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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07B
審判 査定不服 出願日、優先日、請求日 特許、登録しない。 C07B
管理番号 1192032
審判番号 不服2006-15046  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-07-13 
確定日 2009-02-05 
事件の表示 特願2005-231243「有機ハロゲン化合物の分解処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年2月23日出願公開、特開2006-52221〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年8月10日に出願した特願2004-233799号(以下、「原出願」という。)の一部を平成17年8月9日に新たな特許出願(特願2005-231243号、以下、「本願」という。)としたものであって、以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。

平成18年1月10日付け 拒絶理由通知
平成18年2月22日 意見書・上申書
平成18年3月17日付け 拒絶理由通知
平成18年5月22日 意見書
平成18年6月8日付け 拒絶査定
平成18年7月13日 審判請求書
平成18年9月28日 手続補正書(審判請求書)

第2 本願発明について
本願の請求項に係る発明は、本願明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される下記のものである。(以下、順に、「本願発明1」?「本願発明5」といい、併せて「本願発明」という。)
【請求項1】「40℃における動粘度が5?15mm^(2)/sであって、ASTM D 2007に規定されるクレーゲル分析による極性物質が0.15質量%以下の鉱油からなる反応希釈油、及び40℃における動粘度が5?15mm^(2)/sであって、ASTM D 2007に規定されるクレーゲル分析による極性物質が0.15質量%以下の鉱油からなるアルカリ金属分散油を用いて有機ハロゲン化合物の分解反応を行う有機ハロゲン化合物の分解処理方法。」
【請求項2】「反応希釈油及びアルカリ金属分散油として、同一の鉱油を使用する請求項1に記載の有機ハロゲン化合物の分解処理方法。」
【請求項3】「反応希釈油およびアルカリ金属分散油の硫黄分が200質量ppm以下である請求項1又は2に記載の有機ハロゲン化合物の分解処理方法。」
【請求項4】「反応希釈油およびアルカリ金属分散油の芳香族分が20質量%以下である請求項1?3のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物の分解処理方法。」
【請求項5】「反応希釈油およびアルカリ金属分散油の窒素分が10質量ppm以下である請求項1?4のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物の分解処理方法。」

第3 原査定の拒絶の理由の概要
本願発明についての原査定の拒絶の理由は、以下のとおりである。
「この出願については、平成18年 3月17日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものである。
なお、意見書の内容を検討したが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせない。

備考
…(略)…
しかしながら、先の刊行物1には、本願請求項1に記載された動粘度、極性物質の含有量を有する電気絶縁油が具体的に記載されているから(実施例1?4)、油自体の性状が異なるとはいえない。また、先の刊行物3には、電気絶縁油は硫黄分、-OH基、-O-基等を含むためアルカリ金属と反応し、アルカリ金属を消費したり、電気絶縁油が極性基を有するため、アルカリ金属を浪費するという問題を有している等と記載されており、これらの記載からみて、当該刊行物には、有機ハロゲン化合物の分解に用いる電気絶縁油中に存在する極性基は少ないことが望ましいことが示されているといえるから、極性基が少ないことが明らかな刊行物1に記載の電気絶縁油を有機ハロゲン化合物の分解処理方法に適用することは当業者が容易に行うことである。
…(略)…
しかしながら、上述のように刊行物3には、電気絶縁油が極性基を有するため、アルカリ金属を浪費するという問題がある旨が記載されており、該極性基を有する物質は極性物質全般を指すと認められるから、クレーゲル分析による極性物質も当然にこれに包含されるといえ、包含されないと結論づける特段の理由もないので、引用文献3に記載された-OH基等を有する成分、極性基を有する物質が本願発明でいう極性物質と異なるとはいえない。また、硫黄分含有量に関する平成18年2月22日付け意見書における試験結果は、硫黄分の量が極性物質全体の量に比べてごく僅かの量であり、単に極性物質の量の違いによる温度上昇安定性が確認できるに過ぎないから、かかる試験結果によって、上記判断は左右されない。
請求項2?5に係る発明についても同様である。
以上のとおりであるから、上記出願人の主張は採用できない。」

第4 当審の判断
1 分割要件について
本願が原出願との関係において特許法第44条第1項に規定する特許出願の分割の要件を満たしているか否か、つまり本願発明が原出願当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであるか否かについてまず判断する。

