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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E02D
管理番号 1192158
審判番号 不服2007-3921  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-02-08 
確定日 2009-02-05 
事件の表示 特願2002-236194「鋼製矢板継手部の止水方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月 2日出願公開、特開2003-278149〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成14年8月14日(国内優先権主張 平成14年1月15日)の出願であって、平成18年12月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年2月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月12日に手続補正がなされたものである。


【2】平成19年3月12日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成19年3月12日付けの手続補正を却下する。

[理由]
[1]補正の内容、補正後の本願発明
平成19年3月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1を次のように補正しようとする補正事項を含むものである。
「【請求項1】1対の嵌合継手を止水用充填材を介して互いに嵌合させながら鋼矢板及び鋼管矢板などの鋼製矢板を打設する継手部の止水方法であって、継手部空間に予め止水用充填材としてアスファルトを主成分とする粘弾性材料を工場にて充填した先打の鋼製矢板を地盤の所定箇所に打ち込み、続いて前記粘弾性材料を充填してある継手部空間に後打ち鋼製矢板の継手を挿入させるに際し、その後打ち鋼製矢板を所定周波数以上の振動を与えながら挿入し打ち込むことを特徴とする鋼製矢板継手部の止水方法。」
上記補正事項は、補正前の請求項1記載の「粘弾性材料を充填した」について、「工場」において充填されるもの限定しようとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、補正後の請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

[2]引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平1-207519号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。
(1イ)「河川に設けたコンクリート構造物に接続して打設される遮水用鋼矢板の相互接続部に設けられ、中空部を有する雌部材と該雌部材の中空部に一端が嵌合される雄部材とからなる伸縮継手の雌部材の中空部に充填される弾性充填材であって、ウレタン樹脂・・・、タール・・・及びタール系重質油・・・とからなることを特徴とする鋼矢板伸縮継手用弾性充填材。」(特許請求の範囲)
(1ロ)「この種の伸縮継手は、中空部を有する雌部材と該雌部材の中空部に一端が嵌合される雄部材とよりなり、雌部材の中空部には雄部材を可動にし且つ負荷力を吸収するために弾性充填材が充填されて可動部が構成される。このように構成される伸縮継手においては雌部材に雄部材を嵌合した部分、即ち可動部における防水性が良好に図られなければならず、もし防水性が不充分であると、遮水用鋼矢板を打設した目的が失われ、また鋼矢板の変位による負荷力が生じた時、雄部材の動き、即ち伸縮性が良好でなければらなず、もし伸縮性が良好でないと、コンクリート構造物の損傷防止という目的を充分には達成することができない・・・」(1頁右下欄11行?2頁左上欄3行)
(1ハ)「・・・第1図に示すように伸縮継手は、雌部材4と雄部材5とから構成され、雌部材4は本体枠8と補強枠9とからなり、両枠共、・・・中空部を備えている。本体枠8の中空部3内には、雄部材5の一端に設けたアンカー部10が嵌合される。・・・雄部材5の他端には係合部12が設けられ、該係合部12に鋼矢板2が係合連結される。補強枠9においても同様に鋼矢板2が係合連結される。」(2頁右上欄7?17行)
(1ニ)「また、伸縮継手の形状(第1図?第3図に示す各種夕イプ)によって打設方式が異なる場合があるが、この打設方式にそれぞれ適合するように配合割合を決定して充填材の硬さを調整する必要がある。例えば充填材6を注入した後に打設する方式では、打設時にエアーハンマーの衝撃で充填材6が継手外にはみ出さない程度にやや硬質にする必要があり、伸縮継手の可動部7の動きが大きい、例えば第3図に示す巴形タイプのものでは充填材6の硬さをやや軟質にして継手の伸縮に充分追随させる必要がある。また可動部7の動きが比較的小さくても、伸縮継手の雌部材4を打設して充填材6を注入し、やや硬化した後に雄部材5を打設嵌合させる方式では充填材6の硬さは前二者の中間位が適切である。」(3頁左上欄3?17行)
ここで、上記(1ニ)の記載事項を参照すると、雌部材4中空部3に弾性充填材6を注入し地盤の所定箇所に打設した後に、該雌部材4中空部3に雄部材5を挿入しエアーハンマーにより衝撃を与えながら打設することが明らかであるから、これら(1イ)?(1ニ)の記載事項及び図面を含む引用文献1全体の記載並びに当業者の技術常識によれば、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「雌部材4に雄部材5を弾性充填材6を介して互いに嵌合させながら打設する鋼矢板2の相互接続部に設けられる伸縮継手部の防水方法であって、一方の鋼矢板2が係合連結される雌部材4中空部3にウレタン樹脂、タール、タール系重質油とからなる弾性充填材6を注入し地盤の所定箇所に打設した後に、該雌部材4中空部3に他方の鋼矢板2が係合連結される雄部材5を挿入させるに際し、その雄部材5をエアーハンマーにより衝撃を与えながら挿入し打設する鋼矢板相互接続部に設けられる伸縮継手部の防水方法。」(以下、「引用文献1記載の発明」という。)

