
【請求項3】 所定のプリンタにおける印刷のための各種情報を設定するプリンタ制御装置であって、
前記各種情報を複数組に分けて得られる各組毎に、当該組に含まれる各種情報の入力を可能としたデータ入力欄を備える設定用カードを表わす画像データを用意し、前記設定用カードのインデックスを選択する外部からの指令に応じて、これら複数の設定用カードの画像データから1枚の設定用カードの画像データを選択するカード画像選択手段と、
前記複数の設定用カードの画像データの内の前記カード画像選択手段で選択された設定用カードの画像データ以外の他の設定用カードの画像データにおける前記インデックス以外を表示させることなく、前記カード画像選択手段で選択された設定用カードの画像データを、表示装置の表示画面に表示させる表示制御手段と、
を備え、
前記他の設定用カードの画像データは、印刷の部単位における印刷順を正順および逆順のうちのいずれにするかを指定するデータ入力欄を少なくとも備える設定用カードの画像データであり、
前記表示制御手段は、
前記他の設定用カードの画像データに備えられるデータ入力欄から入力された情報の内の前記正順および逆順のうちのいずれにするかの情報を表示するデータ表示欄を、前記表示される設定用カードの画像データ内に設けることにより、前記表示される設定用カードでは入力し得ない前記正順および逆順のうちのいずれにするかの情報を、前記表示される設定用カードで表示する情報表示付加手段
を備えるプリンタ制御装置。」

3.引用刊行物
平成20年6月6日付け当審の拒絶の理由に引用され、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である 尾崎公治,「Windows DTPマニュアル」,日刊工業新聞社,1996年7月19日,初版第1刷,111?112ページ(以下、「刊行物」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
ア.「ついで、レイアウト作業に入る。MS-Wordに戻り、新規文章を作成する。[ファイル]-[ページ設定]を選択して、ページレイアウト情報を指定する。ここでは文字数、段組数、余白、用紙サイズなどが設定できるので、縦置き、横書き、用紙サイズA4、段組2段、余白は上下左右20mm均等に設定する。[OK]をクリックすればページレイアウト情報が設定される。」(111ページ下から第3行?112ページ第2行)
イ.「図5.7MS-Wordのページ設定」から、「文字数/行数」、「余白」、「用紙サイズ」、「用紙トレイ」及び「その他」のインデックスが看取でき、「文字数/行数」カードが選択され、「文字数/行数」カードの画像が表示されている状態が看取でき、該カードの画像には、「段組み」、「文字方向」等の情報の入力が可能な欄及び「プレビュー」欄が設けられており、「段組み」欄には、2段組みの情報が入力されることが看取でき、「余白」カードの情報の入力が可能な欄は表示されていないことが看取できる。
ウ.「図5.8MS-Wordのマージン設定」から、「文字数/行数」、「余白」、「用紙サイズ」、「用紙トレイ」及び「その他」のインデックスが看取でき、「余白」カードが選択され、「余白」カードの画像が表示されている状態が看取でき、該カードの画像には、「上」、「下」、「左」、「右」等の情報の入力が可能な欄が設けられており、該カード内に設けられた「プレビュー」欄には、2段組みが目視できるように表示されていることが看取でき、「文字数/行数」カードの情報の入力が可能な欄は表示されていないことが看取できる。