(1)原出願当初明細書に記載された事項
ア「すなわち、本発明は、
〔1〕40℃における動粘度が5?15mm^(2)/sであって、ASTM D 2007に規定されるクレーゲル分析による極性物質が0.15質量%以下の鉱油からなる有機ハロゲン化合物の分解処理における反応希釈油、
〔2〕硫黄分が200質量ppm以下である前記〔1〕に記載の有機ハロゲン化合物の分解処理における反応希釈油、
〔3〕芳香族分が20質量%以下である前記〔1〕又は〔2〕に記載の有機ハロゲン化合物の分解処理における反応希釈油、
〔4〕窒素分が10質量ppm以下である前記〔1〕?〔3〕のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物の分解処理における反応希釈油、
〔5〕40℃における動粘度が5?15mm^(2)/sであって、ASTM D 2007に規定されるクレーゲル分析による極性物質が0.15質量%以下の鉱油からなる有機ハロゲン化合物の分解処理におけるアルカリ金属分散油、
〔6〕硫黄分が200質量ppm以下である前記〔5〕に記載の有機ハロゲン化合物の分解処理におけるアルカリ金属分散油、
〔7〕芳香族分が20質量%以下である前記〔5〕又は〔6〕に記載の有機ハロゲン化合物の分解処理におけるアルカリ金属分散油、
〔8〕窒素分が10質量ppm以下である前記〔5〕?〔7〕のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物の分解処理における反応希釈油及びアルカリ金属分散油、及び
〔9〕前記〔1〕?〔4〕のいずれかに記載の反応希釈油及び前記〔5〕?〔8〕のいずれかに記載のアルカリ金属分散油分散油を用いて有機ハロゲン化合物の分解反応を行う有機ハロゲン化合物の分解処理方法、
を提供するものである。」(【0006】)

(2)分割要件の適否についての判断
原出願当初明細書には、「〔1〕?〔4〕のいずれかに記載の反応希釈油及び前記〔5〕?〔8〕のいずれかに記載のアルカリ金属分散油分散油を用いて有機ハロゲン化合物の分解反応を行う有機ハロゲン化合物の分解処理方法」が記載されており(摘記アの〔9〕参照)、〔1〕?〔4〕のいずれかに記載の反応希釈油及び〔5〕?〔8〕のいずれかに記載のアルカリ金属分散油として、以下のものが記載されている。
「〔1〕40℃における動粘度が5?15mm^(2)/sであって、ASTM D 2007に規定されるクレーゲル分析による極性物質が0.15質量%以下の鉱油からなる有機ハロゲン化合物の分解処理における反応希釈油、
〔2〕硫黄分が200質量ppm以下である前記〔1〕に記載の有機ハロゲン化合物の分解処理における反応希釈油、
〔3〕芳香族分が20質量%以下である前記〔1〕又は〔2〕に記載の有機ハロゲン化合物の分解処理における反応希釈油、
〔4〕窒素分が10質量ppm以下である前記〔1〕?〔3〕のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物の分解処理における反応希釈油、
〔5〕40℃における動粘度が5?15mm^(2)/sであって、ASTM D 2007に規定されるクレーゲル分析による極性物質が0.15質量%以下の鉱油からなる有機ハロゲン化合物の分解処理におけるアルカリ金属分散油、
〔6〕硫黄分が200質量ppm以下である前記〔5〕に記載の有機ハロゲン化合物の分解処理におけるアルカリ金属分散油、
〔7〕芳香族分が20質量%以下である前記〔5〕又は〔6〕に記載の有機ハロゲン化合物の分解処理におけるアルカリ金属分散油、
〔8〕窒素分が10質量ppm以下である前記〔5〕?〔7〕のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物の分解処理におけるアルカリ金属分散油」(摘記アの〔1〕?〔8〕参照)

(3)まとめ
以上のことから、本願発明は、原出願当初明細書に記載した事項の範囲内のものであるから、本願は分割出願の要件を満たしており、適法に原出願の一部を新たな特許出願としたものとは認められ、出願日の遡及も認められる。
したがって、本願は、原出願の出願時にしたものであるから、平成16年8月10日がその出願日とされるものである。

第5 当審の判断
1 刊行物
特開2003-286201号公報(以下、「刊行物1」という。原査定の刊行物3。)
特開2002-260445号公報(以下、「刊行物2」という。原査定の刊行物1。)

