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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1192184
審判番号 不服2007-29767  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-01 
確定日 2009-02-05 
事件の表示 特願2005-293896「アンテナ素子を内蔵する半導体モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 4月 6日出願公開、特開2006- 94542〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、平成8年9月2日に出願した特願平8-231685号の一部を平成17年10月6日に新たな特許出願としたものであって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
(本願発明)
「アンテナ素子と、
該アンテナ素子に接続され、入射又は放射される少なくとも一方の信号を増幅する増幅回路及び前記増幅回路に接続される周波数変換回路を有する周辺回路群と、
該アンテナ素子及び該周辺回路群を同一面側に形成した基板と、
導電性部材からなる平面部と該平面部の周縁部から下方に延在する周辺部とからなり、前記アンテナ素子に対向する前記周縁部より内側の平面部の領域であって且つ、前記アンテナ素子と前記周辺回路群との間の領域に対向する位置に一端面を有する電磁波透過窓が形成されて非導電性部材からなる覆い板がはめ込み一体化され、前記電磁波透過窓の一端面を一端とし、該一端から一体に、前記アンテナ素子と前記周辺回路群との間の領域と所定の空隙を持って位置する他端に向かって延在して、且つ、前記一端と前記他端との間に延在する一側面に前記覆い板の一側面が位置する電磁遮蔽板が形成され、更に、前記周辺部の下端部に、前記基板に接着され前記アンテナ素子及び前記周辺回路群を前記基板との間に気密封止する気密封止部が形成された封止カバーと、
を有することを特徴とするアンテナ素子を内蔵する半導体モジュール。」

2.引用発明及び周知技術
A.原審の拒絶理由に引用された特開平1-311605号公報(以下、「引用例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「次に本発明について図面を参照して詳細に説明する。第1図と第2図は本発明の一実施例の断面図と外観平面図である。本発明によるマイクロ波集積回路は第1図のようにアンテナ素子1と、例えばモノリシックマイクロ波集積回路(以後ICと略す)チップから成る増幅回路3と複数の端子4と密閉容器(以後ケースと略す)5とから構成されており、ケース5の内側は輻射容器7と端子4の付近を除いて全て紫外線保護と電磁シールドの為に例えばメタライズ等による金属膜または金属6が施されている。輻射開口部7は例えばガラスまたはセラミックスまたはプラスチックの如き電波を通過し気密性を保持する物質で構成されており外部よりこの輻射開口部を通過した信号はまずアンテナ素子2を励振し次に前記アンテナ素子2と電磁結合したアンテナ素子1によって受信されボンディングワイヤー8を経てICチップからなる増幅回路3によって増幅、周波数変換されてボンディングワイヤー9を経て端子4より出力される。」(2頁左下欄1?20行目)
ロ.「第3図は本発明の一実施例を系統を示すブロック図であり、増幅回路3として低雑音器3a、周波数変換器3b、中間周波増幅器3cの機能を有する集積回路を有しており、外部より局部発振信号を印加すれば受信コンバータとして動作する。」(2頁右下欄6?10行目)
ハ.「アンテナ素子1は第1図に示すように例えばアルミナセラミックスの如き絶縁体基板10上の厚膜または薄膜技術によって形成しケース5の内部に実装される。またアンテナ素子1を構成する基板10として例えばシリコンまたはガリウムヒ素の様なマイクロ波集積回路を構成する半導体基板を採用して更に増幅回路等3を半導体基板10上にアンテナ素子と一緒に半導体集積技術によって集積してもよい。この様にすれば第1図の構成においてアンテナ素子1と増幅回路3との間のボンディングワイヤー8を省略できて、マイクロ波集積回路の組立作業がより簡単になると共に接続箇所による特性の劣化を削除できるので更に特性のよいマイクロ波集積回路を実現することが出来る。他方、他のアンテナ素子2は厚膜またはメタライズ技術等により第1図に示す様にケース5の内側に形成する。」(3頁右上欄2?18行目)