上記刊行物の摘記箇所は、マイクロソフト社のワードプロセッサソフトウエアとして知られているMS-Wordのマニュアルに関するものであるが、その記載内容からマイクロソフト社の基本ソフトウエアであるWindows95(上記刊行物の表紙に「Windows95対応」と記載されている。)及びMS-Wordが搭載されたコンピュータの制御装置を想定できる。
上記イ.、ウ.のように「文字数/行数」カード、「余白」カード等を表すカードの画像が表示されるから、前記コンピュータの制御装置は各カードの画像データを表示させることは明らかである。
上記イ.、ウ.から、ページレイアウト情報が「文字数/行数」、「余白」等の組に分けられ、当該組に含まれる各種情報の入力を可能としたデータ入力欄を備える「文字数/行数」カード、「余白」カード等を表すカード画像データをそれ等のカードのインデックスを選択する外部からの指令に応じて、表示装置の表示画面に表示させる選択及び表示制御手段を前記コンピュータの制御装置が有しているものと認められる。
上記イ.、ウ.から、前記選択及び表示制御手段が「文字数/行数」カードの画像データに備えられる「段組み」欄から入力された2段組みの情報が前記「余白」カードを選択したときに「プレビュー欄」で目視できるように表示されることにより、前記「余白」カードでは入力し得ない前記2段組みの情報を、前記「余白」カードで表示する手段を有しているものと認められ、該手段を情報表示付加手段と称することができる。
よって、上記記載及び図面を含む刊行物全体の記載から、刊行物には、以下の発明が開示されていると認められる。
「文章のページレイアウトのための各種情報を設定するWindows95及びMS-Wordが搭載されたコンピュータの制御装置であって、
前記各種情報を「文字数/行数」、「余白」等の組に分け、当該組に含まれる各種情報の入力を可能としたデータ入力欄を備える「文字数/行数」カード、「余白」カード等を表わす画像データをそれ等のカードのインデックスを選択する外部からの指令に応じて、表示装置の表示画面に表示させるとともに、
選択された「余白」カードの画像データを表示させると、「文字数/行数」カードの画像データにおける入力を可能とした欄は表示させることなく、選択された「余白」カードの画像データを、表示装置の表示画面に表示させる選択及び表示制御手段を備え、
前記「文字数/行数」カードの画像データは、「段組み」、「文字方向」等の情報の入力を可能とした欄及び「プレビュー欄」を備えるものであり、前記「余白」カードの画像データは、「上」、「下」、「左」、「右」等の情報の入力を可能とした欄及び「プレビュー欄」を備えるものであり、
前記選択及び表示制御手段は、
前記「文字数/行数」カードの画像データに備えられる「段組み」欄から入力された2段組みの情報が前記「余白」カードを選択したときに「プレビュー欄」で目視できるように表示されることにより、前記「余白」カードでは入力し得ない前記2段組みの情報を、前記「余白」カードで表示する情報表示付加手段
を備えるWindows95及びMS-Wordが搭載されたコンピュータの制御装置。」(以下、「引用発明」という。)