2 刊行物に記載された事項
(1)刊行物1について
1-a「【請求項1】 有機溶媒中で有機ハロゲン化合物をアルカリ金属と反応させる反応工程(2)を備えた有機ハロゲン化合物の無害化処理方法であって、
前記有機溶媒として、炭素数9?13のパラフィンを使用することを特徴とする有機ハロゲン化合物の無害化処理方法。
【請求項2】 前記パラフィンがノルマルパラフィンである請求項1記載の有機ハロゲン化合物の無害化処理方法。」(【特許請求の範囲】)

1-b「【従来の技術】ポリ塩化ビフェニル(以下、「PCB」という場合がある。)、ダイオキシン類等の有機ハロゲン化合物は、環境汚染物質として知られており、近年、これらの有機ハロゲン化合物を如何に処理するかが問題となっている。特に、PCBは、非常に化学的に安定しており分解され難く、しかも、絶縁性(電気抵抗)が高いことから、従前においてはトランスやコンデンサー等の絶縁材料や熱媒体等に頻繁に用いられていたため、従前から使用されていたものに対して如何に処理するかが重大な問題となっている。」(【0002】)

1-c「そして、従来、この種の有機ハロゲン化合物の無害化処理方法としては、有機ハロゲン化合物とアルカリ金属とを反応させる反応工程を備えた方法が採用されている。この方法によれば、反応工程により、有機ハロゲン化合物は、アルカリ金属により脱ハロゲン化され、無害化される。ところで、この方法においては、有機ハロゲン化合物をそのまま反応させると、反応後の脱ハロゲン化物同士が重合することにより、タール状重合物を生成し、高粘度となって反応を円滑に行えなくなる。従って、このような事態の発生を抑制すべく、有機ハロゲン化合物に対して相溶性(即ち、有機ハロゲン化合物を溶解又は分散させうる性質)を有する有機溶媒で有機ハロゲン化合物を希釈して有機ハロゲン化合物を有機溶媒中に存在させる希釈工程を反応工程の前に予め行うこと等により、反応工程において、有機溶媒中で有機ハロゲン化合物とアルカリ金属とを反応させている。」(【0003】)

1-d「そして、従来、前記有機溶媒としては、人体に対して安全性が高いことから電気絶縁油(JIS C2320-1993の鉱油、特に同1種の鉱油)を使用し、有機ハロゲン化合物の無害化処理を行っている。」(【0004】)

1-e「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、有機溶媒として電気絶縁油を用いた上記従来の方法は、電気絶縁油が硫黄分や不飽和結合、-OH基、-O-基を有する成分を含むため、電気絶縁油がアルカリ金属と反応し、アルカリ金属を消費したり、また、電気絶縁油が極性基を有するため、極性基が空気中の水分を取り込み、この水分がアルカリ金属を消費したりすることから、反応工程において多くのアルカリ金属を浪費とするという問題を有している。そして、このアルカリ金属が高価であるため、その消費量低減が強く求められている。また、上記従来の方法は、電気絶縁油が不飽和結合を有するため、電気絶縁油同士が重合したり、有機ハロゲン化合物の脱ハロゲン化物と重合したりすることがあり得、有機溶媒たる電気絶縁油が高粘度のタール状重合物の生成原料となるという問題を有している。更に、電気絶縁油の粘度が比較的高いため、反応工程に於ける有機ハロゲン化合物とアルカリ金属との反応に時間がかかったり、反応に多量のアルカリ金属を必要とする等、有機ハロゲン化合物とアルカリ金属との反応性が悪く、しかも、この反応によって放出された反応熱を速やかに放出できず、反応工程に於ける温度制御が煩雑であるという問題をも有している。」(【0005】)

1-f「そこで、上記従来の問題点に鑑み、本発明は、有機溶媒中で有機ハロゲン化合物とアルカリ金属とを反応させる反応工程を備えた有機ハロゲン化合物の無害化処理方法及びそのシステムであって、人体に対して安全性の高い有機溶媒を用いつつも、反応工程においてアルカリ金属量が浪費される虞を低減でき、有機溶媒がタール状重合物の生成原料となる虞も少なく、しかも、有機ハロゲン化合物とアルカリ金属との反応性が良好で、反応工程に於ける温度制御の簡便な有機ハロゲン化合物の無害化処理方法及びそのシステムを提供することを課題とする。」(【0006】)

