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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1192029
審判番号 不服2006-13784  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-29 
確定日 2009-02-05 
事件の表示 特願2004- 22551「電話装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月24日出願公開、特開2004-180336〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成8年3月22日に出願した特願平8-93527号の一部を,平成16年1月30日に新たな特許出願としたものであって,平成18年2月28日付けの拒絶理由通知に対して同年5月8日付けで手続補正がなされたところ,同年5月26日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年6月29日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同年7月31日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成18年7月31日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年7月31日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により,平成18年5月8日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1は,
「相手先からの着信に応答し,所定の応答メッセージの送出後,相手先からの音声メッセージを記憶する電話装置において,
呼出音を発生出力する呼出音発生部と,
着信の旨を示す着信情報,及び,応答メッセージを送出中である旨を示す応答情報を文字情報として表示出力する表示部と,
通話操作を行うための操作部と,
相手先からの音声メッセージを記憶する半導体メモリと,
着信を検出した場合に,所定期間呼出音を発生出力させた後,応答メッセージを送出するとともに,前記操作部による通話操作を監視する制御部とを備え,
前記所定期間中に前記着信情報を表示出力させるとともに,前記応答メッセージの送出期間中に前記応答情報を表示出力させる一方,前記応答情報の表示出力中に前記通話操作が行われた場合に通話処理に移行し,音声メッセージの記憶を実行しないことを特徴とする電話装置。」(以下,「補正後発明」という。)と補正された。
下線部は,実質的な補正箇所であるが,本件補正によれば,補正後の請求項1は,補正前の請求項1中の表示出力される「応答情報」の内容を「文字情報」である旨の構成を付加したものであるが,この付加された構成は,請求人が審判請求書で述べているように,本願の当初明細書に開示された事項であり,しかも,当該構成が付加されることによって,発明がさらに限定されたものということができるから,本件補正は,特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで,本件補正後の請求項1に係る発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用発明
原審の拒絶の理由に引用された,本件出願前公知の刊行物である特開平7-297902号公報(以下,「引用文献」という。)には,以下の(ア)?(ウ)が記載されている。
(ア)「【0003】ところで,従来からの留守番電話機では,留守録モードにセットされている状態にて着信があった場合は,自動的に応答メッセージが再生されるようになっており,応答メッセージの再生中に送受話器をオフフックした場合には,直ちに応答メッセージの再生が中断されて通話モードに移行するようになっている。図4は,従来の留守番電話機の制御動作を示すフローチャートである。ステップS41は,着信を待つ留守待機時における処理である。ここで,留守録モードにセットされている場合(S42においてYesの場合)には,着信があった時に鳴動させるリンガー回数の設定を行う(S43)。次に,リンガーが所定の回数鳴動したことを確認した場合(S44においてYesの場合)には,回線接続の処理を行う(S45)。続いて,応答メッセージの再生を開始して,発呼先へ送信する(S46)。
【0004】応答メッセージの再生中は,送受話器がオフフックされたか否かを検出して(S47),オフフックされていない場合(S47においてNoの場合)には,応答メッセージの終了を待って(S48においてYesの場合),留守録音を開始する(S49)。なお,応答メッセージが終了していない場合(S48においてNoの場合)には,ステップS47の処理へ戻る。」(第2頁第1?2欄)
(イ)「【0006】また,ステップS47においてYesの場合,即ち,応答メッセージの再生中に送受話器がオフフックされたことを検出した場合には,一旦,応答メッセージの再生を中断して(S61),送受話器を回線に接続し(S62),通話モードに移行する。・・・」(第2頁第2欄)。
(ウ)「【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところが,上述した従来の留守番電話機の制御では,応答メッセージの再生中に送受話器をオフフックした場合には,直ちに通話モードに移行するので,応答メッセージは中断されて尻切れ状態になってしまう。このため,次の会話がスムースにつながらず,どうしても不自然さが生じてしまうことは否定できない。特に,あわてて帰宅した場合には,余裕を持って会話には入ることができない。」(第2頁第2欄)。
(エ)「【0013】
【実施例】
以下,本発明の一実施例を,図面に従って具体的に説明する。・・・・
・・・並びに電話をかけてきた人の用件メッセージを録音するために・・・・・
・・・用件メッセージ記憶部9の3つの記憶部(図中,破線で囲んで示す)と・・・・・・。
【0014】なお,上記3つの記憶部については,音声信号を音声メモリとして格納するICメモリが使用されるが,従来のように,テープ式の録音装置を制御部1で制御するように構成してもかまわない。・・・」(第3頁第3?4欄)