4.対比・判断
(1)本願発明1について
本願発明1と引用発明とを比較すると、引用発明の「文章のページレイアウトのための各種情報を設定するWindows95及びMS-Wordが搭載されたコンピュータの制御装置」と、本願発明1の「所定のプリンタにおける印刷のための各種情報を設定するプリンタ制御装置」とは、「各種情報を設定する制御装置」の点で共通する。
引用発明の「前記各種情報を「文字数/行数」、「余白」等の組に分け、当該組に含まれる各種情報の入力を可能としたデータ入力欄を備える「文字数/行数」カード、「余白」カード等を表わす画像データをそれ等のカードのインデックスを選択する外部からの指令に応じて、表示装置の表示画面に表示させるとともに、選択された「余白」カードの画像データを表示させると、「文字数/行数」カードの画像データにおける入力を可能とした欄は表示させることなく、選択された「余白」カードの画像データを、表示装置の表示画面に表示させる選択及び表示制御手段」と、本願発明1の「前記各種情報を複数組に分けて得られる各組毎に、当該組に含まれる各種情報の入力を可能としたデータ入力欄を備える設定用カードを表わす画像データを用意し、前記設定用カードのインデックスを選択する外部からの指令に応じて、これら複数の設定用カードの画像データから1枚の設定用カードの画像データを選択するカード画像選択手段と、前記複数の設定用カードの画像データの内の前記カード画像選択手段で選択された設定用カードの画像データ以外の他の設定用カードの画像データにおける前記インデックス以外を表示させることなく、前記カード画像選択手段で選択された設定用カードの画像データを、表示装置の表示画面に表示させる表示制御手段」とは、「前記各種情報を複数組に分け、当該組に含まれる各種情報の入力を可能としたデータ入力欄を備える設定用カードを表わす画像データを前記設定用カードのインデックスを選択する外部からの指令に応じて、選択されたカードの画像データを表示装置の表示画面に表示させるとともに、選択された設定用カードの画像データ以外の他の設定用カードの画像データにおける入力を可能とした欄は表示させることなく、前記カード画像選択手段で選択された設定用カードの画像データを、表示装置の表示画面に表示させる選択及び表示制御手段」の点で共通する。
引用発明の「前記「文字数/行数」カードの画像データは、「段組み」、「文字方向」等の情報の入力を可能とした欄及び「プレビュー欄」を備える」と、本願発明1の「前記他の設定用カードの画像データは、印刷したい部数を入力するデータ入力欄を少なくとも備える」とは、「前記他の設定用カードの画像データは、特定のデータ入力欄を少なくとも備える」の点で共通する。
引用発明の「前記「文字数/行数」カードの画像データに備えられる「段組み」欄から入力された2段組みの情報が前記「余白」カードを選択したときに「プレビュー欄」で目視できるように表示されることにより、前記「余白」カードでは入力し得ない前記2段組みの情報を、前記「余白」カードで表示する情報表示付加手段」と、本願発明1の「前記他の設定用カードの画像データに備えられるデータ入力欄から入力された情報の内の前記部数を表示するデータ表示欄を、前記表示される設定用カードの画像データ内に設けることにより、前記表示される設定用カードでは入力し得ない前記部数を、前記表示される設定用カードで表示する情報表示付加手段」とは、「前記他の設定用カードの画像データに備えられるデータ入力欄から入力された情報の内の前記特定のデータを表示する欄を、前記表示される設定用カードの画像データ内に設けることにより、前記表示される設定用カードでは入力し得ない前記特定のデータを、前記表示される設定用カードで表示する情報表示付加手段」の点で共通する。
よって、両者は、
「各種情報を設定する制御装置であって、
前記各種情報を複数組に分け、当該組に含まれる各種情報の入力を可能としたデータ入力欄を備える設定用カードを表わす画像データを前記設定用カードのインデックスを選択する外部からの指令に応じて、表示装置の表示画面に表示させるとともに、選択された設定用カードの画像データ以外の他の設定用カードの画像データにおける入力を可能とした欄は表示させることなく、前記カード画像選択手段で選択された設定用カードの画像データを、表示装置の表示画面に表示させる選択及び表示制御手段を備え、
前記他の設定用カードの画像データは、特定のデータ入力欄を少なくとも備える設定用カードの画像データであり、
前記表示制御手段は、
前記他の設定用カードの画像データに備えられるデータ入力欄から入力された情報の内の前記特定のデータを表示する欄を、前記表示される設定用カードの画像データ内に設けることにより、前記表示される設定用カードでは入力し得ない前記特定のデータを、前記表示される設定用カードで表示する情報表示付加手段
を備える制御装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]各種情報を設定する制御装置に関し、本願発明1は、「所定のプリンタにおける印刷のための各種情報を設定するプリンタ制御装置」と特定されているのに対し、引用発明は、本願発明1のような特定がない点。
[相違点2]選択及び表示機能を有する制御手段に関し、本願発明1は、「前記各種情報を複数組に分けて得られる各組毎に、当該組に含まれる各種情報の入力を可能としたデータ入力欄を備える設定用カードを表わす画像データを用意し、前記設定用カードのインデックスを選択する外部からの指令に応じて、これら複数の設定用カードの画像データから1枚の設定用カードの画像データを選択するカード画像選択手段と、前記複数の設定用カードの画像データの内の前記カード画像選択手段で選択された設定用カードの画像データ以外の他の設定用カードの画像データにおける前記インデックス以外を表示させることなく、前記カード画像選択手段で選択された設定用カードの画像データを、表示装置の表示画面に表示させる表示制御手段」と特定されているのに対し、引用発明は、「前記各種情報を「文字数/行数」、「余白」等の組に分け、当該組に含まれる各種情報の入力を可能としたデータ入力欄を備える「文字数/行数」カード、「余白」カード等を表わす画像データをそれ等のカードのインデックスを選択する外部からの指令に応じて、表示装置の表示画面に表示させるとともに、選択された「余白」カードの画像データを表示させると、「文字数/行数」カードの画像データにおける入力を可能とした欄は表示させることなく、選択された「余白」カードの画像データを、表示装置の表示画面に表示させる選択及び表示制御手段」であって、本願発明1のような特定がない点。
[相違点3]他の設定用カードの画像データに関し、本願発明1は、「印刷したい部数を入力するデータ入力欄を少なくとも備える」と特定されているのに対し、引用発明は、「「段組み」、「文字方向」等の情報の入力を可能とした欄及び「プレビュー欄」を備える」ものであって、本願発明1のような特定がない点。
[相違点4]情報表示付加手段に関し、本願発明1は、「前記他の設定用カードの画像データに備えられるデータ入力欄から入力された情報の内の前記部数を表示するデータ表示欄を、前記表示される設定用カードの画像データ内に設けることにより、前記表示される設定用カードでは入力し得ない前記部数を、前記表示される設定用カードで表示する」と特定されているのに対し、引用発明は、本願発明1のような特定がない点。