上記引用例の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「増幅回路3」は第3図を参照すると「低雑音増幅器3a」(即ち、低雑音増幅回路)と「低雑音増幅器3a」に接続される「周波数変換器3b」(即ち、周波数変換回路)等を含む回路群であり、いわゆる「周辺回路群」を構成している。また第1図を参照すると、上記「密閉容器5」のいわゆる「底部」の容器内面(即ち、同一面側)には、前記「アンテナ素子1」及び「周辺回路群」が形成されており、該「密閉容器5」のいわゆる「蓋部」は「導電性部材からなる平面部と該平面部の周縁部から下方に延在する周辺部とからなり」、「前記アンテナ素子1に対向する前記周縁部より内側の平面部の領域であって且つ、前記アンテナ素子1と前記周辺回路群との間の領域に対向する位置に一端面を有する輻射開口部7が形成されて」おり、前記輻射開口部7は「電波を通過し気密性を保持する物質で形成され」ている。
また前記密閉容器蓋部の周辺部の下端部と前記密閉容器底部は前記アンテナ素子及び前記周辺回路群を収容した状態で密閉(即ち、気密封止)されているのであるから、両者は何らかの手段により接合され、該接合部はいわゆる「気密封止部」を構成している。
したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。
(引用発明)
「アンテナ素子と、
該アンテナ素子に接続され、受信信号を増幅する増幅回路及び前記増幅回路に接続される周波数変換回路を有する周辺回路群と、
該アンテナ素子及び該周辺回路群を同一面側に形成した密閉容器底部と、
メタライズ等による金属膜が施された平面部と該平面部の周縁部から下方に延在する周辺部とからなり、前記アンテナ素子に対向する前記周縁部より内側の平面部の領域であって且つ、前記アンテナ素子と前記周辺回路群との間の領域に対向する位置に一端面を有する輻射開口部が形成され、該輻射開口部は電波を通過し気密性を保持する物質で形成され、更に、前記周辺部の下端部に、前記密閉容器底部に接合され前記アンテナ素子及び前記周辺回路群を前記密閉容器底部との間に気密封止する気密封止部が形成された密閉容器蓋部と、
を有するアンテナ素子を内蔵するマイクロ波集積回路。」

B.同じく原審の拒絶理由に引用された特開平1-168045号公報(以下、「引用例2」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「〔従来の技術〕
気密封止形(ハーメティックシール形)のICパッケージは、外気遮断(耐湿)や電磁波遮蔽の性能が優れているので、特にハイブリッド形のリニアICモジュールやディジタルICモジュールに多用されている。
気密封止パッケージとして、銅、アルミ等の金属板ベース(ヘッダ)に貫通リードピンをガラスシールで植設し、その上にICチップ等をマウントした焼結アルミナ等のセラミック回路基板をのせて、回路と上記リードとを半田接続し、更にメタルキャップで回路部分を覆い、不活性気体を気密封入するためにメタルキャップとベースとをガラス、ろう付け、抵抗溶接などで封止したもの(所謂メタルパッケージ)が知られている。
またセラミックタイプパッケージと称して、ICチップなどをマウントしたセラミック回路基板のメタライズ部にリードをろう付けし、更にメタルキャップやセラミック蓋で回路部分を覆ってメタルキャップ又はセラミック蓋とセラミック回路基板とを半田付け又はガラス融着して気密封止したものも知られている。」(2頁左上欄14行目?右上欄15行目)

上記引用例2に従来例として記載されているように「金属板ベースとメタルキャップを接着(例えばろう付け)により気密封止したメタルパッケージ」と「非金属(例えばセラミック)基板と非金属(例えばセラミック)蓋を接着(例えば半田付け)により気密封止した非金属パッケージ」はいずれも周知のICパッケージである。

C.例えば本件を出願する10年以上も前に公開された実願昭54-29455号の願書に添付された明細書と図面を撮影したマイクロフィルム(実開昭55-130404号公報参照、以下、「周知例1」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
(周知例1)
イ.「誘電体基板面に設けた平面上導体に複数のスロツトを形成してなるスロツトアレイアンテナと、このスロツトアレイアンテナに高周波を給電する回路素子と、上記スロツトアレイアンテナから輻射される電波の放射方向に設置された少なくとも1枚の誘電体高周波レンズと、このレンズの周囲に設置された電波吸収体とを具備し、上記レンズは上記アンテナ面に平行に設置されるとともに回転可能に取付けられ、且つ方向により曲率が異なる面を有してなることを特徴とするアンテナ装置。」(明細書1頁、実用新案登録請求の範囲)
ロ.「又、パターン上不要な電波は電波吸収体20で遮蔽し、外へ出ないようにすることで、レンズ19を通過する電波についてのみ考えることができる。」(明細書5頁4?7行目)
ハ.「又、第7図は誘電体高周波レンズの変形例を示したもので、着脱容易なように嵌め込み式の構造になっている 図中、24が誘電体高周波レンズである。」(明細書6頁18行目?7頁1行目)