同、特開2001-348862号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図8とともに次の事項が記載されている。
(2イ)「【請求項1】鋼製箱形矢板、H形鋼矢板、鋼管矢板等の鋼材を用いた鋼製矢板の継手部材の閉合部の内面に瀝青・ゴム系接着剤、アスファルトプライマー等の接着剤が塗布されていると共に、前記継手部材の閉合部内の空間が前記接着剤層を介して止水材としてのアスファルト混合物等の瀝青材料、粘土、モルタル、コンクリート、粘土モルタル、粘性系材料等の止水材で充填されていることを特徴とする鋼製矢板継手部の止水構造。」
(2ロ)「【請求項5】・・・鋼製矢板の変形が予想される部位については、変形追従性があるアスファルト混合物等の瀝青材料、粘土、粘土モルタル、粘性系材料等の粘弾性的ないし粘性的応答を示す止水材が充填されている・・・」
(2ハ)「【0083】図8(a)に示すように、鋼製矢板31同士の接合時には、一方の鋼製矢板31に脚部33aを溶接された雄側の継手部材を構成するT字状突起部33が、その脚部33aを接合相手の鋼製矢板31の雌側のパイプ部材32のスリット32aに挿入されて打接(当審注:「打設」の誤記と認める。)され、接合される。
【0084】このとき、パイプ部材32と突起部33の内外閉合面、すなわち雌側のパイプ部材32の内面と雄側の突起部33の外面とに、瀝青・ゴム系接着剤、アスファルトプライマー等の接着剤34を塗布した後に、継手部37の中空部に止水材15としてのアスファルト混合物等の瀝青材料、・・・、粘性系材料等の止水材を充填する。」

[3]対比
補正発明と引用文献1記載の発明とを比較すると、引用文献1記載の発明の「雌部材4」及び「雄部材5」は、補正発明の「1対の嵌合継手」に相当し、「雌部材4中空部3」、「雄部材5」、「伸縮継手部の防水方法」は、それぞれ、補正発明の「継手部空間」、「(後打ち鋼製矢板の)継手」、「継手部の止水方法」に相当し、引用文献1記載の発明において、「弾性充填材6を注入し地盤の所定箇所に打設した後に、雄部材5を挿入させる」ことは、補正発明の「粘弾性材料を充填し地盤の所定箇所に打ち込み、続いて前記粘弾性材料を充填してある継手部空間に後打ちの継手を挿入させる」ことに相当する。
また、引用文献1記載の発明の「弾性充填材6」は、補正発明の「止水用充填材」に相当し、引用文献1記載の発明の「ウレタン樹脂、タール、タール系重質油とからなる弾性充填材6」と、補正発明の「アスファルトを主成分とする粘弾性材料」とは、「止水用充填材としての粘弾性材料」で共通している。
そうすると、両者は、
「1対の嵌合継手を止水用充填材を介して互いに嵌合させながら打設する継手部の止水方法であって、継手部空間に予め止水用充填材としての粘弾性材料を充填し地盤の所定箇所に打ち込み、続いて前記粘弾性材料を充填してある継手部空間に後打ちの継手を挿入し打ち込む鋼製矢板継手部の止水方法。」
の点で一致し、次の点で相違している。
〈相違点1〉
補正発明では、1対の嵌合継手を互いに嵌合させながら鋼製矢板を打設するものであり、継手部空間を有する先打の鋼製矢板を打ち込み、続いて挿入継手を有する後打ち鋼製矢板を打ち込むのに対して、引用文献1記載の発明では、1対の嵌合継手を互いに嵌合させながら鋼製矢板を打設しているか否か不明であり、先打ちの嵌合継手(雌部材4)を打ち込んだ後に、後打ちの嵌合継手(雄部材5)を打設するものの、鋼製矢板が嵌合継手と共に打設されるか否か不明である点。
〈相違点2〉
後打ちの嵌合継手が、補正発明では、所定周波数以上の振動を与えながら打ち込まれるのに対し、引用文献1記載の発明では、エアーハンマーにより衝撃を与えながら打ち込むものである点。
〈相違点3〉
止水用充填材としての粘弾性材料が、補正発明では、アスファルトを主成分とし、工場にて充填されるのに対して、引用文献1記載の発明では、ウレタン樹脂、タール、タール系重質油とからなり、充填する場所は限定されていない点。

