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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1192161
審判番号 不服2007-6251  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-01 
確定日 2009-02-05 
事件の表示 特願2003-150949「マンガの表示方法およびマンガを表示する電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月16日出願公開、特開2004-355235〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年5月28日の出願であって、平成19年1月26日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年3月1日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年3月30日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

2.平成19年3月30日付けの手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成19年3月30日付けの手続補正を却下する。

〔理由〕
(1)本件補正前及び本件補正後の本願発明
本件補正は、明細書(特許請求の範囲、段落【0009】、【0011】、【0018】ないし【0025】、【0028】、【0029】、【0033】、【0036】、【0037】、【0039】ないし【0042】、【0044】、【0046】ないし【0048】、【0051】ないし【0056】、【0058】ないし【0060】、【0062】ないし【0064】、【0066】、【0071】ないし【0073】、【0077】及び【図3】)及び図面(【図2】及び【図4】)についてするもので、特許請求の範囲については、補正前に、
「【請求項1】
複数のコマを有するマンガを電子機器の表示装置に表示する方法であって、
マンガのベクトルデータを、前記電子機器に備えられるベクトルデータ記録手段に保存するステップと、
マンガのラスターデータを、前記電子機器に備えられるラスターデータ記録手段に保存するステップと、
マンガを閲覧するための各コマの前記マンガ内での位置と、各コマの再生順序と、再生するデータがラスターかベクトルかを示す再生データの種類とを、前記電子機器に備えられる再生シーケンスデータ記録手段に保存するステップと、
マンガを閲覧しているユーザーからのマンガについての表示操作の入力を、前記電子機器に備えられる入力手段が受け付けるステップと、
前記電子機器が前記入力手段を介してユーザーからの入力を受け付けると、前記電子機器に備えられる制御手段が、前記再生シーケンスデータ記録手段から、該入力に応じた前記再生順序を呼び出すステップと、
該再生順序にしたがって、前記制御手段が、再生すべき今次のコマの位置および再生データの種類を呼び出し、前記電子機器に備えられる画像制御手段に描画命令を発するステップと、
該再生データの種類がラスターである場合には、前記画像制御手段が、該今次のコマの位置に対応するマンガのラスターデータを前記ラスターデータ記録手段から呼び出し、前記電子機器に備えられる画像メモリーに書き込むステップと、
該再生データの種類がベクトルである場合には、前記画像制御手段が、該今次のコマの位置に対応するマンガのベクトルデータを前記ベクトルデータ記録手段から呼び出してラスターデータを生成し、前記画像メモリーに書き込むステップと、
ユーザーからの前記入力手段を介した入力によって選択とされるかまたは非選択とされるかが定められ、選択時に表示される情報の保存位置を示すハイパーリンクタグが、前記マンガのラスターデータまたは前記マンガのベクトルデータのいずれかに表示可能に埋め込まれており、該保存位置は、前記電子機器内の保存位置、または、前記電子機器がネットワークアクセス機能を有する場合にはネットワークアクセス可能な保存位置であり、マンガを閲覧しているユーザーによる前記ハイパーリンクタグの選択を、前記入力手段を介して前記制御手段が受け取ると、前記制御手段が描画命令を発し、前記画像制御手段が該描画命令に従って前記保存位置にある情報にアクセスして前記画像メモリーにラスターデータとして書き込むステップと、
前記画像表示手段が前記画像メモリーにあるラスターデータを前記表示装置に出力するステップと
を含んでなる方法。
【請求項2】
マンガを構成する各コマ間を移動する際のスクロール速度データを前記再生シーケンスデータ記録手段に保存するステップと、
前記入力手段を介してユーザーからのスクロールの入力を受け付けると、前記制御手段が、前記再生シーケンスデータ記録手段から、該スクロール速度データを呼び出すステップと、
前記今次のコマに達するまでの各時刻において、前記再生データの種類と該スクロール速度データとに応じた描画命令を前記制御手段が前記画像制御手段に発するステップと、
該再生データの種類がラスターである場合には、前記画像制御手段が、前記描画命令に従って、マンガのラスターデータをラスターデータ記録手段から呼び出し、前記各時刻において前記画像メモリーに書き込むステップと、
該再生データの種類がベクトルである場合には、前記画像制御手段が、前記描画命令に従って、前記ベクトルデータ記録手段からマンガのベクトルデータを呼び出してラスターデータを生成し、前記各時刻において前記画像メモリーに書き込むステップと
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記入力手段を介してユーザーからの拡大または縮小の入力を受けると、前記制御手段が該拡大または縮小に応じた描画命令を発するステップと、
前記再生データの種類がラスターである場合には、前記画像処理手段が、前記描画命令に従って、前記マンガのラスターデータを前記ラスターデータ記録手段から呼び出して、所定の比率で拡大または縮小する処理を行なって前記画像メモリーに書き込むステップと、
前記再生データの種類がベクトルである場合には、前記画像処理手段が、前記描画命令に従って、前記マンガのベクトルデータを所定の比率で拡大または縮小する処理を行なってラスターデータを生成し、該ラスターデータを前記画像メモリーに書き込むステップと
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電子機器は、マンガの吹き出しについてのテキストデータと吹き出しの形状データとを保存する吹き出しデータ記録手段をさらに備え、
前記画像処理手段が、前記吹き出しデータ記録手段から前記吹き出しのテキストデータおよび前記吹き出しの形状データを呼び出して、表示すべき吹き出しのラスターデータを生成して前記画像メモリーに書き込むステップと、
前記入力手段を介してユーザーからの吹き出し切り換えの入力を受けると、前記制御手段が、該吹き出しの切り換えに応じた描画命令を発するステップと、
描画命令に従って、前記画像処理手段が、該表示すべき吹き出しのラスターデータを所定の比率で拡大または縮小して生成し、前記画像メモリーに書き込むステップと
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記電子機器が、前記制御手段に接続された振動発生手段をさらに備えており、
各コマに対応付けた振動起動情報を前記再生シーケンスデータ記録手段に保存するステップと、
前記今次のコマに振動起動情報がある場合には、前記制御手段が振動起動の命令を発し、前記振動発生手段が該命令に従って振動を発生するステップと
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記電子機器が、前記制御手段に接続された発光手段をさらに備えており、
各コマに対応付けた発光制御情報を前記再生シーケンスデータ記録手段に保存するステップと、
前記今次のコマに発光制御情報がある場合には、前記制御手段が発光を制御する命令を発し、前記発光手段が該命令に従って発光するステップと
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記電子機器に、請求項1?6のいずれかに記載のステップを実行させるためのプログラム。
【請求項8】
複数のコマを有するマンガを表示装置に表示する電子機器であって、
前記表示装置に表示するラスターデータを保存する画像メモリーと、
前記画像メモリーからラスターデータを呼び出して前記表示装置に出力する画像表示手段と、
前記画像表示手段からのラスターデータを画像として表示する前記表示装置と、
マンガのベクトルデータを保存するベクトルデータ記録手段と、
マンガのラスターデータを保存するラスターデータ記録手段と、
マンガを閲覧するための各コマの前記マンガ内での位置と、各コマの再生順序と、再生するデータがラスターかベクトルかを示す再生データの種類とを保存する再生シーケンスデータ記録手段と、
マンガを閲覧しているユーザーからのマンガについての表示操作の入力を受け付ける入力手段と、
前記入力手段からの入力を受け付けて再生すべきコマを定める機能と、前記電子機器が前記入力手段を介してユーザーからの入力を受け付けると、前記再生シーケンスデータ記録手段から、該入力に応じた前記再生順序を呼び出す機能と、該再生順序にしたがって、再生すべき今次のコマの位置および再生データの種類を呼び出し、前記画像制御手段に描画命令を発する機能とを有し、前記再生シーケンスデータ記録手段と前記入力手段とに接続されている制御手段と、
該制御手段からの描画命令に従って、前記ベクトルデータ記録手段から前記マンガのベクトルデータを呼び出し、前記画像メモリーに出力するためのラスターデータを生成する機能と、該生成されたラスターデータと前記ラスターデータ記録手段からの前記マンガのラスターデータとを前記画像メモリーに書き込む機能と、該再生データの種類がラスターである場合には、該今次のコマの位置に対応するマンガのラスターデータを前記ラスターデータ記録手段から呼び出し、前記画像メモリーに書き込む機能と、該再生データの種類がベクトルである場合には、前記画像制御手段が、該今次のコマの位置に対応するマンガのベクトルデータを前記ベクトルデータ記録手段から呼び出してラスターデータを生成し、前記画像メモリーに書き込む機能と、ユーザーからの前記入力手段を介した入力によって選択とされるかまたは非選択とされるかが定められ、選択時に表示される情報の保存位置を示すハイパーリンクタグが、前記マンガのラスターデータまたは前記マンガのベクトルデータのいずれかに表示可能に埋め込まれており、該保存位置は、前記電子機器内の保存位置、または、前記電子機器がネットワークアクセス機能を有する場合にはネットワークアクセス可能な保存位置であり、マンガを閲覧しているユーザーによる前記ハイパーリンクタグの選択を、前記入力手段を介して前記制御手段が受け取ると、前記制御手段が描画命令を発し、前記画像制御手段が該描画命令に従って前記保存位置にある情報にアクセスして前記画像メモリーにラスターデータとして書き込む機能とを有し、前記制御手段に接続されている画像制御手段と
を含んでなる電子機器。」
とあったものを、
「【請求項1】
複数の紙面上のコマを有するマンガを電子機器の表示装置に表示する方法であって、
マンガのベクトルデータを、前記電子機器に備えられるベクトルデータ記録手段に保存するステップと、
マンガのラスターデータを、前記電子機器に備えられるラスターデータ記録手段に保存するステップと、
マンガを前記表示装置によって閲覧するために離散的に定められる表示域の前記マンガの紙面内での位置と、各表示域の再生順序と、再生するデータがラスターかベクトルかを示す再生データの種類とを、前記電子機器に備えられる再生シーケンスデータ記録手段に保存するステップと、ここで、前記表示域の前記マンガ紙面内での位置は、前記紙面上のコマの少なくともいずれかに対して複数の表示域が割り当てられて、該複数の表示域は互いにほぼ同じ大きさであり、
マンガを閲覧しているユーザーからのマンガについての表示操作の入力を、前記電子機器に備えられる入力手段が受け付けるステップと、
前記電子機器が前記入力手段を介してユーザーからの入力を受け付けると、前記電子機器に備えられる制御手段が、前記再生シーケンスデータ記録手段から、該入力に応じた前記再生順序を呼び出すステップと、
該再生順序にしたがって、前記制御手段が、再生すべき今次の表示域の位置および再生データの種類を呼び出し、前記電子機器に備えられる画像制御手段に描画命令を発するステップと、
該再生データの種類がラスターである場合には、前記画像制御手段が、該今次の表示域の位置に対応するマンガのラスターデータを前記ラスターデータ記録手段から呼び出し、前記電子機器に備えられる画像メモリーに書き込むステップと、
該再生データの種類がベクトルである場合には、前記画像制御手段が、該今次の表示域の位置に対応するマンガのベクトルデータを前記ベクトルデータ記録手段から呼び出してラスターデータを生成し、前記画像メモリーに書き込むステップと、
ユーザーからの前記入力手段を介した入力によって選択とされるかまたは非選択とされるかが定められ、選択時に表示される情報の保存位置を示すハイパーリンクタグが、前記マンガのラスターデータまたは前記マンガのベクトルデータのいずれかに表示可能に埋め込まれており、該保存位置は、前記電子機器内の保存位置、または、前記電子機器がネットワークアクセス機能を有する場合にはネットワークアクセス可能な保存位置であり、マンガを閲覧しているユーザーによる前記ハイパーリンクタグの選択を、前記入力手段を介して前記制御手段が受け取ると、前記制御手段が描画命令を発し、前記画像制御手段が該描画命令に従って前記保存位置にある情報にアクセスして前記画像メモリーにラスターデータとして書き込むステップと、
前記画像表示手段が前記画像メモリーにあるラスターデータを前記表示装置に出力するステップと
を含んでなる方法。
【請求項2】
マンガの紙面上のコマにある表示域の間を移動する際のスクロール速度データを前記再生シーケンスデータ記録手段に保存するステップと、
前記入力手段を介してユーザーからのスクロールの入力を受け付けると、前記制御手段が、前記再生シーケンスデータ記録手段から、該スクロール速度データを呼び出すステップと、
前記今次の表示域に達するまでの各時刻において、前記再生データの種類と該スクロール速度データとに応じた描画命令を前記制御手段が前記画像制御手段に発するステップと、
該再生データの種類がラスターである場合には、前記画像制御手段が、前記描画命令に従って、マンガのラスターデータをラスターデータ記録手段から呼び出し、前記各時刻において前記画像メモリーに書き込むステップと、
該再生データの種類がベクトルである場合には、前記画像制御手段が、前記描画命令に従って、前記ベクトルデータ記録手段からマンガのベクトルデータを呼び出してラスターデータを生成し、前記各時刻において前記画像メモリーに書き込むステップと
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記入力手段を介してユーザーからの拡大または縮小の入力を受けると、前記制御手段が該拡大または縮小に応じた描画命令を発するステップと、
前記再生データの種類がラスターである場合には、前記画像処理手段が、前記描画命令に従って、前記マンガのラスターデータを前記ラスターデータ記録手段から呼び出して、所定の比率で拡大または縮小する処理を行なって前記画像メモリーに書き込むステップと、
前記再生データの種類がベクトルである場合には、前記画像処理手段が、前記描画命令に従って、前記マンガのベクトルデータを所定の比率で拡大または縮小する処理を行なってラスターデータを生成し、該ラスターデータを前記画像メモリーに書き込むステップと
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電子機器は、マンガの吹き出しについてのテキストデータと吹き出しの形状データとを保存する吹き出しデータ記録手段をさらに備え、
前記画像処理手段が、前記吹き出しデータ記録手段から前記吹き出しのテキストデータおよび前記吹き出しの形状データを呼び出して、表示すべき吹き出しのラスターデータを生成して前記画像メモリーに書き込むステップと、
前記入力手段を介してユーザーからの吹き出し切り換えの入力を受けると、前記制御手段が、該吹き出しの切り換えに応じた描画命令を発するステップと、
描画命令に従って、前記画像処理手段が、該表示すべき吹き出しのラスターデータを所定の比率で拡大または縮小して生成し、前記画像メモリーに書き込むステップと
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記電子機器が、前記制御手段に接続された振動発生手段をさらに備えており、
各表示域に対応付けた振動起動情報を前記再生シーケンスデータ記録手段に保存するステップと、
前記今次の表示域に振動起動情報が対応付けられている場合には、前記制御手段が振動起動の命令を発し、前記振動発生手段が該命令に従って振動を発生するステップと
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記電子機器が、前記制御手段に接続された発光手段をさらに備えており、
各表示域に対応付けた発光制御情報を前記再生シーケンスデータ記録手段に保存するステップと、
前記今次の表示域に発光制御情報が対応付けられている場合には、前記制御手段が発光を制御する命令を発し、前記発光手段が該命令に従って発光するステップと
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記電子機器に、請求項1?6のいずれかに記載のステップを実行させるためのプログラム。
【請求項8】
複数の紙面上のコマを有するマンガを表示装置に表示する電子機器であって、
前記表示装置に表示するラスターデータを保存する画像メモリーと、
前記画像メモリーからラスターデータを呼び出して前記表示装置に出力する画像表示手段と、
前記画像表示手段からのラスターデータを画像として表示する前記表示装置と、
マンガのベクトルデータを保存するベクトルデータ記録手段と、
マンガのラスターデータを保存するラスターデータ記録手段と、
マンガを前記表示装置によって閲覧するために離散的に定められる表示域の前記マンガの紙面内での位置と、各表示域の再生順序と、再生するデータがラスターかベクトルかを示す再生データの種類とを保存する再生シーケンスデータ記録手段と、ここで、前記表示域の前記マンガ紙面内での位置は、前記紙面上のコマの少なくともいずれかに対して複数の表示域が割り当てられて、該複数の表示域は互いにほぼ同じ大きさであり、
マンガを閲覧しているユーザーからのマンガについての表示操作の入力を受け付ける入力手段と、
前記入力手段からの入力を受け付けて再生すべき表示域を定める機能と、前記電子機器が前記入力手段を介してユーザーからの入力を受け付けると、前記再生シーケンスデータ記録手段から、該入力に応じた前記再生順序を呼び出す機能と、該再生順序にしたがって、再生すべき今次の表示域の位置および再生データの種類を呼び出し、前記画像制御手段に描画命令を発する機能とを有し、前記再生シーケンスデータ記録手段と前記入力手段とに接続されている制御手段と、
該制御手段からの描画命令に従って、前記ベクトルデータ記録手段から前記マンガのベクトルデータを呼び出し、前記画像メモリーに出力するためのラスターデータを生成する機能と、該生成されたラスターデータと前記ラスターデータ記録手段からの前記マンガのラスターデータとを前記画像メモリーに書き込む機能と、該再生データの種類がラスターである場合には、該今次の表示域の位置に対応するマンガのラスターデータを前記ラスターデータ記録手段から呼び出し、前記画像メモリーに書き込む機能と、該再生データの種類がベクトルである場合には、前記画像制御手段が、該今次の表示域の位置に対応するマンガのベクトルデータを前記ベクトルデータ記録手段から呼び出してラスターデータを生成し、前記画像メモリーに書き込む機能と、ユーザーからの前記入力手段を介した入力によって選択とされるかまたは非選択とされるかが定められ、選択時に表示される情報の保存位置を示すハイパーリンクタグが、前記マンガのラスターデータまたは前記マンガのベクトルデータのいずれかに表示可能に埋め込まれており、該保存位置は、前記電子機器内の保存位置、または、前記電子機器がネットワークアクセス機能を有する場合にはネットワークアクセス可能な保存位置であり、マンガを閲覧しているユーザーによる前記ハイパーリンクタグの選択を、前記入力手段を介して前記制御手段が受け取ると、前記制御手段が描画命令を発し、前記画像制御手段が該描画命令に従って前記保存位置にある情報にアクセスして前記画像メモリーにラスターデータとして書き込む機能とを有し、前記制御手段に接続されている画像制御手段と
を含んでなる電子機器。」
と補正しようとするものである。