上記相違点1について検討する。
コンピュータにはプリンタが接続されることが一般的であり、プリンタを接続すると、接続されるプリンタにおける印刷のための多数の情報をコンピュータの制御装置で設定しなければならない。引用発明は、多数の情報を設定するためのコンピュータの制御装置であるから、引用発明を所定のプリンタにおける印刷のための各種情報を設定するプリンタ制御装置とすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。

上記相違点2について検討する。
本願発明1は、「各組毎に・・・設定用カードを表わす画像データを用意し・・・これら複数の設定用カードの画像データから1枚の設定用カードの画像データを選択するカード画像選択手段と、・・・表示制御手段」と特定されているので、この点について検討する。
引用発明は、「文字数/行数」カード、「余白」カード等の設定用カードのインデックスが選択されるものではあるが、分けられた情報毎に複数の画像データが用意され、用意された画像データから1枚の設定用カードの画像データを選択するものであるか否か明らかでない。
しかしながら、コンピュータの技術分野において、複数のデータを用意しておき、用意されたデータから1つのデータを選択することは、例示するまでもなく周知技術であるから、引用発明に該周知技術を適用し、該選択機能を司る部分をカード画像選択手段と称し、表示機能を司る部分を表示制御手段と称することは当業者が容易になし得る程度のことである。
本願発明1の「選択された設定用カードの画像データ以外の他の設定用カードの画像データにおける前記インデックス以外を表示させることなく」が、インデックス以外の部分において、一部分同じ表示をすることを許容しているのか否か必ずしも明らかではなく、本願明細書の発明の詳細な説明の項にも、明示的記載はない。前記記載が、インデックス以外の部分において、一部分同じ表示をすることを許容しているものと解すると、引用文献の「図5.7MS-Wordのページ設定」、「図5.8MS-Wordのマージン設定」のいずれにも記載されている「プレビュー」欄は、同じ表示である蓋然性が高いので、インデックス以外の部分において、一部分同じ表示をすることを許容することは、当業者が容易になし得る程度のことである。
本願発明1の前記記載が、インデックス以外の部分において、一部分同じ表示をすることを許容していないものと解したとしても、カード内の表現をどのようにするかは必要に応じ適宜変更し得るものであり、同様の内容を異なる表現で表示することは設計事項に過ぎない。
よって、上記相違点2のような構成は、当業者が容易になし得る程度のことである。

