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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02P
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02P
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H02P
管理番号 1192171
審判番号 不服2007-12679  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-02 
確定日 2009-02-05 
事件の表示 特願2001- 13071「車両用電源装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月 2日出願公開、特開2002-218798〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年1月22日の出願であって、平成19年3月27日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月2日に拒絶査定不服審判請求がなされると共に、同日付で手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「界磁巻線を有し、該界磁巻線に給電されて回転磁界を形成する1つの回転子と、
3相分の巻線部をY結線して構成された少なくとも1組の三相交流巻線を有し、上記回転子を内包するように配設され、上記回転磁界が印加されて出力を発生する1つの固定子と、
上記界磁巻線の通電電流を制御して上記固定子の出力を調整する電圧調整手段とを備えた車両用電源装置において、
上記三相交流巻線の各巻線部が複数の分割巻線に分割構成され、上記複数の分割巻線の出力が独立して同時に取り出され、それぞれ独自の整流器により全波整流されるように構成され、それぞれ異なる直流の電気負荷に接続、給電されるように構成されていることを特徴とする車両用電源装置。」
と補正された。

上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「電気負荷」を「直流の電気負荷」に限定するものであって、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平1-190300号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「以下、本発明による車両用電源装置について、図示の実施例により詳細に説明する。
第1図は本発明の一実施例で、この第1図において、1は2系統電圧を出力する発電機であり、ベルト等を介して、自動車の機関によって駆動させられる。
2はバッテリであり、発電機lが発電した電力を充電したり、放電して直流側の電気負荷6に電力を供給したりする。
3はキースイッチ、4はチャージランプで、このチャージランプ4は、キースイッチ3が閉成され、かつ発電機1の直流発電電圧がバッテリ2の端子電圧より低い時に点灯し、発電機1が所定の電圧を発電し、発電電圧とバッテリ端子電圧との電位差が小さくなると消灯する。
5は初期励磁用の抵抗器で、キースイッチ3が投入されたとき、バッテリ2から発電機1へ初期励磁電流を供給する働きをする。
7は交流-直流変換器で、ダイオードを用いた3相全波整流器で構成されている。
8は直流-直流変換器で、パワートランジスタ81、ダイオード82、コンデンサ84,85、リアクトル83によって構成され、トランジスタ81をスイッチングさせ、このときの通流率を変化させて、ダイオード82、コンデンサ84、リアクトル83から成る平滑回路から得られる直流出力を定電圧に制御する。
9は直流-交流変換器で、トランジスタを主スイツチング素子とする単相インバータで構成され、交流側の電気負荷10に一定周波数、一定電圧の交流電力を供給する働きをする。」(2頁右上欄15行?同頁右下欄5行)

・「次に、発電機1の内部回路及び動作を説明する。
発電機1は直流低圧出力用電機子巻線11、及び、この巻線11の巻数のn倍の巻数を有する交流高圧出力用電機子巻線12を直列に接続した電機子巻線と、巻線11から発生する交流電圧を直流に変換する3相全波整流器13、電機子および回転子からなる磁気回路に磁束を供給する界磁巻線15、この界磁巻線15に励磁電流を供給するための補助ダイオード14および電圧調節器16によって構成されている。ここで、電圧調節器16の内部回路を示すと第2図の回路図で表わされ、パワートランジスタ161,フライホイルダイオード162,制御トランジスタ163,定電圧ダイオード164および分圧抵抗器165,166により構成されており、端子aの電圧に応じてバワートランジスタ161が通電または遮断され、界磁巻線15に流れる電流を制御し、これにより、電機子巻線11の出力端子に発生する電圧を一定値に制御するように動作する。
したがって、電機子巻線12の出力端子に発生する電圧は、巻線11の電圧の約(n+1)倍の一定電圧になる。」(2頁右下欄6行?3頁左上欄7行)

・また、第1図には、直流低圧出力用電機子巻線11と交流高圧出力用電機子巻線12とを直列に接続してなる3相分の巻線部をY結線して構成された1組の三相交流巻線を有する電機子が示されている。