すると、本件補正は、
本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である
「複数のコマを有するマンガ」、「マンガを閲覧するための各コマの前記マンガ内での位置と、各コマの再生順序と、再生するデータがラスターかベクトルかを示す再生データの種類とを、前記電子機器に備えられる再生シーケンスデータ記録手段に保存するステップ」及び「今次のコマの位置」をそれぞれ「複数の紙面上のコマを有するマンガ」、「マンガを前記表示装置によって閲覧するために離散的に定められる表示域の前記マンガの紙面内での位置と、各表示域の再生順序と、再生するデータがラスターかベクトルかを示す再生データの種類とを、前記電子機器に備えられる再生シーケンスデータ記録手段に保存するステップと、ここで、前記表示域の前記マンガ紙面内での位置は、前記紙面上のコマの少なくともいずれかに対して複数の表示域が割り当てられて、該複数の表示域は互いにほぼ同じ大きさであり」及び「今次の表示域の位置」と限定し、
本件補正前の請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である
「マンガを構成する各コマ間を移動する際のスクロール速度データ」及び「今次のコマ」をそれぞれ「マンガの紙面上のコマにある表示域の間を移動する際のスクロール速度データ」及び「今次の表示域」と限定し、
本件補正前の請求項5に記載した発明を特定するために必要な事項である
「各コマに対応付けた振動起動情報」及び「今次のコマに振動起動情報がある場合」をそれぞれ「各表示域に対応付けた振動起動情報」及び「今次の表示域に振動起動情報が対応付けられている場合」と限定し、
本件補正前の請求項6に記載した発明を特定するために必要な事項である
「各コマに対応付けた発光制御情報」及び「今次のコマに発光制御情報がある場合」をそれぞれ「各表示域に対応付けた発光制御情報」及び「今次の表示域に発光制御情報が対応付けられている場合」と限定し、
本件補正前の請求項8に記載した発明を特定するために必要な事項である
「複数のコマを有するマンガ」、「マンガを閲覧するための各コマの前記マンガ内での位置と、各コマの再生順序と、再生するデータがラスターかベクトルかを示す再生データの種類とを保存する再生シーケンスデータ記録手段」、「再生すべきコマ」及び「今次のコマ」をそれぞれ「複数の紙面上のコマを有するマンガ」、「マンガを前記表示装置によって閲覧するために離散的に定められる表示域の前記マンガの紙面内での位置と、各表示域の再生順序と、再生するデータがラスターかベクトルかを示す再生データの種類とを保存する再生シーケンスデータ記録手段と、ここで、前記表示域の前記マンガ紙面内での位置は、前記紙面上のコマの少なくともいずれかに対して複数の表示域が割り当てられて、該複数の表示域は互いにほぼ同じ大きさであり」、「再生すべき表示域」及び「今次の表示域」と限定するものであり、かつ、本件補正後の請求項1、2、5、6及び8に記載された発明は、本件補正前の請求項1、2、5、6及び8に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かを、請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)について以下に検討する。