上記相違点3、4について検討する。
引用発明は、文章のページレイアウトのための各種情報を設定するものであって、「段組み」情報は、文章のページレイアウトの情報を設定する設定者が把握することが好ましい情報であって、「段組み」を入力する「段組み」欄を備える「文字数/行数」カードで設定され、「段組み」を入力する「段組み」欄を表示せず、他の情報を設定する「余白」カードでもその情報が「プレビュー欄」で目視できるように表示されるものであるから、「余白」カードでの入力の際に確認のためにいちいちカードを切り換える必要をなくしているものである。
引用発明を所定のプリンタにおける印刷のための各種情報を設定するプリンタ制御装置とする点に関しては、既に相違点1で検討しており、印刷したい部数は、誤って入力されると誤印刷が発生するから、プリンタにおける印刷の設定のための情報として、設定者が把握することが好ましい情報の1つであって、引用発明と同様、印刷したい部数を入力するデータ入力欄を備えるカードで印刷したい部数を設定し、印刷したい部数を入力するデータ入力欄を表示せず、他の情報を設定する設定用カードでもその情報が設定者に理解できるように欄で表示することは、当業者が容易になし得る程度のことである。
本願発明1の「部数を表示するデータ表示欄」が、特定の形式で表示することを意味しているか否か必ずしも明らかではないが、表示形式をどのようにするかは、必要に応じ適宜選択し得る設計事項に過ぎない。
よって、上記相違点3、4のような構成は、当業者が容易になし得る程度のことである。

そして、本願発明1の作用効果も、刊行物記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

(2)本願発明2について
本願発明2と引用発明とを比較すると、前記「(1)本願発明1について」で検討した[相違点1]、[相違点2]と、[相違点3]、[相違点4]に代え、下記の点で相違する。
[相違点3’]他の設定用カードの画像データに関し、本願発明2は、「印刷部数が複数であるときに印刷順を部単位で印刷するか否かを指定するデータ入力欄を少なくとも備える」と特定されているのに対し、引用発明は、「「段組み」、「文字方向」等の情報の入力を可能とした欄及び「プレビュー欄」を備える」ものであって、本願発明2のような特定がない点。
[相違点4’]情報表示付加手段に関し、本願発明2は、「前記他の設定用カードの画像データに備えられるデータ入力欄から入力された情報の内の前記部単位で印刷するか否かの情報を表示するデータ表示欄を、前記表示される設定用カードの画像データ内に設けることにより、前記表示される設定用カードでは入力し得ない前記部単位で印刷するか否かの情報を、前記表示される設定用カードで表示する」と特定されているのに対し、引用発明は、本願発明2のような特定がない点。

上記相違点1、2については、前述したとおりである。
上記相違点3’、4’について検討する。
引用発明は、文章のページレイアウトのための各種情報を設定するものであって、「段組み」情報は、文章のページレイアウトの情報を設定する設定者が把握することが好ましい情報であって、「段組み」を入力する「段組み」欄を備える「文字数/行数」カードで設定され、「段組み」を入力する「段組み」欄を表示せず、他の情報を設定する「余白」カードでもその情報が「プレビュー欄」で目視できるように表示されるものであるから、「余白」カードでの入力の際に確認のためにいちいちカードを切り換える必要をなくしているものである。
引用発明を所定のプリンタにおける印刷のための各種情報を設定するプリンタ制御装置とする点に関しては、既に相違点1で検討しており、印刷部数が複数であるときに印刷順を部単位で印刷するか否かは、誤って入力されると誤った組み合わせとなる印刷物が発生するから、プリンタにおける印刷の設定のための情報として、設定者が把握することが好ましい情報の1つであって、引用発明と同様、印刷部数が複数であるときに印刷順を部単位で印刷するか否かを指定するデータ入力欄を備えるカードで、印刷部数が複数であるときに印刷順を部単位で印刷するか否かを指定し、印刷部数が複数であるときに印刷順を部単位で印刷するか否かを指定するデータ入力欄を表示せず、他の情報を設定する設定用カードでもその情報が設定者に理解できるように欄で表示することは、当業者が容易になし得る程度のことである。
本願発明2の「部単位で印刷するか否かの情報を表示するデータ表示欄」が、特定の形式で表示することを意味しているか否か必ずしも明らかではないが、表示形式をどのようにするかは、必要に応じ適宜選択し得る設計事項に過ぎない。
よって、上記相違点3’、4’のような構成は、当業者が容易になし得る程度のことである。