[4]判断
上記各相違点について検討する。
〈相違点1について〉
引用文献1記載の発明の嵌合継手(雌部材4及び雄部材5)は、それぞれ、鋼製矢板の端部に係合連結されるものであるから、鋼製矢板を嵌合継手とともに打設することは、当業者が容易に想到しうることであり、1対の嵌合継手を互いに嵌合させながら鋼製矢板を打設し、相違点1に係る事項とすることは当業者が容易になしうることである。
〈相違点2について〉
鋼製矢板の打設手段として、バイブロハンマー等により振動を与えながら行うことは、審尋で提示した特開2002-38481号公報に示すように慣用手段にすぎず、引用文献1記載の発明においてエアーハンマーにより衝撃を与えながら打ち込むことに代えて、所定の振動を与えることは適宜なし得ることであり、該振動の周波数は、粘弾性材料の種類等を考慮して適宜設定しうる設計的事項にすぎない。
〈相違点3について〉
上記引用文献2には、継手部37の中空部に充填する止水材15として、アスファルト混合物等の瀝青材料、すなわち、アスファルトを主成分とする粘弾性材料が例示されている。
引用文献1記載の発明は、ウレタン樹脂、タール、タール系重質油とからなる特定の止水用充填材を用いることで、特に伸縮性を向上させようとするものであるが、アスファルトを主成分とする粘弾性材料も、変形追従性のある材料であり(記載事項(2ロ))、止水用充填材として刊行物2記載のアスファルトを主成分とする粘弾性材料を採用してみようとすることは当業者が容易に想到しうることである。
ところで、止水用充填材を継手に充填する作業を「工場にて」行うと、鋼製矢板の打設現場では充填された止水用充填材が硬化した状態となっているから、硬化後の充填材に鋼製矢板を打設した場合でも止水作用が維持されることが必要であるが、アスファルトを主成分とする粘弾性材料は、充填硬化後に鋼製矢板を打設可能で、止水作用が維持されることは従来から知られている(例えば、特開昭61-60921号公報参照)。
そうすると、引用文献1記載の発明において、予め充填される止水用充填材として刊行物2記載のアスファルトを主成分とする粘弾性材料を採用することは当業者が容易になしうることであり、その充填作業を「工場にて」行うことも適宜なしうることである。

そして、補正発明全体の効果も、引用文献1、2記載の発明及び上記周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものということができないから、補正発明は、引用文献1、2記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

[5]むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

【3】本願発明について
平成19年3月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし17に係る発明は、平成18年9月8日付けの手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明は次のとおりである。
「【請求項1】1対の嵌合継手を止水用充填材を介して互いに嵌合させながら鋼矢板及び鋼管矢板などの鋼製矢板を打設する継手部の止水方法であって、継手部空間に予め止水用充填材としてアスファルトを主成分とする粘弾性材料を充填した先打の鋼製矢板を地盤の所定箇所に打ち込み、続いて前記粘弾性材料を充填してある継手部空間に後打ち鋼製矢板の継手を挿入させるに際し、その後打ち鋼製矢板を所定周波数以上の振動を与え、もしくは衝撃を与えながら挿入し打ち込むことを特徴とする鋼製矢板継手部の止水方法。

[1]引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物、及びその記載事項は、前記【2】[2]に記載したとおりである。

[2]対比・判断
本願の請求項1に係る発明は、上記【2】で検討した補正発明を特定するために必要な事項である事項である「工場にて」との事項を削除したものであって、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する補正発明が、上記【2】[4]で述べたとおり、引用文献1、2記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえるから、請求項1に係る発明も、同様の理由により、引用文献1、2記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、請求人は、平成20年9月16日付けの回答書において、補正案を提示しているが、該補正案において限定された、止水用充填材として「ゴムアスファルトコンパウンドよりなる」粘弾性材料を用いることは、周知技術にすぎない。

[3]むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用文献1、2記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-19 
結審通知日 2008-11-25 
審決日 2008-12-10 
出願番号 特願2002-236194(P2002-236194)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E02D)
P 1 8・ 121- Z (E02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 草野 顕子  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 五十幡 直子
伊波 猛
発明の名称 鋼製矢板継手部の止水方法  
代理人 安彦 元  
代理人 林 信之  
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