1-g「斯かる方法に於いては、有機溶媒として使用する炭素数9?13のパラフィンが、デカリン等に比して人体に対する安全性が非常に高いと言う利点を有している。そして、斯かる方法によれば、炭素数9?13のパラフィンが有機ハロゲン化合物に対して相溶性を有することから、該パラフィン中で有機ハロゲン化合物とアルカリ金属とを反応させることができる。即ち、該パラフィンを用いて、反応工程を実施することができる。この際、パラフィンが不飽和結合やアルカリ金属と反応する硫黄分や-OH基、-O-基を有さず安定であることから、アルカリ金属を消費する虞も少なく、しかも、パラフィンが極性を有さないため、水との相溶性も殆どなく空気中の水を取り込む虞も殆どないことから、水によってアルカリ金属が消費される虞も殆どなく、反応工程においてアルカリ金属量が浪費される虞を低減することができる。また、パラフィン同士が重合したり、有機ハロゲン化合物の脱ハロゲン化物と重合したりする虞が低減され、有機溶媒がタール状重合物の生成原料となる虞も低減される。さらに、炭素数9?13のパラフィンが、従来の電気絶縁油よりも低粘度であるため、反応時に於けるアルカリ金属が該パラフィン中で良好に分散し、有機ハロゲン化合物とアルカリ金属との反応を短時間にできたり、反応に必要なアルカリ金属量を低減できる等、これらの反応性が良好となる。例えば、従来の電気絶縁油を用いた場合に、反応させるために化学当量よりも3倍以上必要とされていたアルカリ金属量を、2.4?2.8倍程度に低減することもできる。しかも、電気絶縁油よりも低粘度であるが故、反応熱を速やかに放出し易く、反応工程に於ける温度制御も簡便となる。尚、反応工程における反応温度は、通常、120℃程度とされるが、用いるパラフィンは、炭素数9以上であることから、沸点は150.8℃以上となり、有機溶媒が沸騰する虞も殆どなく、安全に反応工程を行うことができる。」(【0008】)

1-h「本発明における有機ハロゲン化合物としては、例えば、PCB、ダイオキシン類、ハロゲンを有するジベンゾフラン類、ポリ塩化ベンゼン、塩化メチレン或いはこれらに含まれる塩素原子が臭素原子に置換された臭素化物等の有害な有機ハロゲン化合物を挙げることができる。また、アルカリ金属としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム等を挙げることができ、中でも反応速度、取扱いの容易さからナトリウムが好ましい。これらは通常、分散媒に分散されたアルカリ金属分散体の状態で使用される。尚、アルカリ金属分散体の分散媒としては、従来周知のものを使用できる。但し、前記有機溶媒と同種のものが好ましい。斯かる分散媒であれば、反応工程の後に、有機溶媒を分離して再利用する方法を採用する場合においては、分散媒を有機溶媒と共に分離して再利用することができる。」(【0009】)

1-i「【発明の効果】以上のように、本発明に係る有機ハロゲン化合物の無害化処理方法及び無害化処理システムは、人体に対して安全性の高い有機溶媒を用いつつも、反応工程においてアルカリ金属量が浪費される虞を低減でき、有機溶媒がタール状重合物の生成原料となる虞も少なく、しかも、有機ハロゲン化合物とアルカリ金属との反応性が良好で、反応工程に於ける温度制御の簡便となるという効果を奏する。」(【0034】)

(2)刊行物2について
2-a「【請求項1】 ASTM D-2007-93(クレーゲル分析)によって測定される極性物質の含有量が0.01?0.2質量%である電気絶縁油。
【請求項2】 IP346/92によって測定される多環芳香族化合物の含有量が0.5?2.8質量%であり、ASTM D-2007-93(クレーゲル分析)によって測定される芳香族化合物の含有量が15?30質量%である請求項1記載の電気絶縁油。
【請求項3】 全硫黄分の含有量が20?2,000ppm、全窒素分の含有量が5ppm以下及び塩基性窒素分の含有量が1ppm以下である請求項1又は2に記載の電気絶縁油。」(【特許請求の範囲】)

2-b「…(略)…本発明の電気絶縁油は、ASTM D-2007-93(クレーゲル分析)によって測定される極性物質(以下、単に極性物質という。)の含有量が0.01?0.2質量%であることが必須である。極性物質が0.01質量%未満であると、水素ガス吸収性に劣り、0.2質量%を超えると、連続酸化におけるtan δ極大値が高く、tan δ極大値直後の帯電度も高い。好ましい範囲は0.02?0.18質量%である。」(【0005】)