(2)刊行物の記載事項
<刊行物1>
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2003-108284号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。
(原文中、○内に数字のある記号は、[]内に数字を付して代替する。)

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子書籍など、画面より大きな画像ファイルを表示するための画像コンテンツ配信システム及び画像表示装置に関する。」

(イ)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、いかに融通性の高いデジタルコンテンツであっても、オリジナルが絵画や芸術性の高い写真、コミック(漫画)などの手書き原画にあっては、オリジナルが有する細やかな表現やタッチ、あるいは風合いといった人間の感性に語りかける要素を再現することが最重要であって、デジタルコンテンツ化する際に、うかつに小サイズ化し、これらの要素をつぶしてしまうことは慎重に避けなければならない。
【0005】
仮に、原画が持つクオリティを画像のニュアンスを伝えられるぎりぎりまで縮少して画像をデジタルコンテンツ化した場合であっても、一般的なPDAの有効画面に対して数倍のサイズは必要であろう。このため、これらの画像をPDA上で閲覧するには、小さな画面をスクロール操作して表示するという、まことに甚大な手間がかかるという問題があり、そればかりか、手間がかかりすぎ途中で見ることを挫折してしまうことも考えられる。
【0006】
本発明は上記従来例の問題点に鑑み、画像表示端末が表示可能な大きさより大きな画像ファイルをコンテンツプロバイダ側では縮小することなく、また、画像表示端末側ではスクロール操作することなく簡単な操作で見やすく閲覧することができる画像コンテンツ配信システム及び画像表示装置を提供することを目的とする。」

(ウ)「【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明に係るネットワーク構成を示した図である。移動体通信網2はセルラー方式により複数配置された基地局4により、携帯電話5、PDA6、7などの携帯型端末が無線で接続されて構築されている。移動体通信網2は携帯型端末5?7に対し、既存電話網3と接続することによる携帯電話サービスと、インターネット1へ接続することによるインターネット接続サービスとを提供している。
【0009】
ここで、インターネット1には電子出版社のサーバ9が接続しており、サーバ9はインターネット1に直接接続した通信端末(パーソナルコンピュータ8)や、例えば移動体通信網2を介して接続した携帯型端末5?7に対してコミックの電子出版サービスを提供している。サーバ9の電子出版社は、コミックをネットワーク販売するビジネスを行っているとし、配信するコミックは、多くが過去に出版された膨大な作品群を網羅しているため、手書きで描かれた原画は、スキャニングして圧縮した画像ファイル化を行っているものとする。」

(エ)「【0010】
図2はサーバ9により静止画像で提供されるコミックファイルの1ページを表した例を示す。コミックの原稿をスキャンしたページ10は、丸数字[1]から[6]までコマで分割され描かれている。なお、丸数字の順序は通常、コミックを読む場合に読み進めるコマの順序を表している。また、コミック作家の作画上の演出によっては、[5]のコマのように縁取りしない場合もある。また、相対スケール12はページ10の縦軸 (Y)と横軸 (X) の相対的なサイズを示すための仮想的なスケールであり、実際の画像には表示されていない。
【0011】
次に、電子出版社から購入したコミックファイルをPDA7上で表示する動作を例として、本発明を利用したサービスを説明する。図1では、PDA7が移動体通信網2に接続することで、移動体通信網2を通してインターネット1と接続し、電子出版社のサーバ9によるコミックのネットワーク販売サービスを受けることを可能にしている。PDA7のユーザがサーバ9の電子出版社からコミックファイルを購入する手順は省略し、既にPDA7上には購入された数十ページに及ぶコミックの一編がPDA7内にダウンロードされているものとする。
【0012】
図2に示すページ10に対して、コミックの各コマ[1]?[6]を分割表示するため、それぞれのコマに相当する領域をエリアとして設定した例を図4のエリアリストに示した。このエリアリストは、説明の便宜上、表形式として記載したが、エリア情報が図4のように独立した表形式で存在するとは限らず、各画像ファイル中に組み込まれる場合や、コミックの全ページにわたるエリア情報をまとめてバイナリ形式の添付ファイルとして存在するなど、様々な形式が考えられる。
【0013】
図4に示すエリアリストでは、図2のページ10の6つのコマ[1]?[6]に対応するエリアA?Fと、図2のコマ[6]の一部である網掛け領域15を表示するためのエリアGが設定されている。各エリア情報は、図2のページ10の縦軸(Y)と横軸(X)の相対的なサイズを表す相対スケール12を元に、図2の始点11を原点(0/35,0/50)としてコマ[1]からコマ[6]及び網掛け領域15の右上肩の丸印として表した画像上の各エリアの始点座標と、縦横のサイズが相対的な全長に対する形式で記載されている。例えば、第一行のエリアAの始点座標は、X軸が全長=35に対して0、Y軸が相対全長=50に対して0となっており、エリアAのサイズはX方向が相対全長=35に対して17、Y方向が相対全長=50に対して10とされている。」

(オ)「【0014】
図3は一般的なPDA本体20であり、画面表示と本発明の説明に必要な機能ボタンのみを示している。右カーソルボタン22はエリア設定に従って表示する画面を順送りに表示切り換えを行うボタンであり、図4のエリアリストの順に切り替わる。左カーソルボタン21は逆送りの表示切り換えに使用される。すなわち、コミック閲覧の場合では、エリア設定は、コマやふきだしに沿って設定されているため、右カーソルボタン22を1つ用いるだけでスト-リに沿ってコミックを閲覧することが可能となる。また、表示される部位によっては見づらい個所もあるため、+ボタン24による画面25に表示された画像の拡大表示と、-ボタン23による画像の縮小表示も可能である。
【0015】
画面25には、図2のページ10のコマ[1]の全体が表示されている。この表示は、PDA7上で起動しているアプリケーションが、コミックのページ画像ファイルの情報から既に判明しているページ10の縦横のドットサイズ、及び画面25の有効表示ドットサイズと、コマ[1]を表示するためのエリアAに指定されたサイズ情報とをあわせて演算を行い、画面25上の表示始点26に合わせて、エリアAで設定された領域によりコマ[1]の全体を表示している。
【0016】
次に、ユーザが右カーソルボタン22を押下し、コマの順送りを選択すれば、PDA7上で起動しているアプリケーションは、エリアリストから、エリアAの次のエリアであるエリアBの情報を取り込み、エリアAの場合と同様の演算と表示制御を行い、コマ[2]を画面25上へ表示する。さらに、ユーザが右カーソルボタン22を押下して順送りを続けると、エリアリストにおける順番と設定値に従って、エリアCが示すコマ[3]、エリアDが示すコマ[4]、エリアEが示すコマ[5]、エリアFが示すコマ[6]が表示される。さらに、図4におけるエリアリストのうち、最後のエリアGのみコマ[6]ではなく、網掛け領域15に相当する領域をカバーしている。これは、作者や出版社の意向を反映し、コマ全体以外にも強調表示したい対象を拡大表示する演出に用いることもできる。さらにユーザが右カーソルボタン22を押下すると、次のページへ処理が移行する。
【0017】
このように、ユーザの順送り指示に従って図2のページ10を分割して部分毎に表示することで、ページ10に描かれたストーリーを、スクロールなどのストレスを感じさせる手法によることなく読むことが可能となる。さらに、本発明はPDAだけではなく、図1においてPDA7と同じく移動体通信網2に接続する携帯電話5や、インターネット1へ接続しているパーソナルコンピュータ8、あるいは大きな画面サイズのディスプレイへ接続したパーソナルコンピュータにも適用可能である。」

(カ)「【0024】
以上説明したように、絵画やコミックなど、オリジナル原画をできるだけ高画質で再現することが要求されるデジタルコンテンツが、PDAや携帯電話が有する小型ディスプレイでは表示しきれないサイズになるという問題に関して、小型ディスプレイで表示するためには、画面のスクロールに頼るしかないという問題に対し、本発明によれば、画像ファイルに関連して複数箇所のエリアを指定するエリアリストを用意し、その順番に従ってPDAなどの端末が画像を前記エリア情報に従って拡大表示するので、大きなサイズの画像を分割して順次表示するほか、重要なポイントの拡大表示が可能であり、さらには画像がコミックであれば、コマ間のジャンプをワンタッチで行えるなど、特にPDAや携帯電話など小型ディスプレイのユーザへの利便性が向上する。また、小型ディスプレイという概念は主観的なものであるため、当然、本発明をデスクトップ型のパーソナルコンピュータへ適用してもよい。」

(キ)「【0026】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、1ページ分の画像ファイルを閲覧順に分割して、各分割した画像を閲覧順に切り替えて表示するようにしたので、画像表示端末が表示可能な大きさより大きな画像ファイルをコンテンツプロバイダ側では縮小することなく、また、画像表示端末側ではスクロール操作することなく簡単な操作で見やすく閲覧することができる。」

上記(ア)ないし(キ)の記載事項及び図面を総合勘案すると、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