上記摘記事項(ア)中の「応答メッセージの再生を開始して,発呼先へ送信する(S46)」との記載によれば,「応答メッセージ」は送出されており,
同(エ)中の「ICメモリ」が半導体メモリであることは自明であるから,同(ア)中の「留守録音を開始する(S49)」との記載及び同(エ)の記載によれば,相手先からの音声メッセージは半導体メモリに記憶されており,
同(ア)中のリンガーによる「鳴動」は呼出音であり,
同(ア)中の「回線接続の処理を行う(S45)」によれば,当然の結果として,呼出音は停止し,
同(イ)の記載によれば,オフフックを監視する制御部が存在することは自明であり, 同(イ)中の「通話モード」では,当然,通話処理がなされており,しかも,この「通話モード」では,発呼側と着呼側で通常の通話がなされているのであり,また,図4のS62,S63,S52にもそのことが示されているから,この「通話モード」では留守録は当然実行されていない。

したがって,これらの記載事項および当該分野の技術常識を加味すれば,引用文献には,「相手先からの着信に応答し,所定の応答メッセージの送出後,相手先からの音声メッセージを記憶する留守番電話機において,
呼出音を発生出力するリンガーと,
相手先からの音声メッセージを記憶する半導体メモリと,
通話処理に移行するために送受話器をオフフックし,
着信を検出した場合に,所定回数呼出音を出力させた後,応答メッセージを送出すると共に,前記オフフックを監視する制御部とを備え,
前記応答メッセージの送出期間中に前記オフフックが検出されると通話処理に移行し,音声メッセージの記憶を実行しない留守番電話装置。」(以下,「引用発明」という。)が記載されているということができる。

(3)対比
そこで,補正後発明と引用発明とを比較する。
引用発明中の「留守番電話機」は電話装置の一種であり,引用発明中の「リンガー」は呼出音発生部である。また,送受話器を電話機本体から持ち上げて,通話処理を行うための入力操作を,オフフックというのであるから,送話器は,通話処理を行うための入力操作がされる操作部ということができる。また,呼出音を,所定回数出力することと所定期間出力することは,一方が決まれば他方も自動的に決まるものであるから,実質的に差異はない。 また,補正後発明において,「応答メッセージの送出期間中に前記応答情報を表示出力」するから,「応答メッセージの送出期間中」と「応答情報の表示出力中」とは実体としての期間は同じである。
したがって,両者は,
「相手先からの着信に応答し,所定の応答メッセージの送出後,相手先からの音声メッセージを記憶する電話装置において,
呼出音を発生出力する呼出音発生部と,
通話操作を行うための操作部と,
相手先からの音声メッセージを記憶する半導体メモリと,
着信を検出した場合に,所定期間呼出音を発生出力させた後,応答メッセージを送出すると共に,前記操作部による操作を監視する制御部とを備え, 前記応答メッセージの送出期間中に,前記通話操作が行われた場合に通話処理に移行し,音声メッセージの記憶を実行しない電話装置。」の点で一致し,次の点で相違する。
(相違点)
補正後発明には,「着信の旨を示す着信情報,及び,応答メッセージを送出中である旨を示す応答情報を文字情報として表示出力する表示部」が備わっていて,「前記所定期間中に前記着信情報を表示出力させる」とともに,応答メッセージの送出期間中に「前記応答情報を表示出力させ」ているのが,引用発明には,着信情報の表示及び応答情報の表示に係る構成がない。