2-c「また、ASTM D-2007-93(クレーゲル分析)によって測定される芳香族化合物(以下、単に芳香族化合物という。)の含有量が15?30質量%であるのが好ましい。芳香族化合物が15質量%未満であると、酸化安定性、水素ガス吸収性が悪化する場合があり、30質量%を超えると、極性物質も多くなり連続酸化におけるtan δ極大値及び帯電度が高くなる場合がある。」(【0007】)

2-d「さらに、全硫黄分の含有量が20?2,000ppm、全窒素分の含有量が5ppm以下及び塩基性窒素分の含有量が1ppm以下であるのが好ましい。全硫黄分が20ppm未満であると、酸化安定性が著しく悪化する場合があり、2,000ppmを超えると、極性物質も増加し、連続酸化におけるtan δ極大値及び帯電度が高くなる場合がある。」(【0008】)

2-e「全窒素分が5ppmを超えると、又は、塩基性窒素分が1ppmを超えると、電気絶縁油そのものの初期の電気特性(体積抵抗率、誘電正接等)を良好に保つことができない場合がある。また、40℃における動粘度が取扱い、安全性の点から6?13mm2 /sであるのが好ましい。なお、硫黄分はJIS K 2541-96によって測定される値であり、全窒素分はJIS K 2609-90によって測定される値であり、塩基性窒素分は米国ユーオーピー社試験法(UOP Method,No.313?70)により測定される値であり、動粘度はJIS K 2283-93によって測定される値である。」(【0009】?【0010】)

2-f「


」(【0022】)

3 刊行物に記載された発明
(1)刊行物1に記載された発明
刊行物1には、「有機溶媒中で有機ハロゲン化合物をアルカリ金属と反応させる反応工程(2)を備えた有機ハロゲン化合物の無害化処理方法であって、前記有機溶媒として、炭素数9?13のパラフィンを使用することを特徴とする有機ハロゲン化合物の無害化処理方法」が記載されており(摘記1-a)、アルカリ金属は、通常、分散媒に分散されたアルカリ金属分散体の状態で使用される旨記載されていることから(摘記1-h)、刊行物1には、
「炭素数9?13のパラフィン中で有機ハロゲン化合物を、分散媒に分散されたアルカリ金属分散体と反応させる反応工程を備えた有機ハロゲン化合物の無害化処理方法」
の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されていると認められる。

4 本願発明と刊行物発明との対比・判断
(1)本願発明1について
ア 対比
刊行物発明の「炭素数9?13のパラフィン」は、有機ハロゲン化合物を希釈してアルカリ金属と反応させるためのものであり(摘記1-c)、一方、本願発明1の「反応希釈油」も、本願明細書の「有機ハロゲン化合物を希釈する希釈液(反応希釈油)やアルカリ金属の分散媒(分散油)の種類によって、上記分解反応が著しく影響を受けることがある。」という記載を参酌すると(【0002】)、有機ハロゲン化合物を希釈してアルカリ金属と反応させるためのものであるといえる。よって、刊行物発明の「炭素数9?13のパラフィン」及び本願発明1の「反応希釈油」は、ともに「反応希釈液」であるといえる。
また、刊行物発明の「アルカリ金属分散体」は、分散媒に分散されたアルカリ金属分散体の状態で使用されるものであるから(摘記1-h)、「分散媒」は、アルカリ金属を分散させるものであり、一方、本願発明1の「アルカリ金属分散油」も、上記本願明細書の【0002】を参酌すれば、アルカリ金属の分散媒である。よって、刊行物発明の「分散媒」及び本願発明1の「アルカリ金属分散油」は、「アルカリ金属分散媒」であるといえる。
さらに、刊行物発明の「有機ハロゲン化合物の無害化処理方法」は、「有機ハロゲン化合物は、アルカリ金属により脱ハロゲン化され、無害化される」との記載を参酌すると(摘記1-c)、有機ハロゲン化合物をアルカリ金属により脱ハロゲン化することであり、一方、本願発明1の「有機ハロゲン化合物の分解処理方法」は、「本発明は、ポリ塩化ビフェニル等の有機ハロゲン化合物を脱塩素化して分解処理する際に特定のハロゲン化合物の反応希釈油及びアルカリ金属を分散する分散油を使用する有機ハロゲン化合物の分解処理方法に関する」との記載を参酌すれば(【0004】)、有機ハロゲン化合物をアルカリ金属により脱ハロゲン化することであるから、刊行物発明の「有機ハロゲン化合物の無害化処理方法」は、本願発明1の「有機ハロゲン化合物の分解処理方法」に相当する。
してみると、両者は、
「反応希釈液及びアルカリ金属分散媒を用いて有機ハロゲン化合物の分解反応を行う有機ハロゲン化合物の分解処理方法。」
という点で一致し、下記の点(i)?(ii)において相違するということができる。
(i)反応希釈液が、本願発明1においては、「40℃における動粘度が5?15mm^(2)/sであって、ASTM D 2007に規定されるクレーゲル分析による極性物質が0.15質量%以下の鉱油からなる反応希釈油」であるのに対して、刊行物発明においては、「炭素数9?13のパラフィン」である点
(ii)アルカリ金属分散媒が、本願発明1においては、「40℃における動粘度が5?15mm^(2)/sであって、ASTM D 2007に規定されるクレーゲル分析による極性物質が0.15質量%以下の鉱油からなるアルカリ金属分散油」であるのに対して、刊行物発明においては、「分散媒」である点

