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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F21V
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21V
管理番号 1192172
審判番号 不服2007-13277  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-07 
確定日 2009-02-05 
事件の表示 特願2006-165255号「照明装置及び液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月28日出願公開、特開2006-261134号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年11月20日に出願した特願平7-301058号の一部を平成14年7月1日に新たな特許出願とした特願2002-192658号につき、その一部を平成18年6月14日に新たな特許出願としたものであって、平成19年3月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月7日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年6月5日に手続補正されたものである。

2.平成19年6月5日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年6月5日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
平成19年6月5日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
少なくともシート状の拡散板、シート状のレンズ、上フレーム、位置決め部材を有するサイドライト方式の照明装置において、
前記位置決め部材にはピンが設けられ、
前記上フレームは孔を2つ有し、
前記拡散板及びレンズは一辺側にのみ2つの孔を有し、
前記ピンに、該拡散板及びレンズの孔、前記上フレームの孔をはめ込み、位置決めされていることを特徴とする照明装置。」
と補正された。

前記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「サイドライト方式の照明装置」について、「シート状のレンズ」を有するという限定を付加し、「一辺側にのみ2つの孔を有」するものについて、「拡散板及びレンズ」という限定を付加し、「ピン」にはめ込むものについて、「拡散板及びレンズの孔」という限定を付加するものである。
これらの限定した事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されており、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではなく、上記補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第3項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物
a 原査定の理由に引用された特開平7-49497号(以下、「刊行物1」という。)にはつぎのとおり記載されている。
(a)「【請求項1】
表示むらを抑制するための液晶表示装置であって、表示窓をもつ金属性の上フレームと、該上フレームの下側に配置され、液晶表示素子と該液晶表示素子の周辺に一体化して形成された液晶表示素子用の駆動回路基板とからなる液晶表示パネルと、該液晶表示パネルの下側に配置され、光拡散板と導光板とを積層してなる導光体組立と、該導光体組立の下側に配置され、該導光体組立を収容すると共に、少なくとも一辺に線形状のバックライト光源を搭載するためのスペースを有する中間フレームと、該中間フレームの下側に配置され、上記上フレームと連結することによって該上フレームとの間に配置された各部材を固定するための金属性の下フレームであって、上記バックライト光源の直下に該バックライト光源の長手方向に沿った所定形状の切り抜き部を有する下フレームとから構成されることを特徴とする液晶表示装置。」
(b)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、液晶表示装置に係り、特に優れた時分割駆動特性を有し、さらに白黒および多色表示を可能にする電界効果型液晶表示装置に関する。」
(c)「【0015】図1は本発明による液晶表示装置63の構成を説明する展開斜視図であって、1は上フレーム、3は液晶表示窓、62は液晶表示パネル、35は駆動回路基板、13はスペーサ、37は光拡散板と導光板および反射板からなる導光体組立、42は線状のバックライト光源を搭載する中間フレーム、36は冷陰極管からなる線形上のバックライト光源(ランプ)、17はランプカバー、2は下フレームである。
【0016】・・・20は下フレームに形成した爪受け25に固定する爪、14は上フレーム1と液晶表示パネルを固定する粘着テープ、55,56はバックライトの中央部に直交する線に対称な位置に設けた切り抜き部、57,58はバックライト光源36の長手方向に設けた切り抜き部、・・・である。」
(d)「【0017】同図において、液晶表示パネルは図に示される順序で上フレーム1と下フレーム2とで挟持固定される。中間フレーム42の一端側には冷陰極管からなる線状光源(バックライト光源)36が設置され、ランプカバー17で液晶表示パネル62方向への直接光を遮断し、その発光光を光拡散板と導光板からなる導光体組立37側に指向させる。」
(e)「【0018】スペーサ13は中間フレーム42に形成された凹部に設置される導光体組立37と液晶表示パネル62との間に介在して表示領域を確定する。」
(f)「【0019】・・・下フレーム2の・・・前記バックライト光源36の直下に当該バックライト光源36の長手方向に設けた少なくとも2つの切り抜き部57,58と、前記バックライト光源36の両端部の下方部分に設けた切欠き53,54とが形成されている。」
(g)図1の記載から、バックライト光源36は導光体組立37を介して液晶表示パネルを裏面から照明するものであることが窺える。