「複数の紙面上のコマを有するコミック(漫画)をPDAの小型ディスプレイに表示する方法であって、
手書きで描かれた原画をスキャニングして圧縮した画像ファイルであるコミックファイルを電子出版社のサーバからPDA内にダウンロードし、
コミックを前記小型ディスプレイによって閲覧するために、前記コミックの各コマに相当する領域をエリアとして、ページの縦軸と横軸の相対的なサイズを表す相対スケールを元に、画像上の各エリアの始点座標と、縦横のサイズが相対的な全長に対する形式で設定したエリア情報と、各コマの表示される順番とを、エリアリストとし、
コミックを閲覧しているユーザがPDAに備えられる右カーソルボタンを押下し、コマの順送りを続けると、エリアリストにおける順番と設定値に従って、前記小型ディスプレイにコマが順番に表示される方法。」

<刊行物2>
本件について、審査官による審査(特許法第162条、前置審査)の結果、特許をすべき旨の査定ができない旨の報告(同法第164条第3項、以下、「前置報告」という。)が特許庁長官になされた際、当該前置報告において提示された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2002-278540号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。

(ク)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像コンテンツ表示方法及び画像コンテンツ表示装置並びに画像コンテンツ記憶媒体及び画像表示方法及び画像表示装置に関し、詳しくは表示装置の表示領域よりも大きな画像コンテンツ、例えば、電子出版物を表示する表示領域を効果的に分割して順次に分割した画面を表示装置のスクリーンに表示するようにした画像コンテンツ表示方法及び画像コンテンツ表示装置並びに画像コンテンツ記憶媒体に関する。」

(ケ)「【0002】
【従来の技術】
従来技術における画像コンテンツをスクリーンに表示するには、例えば漫画や雑誌、カタログなど、レイアウトに凝ったコンテンツを低コストでデジタル化するためのツール、例えば、スキャナー等を利用してデジタル化して所望の画像を表示させることが周知である。」

(コ)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来技術で説明した画像コンテンツをデジタル化して画像として表示するには、画像化された画像データに記述されている文字などを読めるように表示する工夫が必要であり、そのためには画像サイズと同等か、それ以上の大きさのスクリーンが必要になる。そのため、携帯型の小型端末機では画像化されたコンテンツをそのまま表示することが難しいという問題がある。
【0004】
また、コンテンツを画像化してしまうため、キーワードによる検索が出来なくなるという問題もある。
【0005】
従って、画像コンテンツであっても、表示するスクリーン(表示画面)に合わせた表示領域に表示できるようにすると共に表示するスクリーンに合わせた表示形態にしてもキーワード等による検索ができる画像表示形態を有する画像コンテンツ表示方法及び画像コンテンツ表示装置並びに画像コンテンツ記憶媒体に解決しなければならない課題を有する。」

(サ)「【0016】
表示装置7は、表示バッファ10を備え、スクリーン8及び音出力部9、操作部11を備えており、通常は携帯型端末機等からなる。」

(シ)「【0019】
先ず、図2に示すように、一つの画像コンテンツからなる元画像12を画像の特異なデータ又は特徴的なデータ毎に、X/Y方向の座標系の座標値を持たせてコンテンツ画像を生成する。
【0020】
次に、図3に示すように、コンテンツ画像に対して、表示装置7のスクリーン8の表示領域の大きさの中心位置を中心にしてコンテンツ画像に合わせてレンダリングする。図においてはno1のスクリーン分割画像が相当する。
【0021】
このようにして元画像12を座標に従ったコンテンツ画像にして、スクリーンの表示領域の大きさの中心位置を中心にしてレンダリングすると、図4に示すように、コンテンツ画像に対して、12通りのスクリーン分割画像no1?no12を生成することができる。これらのスクリーン分割画像no1?no12を、表示命令群(表示指示情報、効果指示情報)に従って、表示装置7のスクリーン8に順次に表示するようにすれば、スクリーン分割画像no1?no12の画像は一部重複させて表示、又は隙間のない画像として再現させることができ、更に予め画像コンテンツの流れに沿った方向から順次にスクリーン分割画像no1?no12を再現すれば、それは小さな画面を見ながらにしてあたかも大きな画像を見ているが如くにすることができるのである。
【0022】
又、この分割されたスクリーン分割画像がスクリーンの表示領域の大きさを超える画像領域であった場合、表示指示情報に基づいてスクリーン分割画像をスクリーンにスクロール表示するようにすれば良い。
【0023】
尚、このスクリーン分割画像の数は、実施例のように12個に限定されるものではなく、元画像の大きさとスクリーン8の表示領域の大きさの関係によって分割する数も適宜変わるものであることは勿論のことである。」

(ス)図4(特に、スクリーン分割画像no5及びno6)から見て、表示装置のスクリーンの表示領域の元画像内での位置は、画像の特異なデータ又は特徴的なデータであるコンテンツ画像の少なくともいずれかに対して複数のスクリーン分割画像が割り当てられて、該複数のスクリーン分割画像は互いにほぼ同じ大きさである。

上記(ク)ないし(ス)の記載事項及び図面を総合勘案すると、刊行物2には、次の発明(以下、「刊行物2発明」という。)が記載されていると認められる。

「元画像から生成した複数の画像の特異なデータ又は特徴的なデータ毎に、X/Y方向の座標系の座標値を持たせたコンテンツ画像を有する漫画を携帯型端末機のスクリーンに表示する方法であって、漫画を前記スクリーンによって閲覧するために、隙間のない画像として再現させることができるスクリーン分割画像を表示命令群(表示指示情報、効果指示情報)に従って、前記スクリーンに順次に表示し、更に予め画像コンテンツの流れに沿った方向から順次に前記スクリーン分割画像を再現し、ここで、前記スクリーンの表示領域の元画像内での位置は、コンテンツ画像の少なくともいずれかに対して複数のスクリーン分割画像が割り当てられて、該複数のスクリーン分割画像は互いにほぼ同じ大きさである方法。」

<刊行物3>
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2003-122473号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。

(セ)「【0002】
【従来の技術】
電子化された書籍データ、たとえば漫画データをコンピュータ等の表示画面上に表示する場合、従来は実際に紙に描かれた漫画を画像スキャナなどで読み込ませて画像データ化し、この読み込ませた画像データをそのまま表示画面に表示していた。
【0003】
即ち、漫画は紙上に表された描画通りに電子化され、紙上と同様に画面上に表示されていた。また、データ構成として、漫画中の画像データ(絵の部分)と吹出しに挿入されるセリフのデータとが一緒に格納されているソフトウェアもあった。このため、登場人物のセリフを表す吹出しには、紙面の上に描かれた通りのセリフがそのまま表示される場合があった。
【0004】
また、コンピュータ制御により、ストーリー性を有する画像をたとえば漫画のコマ進行にしたがって表示させるソフトもあった。この種のソフトウェアは、たとえばゲームプラットフォームの1つであるプレイステーション(ソニー株式会社、登録商標)でプレイすることができる。また、この種のソフトウェアで提供される漫画はクリック漫画と称される。」

(ソ)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、電子化された漫画の場合には、たとえば表示画面に漫画の見開き全体を表示しても、セリフの文字などの細かい部分が判別できなかった。
【0006】
このため、所望の部分を拡大表示する拡大表示機能が備えられているが、拡大表示された画像を移動させて閲覧しなければならなかった。また、電子情報化された漫画を閲覧する読者は、見開き全体を十分に確認できず、作者がどのコマを強調したいのかといった点の認識がしづらかった。即ち、人によっては、作者の強調したい点を把握できなかったり、把握して理解するまでにある程度の時間を要していた。
【0007】
また、コマを拡大などして表示していると、各コマに対してコマが繋がる順序がわからなくなったり、主要なコマを読み飛ばすなどの不具合が避けられなかった。
【0008】
これでは、せっかく漫画を楽しもうとしても十分に楽しむことができなかった。
【0009】
更に、漫画においては、注目すべきコマの進行制御に対してストーリー仕立てにプログラムが組まれているソフトウェアがあった。この場合には、たとえば、各コマに絵や吹出しが表示されているだけではなかった。たとえば、ユーザがコマ中のあるオブジェクトをクリック操作などして選択すると、注目コマをつぎのコマに移行させる条件がクリアされる。これにより、漫画の注目コマが予め決められた進行順序にしたがって進むように表示されていた。
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するため、漫画などの書籍内容を表示画面に表示して作者の意図から外れることなく閲覧することができ、また、強調したい部分を確実に強調した状態で閲覧することができる電子情報処理装置、電子情報処理方法およびその記録媒体ならびにコンピュータプログラムを提供することを目的とする。」