上記周知例1のレンズ19は、その周辺が電波吸収体20で遮蔽され、電波はレンズのみを通過するのであるから、当該レンズ19はいわゆる電磁波透過窓である。
したがって、例えば上記周知例1に開示されているように「電波の輻射方向(即ち、アンテナの前面)に設けられ誘電体(即ち、非導電性部材)からなる覆い板がはめ込み一体化された電磁波透過窓付きアンテナ。」は周知である。

D.例えば特開平3-9602号公報(以下、「周知例2」という。)または特開昭62-15905号公報(以下、「周知例3」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
(周知例2)
イ.「第1図は本発明によるマイクロ波受信器のモジュールの一実施例を示す斜視図であり、外部ケースから取り出した状態で示しである。
モジュールは、両面に銅張りした誘電体基板(たとえばテフロングラスファイバ系)1の片面に4個の方形マイクロストリップパッチアンテナ(以後「パッチアンテナ」という)21,22,23,24と、伝送線路3と、ローカル発振用パターン4a,4b,4cとをエッチング技術により形成して成り、ローカル発振用パターン4a?4cの近傍にはローカル発振用誘電体41とローカル発振用FET42とが配置され、伝送線路3の先端近傍にはミキサーダイオード5が配置され、そしてミキサーダイオード5の近くに中間周波増幅用のIC素子6が配置されている。」(2頁右上欄2?16行目)
ロ.「基板1上のローカル発振部Lと、ミキサ一部Mと、中間周波増幅部Nは電界遮蔽のために基板1の上方から金属ケース7で遮蔽される。」(2頁右下欄17?19行目)

(周知例3)
イ.「第1図および第2図は本発明一実施例を示すもので、裏面にアース電極2が形成された誘電体基板1の表面にマイクロストリップライン3を形成したフラットアンテナ本体4の給電点4a近傍の誘電体基板1の表面側(マイクロストリップライン3側)に、アクテイブ素子を用いてアンテナ出力を増幅する高周波アンプ5aよりなる伝送損失補償回路5を設けたものであり、高周波アンプ5aはGaAsトランジスタ(FET)よりなるアクテイブ素子を用いて形成され、シールドケース6内に配設されている。また、トランジスタ駆動用の正負2系統の電源は貫通コンデンサ7を介してそれぞれ供給され、増幅されたアンテナ出力は出力端子8を介して出力されるようになっている。なお、第1図において多数のマイクロストリップライン3よりなるアンテナパターンは従来例と同一であるので省略している。」(2頁右上欄11行目?左下欄7行目)

例えば上記周知例2、3に開示されているように「アンテナと周辺回路群間を遮蔽したアンテナ一体型マイクロ波モジュール」は周知である。

E.例えば特開平2-114415号公報(以下、「周知例4」という。)または特開平7-58484号公報(以下、「周知例5」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
(周知例4)
イ.「プリント回路基板(5)に検出回路を有する主要回路部(7)と、電源回路部(9)を設けるとともに、上記プリント回路基板(5)をハウジング(1)内に収容し、かつこのハウジング内には上記主要回路部(7)と上記電源回路部(9)とを仕切る隔壁(11)を一体に形成し、さらにこの隔壁を含む上記ハウジング(1)の内壁にわたつてシールド膜(12)を形成し、また上記プリント回路基板(5)には上記シールド膜(12)と電気的に接触する弾性片(13)を固定した電子スイッチのシールド装置。」(1頁左下欄、特許請求の範囲)

(周知例5)
イ.「【0002】
【従来技術】例えば無線機等を組み立てるにあたり、電磁波を当ててはいけない部品や電磁波を発生させて他の部品に影響を及ぼしてしまう部品が基板上に取り付けられることがある。このような場合、電磁波を遮断して部品の正常な機能を確保するため各部品にシールドを行なう。シールド構造には従来、特開昭63-306698号公報に記載されているようなものが知られている。これは、図3や図4に示すように、遮蔽用筺体20の内壁面に部品毎に仕切る仕切り壁22を設け、この遮蔽用筺体20を基板24に取り付けて複数の部品26等をそれぞれ仕切り壁22で形成される空間内に収容して隔離し、外部からの電磁波及び他の部品からの電磁波が個々の部品に照射されることがないように遮断している。」(2頁1欄、段落2)

