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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02P
管理番号 1192162
審判番号 不服2007-6276  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-01 
確定日 2009-02-05 
事件の表示 特願2001- 34494「車両用発電機の制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月23日出願公開、特開2002-238295〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成13年2月9日の出願であって、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年10月29日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「界磁電流検出器と電流制限手段とを有し、車両に装着され機関によって駆動される車両用発電機の界磁電流を断続制御する車両用交流発電機の制御装置であって、
上記界磁電流検出器は、車両用発電機の界磁電流を検出する電流検出部を有し、この電流検出部の出力に応じて検出出力を出力するものであり、
上記電流制限手段は、車両用発電機の界磁電流を断続制御する開閉素子を有し、界磁電流検出器の検出出力に基づいて開閉素子の開閉時間比を制御することにより上記界磁電流を所定の制限値を超えないように制限して上記機関の負荷トルクが過大にならないように抑制するものであって、
上記所定の制限値を変更する制限値変更手段を設け、
上記制限値変更手段は、上記界磁電流検出器に接続され、
定電圧電源の電圧を分圧する複数の分圧抵抗と、該複数の分圧抵抗のいずれかを選択して有効にする外部出力端子を有し、
上記分圧抵抗と上記外部出力端子は複数設けられ、該分圧抵抗の組合せによって、上記所定の制限値は任意の値に調整され、
上記外部出力端子が接地される
ことを特徴とする車両用発電機の制御装置。」

2.引用例
(1)これに対して、当審における、平成20年9月5日付けで通知した拒絶の理由に引用した特公平6-38720号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「【特許請求の範囲】
【請求項1】界磁電流検出器(9),(308) と電流制限手段(3) とを有し、車両に装着され機関によって駆動される車両用発電機(1) の界磁電流を断続制御する車両用交流発電機の制御装置であって、
界磁電流検出器(9),(308) は、車両用発電機(1) の界磁電流を検出する電流検出部(308) を有し、この電流検出部(308) の出力に応じて検出出力を出力するものであり、
電流制限手段(3) は、車両用発電機(1) の界磁電流を断続制御する開閉素子(305) を有し、界磁電流検出器(9),(308) の検出出力に基づいて開閉素子(305) の開閉時間比を制御することにより上記界磁電流を所定の制限値を超えないように制限して上記機関の負荷トルクが過大にならないように抑制するものであって、上記所定の制限値は車両用発電機(1) の温度が所定値に上昇したときにおいて所定の出力を得るために流すべき界磁電流以上の値に選定されている、
車両用発電機の制御装置。」

・「〔問題点を解決するための手段〕
この発明に係る制御装置は、発電機の界磁電流を断続制御する開閉素子の開閉時間比を制御することにより界磁電流を所定の制限値を超えないように制限するようにしたものである。なお、所定の制限値は、発電機の温度が所定値に上昇したときにおいて所定の出力を得るために流すべき界磁電流以上の値に選定されている。」(公報第4欄第22行目?第28行目)

・「〔発明の実施例〕
以下、この発明の一実施例を図について説明する。第1図において、電圧調整器(3) の(308) は界磁コイル(102) と直列に接続された電流検出部としての界磁電流検出用の抵抗であり、本実施例では数十ミリオームの極小抵抗で構成されている。(309) は逆流防止ダイオードである。
なお、電圧調整器(3) がこの発明における電流制限手段として機能し、界磁電流検出用の抵抗(308) と次に説明する界磁電流検出器(9) とがこの発明における界磁電流検出器を構成している。
(9) は界磁電流検出器であり後述する各部により構成されている。(A1),(A2) は図示しない定電圧電源の出力端であり、キースイッチ(6) 閉成と同時に出力する。(901) はコンパレータであり、キースイッチ(6) 閉成と同時に動作可能な状態となる。(902),(903) は定電圧電源(A1)を分圧する分圧抵抗であり、その分圧点がコンパレータ(901) の(-) 入力に接続され、コンパレータの基準電圧とされている。(904) はコンデンサ、(905) はコンデンサ (904)の充電時定数を決定する抵抗、(906) は定電圧源(A2)とコンパレータ(901) の出力端に接続された電流制限用の抵抗、(907) は電圧調整器(3) のトランジスタ(304) のベース抵抗、(908) は逆流防止ダイオードである。」(公報第5欄第7行目?第30行目)