(4)判断
そこで,上記相違点について検討する。
一般に,機器の動作状態を,表示部で利用者に詳細に知らせることは,極めて普通に行われている周知技術であり,対象となる装置を電話装置に限定しても,例えば,特開平5-300217号公報の段落【0035】,特開平2-159859号公報の1頁右下欄4?10行,特開平3-198560号公報の2頁右上欄1?6行等に記載されているように周知技術にすぎず,着信情報の表示に限っても,原審の拒絶の理由に引用された特開平2-218256号公報の4頁左下欄2?3行,前掲特開平2-159859号公報の1頁右下欄4?10行,特開平4-68745号公報の6頁左上欄10?15行等,周知技術である。また,留守番電話等の電話装置において,応答メッセージを送出中であるかの確認をしたいとの技術課題自体も,例えば,特開平5-227287号公報の段落【0011】,原審の拒絶の理由に引用された前記特開平2-218256号公報の5頁左上欄9?19行(LEDの点灯),前掲特開平5-300217号公報の段落【0035】に開示されているように周知であるから,「応答メッセージを送出中である旨を示す応答情報」を表示出力する点についても,周知技術の設計的付加の域を出ない。
更に,電話装置における各種状態を文字情報として表示出力することも,前掲特開平5-300217号公報,特開平2-159859号公報,特開平3-198560号公報等により明らかなように,これも周知技術にすぎない。
以上とおりであるから,引用発明において,「着信の旨を示す着信情報,及び,応答メッセージを送出中である旨を示す応答情報を文字情報として表示出力する表示部」を備え,「前記所定期間中に前記着信情報を表示出力させる」とともに,応答メッセージの送出期間中に「前記応答情報を表示出力させ」ることは,周知技術の設計的付加,変更の域を出ず,当業者が容易になし得ることである。
そして,上記相違点に係る変更によって格別な作用・効果を奏するに至ったともいえない。

(5)むすび
したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)平成18年7月31日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,平成18年5月8日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される
「相手先からの着信に応答し,所定の応答メッセージの送出後,相手先からの音声メッセージを記憶する電話装置において,
呼出音を発生出力する呼出音発生部と,
着信の旨を示す着信情報,及び,応答メッセージを送出中である旨を示す応答情報を表示出力する表示部と,
通話操作を行うための操作部と,
相手先からの音声メッセージを記憶する半導体メモリと,
着信を検出した場合に,所定期間呼出音を発生出力させた後,応答メッセージを送出するとともに,前記操作部による通話操作を監視する制御部とを備え,
前記所定期間中に前記着信情報を表示出力させるとともに,前記応答メッセージの送出期間中に前記応答情報を表示出力させる一方,前記応答情報の表示出力中に前記通話操作が行われた場合に通話処理に移行し,音声メッセージの記憶を実行しないことを特徴とする電話装置。」(以下,「本願発明」という。)である。

(2)引用発明
原審の拒絶の理由に引用された刊行物,及び,その記載事項は,前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は,前記「2.(1)」で検討したように,「表示出力」に関して,補正後発明から「文字情報として」との構成を削除したものということができる。したがって,本願発明の構成要件にさらに限定要件である前記構成を付加したものに相当する補正後発明が,前記「2.(4)」に記載したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである以上,本願発明も,同様の理由により,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
そして,本願発明に関する作用・効果も,引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

4.むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-21 
結審通知日 2008-11-25 
審決日 2008-12-10 
出願番号 特願2004-22551(P2004-22551)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04M)
P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲葉 和生  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 萩原 義則
石井 研一
発明の名称 電話装置  
代理人 有我 軍一郎  

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