(タ)「【0024】
以下の説明では、電子漫画を閲覧するプラットフォームをゲーム機とした場合の例に挙げて説明する。図2は本実施の形態におけるゲーム機の全体構成の一例を示すブロック図である。ゲーム機1aは、大別して、ゲーム機1aの主たる機能を有するゲーム機本体2と、ゲーム機本体2に対する操作指示のための入力を行う入力装置(たとえば、キーパッドやゲームパッドなどが含まれる)3を備える。このゲーム機1aは、後述するが、記録媒体(たとえば、CD-ROM4)もしくはハードディスクに格納されたプログラムにしたがって動作する。プログラムとしては、入力装置(ゲームパッド)の操作でインタラクティブに漫画コンテンツの閲覧を実現するためのプログラム、ビデオゲームを実現するプログラム、オンラインサービスを実現するためのプログラム、あるいは、映画、テレビ番組、音楽、スポーツ、ドキュメンタリーなどのコンテンツを視聴するためのプログラムなどがある。なお、各プログラムは、ネットワーク100を通じてゲーム機1a内のハードディスクに格納させるようにしてもよい。たとえば、漫画コンテンツについては、漫画コンテンツが蓄積されている漫画サーバ群102aよりネットワーク100を通じてゲーム機1a,1b…、PC104a,104b…に配信される。
【0025】
メモリカード5はゲームの途中経過データやゲーム環境設定データなどのゲームデータを保存する記録媒体であり、ゲーム機本体2に着脱自在に装着可能である。また、ゲーム機本体2には、ゲーム機本体2からの映像信号や音声信号に基づいて漫画、ビデオゲーム、オンラインのサービス内容に応じて映像表示やサウンド出力を行う出力装置(たとえばモニタディスプレイ及びスピーカを含む)6が接続される。
【0026】
また、ゲーム機本体2には、上述した記録媒体のひとつであるCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)4が着脱自在に装着される。
【0027】
ゲーム機本体2は、CPU及びROMを内蔵した主制御部11、RAM12、インタフェース部13、サウンド処理部14、グラフィック処理部15、CD-ROM4を着脱自在に搭載して内容をアクセスするCD-ROMドライブ16、通信インフラとしてのネットワーク100を介してサーバ群102または他のゲーム機との間のデータ通信等を行う通信インタフェース17、HDD(ハードディスクドライブ)18、以上の各構成要素を相互に接続するバス19を備えている。なお、本実施の形態では、記録媒体としてCD-ROMを例に挙げていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、CD-ROMよりも記憶容量が大きいDVDを適用してもよい。この場合には、CD-ROMドライバに代えてDVDドライバを設けるとよい。
【0028】
主制御部11は、発振器やタイマカウンタ(共に図示せず)を備えており、発振器から所定期間ごとに出力されるタイミング信号に基づいてクロック信号を生成し、このクロック信号をタイマカウンタにより計数して時間の計時を行う。RAM12は、主制御部11のCPUがプログラムを実行するために使用する主記憶装置であり、CPUが実行するプログラムやその実行のために必要となるデータが格納される。またRAM12は、プログラム実行時におけるワークエリアとしても使用される。
【0029】
インタフェース部13は、入力装置3およびメモリカード5を着脱自在に接続することができるように構成されている。このインタフェース部13は、バス19に接続された各部(主に、主制御部11)と入力装置3またはメモリカード5との問のデータ転送を制御する。
?(中略)?
【0031】
グラフィック処理部15は、フレームバッファ(図示せず)を備え、主制御部11からの命令に応じた画像をフレームバッファ上に描画する。また、グラフィック処理部15は、フレームバッファに描画された画像データに所定の同期信号を付加してビデオ信号を生成し、これを出力装置6に供給する。
【0032】
CD-ROMドライブ16は、記録媒体であるCD-ROM4に格納されたデータを読み取る読取装置である。ゲーム機1aは、ゲーム機本体2に、CD-ROM4に記録されたゲームプログラムに従った制御を実行させることにより、後述するゲームに関する制御を実現する。
【0033】
通信インタフェース17は、ネットワーク100を会しての通信のほか、他のゲーム機との間でデータ通信(アイテムの交換など)やマルチプレイヤによるゲームの通信制御を司る。たとえば、通信インタフェース17は、ゲーム機本体2と通信ネットワーク100との間の情報(プログラムやデータ)の授受を制御する。通信インタフェース17および通信回線99を介して外部の通信ネットワーク100からダウンロードされたゲームプログラムおよび後述する電子化漫画情報は、HDD18に一時的に格納することができる。
【0034】
ネットワークを通じての漫画サーバ群102eの提供では、漫画を要求するクライアントに対して漫画のページ単位もしくは見開き単位でデータを配信することができる。その際、HDD18には、配信されてきたデータについてページ単位もしくは見開き単位で所定量を一時的に保持することができる。この一時的保持により、注目するコマの前後のページあるいは見開きをスムーズに移行させることが可能となる。なお、提供される漫画について全データを保持するようにしてもよいが、その際はセキュリティ上の保証を実現できることが前提となる。
【0035】
HDD18は、主制御部11のCPUがプログラムを実行するために使用する補助記憶装置である。HDD18には、通信インタフェース17を用いてダウンロードした情報やアクセスして得た情報、CD-ROM4から読み取った情報やプログラムなどを格納することができる。
【0036】
CD-ROM4には、上述したように、ゲームに関する処理を実現するためのプログラムやあるいは漫画を閲覧するためのプログラム、画像データ、サウンドデータなどが格納されている。このゲームプログラムには、本実施形態に係る方法をゲーム機1aに実行させるプログラムが含まれている。CD-ROM4に格納されたゲームソフトウェアは、CD-ROMドライブ16を起動して必要なゲームプログラム及びゲームデータ、あるいは漫画閲覧ビューアプログラムなどを読み込ませ、主制御部11を読み込ませたプログラムにしたがって動作させる。
?(中略)?
【0038】
グラフィック処理部15は、フレームバッファ(図示せず)を備え、主制御部11の制御にしたがってゲーム画像をフレームバッファ上に描画する。また、グラフィック処理部15は、フレームバッファに描画された画像データに所定の同期信号を付加してビデオ信号を生成し、これを出力装置6に供給する。」

(チ)「【0039】
入力装置3には、ゲームに関する様々な指示をゲーム機本体2に入力するためにプレーヤによって操作されるゲームパッドが含まれる。入力装置3は、ゲームパッドなどの操作に応じた指令信号をインタフェース部13を介してゲーム機本体2に送る。
【0040】
本実施の形態では、ゲーム機1aの操作入力はゲームパッドにより行われる。以下、ゲームパッドについて説明する。本実施形態における入力装置3としてのゲームパッドの構成例を図3に示す。図3は本実施の形態の入力装置の一例を説明するための図であり、図3の(a)がゲームパッドの平面を示し、同図(b)が背面を示している。
【0041】
図3において、ゲームパッド30には、たとえば、移動情報等を入力するための十字キー31や、各種の指令をゲーム機本体2に指示入力するための操作キーが設けられている。操作キーとして、たとえば、円形の印が付されたボタン32、三角形の印が付されたボタン33、四角形の印が付されたボタン34、X形状の印が付されたボタン35、スタートボタン36、セレクトボタン42がある。
【0042】
また、ゲームパッド30には、更に、移動情報を入力するためのジョイスティック37も設けられている。図3の(b)に示されるように、ゲームパッドの背面にも、複数の操作キーの各キーが設けられている。操作キーとして、R1ボタン38、R2ボタン39、L1ボタン40、L2ボタン41がある。
【0043】
スタートボタン36およびセレクトボタン42を除くすべての操作キーは、たとえば、感圧式で構成されている。更に、ゲームパッド30は、振動機能を有している。つまり、ゲームパッド30はモータを内蔵しており、ゲーム機本体2から所定の制御信号を受けることでモータが作動し、ゲームパッド30を全体的に振動させることができるようになっている。これにより、漫画閲覧やゲーム進行の際に、演出として、ゲームパッド30を保持するプレーヤに振動を伝えることができる。
【0044】
ゲーム機本体2は、ゲームパッド30の振動の強さを調節する機能を有しており、たとえば「強」、「中」、「弱」の3段階の振動の強さが用意されている。ゲームパッド30の振動は間欠的であり、いずれかの強さを有する振動がランダムに発生するように制御することも可能である。なお、振動の強さは、ユーザが段階を選択的に設定できるようにしてもよく、あるいは、漫画やゲームのシーンに応じて各プログラムにしたがってコンピュータ制御により段階を選択するようにしてもよい。」

(ツ)「【0046】
出力装置6は、ゲーム機本体2からの映像信号や電子化漫画情報及び音声信号に基づいてゲーム画像や漫画閲覧情報を表示し、音声を出力する。本実施形態では、スピーカ内蔵のモニタ装置たとえばテレビジョン(TV)セットが出力装置6として用意されている。このモニタ装置は、画像表示用の表示画面61および音声出力用のスピーカ62を備えている。また、出力装置6は、グラフィック処理部15からのビデオ信号に応答して画像を表示画面61に表示すると共に、サウンド処理部14からのサウンド信号に応答してスピーカ62から音声を出力する。したがって、出力装置6は、表示装置および音声出力装置の双方として機能する。
【0047】
主制御部11は、ROMに格納されている基本ソフトウェアやCD-ROMドライブ16によってCD-ROM4から読み出され、RAM12に格納されるプログラムにしたがってゲーム機本体2の動作を制御する。
【0048】
たとえば、CPU12は、CD-ROM4からグラフィックデータを読み出してグラフィック処理部15に転送し、グラフィック処理部15に画像の生成を指示する。この指示に応答して、グラフィック処理部15は、グラフィックデータを利用してビデオ信号を生成する。このビデオ信号は、出力装置6に送られる。これにより、出力装置6の表示画面上に画像が表示される。」

(テ)「【0049】
次に、主制御部11のCPUによりCD-ROM4から読み出され、メインメモリであるRAM12に格納される漫画閲覧プログラムデータについて説明する。図4は、CD-ROM54の記憶内容及び記憶領域を説明するための図である。
【0050】
図4に示すようにCD-ROM4には、主制御部11が実行する漫画閲覧プログラムを記憶するプログラム記憶領域4a、各種ゲーム機動作上必要となるデータを記憶する関連データ記憶領域4b、三次元モデルのモデリングデータや背景、閲覧二次元画像データなどを記憶する画像データ記憶領域4c、効果音などのサウンドデータを記憶するサウンドデータ記憶領域4d、漫画閲覧実行時に表示させる電子化漫画に特有のアイコン情報を記憶するアイコンデータ記憶領域4e等より構成されている。
【0051】
なお、本実施の形態においては、このCD-ROM4の各格納領域に格納されている各データの内、漫画閲覧に必要な一部のデータがRAM12にロードされ、このRAM12にロードされたデータに基づいて漫画情報の閲覧処理が実行される。」

(ト)「【0052】
次に、主制御部11によりCD-ROM4から読み出され、RAM12に格納されるプログラムやデータについて説明する。
【0053】
図5は、本実施の形態のRAM12のメモリ構成を示す図である。同図に示すようにRAM12は、主制御部11が実行するプログラムを格納するプログラム(漫画を閲覧する場合には漫画閲覧プログラム)格納領域12a、漫画情報を閲覧する場合の漫画サーバ群102eよりの漫画画像情報の格納領域12b、漫画のセリフの情報を記憶するセリフ情報格納領域12c、漫画の閲覧時に一部をマスクして表示する場合のマスク情報を格納するマスク情報格納領域12d、本実施の形態に特有のたとえば電子化漫画情報を表示画面61にどのように表示するかを規定する閲覧制御情報を格納する閲覧制御情報ファイル格納領域12eを備える。」