(a)乃至(g)の記載から、刊行物1に記載されたものが、液晶表示装置用照明装置であること、及び(g)の記載からバックライト光源36と導光体組立37とからなる構造がサイドライト方式であることは明らかである。
また、下フレーム2には、バックライト光源36の直下に切り抜き部57,58、当該バックライト光源36の両端部に下方に切欠き53,54がそれぞれ形成されているところ、バックライト光源36は中間フレーム42に設置されているのであるから、中間フレーム42は下フレーム2に対し位置決めされて設けられているといえるものである。
さらに、光拡散板は導光体組立37が有するものであるところ、導光体組立37は中間フレーム42に形成された凹部に設置されるものであるから、当該光拡散板は中間フレーム42の凹部に設置されているといえるものである。

以上から刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「光拡散板、上フレーム1、下フレーム2を有するサイドライト方式において、
下フレーム2には中間フレーム42の凹部が位置決めされて設けられ、
前記中間フレーム42の凹部に、光拡散板を設置し、位置決めされている液晶表示装置用照明装置。」

b 同じく原査定の理由に引用された特開平6-301034号(以下、「刊行物2」という。)にはつぎのとおり記載されている。
(a)「【請求項1】 薄い略角皿型のハウジング内に複数本の直管状の蛍光ランプを配置し、前記ハウジングの内面には反射膜が設けられており、前記ハウジングを閉じるべくアクリル性の光透過性光拡散板を配置したバックライト装置において、
前記蛍光ランプ群の両端側には、それぞれ各蛍光ランプの端をそれぞれ係合できる係合穴を有したランプ固定板が配置され、このランプ固定板は、前記ハウジングにフック及びネジ等により固定され、かつ前記ランプ固定板の上側端面には、前記光拡散板の穴に係合して、前記光拡散板と前記蛍光ランプとの位置決めを行うための突出ピン(基準点)が設けられていることを特徴とするバックライト装置。」
(b)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、液晶ディスプレイパネル、表示パネル等の照明具として用いられるバックライト装置及びその組立て方法に関する。」
(c)「【0011】
【実施例】以下、この発明の実施例を図面を参照して説明する。
図1はこの発明の一実施例である。10は、アルミ板により形成されたハウジングであり、薄い略角皿型である。詳しくは図2に平面、側面及び正面図が示されている。長辺方向の両端に起立するように折曲された翼片11a、11bと、短片方向の両端で起立するように折曲された翼片12a、12bを有する。翼片12a、12bは、斜め方向に角度を持って立ち上がっている。このハウジング10の長手方向の両側には、ランプ固定板20a、20b(20bは図示せず)が配置される。」
(d)「【0014】図3には、ランプ固定板20aを代表して示している。ランプ固定板20aには、固定用の穴X11?X15が設けられるとともに、上面側の左右中点には、位置決めピンを取り付けるための穴X16も形成されている。他方のランプ固定板20bも同様である。」
(e)「【0017】図5は、光拡散板60を詳しく示している。光拡散板60は、透明のアクリル板の一方の面(例えば上側の面)に光拡散層が均一な層で形成されている。この光拡散層は、印刷あるいは塗布により形成され、光を均一に拡散する。
【0018】さらに、蛍光ランプが直下に存在する位置(領域)には図面の都合上斜線を付して示している。破線で囲む円の部分は、斜線部の一部を拡大して示している。この光拡散板60の光拡散層(光拡散層が下側の面に設けられている場合)には、印刷または塗布により、光拡散インキによる反射率約40?70%で透過率が約55?25%の光制御層のドットパターンを設けている。このドットは、拡大図に示すように、蛍光ランプの軸上に対応する位置から遠ざかるに連れて面積が小さくなるようにパターン化されている。拡大図の矢印Aが蛍光ランプの軸上に位置する部分であり、この軸上のドットの面積が最も大きい。この光拡散インキによると、反射率約40?70%で透過率が約55?25%であり、光のロスは2?5%である。これにより、光源に近い部分の光の透過率が低く、遠ざかるに吊れて透過率が高くなり、全体平面としては、均一化した光が放出される。
【0019】さらに光拡散板60の左右中心位置には、ランプ固定板20a、20bに取り付けられた位置決めピンXPとYPに係合する位置決め穴部XH、YHが形成されている。この結果、蛍光ランプを固定する固定板20a、20bを基準にして、光拡散板60に形成されているドットパターン部DPa?DPfを、位置決めピンを基準に蛍光ランプが取り付けられ、また、位置決めアナログを基準にドットパターンが印刷されるため正確に蛍光ランプの位置に対応させて対向させることができる。
【0020】蛍光ランプとドットパターンの位置関係が正確に所定の関係にないと、光の拡散が不均一になるが、この装置では正確な位置決めができるので光拡散の均一、つまり拡散板面上の輝度の均一性を得ることができる。また、位置決め手段があるために、組み立て作業時においても容易に正確な位置決めが可能である。」
(f)「【0022】さらに、図6には、光拡散板60の他の構成例の原理を示している。この光拡散板60は、透明アクリル板601に、例えばシリカ、酸化亜鉛、チタンまたは蛍光体等の調合を行った拡散剤が均一に印刷または塗布され、拡散層602(厚み0.5μm?100μm)を構成している。さらに拡散層602の上面には、ドットパターンとしてレンズ層603が構成されている。このレンズ層603は、透明レジスト、あるいは拡散層と同じ材質により形成されている。・・・」