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「界磁電流検出器と電流制限手段とを有し、車両に装着され機関によって駆動される車両用発電機の界磁電流を断続制御する車両用交流発電機の制御装置であって、
上記界磁電流検出器は、車両用発電機の界磁電流を検出する電流検出部を有し、この電流検出部の出力に応じて検出出力を出力するものであり、
上記電流制限手段は、車両用発電機の界磁電流を断続制御する開閉素子を有し、界磁電流検出器の検出出力に基づいて開閉素子の開閉時間比を制御することにより上記界磁電流を所定の制限値を超えないように制限して上記機関の負荷トルクが過大にならないように抑制するものであって、
上記所定の制限値を選定するために上記界磁電流検出器は定電圧電源を分圧する分圧抵抗とコンパレータとを備え、上記分圧抵抗の分圧点が上記コンパレータに接続され、上記コンパレータの基準電圧とされている
車両用発電機の制御装置。」

(2)同じく、引用した特開平1-311895号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「そこで、この発明においてはこのような従来の問題点を解決したものであって、ステッピングモータをマイクロステッピング駆動できるように構成されたものにおいて、マイクロステップ動作時の安定性を図ったステッピングモータの駆動回路を提案するものである。
[課題を解決するための手段]
上述した問題点を解決するため、この発明においては、定電流駆動部から出力された駆動電流に基づいてステッピングモータが駆動されると共に、定電流駆動部にはマイクロステップ制御回路を構成する可変基準電源部が設けられ、この可変基準電源部は分圧抵抗器群で構成され、
その分圧値を変更して基準電圧を変更することにより、マイクロステッピング駆動が行なわれるようにしたことを特徴とするものである。
[作 用]
マイクロステップ制御回路60としては出力制御部70の他に、可変基準電源部80が設けられ、その電圧値が基準電圧としてオペアンプ55側に供給されるように構成される。
可変基準電源部80は複数の分圧抵抗器R1?R5及び分岐抵抗器Ra?Rc等で構成されており、分岐抵抗器Ra?Rcは出力制御部70によってその分岐状態が制御される。」(公報第3頁右上欄第16行目?左下欄第20行目)

・「この発明においてはマイクロステップ制御回路60が設けられ、この制御回路60より得られた基準電圧VREFが駆動制御回路50の前段に設けられたオペアンプ55に供給されるようになされる。
マイクロステップ制御回路60は図のように可変基準電源部80を有し、これを制御するため出力制御部70が設けられる。
可変基準電源部80は複数の抵抗器で構成され、この例では、電源端子71に対して直列接続された4個の抵抗器R1?R4が設けられると共に、終端の抵抗器R4と接地間には抵抗器R5が接続される。そしてこの抵抗器R4とR5との接続中点に得られる電圧が基準電圧VREFとしてオペアンプ55に印加される。
複数の抵抗器R1?R4の各接続中点s、t、uにはそれぞれ分岐用の抵抗器Ra、Rb、Rcが接続され、これら分岐抵抗器Ra?Rcは出力制御部70によってその分岐電流がコントロールされる。
この例では出力制御部70としてマイクロコンピュータが使用されており、その出力ポートα、β、γがそれぞれ分岐抵抗器Ra?Rcに接続されている。従って、各出力ポートα?γの論理レベルを”1”か”0”かにすることによって、接続中点s?uに接続される抵抗器が異なってくる。この例では論理レベル”0”のとき分岐電流路が形成されたものとする(第2図参照)。
これによって分圧値が変更されるから、基準電圧VREFも変更されることになる。
なお、このように4個の直列抵抗器R1?R4と分岐路の3個の抵抗器Ra?Rcを使用した場合には、基準電圧VREFの値は7段階まで制御することができるが、使用すべき段数については操作部75からの指令に基づいて任意に選択することができる。」(公報第4頁右下欄第10行目?第5頁右上欄第4行目)