イ 判断
(ア)相違点(i)について
刊行物1には、従来、有機溶媒としては、人体に対して安全性が高いことから電気絶縁油を使用し、有機ハロゲン化合物の無害化処理を行ったところ(摘記1-d)、有機溶媒として電気絶縁油を用いた上記従来の方法は、電気絶縁油が硫黄分や不飽和結合、-OH基、-O-基を有する成分を含むため、電気絶縁油がアルカリ金属と反応し、アルカリ金属を消費したり、また、電気絶縁油が極性基を有するため、極性基が空気中の水分を取り込み、この水分がアルカリ金属を消費したりすることから、反応工程において多くのアルカリ金属を浪費とするという問題を有しており、また、電気絶縁油の粘度が比較的高いため、反応工程に於ける有機ハロゲン化合物とアルカリ金属との反応に時間がかかったり、反応に多量のアルカリ金属を必要とする等、有機ハロゲン化合物とアルカリ金属との反応性が悪く、しかも、この反応によって放出された反応熱を速やかに放出できず、反応工程に於ける温度制御が煩雑であるという問題をも有していたため(摘記1-e)、有機溶媒として炭素数9?13のパラフィンを用いることにより、パラフィンが不飽和結合やアルカリ金属と反応する硫黄分や-OH基、-O-基を有さず安定であることから、アルカリ金属を消費する虞も少なく、しかも、パラフィンが極性を有さないため、水との相溶性も殆どなく空気中の水を取り込む虞も殆どないことから、水によってアルカリ金属が消費される虞も殆どなく、反応工程においてアルカリ金属量が浪費される虞を低減することができ(摘記1-g)、結果として、有機ハロゲン化合物とアルカリ金属との反応性が良好で、反応工程に於ける温度制御の簡便な有機ハロゲン化合物の無害化処理方法を提供することができる旨(摘記1-f、1-g)が記載されているといえる。そうすると、刊行物1には、有機溶媒はアルカリ金属を消費する極性基の含有が少ない方が良いこと、すなわち、極性物質の含有量を少なくすることにより、アルカリ金属の消費を低減させ、結果として、有機ハロゲン化合物とアルカリ金属との反応性が良好な有機ハロゲン化合物の無害化処理方法を提供する旨が記載されているといえる。
一方、刊行物2には、「ASTM D-2007-93(クレーゲル分析)によって測定される極性物質の含有量が0.01?0.2質量%である電気絶縁油」が記載されており(摘記2-a)、第1表-1には、本願発明1の「40℃における動粘度が5?15mm^(2)/sであって、ASTM D 2007に規定されるクレーゲル分析による極性物質が0.15質量%以下の鉱油」に相当する電気絶縁油A、B、C、Dが記載されている(摘記2-f)。ここで、刊行物2には、「ASTM D-2007-93(クレーゲル分析)によって測定される極性物質(以下、単に極性物質という。)の含有量が0.01?0.2質量%であることが必須である。…(略)…0.2質量%を超えると、連続酸化におけるtan δ極大値が高く、tan δ極大値直後の帯電度も高い」(摘記2-b)、「ASTM D-2007-93(クレーゲル分析)によって測定される芳香族化合物(以下、単に芳香族化合物という。)の含有量が15?30質量%であるのが好ましい。…(略)…30質量%を超えると、極性物質も多くなり連続酸化におけるtan δ極大値及び帯電度が高くなる場合がある」(摘記2-c)、「全硫黄分の含有量が20?2,000ppm、全窒素分の含有量が5ppm以下及び塩基性窒素分の含有量が1ppm以下であるのが好ましい。…(略)…2,000ppmを超えると、極性物質も増加し、連続酸化におけるtan δ極大値及び帯電度が高くなる場合がある」(摘記2-d)と記載されていることを鑑みると、刊行物2に記載された電気絶縁油は、ASTM D-2007-93(クレーゲル分析)によって測定される極性物質の含有量が少ないものであるといえる。
してみると、従来、有機溶媒として電気絶縁油が用いられていたことを考慮すれば(摘記1-d)、刊行物発明において、アルカリ金属と反応し、アルカリ金属を消費する原因となる極性基を有する成分、すわなち、極性物質の含有量が少ない有機溶媒として、炭素数9?13のパラフィンに代えて、刊行物2に記載された電気絶縁油とし、該電気絶縁油の中でもできるだけ極性物質の含有量が少ないものにする、すなわち、0.15質量%以下のものとすることは、当業者であれば容易に想到することである。