上記記載(a)乃至(e)からみて、刊行物2には、レンズ層603を備えた光拡散板60とハウジング10とを有するバックライト装置において、光拡散板60をハウジング10に対して位置決めするために、ハウジング10の長手方向の両側に固定されたランプ固定板20a,20bにピンXP,YPを設け、光拡散板60に位置決め穴部XH,YHを設け、前記ピンXP,YPに、該光拡散板60の位置決め穴部XH,YHをはめ込むことにより位置決めする構造が記載されている。
したがって、刊行物2には、拡散板(光拡散板60)を位置決めするために、拡散板の保持部材が位置決め部材(ランプ固定板20a,20b)に設けられたピン(ピンXP,YP)であり、拡散板は2つの孔(位置決め穴部XH,YH)を有し、前記ピンに該拡散板の孔をはめ込む技術が記載されている。

また、上記記載(f)からみて、刊行物2には、拡散層602とレンズ層603とを備えた光拡散板60が記載されている。
したがって、刊行物2には、照明装置(バックライト装置)において、拡散手段(拡散層602)とレンズ手段(レンズ層603)とを設ける技術が記載されている。

c 同じく原査定の理由に引用された特開平6-342106号(以下、「刊行物3」という。)にはつぎのとおり記載されている。
(a)「【請求項1】 透明な導光板の側面に線光源を配置したエッジライト方式の面発光装置の製造方法において、導光板に貼り付けられるシートに粘着剤を印刷し、導光板と貼り合わせることを特徴とする面発光装置の製造方法。
【請求項2】 導光板に貼り付けられるシートが表面拡散シートである請求項1記載の面発光装置の製造方法。」
(b)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、液晶表示装置などに用いられる面発光装置の製造方法に関する。」
(c)「【0005】図面を参照しながらこの発明をさらに詳しく説明する。
図1はこの発明の面発光装置の製造方法により得られる面発光装置の一実施例を示す断面図である。図2は、この発明の面発光装置の製造方法を示す流れ図である。図3?7は、この発明の面発光装置の製造方法における粘着剤を印刷するパターンを示す平面図である。1は導光板、2は光拡散透過部、3は表面拡散シート、4は裏面反射シート、5は側面反射シート、6は粘着剤、7は線光源をそれぞれ示す。」
(d)「【0010】表面拡散シート3が、導光板1の表側に配置される。表面拡散シート3としては、光拡散物質が塗布されたフィルム、それ自体が拡散性を有するフィルム、乳白色の樹脂板などを使用することができる。」
(e)「【0012】これらのシート3?5は、粘着剤6により導光板1に固定される。」
(f)「【0015】・・・表面拡散シート3や裏面反射シート4と導光板1との熱収縮率が異なるので、組み込まれた装置内部の熱や外気温などにより熱が加えられた場合、導光板1に貼り付けられた表面拡散シート3や裏面反射シート4が剥がれたり、導光板1が反る恐れがある。・・・
【0016】粘着剤6の塗布については、シート3?5の一部分のみに粘着剤6を塗布するのが適当であり、シート3?5の全面に粘着剤6を塗布するのは適当ではない。・・・粘着剤6を塗布するパターンとしては、シート3?5の1辺のみでもよく(図5参照)、1辺のうちの一部分のみでもよい(図6?7参照)。」