また、第1図には、分岐抵抗器(Ra、Rb、Rc)と出力制御部(70)とからなる基準電圧変更手段が、分圧抵抗器(R1?R5)に接続されている駆動回路が示されており、第2図には、出力ポートα?γの論理レベルを制御することにより形成される分岐電流路の組合せによって、基準電圧は7段階まで調整することができる動作説明図が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「分岐抵抗器と出力制御部とからなる基準電圧変更手段は、分圧抵抗器に接続され、
電源端子の電圧を分圧する複数の分岐抵抗器と、論理レベルを”0”にすることによって該複数の分岐抵抗器による分岐電流路が形成されたものとする出力制御部の出力ポートを有し、
上記分岐抵抗器と上記出力ポートは3つずつ設けられ、出力ポートの論理レベルを制御することにより形成される分岐電流路の組合せによって、基準電圧は7段階まで調整することができる
基準電圧変更手段。」

3.対比
そこで、本願発明と引用発明1とを対比すると、後者における「所定の制限値を選定するために界磁電流検出器は定電圧電源を分圧する分圧抵抗とコンパレータとを備え、上記分圧抵抗の分圧点が上記コンパレータに接続され、上記コンパレータの基準電圧とされている」態様と、前者における「所定の制限値を変更する制限値変更手段を設け、上記制限値変更手段は、界磁電流検出器に接続され、定電圧電源の電圧を分圧する複数の分圧抵抗と、該複数の分圧抵抗のいずれかを選択して有効にする外部出力端子を有し、上記分圧抵抗と上記外部出力端子は複数設けられ、該分圧抵抗の組合せによって、上記所定の制限値は任意の値に調整され、上記外部出力端子が接地される」態様とは、「所定の制限値は、界磁電流検出器において定電圧電源を分圧抵抗で分圧した電圧により規定されている」との概念で共通する。

したがって、両者は、
「界磁電流検出器と電流制限手段とを有し、車両に装着され機関によって駆動される車両用発電機の界磁電流を断続制御する車両用交流発電機の制御装置であって、
上記界磁電流検出器は、車両用発電機の界磁電流を検出する電流検出部を有し、この電流検出部の出力に応じて検出出力を出力するものであり、
上記電流制限手段は、車両用発電機の界磁電流を断続制御する開閉素子を有し、界磁電流検出器の検出出力に基づいて開閉素子の開閉時間比を制御することにより上記界磁電流を所定の制限値を超えないように制限して上記機関の負荷トルクが過大にならないように抑制するものであって、
上記所定の制限値は、界磁電流検出器において定電圧電源を分圧抵抗で分圧した電圧により規定されている
車両用発電機の制御装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点]
所定の制限値は、界磁電流検出器において定電圧電源を分圧抵抗で分圧した電圧により規定されているとの態様に関し、本願発明は「所定の制限値を変更する制限値変更手段を設け、上記制限値変更手段は、界磁電流検出器に接続され、定電圧電源の電圧を分圧する複数の分圧抵抗と、該複数の分圧抵抗のいずれかを選択して有効にする外部出力端子を有し、上記分圧抵抗と上記外部出力端子は複数設けられ、該分圧抵抗の組合せによって、上記所定の制限値は任意の値に調整され、上記外部出力端子が接地される」構成としているのに対し、引用発明1は「所定の制限値を選定するために界磁電流検出器は定電圧電源を分圧する分圧抵抗とコンパレータとを備え、上記分圧抵抗の分圧点が上記コンパレータに接続され、上記コンパレータの基準電圧とされている」ものの、本願発明のような所定の制限値を変更する手段は備えていない点。