(イ)相違点(ii)について
刊行物1には、「アルカリ金属分散体の分散媒としては、…(略)…前記有機溶媒と同種のものが好ましい。」旨(摘記1-h)の記載がされていることから、上記(ア)に示したように、刊行物発明において、分散媒として、刊行物2に記載された電気絶縁油を適用することは、当業者であれば容易に想到することである。

(2)本願発明2について
本願発明2は、本願発明1において、「反応希釈油及びアルカリ金属分散油として、同一の鉱油を使用するもの」であるが、刊行物1には、「アルカリ金属分散体の分散媒としては、…(略)…前記有機溶媒と同種のものが好ましい。」旨(摘記1-h)の記載がされていることから、刊行物発明において、反応希釈液及びアルカリ金属分散媒として、同一の鉱油を使用することは、当業者が容易に想到することである。

(3)本願発明の効果について
本願発明の効果は、本願明細書の【0007】の記載からみて、「本発明の有機ハロゲン化合物の分解処理方法であれば、有機ハロゲン化合物とアルカリ金属を接触させて有機ハロゲン化合物を分解する反応が安定に進行させることができ、従って、有機ハロゲン化合物の分解性を高めることができる効果がある」ことである。
これに対して、刊行物発明は、摘記1-iに示されているように、「本発明に係る有機ハロゲン化合物の無害化処理方法及び無害化処理システムは、人体に対して安全性の高い有機溶媒を用いつつも、反応工程においてアルカリ金属量が浪費される虞を低減でき、有機溶媒がタール状重合物の生成原料となる虞も少なく、しかも、有機ハロゲン化合物とアルカリ金属との反応性が良好で、反応工程に於ける温度制御の簡便となるという効果を奏する」ものであるから、本願発明の効果は、予測できる範囲のものであるといえる。

(4)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、以下のように主張する。
a 電気絶縁油が反応希釈液として使用されているのは、PCBなどの有機ハロゲン化合物(以下、「PCB」と称することがある。)が電気絶縁油の材料として用いられていたことから、PCB入り電気絶縁油の油をそのまま、若しくは、近くにあって入手が簡便な電気絶縁油を用いたのであって、電気絶縁油が反応希釈液としての性能が高いことが理由ではありません。電気特性が優れる電気絶縁油が、反応希釈液として優れているかどうかは、推測できないことであります。
したがって、反応希釈液の性能を高める発明を試みるにあたって、電気特性が良好な電気絶縁油をそのまま使用しようとする発想は、通常ないのであります。

b 本発明は、クレーゲル分析による極性物質が0.15質量%以下であるのに対し、刊行物1(注:審決における刊行物2)に記載される電気絶縁油は、0.01?0.2質量%です。つまり刊行物1(注:審決における刊行物2)に記載される電気絶縁油であっても、本願発明の反応希釈液として使用できないものがあります。このように両者が完全に一致しない理由は、刊行物1(注:審決における刊行物2)に記載される電気絶縁油をそのまま適用できないことを示しています。

c 引用文献3(注:審決における刊行物1)でいう極性物質と本願発明でいう極性物質は、表現(文言)上同じ「極性物質」ですが、前者すなわち引用文献3(注:審決における刊行物1)の「硫黄分、-OH基等」で例示される極性化合物は、後者の本願発明でいう極性物質の概念とは異なるものです。前者の極性物質である硫黄分や-OH基などは、その他の多くのものを含む広い概念であり(引用文献3(注:審決における刊行物1)段落〔0005〕)、いわば一般的極性化合物であると認められるのに対し、後者(本願発明)でいう極性物質は、クレーゲル分析によって求められる限定された特定の極性化合物です。
そして、重要なことは、引用文献3(注:審決における刊行物1)に例示される一般的極性物質ではなく、この本発明でいう特定の極性化合物が本質的に反応希釈液の性能を左右していると認められることであります。