上記記載(a)乃至(f)からみて、刊行物3には、表面拡散シート3と導光板1とを有する面発光装置において、粘着剤6を一辺側のみに設け、表面拡散シート3を導光板1に位置決めする構造が記載されている。
したがって、刊行物3には、拡散板(表面拡散シート3)を保持部材(導光板1)に位置決めするにあたり、位置決め手段(粘着剤6)を一辺側のみに設ける技術が記載されている。

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
a 本願補正発明と引用発明とは、いずれも照明装置に関するものであって、引用発明の「上フレーム」、「下フレーム」、「液晶表示装置用照明装置」はそれぞれ本願補正発明の「上フレーム」、「位置決め部材」、「照明装置」に相当する。
b 引用発明の「光拡散板」と本願補正発明の「シート状の拡散板」とは「拡散板」である限りにおいて共通する。
c 引用発明の「中間フレーム42の凹部」と本願発明の「ピン」とは、拡散板を保持するための部材としての部材(以下、「保持部材」という。)である限りにおいて共通する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「少なくとも拡散板、上フレーム、位置決め部材を有するサイドライト方式の照明装置において、
前記位置決め部材には保持部材が設けられ、
前記保持部材に、前記拡散板を保持し、位置決めされている照明装置」である点で一致し、つぎの点で相違する。

[相違点1]
拡散板について、本願補正発明のものはシート状であるのに対し、引用発明のものはシート状であるかどうか不明である点。
[相違点2]
「保持部材に、前記拡散板を保持し、位置決めされている」構成について、本願補正発明は、保持部材が位置決め部材に設けられたピンであり、上フレームは孔を2つ有し、拡散板は一辺側にのみ2つの孔を有し、前記ピンに該拡散板の孔、前記上フレームの孔をはめ込むことにより構成されているのに対し、引用発明は、保持部材が位置決め部材に位置決めされた中間フレーム42の凹部であり、当該凹部に拡散板が配置されることにより構成されている点。
[相違点3]
本願発明はシート状のレンズを有し、更に当該レンズは一辺側にのみ2つの孔を有し、前記保持部材に該レンズの孔をはめ込み、位置決めされる構成とされているのに対し、引用発明は、シート状のレンズを有しておらず、それに伴い当該レンズが位置決めされる構成も有していない点。

(4)判断
[相違点1]について
照明装置に用いる拡散板をシート状とすることは、例えば刊行物3に記載されているように周知の技術であるから、引用発明の拡散板をシート状とすることは当業者が適宜なし得る程度の事項にすぎない。

[相違点2]について
上記したとおり、刊行物2には「拡散板を位置決めするために、拡散板の保持部材が位置決め部材に設けられたピンであり、拡散板は2つの孔を有し、前記ピンに該拡散板の孔をはめ込む技術」が記載されており、また、刊行物3には「拡散板を保持部材に位置決めするにあたり、位置決め手段を一辺側のみに設ける技術」が記載されているから、引用発明における、拡散板を位置決め部材に対して位置決めする構成について、これらの技術事項を適用し、保持部材が位置決め部材に位置決めされた中間フレーム42の凹部であり、当該凹部に拡散板が配置されること」に代えて「保持部材が位置決め部材に設けられたピンであり、上フレームは孔を2つ有し、拡散板は一辺側にのみ2つの孔を有し、前記ピンに該拡散板の孔、前記上フレームの孔をはめ込む構成とすることは当業者が容易になし得る程度の事項にすぎない。
また、その際に、上フレームは孔を2つ有し、前記ピンに当該上フレームの孔をはめ込むようにすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る程度の事項にすぎない。