4.判断
上記相違点について以下検討する。
本願発明の「分圧抵抗の組合せによって、所定の制限値は任意の値に調整され」における「任意の値」とは、本願明細書の「分圧抵抗及び分圧点から引き出される外部出力端子は、2組であるが、さらに多く設けてきめ細かく変更可能としても良い。」(【0032】参照)なる記載を参酌すれば、数種類程度の値の場合を含むと解される。同様に、引用発明2の「基準電圧は7段階まで調整することができる」という構成が「基準電圧は任意の値に調整され」る構成であるといえるので、引用発明2は、制限値変更手段(「分岐抵抗器と出力制御部とからなる基準電圧変更手段」が相当)は、界磁電流検出器(「分圧抵抗器」)に接続され、定電圧電源(「電源端子」)の電圧を分圧する複数の分圧抵抗(「分岐抵抗器」)と、該複数の分圧抵抗のいずれかを選択して有効にする外部出力端子(「論理レベルを”0”にすることによって該複数の分岐抵抗器による分岐電流路が形成されたものとする出力制御部の出力ポート」)を有し、上記分圧抵抗と上記外部出力端子は複数(「3つずつ」)設けられ、該分圧抵抗の組合せ(「分岐電流路の組合せ」)によって、基準電圧は任意の値(「7段階」)に調整される基準電圧変更手段であるといえる。

また、分圧抵抗の可変手段において、分圧抵抗を有効にする外部端子が接地される点は、例えば特開平4-5474号公報(「R15はトランジスタ(81)のコレクタと比較回路(2)の入力端子との間に挿入された並列抵抗器であり、トランジスタ(81)が導通したときに、分圧抵抗器R14の両端間に接続されるようになっている。」(公報第7頁右上欄第13行目?第17行目)なる記載及び第1図参照。)、特開平4-134166号公報(「R1及びR2は出力信号Aを任意の比率で分圧する分圧抵抗器、R1は分圧抵抗器R2に並列接続された調整抵抗器、Trsはゲイン調整器(28)の出力端子とグランドとの間に調整抵抗器R1を選択的に挿入するためのトランジスタである。」(公報第3頁右下欄第13行目?第18行目)なる記載及び第2図参照。)、実願平4-26680号(実開平5-88154号)のCD-ROM(「フォトトランジスタ15_(1)?15_(16)がオンし、そのフォトトランジスタ回路のいずれかの調整抵抗14_(1)?14_(16)と分圧抵抗13が並列接続される。この結果、その調整抵抗14_(1)?14_(16)のいずれかと分圧抵抗13の合抵抗が新たな分圧抵抗となり、定電圧定電流制御回路11のプラス側入力端子に印加される比較基準電圧が変化する。」なる記載及び図1参照)等にも開示されているように、技術的常套手段である。

そして、各種制御に係る基準電圧を調整可能とすることで動作の安定化を図ることは一般的な課題であり、引用発明1においても当然に要求されるべきものであるから、引用発明1において、所定の制限値を選定するために分圧抵抗の分圧点がコンパレータに接続され、上記コンパレータの基準電圧とされている界磁電流検出器に、引用発明2の基準電圧変更手段を採用すると共に、上記技術的常套手段を踏まえることにより、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たものというべきである。

加えて、本願発明の全体構成によって奏される効果も、引用発明1、引用発明2及び上記技術的常套手段から当業者が予測し得る範囲内のものである。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び上記技術的常套手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-27 
結審通知日 2008-12-02 
審決日 2008-12-16 
出願番号 特願2001-34494(P2001-34494)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H02P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 牧 初  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 小川 恭司
田良島 潔
発明の名称 車両用発電機の制御装置  
代理人 曾我 道治  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 古川 秀利  
代理人 曾我 道治  
代理人 古川 秀利  

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