(ナ)「【0056】
本実施の形態に特有の閲覧制御情報は、たとえば電子化漫画情報を表示画面61に表示して閲覧する際に、漫画データの吹出し部と漫画のコマ画像やマスク画像の画像データ位置座標、閲覧の焦点対象を表す注視点の移動順序などを特定する情報をスクリプト言語で表現するものであり、作者の意図に沿った木目細かな漫画表示閲覧が可能となる。
【0057】
注視点情報には、リソース情報として注視点位置情報とスケール情報が含まれる。注視点情報には、更に、シーケンスデータとしてコマ-コマ間、マスク-マスク間、コマ-マスク間を繋げる順序情報、移動時間情報、演出情報(等速、加減速、フェード切替)などが含まれる。」

(ニ)「【0058】
以上の構成を備える本実施の形態の書籍の電子化情報、たとえば漫画の電子化情報を閲覧する制御手順を説明する。本実施の形態は、上述したように、表示画面61に表示して閲覧する際に、漫画データの吹出し部と漫画のコマ画像の画像データ位置座標、閲覧の焦点対象を表す注視点の移動順序などを特定する情報をたとえばスクリプト言語で表現することにより、表示側で作者の意図通りに漫画を閲覧させることができる。
【0059】
以下、以上の構成を備える本実施の形態の漫画閲覧制御を図6のフローチャートを参照して以下に説明する。図6は本実施の形態の漫画閲覧制御を説明するためのフローチャートである。なお、以下に説明するフローチャートにしたがう動作は主制御部11(図2参照)の制御の下で実行されるが、その動作において周辺ユニットの協力を得るものとする。
【0060】
この処理は、CD-ROM4に記憶された漫画閲覧ビューアプログラムをゲーム機本体2が実行すると共に漫画サーバ群103fより漫画閲覧情報を受領して受領した漫画データに含まれる表示制御データでありスクリプト言語で表された閲覧制御データに従った漫画表示制御を行う処理である。以下説明する。
【0061】
図6において、まず、ステップS1において、ゲーム機本体2に実行漫画閲覧ビューアプログラムが記録されたCD-ROM4をセットする。これにより、処理はステップS2に進み、基本処理が実行される。この場合には、必要なプログラムがCD-ROM4から読み出されてRAM12に格納され初期画面(メーカーのロゴなど)の表示、メモリカード5のチェック、タイトル画面の表示が行われ、データのロード等を含む基本処理が行われる。
【0062】
つづいてステップS2で基本処理が終了すると、メモリカード5から読み出された当該ゲームに関するセーブデータが参照され、認証サーバ(管理サーバ)群102aにログインして認証を求める処理が実行される(ステップS3)。これにより漫画閲覧が要請される。認証を受け付けた認証サーバ(管理サーバ)群102aでは、当該ユーザの認証およびその結果がコンテンツサーバ群102b、プロファイルサーバ群102g、漫画サーバ群102eなど他のサーバに通知される。これにより認証が完了すると、プレーヤによる漫画サーバ群102eへのアクセスが可能となる。
【0063】
つづくステップS4において、一定量、たとえば1ページ分の漫画閲覧情報が漫画サーバ群102eより読み出される。この漫画閲覧情報には、上述した漫画画像情報と、コード情報としてのセリフ情報と、この2つの情報から構成される漫画情報を表示画面に表示する際の表示の仕方をスクリプト言語で表現した閲覧制御情報と、漫画画像のどの部分を表示するかを規定するマスク情報が含まれる。これら情報はそれぞれ必要に応じてRAM12の所定領域に格納される。
【0064】
つづくステップS5において、閲覧情報が解析され、最初に表示する漫画画像情報、該画像情報の表示画面上での表示位置、表示スケール(表示倍率)が求められる。この解析結果にしたがって漫画画像情報を表示する処理が実行される(ステップS6)。
【0065】
そして、ステップS7において、漫画画像のうちの表示注視点位置、表示位置、及び表示スケールに基づいて注視点を移動させて表示画面が形成される。以下の説明は閲覧漫画の一例としてたとえば図7に示すように1ページ当たり7コマの漫画を閲覧する場合について例を挙げて説明する。最初には第1コマ即ち右上のコマの中央部に注視点が設定される。このコマ全体は、明確に認識可能に他と明度を変えて、あるいは輝度や彩度を変えて表示される。
【0066】
図7の例では漫画情報中の最初に表示されるのが右上の第1コマの画像である。ページの最初のコマの表示を行う場合には、たとえば最初に極わずかな時間1ページ全体が表示制御される。注視点は、ステップS5で解析されたスクリプト言語の解析結果にしたがって最初の注視点に規定された移動速度、時間で移動し、右上のコマのたとえばほぼ中心位置になるように制御される。
【0067】
表示はたとえば図8に示す様に1ページ全体の制御中の右上のコマの漫画画像以外を薄く表示した状態に制御され、かつ表示画面の漫画画像表示領域のほぼ全域に渡ってこの右上のコマに漫画画像が表示される。
【0068】
この際、注視点に移動する順番移動する時間、閲覧表示演出(等速移動、加減速移動、フェード切り替え等)といったスクリプト言語での規定通りの中心点移動制御が行われ、作者などの意図に従った表示画面全体を効率よく使用した漫画閲覧制御が行える。
【0069】
図8に示す右上のコマから左上のコマには右上のコマ表示後、たとえば0.5秒後に移動し、左上のコマから2段目のコマにはたとえば0.8秒後、中段右側のコマへはたとえば1.9秒後といったように設定に従った注視点移動が行われる。
【0070】
この結果、表示画面には最初右上のコマが表示され、後述する制御で0.5秒後に右上のコマから左上のコマに表示が移動しつつ左上のコマの画像が強調表示されていく。同様に、右上のコマ表示後0.8秒後に2段目のコマに移動し、更に中段右側のコマには1.9秒後に注視点移動が行われることになる。
【0071】
なお、ここで説明する本実施の形態では、あるコマの表示から次にコマの表示への移行は予め定められた時間にしたがって自動的に行われる。しかし、本発明は以上の例に限定されるものではなく、たとえば特定ボタン(たとえばボタン32)の操作入力にしたがって注視点を移動させてもよい。
【0072】
つづくステップS8においては、マスク機能として一コマ中の画像をマスクする際にそのコマの中の一部の画像をマスクせずに残す強調表示が指示されているか否かを判断する。このマスク機能を働かせるための指示が含まれていない場合には、処理はステップS10に進む。一方、上記指示が含まれている場合には、処理はステップ9に移行する。
【0073】
ステップS10では、表示漫画画像情報に対応するセリフがあるか否かを調べる。セリフがない場合には処理はステップS12に進む。
【0074】
一方、ステップS10でセリフがある場合には、処理はステップS11に進み、セリフ表示処理を実行する。すなわち、画像の中の吹出し部に目視確認可能にセリフが描画される。そして処理はステップS12に進む。これにより、作者が読者に最初に見せたいコマが表示画面に確実かつ見やすく表示される。なお、このセリフの大きさは、表示画面やコマの大きさにより異なるが、確実に視認可能な大きさの文字で表示される。ステップS12では、次の注視点があるかを確認する処理が実行される。すなわち、ステップS4で取得された漫画データについて、所定の注視点移動制御にしたがってたとえば1ページ分の漫画が全て表示し終わったか否かを調べる処理が実行される。まだ次に移動するべき注視点がある場合には処理はステップS7に進み、次の注視点への移動表示を行う。
【0075】
ステップS12において次に移動するべき注視点がないと判断された場合には、処理はステップS13に進み、次の閲覧ページがあるか否かを調べる。ステップ13において、次の閲覧ページがある場合(次のページを閲覧する場合)には、処理はステップS4へ戻り、漫画サーバ群102eから次の閲覧漫画情報を受け取る。
【0076】
ステップS13では、次のページの閲覧を続けない場合には、ネットワーク100との接続が開放され、漫画閲覧が終了する。」

(ヌ)「【0084】
以上説明したように本実施の形態によれば、漫画の各コマに対して、絵及びセリフのロケーション位置情報とスケール及び形状を指定するリソース情報をスクリプト言語で表し、また、各コマに対して、コマの繋がる順番、コマへ移動する時間、演出モード(注視点の等速、加減速移動、フェード切り替え表示)を指定するシーケンス情報をスクリプト言語で表わすことで、制作者の意図に従った設定が可能である。
【0085】
このように、制作者が強調したい点を漫画スクリプト言語で設定することが可能となることより、制作者の意図に従った漫画閲覧が可能となる。」

(ネ)「【0086】
以上説明した様に本実施の形態によれば、書籍内容を表示手段の表示画面に表示して書籍の閲覧を行う際に、文字データと画像データとデータ表示制御データとを含む書籍データ中のデータ表示制御データを解析し、その解析結果に応じた出力手順にしたがって前記画像データを順次所定順に前記表示画面に拡大表示すると共に、当該画像データに対応付けられた文字データがある場合には当該文字データをデータ表示制御データで定まる部分に順次描画することにより、制作者の意図に従った書籍の閲覧が可能となる。」

(ノ)「【0088】
さて、前述の実施の形態においては、家庭用ゲーム機をプラットフォームとして本発明を実現した場合について述べたが、本発明はこれに限定されず、携帯情報端末、携帯電話機、パーソナルコンピュータなどの汎用コンピュータ、アーケードゲーム機などで実現するようにしてもよい。」