[相違点3]について
上記したとおり、刊行物2には「照明装置において、拡散手段とレンズ手段とを設ける技術」が記載されている。
一方、照明装置において、拡散手段とレンズ手段とを設けるにあたり、シート状の拡散板とシート状のレンズとを別体とし積層することは、例えば特開平7-218911号公報、特開平7-56170号公報に見られるように周知の技術事項である。
したがって、引用発明に、刊行物2に記載された2つの技術事項、刊行物3に記載された技術事項及び上記周知技術を適用し、引用発明の拡散板に代えてシート状の拡散板とシート状のレンズとし、当該シート状のレンズについて、上記相違点2についての判断で記載した拡散板の位置決め手段と同様に、レンズは一辺側にのみ2つの孔を有し、前記ピンに該レンズの孔をはめ込む構成とすることは当業者が容易になし得る程度の事項にすぎない。

この点について、請求人は、【請求の理由】において「引用文献2には、拡散板の上面にレンズ層が形成されていることは記載されていますが、一辺側に2つの孔を有したシート状のレンズについては記載されていません。具体的には、引用文献2には、図6、図7などに、アクリル板601に拡散層602とレンズ層603とが印刷等で形成されている構成しか記載されておらず、拡散シートとレンズシートとが別部材であること、及び、拡散層に孔が形成されていることは開示も示唆もされていません。」と主張しているが、上記(2)欄の(a)乃至(f)の記載事項から、レンズ層603を有する上記光拡散板60に孔が設けられていることは明らかであるから、当該主張は理由がない。
また、請求人は、【請求の理由】において「引用文献2のバックライト装置(直下型)では、アクリル板を用いた厚みのある拡散板を位置決めするためにピンと孔による位置決め構造を採用しています。これに対し、引用文献3の面発光装置(サイドライト方式)では、シート状の拡散板(拡散シート)を採用しており、拡散シートを位置決めするというより固定しています。このように、引用文献2,3では照明装置としての方式が異なるため、拡散板の位置決め(固定)方法が相違していますので、引用文献2に引用文献3を適用する動機付けが引用文献2,3には見当たりません。」と主張している。
しかしながら、刊行物2と3に記載されたものはいずれも、本願発明や刊行物1に記載されたものと同様に、液晶表示装置などに用いられる、拡散手段を備えた面発光装置に関するものであり、しかも、刊行物2と3に記載された技術はいずれも当該拡散手段についてのものであるから、当業者であれば引用発明に刊行物2及び3に記載された技術事項を適用することについての動機付けがないとはいえず、請求人の当該主張は理由がない。

本願補正発明を全体としてみても、作用効果については、引用発明、刊行物2及び3に記載された事項並びに前記周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明、刊行物2及び3に記載された事項並びに前記周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)小括
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
本件補正は前記のとおり却下されたので、本件出願の各請求項に係る発明は、平成18年9月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至6に記載された事項により特定されるものにあると認められるところ、請求項1には、つぎのとおり記載されている。

「【請求項1】
少なくともシート状の拡散板、上フレーム、位置決め部材を有するサイドライト方式の照明装置において、
前記位置決め部材にはピンが設けられ、
前記上フレームは孔を2つ有し、
前記拡散板は一辺側にのみ2つの孔を有し、
前記ピンに、該拡散板の孔、前記上フレームの孔をはめ込み、位置決めされていることを特徴とする照明装置。」(以下、この発明を「本願発明」という。)

4.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である第1乃至3刊行物及びその記載事項は、前記「2(2)」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、前記「2」で検討した本願補正発明から、「サイドライト方式の照明装置」について、「シート状のレンズ」を有するという限定を省き、「一辺側にのみ2つの孔を有」するものについて、「及びレンズ」という限定を省き、「ピン」にはめ込むものについて、「及びレンズの孔」という限定を省くものである。
したがって、本願発明と引用発明との相違点は、前記「2(3)」欄に記載した[相違点1]、[相違点2]と同様であり、また、それらについての判断も、前記「2(4)」欄に記載した「[相違点1]について」、「[相違点2]について」の判断と同様である。
したがって、本願発明は、引用発明、刊行物2及び3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本件出願は、本件出願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-25 
結審通知日 2008-12-02 
審決日 2008-12-15 
出願番号 特願2006-165255(P2006-165255)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F21V)
P 1 8・ 575- Z (F21V)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 正志柿崎 拓  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 渡邉 洋
高木 彰
発明の名称 照明装置及び液晶表示装置  
代理人 特許業務法人原謙三国際特許事務所  

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