・さらに、第1図において、直流低圧出力用電機子巻線11と交流高圧出力用電機子巻線12の出力が独立して同時に取り出され、それぞれ3相全波整流器13と交流-直流変換器7により全波整流されるように構成され、それぞれ異なる直流側の電気負荷6と直流-直流変換器8及び直流-交流変換器9を介した交流側の電気負荷10に接続、給電されるようにした構成が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「界磁巻線15を有し、該界磁巻線15に励磁電流を供給して磁気回路に磁束を供給する回転子と、
3相分の巻線部をY結線して構成された1組の三相交流巻線を有し、巻線部から交流電圧を発生する電機子と、
上記界磁巻線15に流れる電流を制御して上記電機子の出力端子に発生する電圧を一定値に制御する電圧調節器16とを備えた車両用電源装置において、
上記三相交流巻線の各巻線部が直流低圧出力用電機子巻線11と交流高圧出力用電機子巻線12とを直列に接続してなり、上記直流低圧出力用電機子巻線11と交流高圧出力用電機子巻線12の出力が独立して同時に取り出され、それぞれ3相全波整流器13と交流-直流変換器7により全波整流されるように構成され、それぞれ異なる直流側の電気負荷6と直流-直流変換器8及び直流-交流変換器9を介した交流側の電気負荷10に接続、給電されるように構成されている車両用電源装置。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、その機能・作用からみて、後者の「界磁巻線15に励磁電流を供給して磁気回路に磁束を供給する回転子」が前者の「界磁巻線に給電されて回転磁界を形成する1つの回転子」に相当し、以下同様に、「1組の三相交流巻線」が「少なくとも1組の三相交流巻線」に、「巻線部から交流電圧を発生する電機子」が通常回転子を内包する配置構成であることを踏まえれば「回転子を内包するように配設され、回転磁界が印加されて出力を発生する1つの固定子」に、「界磁巻線15に流れる電流を制御して電機子の出力端子に発生する電圧を一定値に制御する電圧調節器16」が「界磁巻線の通電電流を制御して固定子の出力を調整する電圧調整手段」に、「各巻線部が直流低圧出力用電機子巻線11と交流高圧出力用電機子巻線12とを直列に接続してなり」とする態様が「各巻線部が複数の分割巻線に分割構成され」た態様に、「直流低圧出力用電機子巻線11と交流高圧出力用電機子巻線12の出力」が「複数の分割巻線の出力」に、「それぞれ3相全波整流器13と交流-直流変換器7により全波整流される」態様が「それぞれ独自の整流器により全波整流される」態様に、それぞれ相当している。
また、後者の「それぞれ異なる直流側の電気負荷6と直流-直流変換器8及び直流-交流変換器9を介した交流側の電気負荷10」と前者の「それぞれ異なる直流の電気負荷」とは、「それぞれ異なる電気負荷」との概念で共通している。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「界磁巻線を有し、該界磁巻線に給電されて回転磁界を形成する1つの回転子と、
3相分の巻線部をY結線して構成された少なくとも1組の三相交流巻線を有し、上記回転子を内包するように配設され、上記回転磁界が印加されて出力を発生する1つの固定子と、
上記界磁巻線の通電電流を制御して上記固定子の出力を調整する電圧調整手段とを備えた車両用電源装置において、
上記三相交流巻線の各巻線部が複数の分割巻線に分割構成され、上記複数の分割巻線の出力が独立して同時に取り出され、それぞれ独自の整流器により全波整流されるように構成され、それぞれ異なる電気負荷に接続、給電されるように構成されている車両用電源装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
それぞれ異なる電気負荷に関し、本願補正発明は、いずれも「直流の」電気負荷としているのに対し、引用発明は、一方が「直流側(直流)の」電気負荷であるものの、他方が「交流側(交流)の」電気負荷である点。

(4)判断
上記相違点について以下検討する。
車両用の電気負荷として、交流と直流の電気負荷が存在し、さらに、互いに異なる直流電圧が必要とされる複数の直流の電気負荷が存在することは技術常識である。
そうすると、引用発明において、かかる技術常識を踏まえれば、交流-直流変換器7で全波整流された直流電圧の供給対象を、交流の電気負荷の代わりに、該直流電圧を必要とする直流の電気負荷に選定することにより、上記相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

そして、本願補正発明の全体構成により奏される作用効果も、引用発明及び上記技術常識から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び上記技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおりであって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。

3.本願の発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成19年1月11日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認められる。
「界磁巻線を有し、該界磁巻線に給電されて回転磁界を形成する1つの回転子と、
3相分の巻線部をY結線して構成された少なくとも1組の三相交流巻線を有し、上記回転子を内包するように配設され、上記回転磁界が印加されて出力を発生する1つの固定子と、
上記界磁巻線の通電電流を制御して上記固定子の出力を調整する電圧調整手段とを備えた車両用電源装置において、
上記三相交流巻線の各巻線部が複数の分割巻線に分割構成され、上記複数の分割巻線の出力が独立して同時に取り出され、それぞれ独自の整流器により全波整流されるように構成され、それぞれ異なる電気負荷に接続、給電されるように構成されていることを特徴とする車両用電源装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.(1)」で検討した本願補正発明から、「電気負荷」に関する「直流の」との限定を省いたものである。
そうすると、前記「2.(3)」での検討を踏まえれば、本願発明と引用発明とを対比した際には、両者の間に構成上の差異は存在しないことになる。
結果、本願発明は、引用例に記載された発明であるといわざるをえない。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないため、本願は、同法第49条第2号の規定に該当し、拒絶をされるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-27 
結審通知日 2008-12-02 
審決日 2008-12-16 
出願番号 特願2001-13071(P2001-13071)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H02P)
P 1 8・ 121- Z (H02P)
P 1 8・ 575- Z (H02P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 米山 毅牧 初  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 片岡 弘之
仁木 浩
発明の名称 車両用電源装置  
代理人 大宅 一宏  
代理人 上田 俊一  
代理人 梶並 順  
代理人 古川 秀利  
代理人 曾我 道治  
代理人 鈴木 憲七  

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