例えば上記周知例4、5に開示されているように「ケース上面から下方に向かって突設した導電性壁部により二つの回路間を遮蔽すること」は周知である。

F.例えば特開平5-22165号公報(以下、「周知例6」という。)または実願昭60-20132号の願書に添付された明細書と図面を撮影したマイクロフィルム(実開昭61-136633号公報参照、以下、「周知例7」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
(周知例6)
イ.「【0044】また、上述のシールド部材67は、図14および図15に示すような特定的な場面において効果的に使用することができる。この実施例では、シールド部材67とは別に、シールド板71が、金属板からなる上カバー4の一部を折り曲げることにより設けられている。このシールド板71に近接して、適当数のシールド部材67が、図13を参照して説明したのと同様の態様で配置される。シールド部材67は、シールド板71との併用でより高い効果を発揮できるように、その位置が選ばれる。」(5頁7欄、段落44)

(周知例7)
イ.「第1図において、第1のプリント基板23と第2のプリント基板24で挟むように接地用金属板26が配置され、さらに、この接地用金属板26の一部を切り起こして、第2のプリント基板24を貫通して1次側および2次側共振用可変容量ダイオード5,8の間に配置されるシールド用金属板27が突設されている。なお、接地用金属板26とシールド板13とケース22は、半田付け等により電気的に接続されている。」(明細書10頁13行目?11頁1行目)

例えば上記周知例6、7に開示されているように「二つの回路間を遮蔽するシールド板を、上面金属板の一端から、所定の空隙を持って位置する他端に向かって延在するように、切り起こしにより形成すること」は周知である。

3.対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「受信信号」はアンテナに入射される信号であるから、引用発明の当該構成と本願発明の「入射又は放射される少なくとも一方の信号」の間に実質的な差異はない。また、引用発明の「マイクロ波集積回路」は半導体基板及び半導体集積技術を用いて回路を集積化したものであるから、引用発明の当該構成と本願発明の「半導体モジュール」の間にも実質的な差異はない。
また引用発明の「密閉容器底部」及び「メタライズ等による金属膜が施され」た「密閉容器蓋部」と本願発明の「基板」及び「導電性部材」からなる「封止カバー」はそれぞれ「封止ベース」及び「導電性部材で形成され」た「封止キャップ」である点で一致している。
また引用発明の「輻射開口部」と本願発明の「電磁波透過窓」の間にも実質的な差異はない。
また引用発明の「該輻射開口部は電波を通過し気密性を保持する物質で形成され」という構成と本願発明の「非導電性部材からなる覆い板がはめ込み一体化され」という構成はいずれも「該窓は電波を透過する材料で形成され」という構成の点で一致している。
また本願発明の「前記電磁波透過窓の一端面を一端とし、該一端から一体に、前記アンテナ素子と前記周辺回路群との間の領域と所定の空隙を持って位置する他端に向かって延在して、且つ、前記一端と前記他端との間に延在する一側面に前記覆い板の一側面が位置する電磁遮蔽板が形成され」という構成を引用発明は備えていない。
また引用発明の「前記周辺部の下端部に、前記密閉容器底部に接合され前記アンテナ素子及び前記周辺回路群を前記密閉容器底部との間に気密封止する気密封止部が形成された密閉容器蓋部」と本願発明の「前記周辺部の下端部に、前記基板に接着され前記アンテナ素子及び前記周辺回路群を前記基板との間に気密封止する気密封止部が形成された封止カバー」はいずれも「前記周辺部の下端部に、前記封止ベースに固着され前記アンテナ素子及び前記周辺回路群を前記封止ベースとの間に気密封止する気密封止部が形成された封止キャップ」である点で一致している。
したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致し、また、相違している。
<一致点>
「アンテナ素子と、
該アンテナ素子に接続され、入射又は放射される少なくとも一方の信号を増幅する増幅回路及び前記増幅回路に接続される周波数変換回路を有する周辺回路群と、
該アンテナ素子及び該周辺回路群を同一面側に形成した封止ベースと、
導電性部材で形成され、平面部と該平面部の周縁部から下方に延在する周辺部とからなり、前記アンテナ素子に対向する前記周縁部より内側の平面部の領域であって且つ、前記アンテナ素子と前記周辺回路群との間の領域に対向する位置に一端面を有する電磁波透過窓が形成され、該窓は電波を透過する材料で形成され、更に、前記周辺部の下端部に、前記封止ベースに固着され前記アンテナ素子及び前記周辺回路群を前記封止ベースとの間に気密封止する気密封止部が形成された封止キャップと、
を有するアンテナ素子を内蔵する半導体モジュール。」