そして、本願発明2の作用効果も、刊行物記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

(3)本願発明3について
本願発明3と引用発明とを比較すると、前記「(1)本願発明1について」で検討した[相違点1]、[相違点2]と、[相違点3]、[相違点4]に代え、下記の点で相違する。
[相違点3’’]他の設定用カードの画像データに関し、本願発明3は、「印刷の部単位における印刷順を正順および逆順のうちのいずれにするかを指定するデータ入力欄を少なくとも備える」と特定されているのに対し、引用発明は、「「段組み」、「文字方向」等の情報の入力を可能とした欄及び「プレビュー欄」を備える」ものであって、本願発明3のような特定がない点。
[相違点4’’]情報表示付加手段に関し、本願発明3は、「前記他の設定用カードの画像データに備えられるデータ入力欄から入力された情報の内の前記正順および逆順のうちのいずれにするかの情報を表示するデータ表示欄を、前記表示される設定用カードの画像データ内に設けることにより、前記表示される設定用カードでは入力し得ない前記正順および逆順のうちのいずれにするかの情報を、前記表示される設定用カードで表示する」と特定されているのに対し、引用発明は、本願発明2のような特定がない点。

上記相違点1、2については、前述したとおりである。
上記相違点3’’、4’’について検討する。
引用発明は、文章のページレイアウトのための各種情報を設定するものであって、「段組み」情報は、文章のページレイアウトの情報を設定する設定者が把握することが好ましい情報であって、「段組み」を入力する「段組み」欄を備える「文字数/行数」カードで設定され、「段組み」を入力する「段組み」欄を表示せず、他の情報を設定する「余白」カードでもその情報が「プレビュー欄」で目視できるように表示されるものであるから、「余白」カードでの入力の際に確認のためにいちいちカードを切り換える必要をなくしているものである。
引用発明を所定のプリンタにおける印刷のための各種情報を設定するプリンタ制御装置とする点に関しては、既に相違点1で検討しており、印刷の部単位における印刷順を正順および逆順のうちのいずれにするかは、誤って入力されると誤った順序の印刷物が発生するから、プリンタにおける印刷の設定のための情報として、設定者が把握することが好ましい情報の1つであって、引用発明と同様、印刷の部単位における印刷順を正順および逆順のうちのいずれにするかを指定するデータ入力欄を備えるカードで印刷の部単位における印刷順を正順および逆順のうちのいずれにするかを指定し、印刷の部単位における印刷順を正順および逆順のうちのいずれにするかを指定するデータ入力欄を表示せず、他の情報を設定する設定用カードでもその情報が設定者に理解できるように欄で表示することは、当業者が容易になし得る程度のことである。
本願発明3の「正順および逆順のうちのいずれにするかの情報を表示するデータ表示欄」が、特定の形式で表示することを意味しているか否か必ずしも明らかではないが、表示形式をどのようにするかは、必要に応じ適宜選択し得る設計事項に過ぎない。
よって、上記相違点3’’、4’’のような構成は、当業者が容易になし得る程度のことである。

そして、本願発明3の作用効果も、刊行物記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明1?3は、本願出願前に頒布された刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-01 
結審通知日 2008-12-02 
審決日 2008-12-15 
出願番号 特願平9-273598
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 湯本 照基  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 坂田 誠
江成 克己
発明の名称 プリンタ制御装置およびその方法並びに記録媒体  
代理人 特許業務法人明成国際特許事務所  

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