(a)主張aについて
請求人は、電気絶縁油が反応希釈液として使用されているのは、PCBなどの有機ハロゲン化合物が電気絶縁油の材料として用いられていたことが理由であり、電気絶縁油が反応希釈液としての性能が高いことが理由ではない旨主張する。
しかし、刊行物1には、「有機ハロゲン化合物に対して相溶性(即ち、有機ハロゲン化合物を溶解又は分散させうる性質)を有する有機溶媒で有機ハロゲン化合物を希釈して有機ハロゲン化合物を有機溶媒中に存在させる希釈工程を反応工程の前に予め行うこと等により、反応工程において、有機溶媒中で有機ハロゲン化合物とアルカリ金属とを反応させている。」旨記載されており(摘記1-c)、「前記有機溶媒としては、人体に対して安全性が高いことから電気絶縁油(JIS C2320-1993の鉱油、特に同1種の鉱油)を使用し、有機ハロゲン化合物の無害化処理を行っている。」旨が記載されていることから(摘記1-d)、電気絶縁油が有機ハロゲン化合物に対して相溶性を有し、人体への安全性が高いことから、有機溶媒として使用されていることが示されているといえ、この記載からみて、電気絶縁油が反応希釈液として性能が高いか否かに関わらず、当業者であれば、電気絶縁油を有機溶媒として使用することは容易に想到することである。

(b)主張bについて
請求人は、本願発明の電気絶縁油と刊行物1(注:審決における刊行物2)に記載される電気絶縁油は、極性物質の含有量が完全に一致しないので、刊行物1(注:審決における刊行物2)に記載される電気絶縁油をそのまま適用できない旨主張する。
しかしながら、上記「第5 3(1)イ(ア)」に示したように、刊行物発明において、アルカリ金属と反応し、アルカリ金属を消費する原因となる極性基の含有量が少ない有機溶媒として、炭素数9?13のパラフィンに代えて、刊行物2に記載された電気絶縁油とし、該電気絶縁油の中でもできるだけ極性物質の含有量の少ないものにする、すなわち、0.15質量%以下のものとすることは、当業者であれば容易に想到することである。

(c)主張cについて
請求人は、引用文献3(注:審決における刊行物1)の「硫黄分、-OH基等」で例示される極性化合物は、後者の本願発明でいう極性物質の概念とは異なるものであり、引用文献3(注:審決における刊行物1)に例示される一般的極性物質ではなく、この本発明でいう特定の極性化合物が本質的に反応希釈液の性能を左右していると認められる旨を、データを付して主張している。
しかし、本願発明の「ASTM D 2007に規定されるクレーゲル分析による極性物質」は、刊行物1に記載されている極性物質に包含されるものであり、上記「第5 3(1)イ(ア)」に示したように、刊行物1には、有機溶媒における極性物質の含有量を少なくすることにより、有機ハロゲン化合物とアルカリ金属との反応性が良好な有機ハロゲン化合物の無害化処理方法が記載されていることから、極性物質の少ない有機溶媒として、パラフィンに代えて、刊行物2に記載された電気絶縁油を適用することは、当業者が容易に想到することである。さらに、請求人が提示したデータは、極性物質のみが減少した場合に、分解反応が改良されることを示しているが、上記したように、該極性物質は刊行物1に記載されている極性物質に包含されるものであるから、刊行物1の記載からみて、分解反応が改良されることは予測できる範囲の効果である。

以上のとおり、請求人の主張によっても、当審の判断に変わりはない。

5 小括
よって、本願発明1?2は、本願出願前に頒布された刊行物1?2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1?2は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-27 
結審通知日 2008-12-02 
審決日 2008-12-16 
出願番号 特願2005-231243(P2005-231243)
審決分類 P 1 8・ 03- Z (C07B)
P 1 8・ 121- Z (C07B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨永 保  
特許庁審判長 原 健司
特許庁審判官 坂崎 恵美子
鈴木 紀子
発明の名称 有機ハロゲン化合物の分解処理方法  
代理人 大谷 保  
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