上記(セ)ないし(ノ)の記載事項及び図面を総合勘案すると、刊行物3には、次の発明(以下、「刊行物3発明」という。)が記載されていると認められる。

「複数の紙面上のコマを有する漫画をテレビジョン(TV)セット、携帯情報端末、携帯電話機、パーソナルコンピュータなどの汎用コンピュータ、アーケードゲーム機などの出力装置のモニタディスプレイに表示する方法であって、
漫画画像情報をRAMの漫画画像情報の格納領域に保存し、
漫画を前記テレビジョン(TV)セット、携帯情報端末、携帯電話機、パーソナルコンピュータなどの汎用コンピュータ、アーケードゲーム機などの出力装置のモニタディスプレイによって閲覧するために、漫画のコマ画像の画像データ位置座標と、閲覧の焦点対象を表す注視点の移動順序とを、ゲーム機本体に備えられるRAMの閲覧制御情報ファイル格納領域に保存し、
漫画を閲覧しているユーザからの漫画についての操作入力を、前記ゲーム機本体に対する操作指示のための入力を行うゲームパッドに備えられるボタンが受け付け、
前記ゲーム機本体が前記ゲームパッドに備えられるボタンを介してユーザからの入力を受け付けると、前記ゲーム機本体に備えられる主制御部が、前記RAMの閲覧制御情報ファイル格納領域から、前記移動順序を呼び出し、
該移動順序にしたがって、前記主制御部が、再生すべき今次の注視点の位置を呼び出し、前記主制御部の制御にしたがって、前記ゲーム機本体に備えられるグラフィック処理部が、前記漫画画像情報を前記RAMの漫画画像情報の格納領域から呼び出し、前記ゲーム機本体に備えられるフレームバッファ上に描画し、
前記グラフィック処理部が前記フレームバッファに描画された画像データを前記出力装置に出力する方法。」

(3)対比
本願補正発明を、刊行物1発明と比較する。

(ア)刊行物1発明における「PDAの小型ディスプレイ」は、本願補正発明における「電子機器の表示装置」に相当する。

(イ)刊行物1発明における「手書きで描かれた原画をスキャニングして圧縮した画像ファイルであるコミックファイル」は、本願補正発明における「マンガの」「データ」に相当し、「手書きで描かれた原画をスキャニングして圧縮した画像ファイルであるコミックファイルを電子出版社のサーバからPDA内にダウンロード」し、当該ダウンロードしたコミックファイルからコミックの各コマがPDAの小型ディスプレイに表示されることから、PDA内には記録手段が存在し、当該記録手段に前記コミックファイルが保存されることは明らかであるから、刊行物1発明には、本願補正発明における「マンガの」「データを、前記電子機器に備えられる」「データ記録手段に保存する」ことに相当する事項が示唆されている。

(ウ)刊行物1発明における「前記コミックの各コマに相当する領域をエリアとして、ページの縦軸と横軸の相対的なサイズを表す相対スケールを元に、画像上の各エリアの始点座標と、縦横のサイズが相対的な全長に対する形式で設定したエリア情報」は、当該エリア情報によって、前記小型ディスプレイによって閲覧するコミックの位置を決定していることから、本願補正発明における「位置」に相当する。
また、刊行物1発明における「表示される順番」は、本願補正発明における「再生順序」に相当する。
そして、刊行物1発明において「エリアリスト」は、上記「エリア情報」と上記「表示される順番」とからなっており、「エリアリストにおける順番と設定値に従って、前記小型ディスプレイにコマが順番に表示される」ことから、当該「エリアリスト」を保存するための記録手段がPDA内に存在していることは明らかである。
したがって、刊行物1発明には、本願補正発明における「マンガを前記表示装置によって閲覧するために」「位置と、」「再生順序と」「を、前記電子機器に備えられる再生シーケンスデータ記録手段に保存する」ことに相当する事項が示唆されている。

(エ)刊行物1発明における「PDAに備えられる右カーソルボタン」は、本願補正発明における「電子機器に備えられる入力手段」に相当するから、「コミックを閲覧しているユーザがPDAに備えられる右カーソルボタンを押下」することは、本願補正発明における「マンガを閲覧しているユーザーからのマンガについての表示操作の入力を、前記電子機器に備えられる入力手段が受け付ける」ことに相当する。

すると、本願補正発明と、刊行物1発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
複数の紙面上のコマを有するマンガを電子機器の表示装置に表示する方法であって、マンガのデータを、前記電子機器に備えられるデータ記録手段に保存するステップと、マンガを前記表示装置によって閲覧するために位置と、再生順序とを、前記電子機器に備えられる再生シーケンスデータ記録手段に保存するステップと、マンガを閲覧しているユーザーからのマンガについての表示操作の入力を、前記電子機器に備えられる入力手段が受け付けるステップとを含んでなる方法。

一方で、両者は、次の点で相違する。
<相違点1>
本願補正発明では、マンガを表示装置によって閲覧するために、「位置」が「離散的に定められる表示域の前記マンガの紙面内での位置」で「前記表示域の前記マンガ紙面内での位置は、前記紙面上のコマの少なくともいずれかに対して複数の表示域が割り当てられ、該複数の表示域は互いにほぼ同じ大きさ」であり、「再生順序」が「各表示域の再生順序」であるのに対し、刊行物1発明では、それぞれ「各コマの」「エリア情報」と「各コマの表示される順番」である点。

<相違点2>
本願補正発明では、マンガのデータは「ベクトルデータ」と「ラスターデータ」とのどちらか一方又は両方からなっていること、マンガを電子機器の表示装置に表示するために、「制御手段」、「画像制御手段」及び「画像メモリー」を使用すること、及びマンガのデータに「ハイパーリンクタグ」を表示可能に埋め込み、当該「ハイパーリンクタグの選択」によって情報を得ることから、これらのための構成として、「マンガのベクトルデータを、前記電子機器に備えられるベクトルデータ記録手段に保存するステップと、マンガのラスターデータを、前記電子機器に備えられるラスターデータ記録手段に保存するステップ」、「前記電子機器に備えられる再生シーケンスデータ記録手段に保存するステップ」において保存する「再生するデータがラスターかベクトルかを示す再生データの種類」、「前記電子機器が前記入力手段を介してユーザーからの入力を受け付けると、前記電子機器に備えられる制御手段が、前記再生シーケンスデータ記録手段から、該入力に応じた前記再生順序を呼び出すステップ」、「該再生順序にしたがって、前記制御手段が、再生すべき今次の表示域の位置および再生データの種類を呼び出し、前記電子機器に備えられる画像制御手段に描画命令を発するステップ」、「該再生データの種類がラスターである場合には、前記画像制御手段が、該今次の表示域の位置に対応するマンガのラスターデータを前記ラスターデータ記録手段から呼び出し、前記電子機器に備えられる画像メモリーに書き込むステップと、該再生データの種類がベクトルである場合には、前記画像制御手段が、該今次の表示域の位置に対応するマンガのベクトルデータを前記ベクトルデータ記録手段から呼び出してラスターデータを生成し、前記画像メモリーに書き込むステップ」、「ユーザーからの前記入力手段を介した入力によって選択とされるかまたは非選択とされるかが定められ、選択時に表示される情報の保存位置を示すハイパーリンクタグが、前記マンガのラスターデータまたは前記マンガのベクトルデータのいずれかに表示可能に埋め込まれており、該保存位置は、前記電子機器内の保存位置、または、前記電子機器がネットワークアクセス機能を有する場合にはネットワークアクセス可能な保存位置であり、マンガを閲覧しているユーザーによる前記ハイパーリンクタグの選択を、前記入力手段を介して前記制御手段が受け取ると、前記制御手段が描画命令を発し、前記画像制御手段が該描画命令に従って前記保存位置にある情報にアクセスして前記画像メモリーにラスターデータとして書き込むステップ」及び「前記画像表示手段が前記画像メモリーにあるラスターデータを前記表示装置に出力するステップ」が存在するのに対し、刊行物1発明では、マンガのデータがいかなるデータであるのか限定されていないこと、マンガを電子機器の表示装置に表示するために「制御手段」、「画像制御手段」及び「画像メモリー」を使用することについて記載がないこと、「ハイパーリンクタグ」について記載がないことにより、上記のような本願補正発明における構成が明確には存在しない点。

(4)判断
(ア)相違点1について
刊行物2発明において、「隙間のない画像として再現させることができるスクリーン分割画像」は、それぞれのスクリーン分割画像が元画像上の異なる領域を表示することから、「離散的に定められる表示域」に相当し、当該スクリーン分割画像を表示命令群(表示指示情報、効果指示情報)に従って、前記スクリーンに順次に表示することから、刊行物2発明における携帯型端末機では、当該スクリーン分割画像に関する漫画の元画像内での位置、すなわち「マンガの紙面内での位置」を保存していると考えるのが自然である。また、予め画像コンテンツの流れに沿った方向から順次に前記スクリーン分割画像を再現することから、刊行物2発明における携帯型端末機では、各スクリーン画像の再生順序、すなわち「各表示域の再生順序」も保存していると考えるのが自然である。さらに、上記コンテンツ画像は、元画像から生成した複数の画像の特異なデータ又は特徴的なデータ毎に、X/Y方向の座標系の座標値を持たせた画像であるから、漫画の場合、当該コンテンツ画像をコマとすることも自然なことである。
してみれば、刊行物1発明において、マンガを表示装置によって閲覧するために、再生シーケンスデータ記録手段に保存する「位置」を「各コマの」「エリア情報」とし、「再生順序」を「各コマの表示される順番」とすることに代えて、上記刊行物2発明のように、それぞれを「離散的に定められる表示域の前記マンガの紙面内での位置」で「前記表示域の前記マンガ紙面内での位置は、前記紙面上のコマの少なくともいずれかに対して複数の表示域が割り当てられ、該複数の表示域は互いにほぼ同じ大きさ」とし、「各表示域の再生順序」とすることは、当業者が適宜なし得ることである。

(イ)相違点2について
画像データを「ベクトルデータ」と「ラスターデータ」との両方の形式のデータとして扱うことは、例えば、特開平4-44178号公報(第2図及びその説明参照)、特開平7-36437号公報(段落【0023】ないし【0025】、図1及び図4参照)等に記載されているように周知技術であり、刊行物1発明におけるマンガは画像データであるから、当該マンガを上記周知技術のように、「ベクトルデータ」と「ラスターデータ」との両方の形式のデータとして扱うことは、何ら困難なことではない。
また、刊行物3発明において、「主制御部」、「グラフィック処理部」及び「フレームバッファ」は、「制御手段」、「画像制御手段」及び「画像メモリー」に相当することは明らかであり、刊行物1発明において、マンガを電子機器の表示装置に表示するに際して、上記刊行物3発明のように、「制御手段」、「画像制御手段」及び「画像メモリー」を使用することも、何ら困難なことではない。
さらに、マンガのデータに「ハイパーリンクタグ」が表示可能に埋め込まれ、当該「ハイパーリンクタグの選択」によって情報を得ることは、例えば、国際公開第2001-95079号(第3図、第5図及び両図の説明(例えば、第24頁第29行ないし第26頁第5行等)参照)、特開2001-350746号公報(段落【0016】参照)等に記載されているように周知技術であり、刊行物1発明において、上記周知技術のように、マンガのデータに「ハイパーリンクタグ」を表示可能に埋め込み、当該「ハイパーリンクタグの選択」によって情報を得るようにすることも、何ら困難なことではない。
そして、上記のように、刊行物1発明において、画像データを「ベクトルデータ」と「ラスターデータ」との両方の形式のデータとして扱い、マンガを電子機器の表示装置に表示するために、「制御手段」、「画像制御手段」及び「画像メモリー」を使用し、マンガのデータに「ハイパーリンクタグ」を表示可能に埋め込み、当該「ハイパーリンクタグの選択」によって情報を得るようにする具体的構成を考えた場合、上記「2.〔理由〕(4)(ア)」の相違点1に関する判断(「表示域」に関する判断)も考慮すると、「マンガのベクトルデータを、前記電子機器に備えられるベクトルデータ記録手段に保存するステップと、マンガのラスターデータを、前記電子機器に備えられるラスターデータ記録手段に保存するステップ」、「前記電子機器に備えられる再生シーケンスデータ記録手段に保存するステップ」において保存する「再生するデータがラスターかベクトルかを示す再生データの種類」、「前記電子機器が前記入力手段を介してユーザーからの入力を受け付けると、前記電子機器に備えられる制御手段が、前記再生シーケンスデータ記録手段から、該入力に応じた前記再生順序を呼び出すステップ」、「該再生順序にしたがって、前記制御手段が、再生すべき今次の表示域の位置および再生データの種類を呼び出し、前記電子機器に備えられる画像制御手段に描画命令を発するステップ」、「該再生データの種類がラスターである場合には、前記画像制御手段が、該今次の表示域の位置に対応するマンガのラスターデータを前記ラスターデータ記録手段から呼び出し、前記電子機器に備えられる画像メモリーに書き込むステップと、該再生データの種類がベクトルである場合には、前記画像制御手段が、該今次の表示域の位置に対応するマンガのベクトルデータを前記ベクトルデータ記録手段から呼び出してラスターデータを生成し、前記画像メモリーに書き込むステップ」、「ユーザーからの前記入力手段を介した入力によって選択とされるかまたは非選択とされるかが定められ、選択時に表示される情報の保存位置を示すハイパーリンクタグが、前記マンガのラスターデータまたは前記マンガのベクトルデータのいずれかに表示可能に埋め込まれており、該保存位置は、前記電子機器内の保存位置、または、前記電子機器がネットワークアクセス機能を有する場合にはネットワークアクセス可能な保存位置であり、マンガを閲覧しているユーザーによる前記ハイパーリンクタグの選択を、前記入力手段を介して前記制御手段が受け取ると、前記制御手段が描画命令を発し、前記画像制御手段が該描画命令に従って前記保存位置にある情報にアクセスして前記画像メモリーにラスターデータとして書き込むステップ」及び「前記画像表示手段が前記画像メモリーにあるラスターデータを前記表示装置に出力するステップ」はそれぞれ普通の処理であって、それらを含む方法とすることは、当業者が適宜なし得ることである。

そして、上記両相違点を総合的に検討しても、マンガの電子機器での閲覧という同一技術分野に属する上記刊行物1発明ないし刊行物3発明と上記周知技術とを組み合わせることにより、本願補正発明を構成することは、当業者が容易に想到し得ることであり、その作用効果も当業者が予測し得るものにすぎない。
したがって、本願補正発明は、刊行物1発明ないし刊行物3発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)請求人の主張について
(ア)請求人は、審判請求書において、「補正後の請求項1の発明は、いずれの引用文献によっても開示も示唆もされない特徴として、「前記表示域の前記マンガ紙面内での位置は、前記紙面上のコマの少なくともいずれかに対して複数の表示域が割り当てられて、該複数の表示域は互いにほぼ同じ大きさであ」るとの特徴を備えるものです。」と記載し、当該記載に基づく主張を行っているが、上記「前記表示域の前記マンガ紙面内での位置は、前記紙面上のコマの少なくともいずれかに対して複数の表示域が割り当てられて、該複数の表示域は互いにほぼ同じ大きさであ」るとの特徴」は、上記「2.〔理由〕(4)(ア)」で検討したように、当業者が適宜なし得ることであるから、上記審判請求書における請求人の主張を採用することはできない。

(イ)請求人は、回答書において、実質的に引用文献9にしか開示されていない技術を周知技術と認定したことは首肯できず、周知技術の付加等によって、元の拒絶理由が維持されているといえるとするならば、周知技術であることが十分に証拠付けられている必要があり、審判官合議体が拒絶理由を通知することなく拒絶審決をすることは出願に対して十分な釈明等の機会を与えずに出願人に不利な審決をすることになる旨を知財高裁の平成19年(行ケ)10074号審決取消請求事件(平成20年3月26日判決言渡)における判示事項を引用ながら主張し、「本審判事件の前置報告の結論は、それまでに一度も引用されていない新たな引用文献9?11に基づいているものである以上、本来は、原則どおり、新たな拒絶理由として前置審査における新たな拒絶理由を通知すべきだったものです(特許法第163条第2項において読み替えて準用する同法第50条本文)。制度面から見ても、不利益な結論が出願人に何ら予告無く出されており、仮に審判段階にて拒絶理由を通知しないならば、特許庁内の審判手続を準司法的手続として審級省略の対象としている制度趣旨に反することにもなります。従って、少なくとも審判段階において、本願に対して拒絶理由が通知されるべきです。」と主張している。
しかしながら、本審決では、上記「2.〔理由〕(1)」に記載のように、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かを、本願補正発明について検討する場合にのみ、上記引用文献9に記載された発明である刊行物2発明について検討することから、新たな拒絶理由を通知する必要はなく、上記引用文献9が公知文献である限り、上記引用文献9に記載された発明に関する技術事項が、周知技術であるか否かも本審決に何ら影響がないものである。
また、本審決における主たる引用例は、拒絶査定における主たる引用例である上記刊行物1であるから、上記平成19年(行ケ)10074号審決取消請求事件(平成20年3月26日判決言渡)における判示事項と本審決とは、何ら関係がないものである。
したがって、上記回答書における請求人の主張を採用することはできない。
なお、審査段階では一度も通知されず、また拒絶の査定においても掲げられていない文献を使用した拒絶理由による本件補正の却下決定について手続上の瑕疵がないことについては、平成15年(行ケ)第475号審決取消請求事件(平成16年9月30日判決言渡)を参照されたい。

さらに、回答書において補正案を提示しているが、「スクロール速度データ」については、上記刊行物3の「閲覧表示演出(等速移動、加減速移動、フェード切り替え等)」(段落【0068】参照)のうち「加減速移動」を行う際には、当然必要になるデータであるから、上記刊行物3発明では、上記「スクロール速度データ」も当然使用しているし、ラスターデータとベクトルデータにより表現される画像データを表示する場合に、同じ画像メモリーに、ラスターデータはそのまま、ベクトルデータはラスターデータに変換して、一旦格納した後に表示することも、上記「2.〔理由〕(4)(イ)」に記載した特開平4-44178号公報、特開平7-36437号公報等に記載されているように周知技術であり、このように上記両形式のデータを同じ形式のデータとして同じ画像メモリーに格納された画像データは、ユーザがデータの種類の切り替わりを意識することなく画像表示を行い得ることは明らかである。
そして、上記画像表示として上記スクロールを行うことは、当業者が適宜なし得ることであるから、本件補正発明が上記回答書における補正案に記載された請求項1に係る発明であったとしても、上記刊行物1発明ないし刊行物3発明と上記周知技術とを組み合わせることにより当該発明を構成することは、当業者が容易に想到し得ることであり、その作用効果も当業者が予測し得るものにすぎない。

(6)本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成19年3月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成19年1月9日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1及び8と平成15年5月28日付け特許願における明細書の特許請求の範囲2ないし7に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「2.〔理由〕(1)」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1、3及びその記載事項は、上記「2.〔理由〕(2)」における刊行物1及び刊行物3に関して記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、上記「2.〔理由〕」で検討した本願補正発明から、
「複数の紙面上のコマを有するマンガ」、「マンガを前記表示装置によって閲覧するために離散的に定められる表示域の前記マンガの紙面内での位置と、各表示域の再生順序と、再生するデータがラスターかベクトルかを示す再生データの種類とを、前記電子機器に備えられる再生シーケンスデータ記録手段に保存するステップと、ここで、前記表示域の前記マンガ紙面内での位置は、前記紙面上のコマの少なくともいずれかに対して複数の表示域が割り当てられて、該複数の表示域は互いにほぼ同じ大きさであり」及び「今次の表示域の位置」とあったところを、それぞれ「複数のコマを有するマンガ」、「マンガを閲覧するための各コマの前記マンガ内での位置と、各コマの再生順序と、再生するデータがラスターかベクトルかを示す再生データの種類とを、前記電子機器に備えられる再生シーケンスデータ記録手段に保存するステップ」及び「今次のコマの位置」と、限定を解除したものに相当する。

そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、更に他の要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.〔理由〕(4)」に記載したとおり、刊行物1ないし3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、刊行物2は、上記他の要件に関する上記<相違点1>に対する判断において使用される刊行物であるから、本願発明は、本願補正発明に対する理由のうち、上記<相違点1>に関する対比・判断を除いた同様の理由により、引用例1、3に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-03 
結審通知日 2008-12-05 
審決日 2008-12-16 
出願番号 特願2003-150949(P2003-150949)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06T)
P 1 8・ 575- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 月野 洋一郎  
特許庁審判長 原 光明
特許庁審判官 畑中 高行
加藤 恵一
発明の名称 マンガの表示方法およびマンガを表示する電子機器  
代理人 奥山 尚一  
代理人 有原 幸一  
代理人 岡本 正之  
代理人 松島 鉄男  

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