<相違点>
(1)「封止ベース」に関し、本願発明は「基板」であるのに対し、引用発明は「密閉容器底部」である点。
(2)「導電性部材で形成され」た「封止キャップ」に関し、本願発明は「導電性部材からなる・・・封止カバー」であるのに対し、引用発明は「メタライズ等による金属膜が施された・・・密閉容器蓋部」である点。
(3)「該窓は電波を透過する材料で形成され」という構成に関し、本願発明は「非導電性部材からなる覆い板がはめ込み一体化され」という構成であるのに対し、引用発明は「該輻射開口部は電波を通過し気密性を保持する物質で形成され」という構成である点。
(4)本願発明は「前記電磁波透過窓の一端面を一端とし、該一端から一体に、前記アンテナ素子と前記周辺回路群との間の領域と所定の空隙を持って位置する他端に向かって延在して、且つ、前記一端と前記他端との間に延在する一側面に前記覆い板の一側面が位置する電磁遮蔽板が形成され」という構成を備えているのに対し、引用発明は当該構成を備えていない点。
(5)「固着」に関し、本願発明は「接着」であるのに対し、引用発明は「接合」である点。

4.判断
そこで、まず上記相違点(1)の「封止ベース」及び上記相違点(2)の「導電性部材で形成され」た「封止キャップ」及び上記相違点(5)の「固着」についてまとめて検討するに、上記引用例2に記載されているように「金属板ベースとメタルキャップを接着(例えばろう付け)により気密封止したメタルパッケージ」と「非金属(例えばセラミック)基板と非金属(例えばセラミック)蓋を接着(例えば半田付け)により気密封止した非金属パッケージ」はいずれも周知のICパッケージであるところ、引用発明の密閉容器は前記周知技術におけるいわゆる「非金属パッケージ」であり、当該「非金属パッケージ」を前記周知技術の他の型である「メタルパッケージ」に変更する上での阻害要因は何ら見あたらないから、当該周知技術に基づいて、引用発明の「密閉容器底部」及び「メタライズ等による金属膜が施されている・・・密閉容器蓋部」からなる「非金属パッケージ」を、周知の金属板ベースとメタルキャップからなり、接着により気密封止された「メタルパッケージ」に変更することにより、本願発明のような「基板」と「導電性部材からなる・・・前記周辺部の下端部に、前記基板に接着され前記アンテナ素子及び前記周辺回路群を前記基板との間に気密封止する気密封止部が形成された封止カバー」に変更する程度のことは当業者であれば適宜なし得ることである。

ついで、上記相違点(3)の「該窓は電波を透過する材料で形成され」という構成について検討するに、例えば上記周知例1に開示されているように「電波の輻射方向(即ち、アンテナの前面)に設けられ誘電体(即ち、非導電性部材)からなる覆い板がはめ込み一体化された電磁波透過窓付きアンテナ。」は周知であり、当該周知技術を引用発明に適用する上での阻害要因も何ら見あたらないから、当該周知技術に基づいて、引用発明の「該輻射開口部は電波を通過し気密性を保持する物質で形成され」という構成を本願発明のような「(電磁波透過窓が形成されて)非導電性部材からなる覆い板がはめ込み一体化され」という構成とする程度のことも当業者であれば適宜なし得ることである。

ついで、上記相違点(4)の『本願発明は「前記電磁波透過窓の一端面を一端とし、該一端から一体に、前記アンテナ素子と前記周辺回路群との間の領域と所定の空隙を持って位置する他端に向かって延在して、且つ、前記一端と前記他端との間に延在する一側面に前記覆い板の一側面が位置する電磁遮蔽板が形成され、」という構成を備えているのに対し、引用発明は当該構成を備えていない点』について検討するに、例えば上記周知例2、3に開示されているように「アンテナと周辺回路群間を遮蔽したアンテナ一体型マイクロ波モジュール」自体は周知であり、例えば上記周知例4、5に開示されているように「ケース上面から下方に向かって突設した導電性壁部により二つの回路間を遮蔽すること」も周知であり、また例えば上記周知例6、7に開示されているように「二つの回路間を遮蔽するシールド板を、上面金属板の一端から、所定の空隙を持って位置する他端に向かって延在するように、切り起こしにより形成すること」も周知であり、また、回路間に配置するシールド板が回路の配線に接触したり回路動作に影響を与えることがないようにその大きさ等が設定されることは自明のことであり、また、「電磁遮蔽板」と「覆い板」が当接する(即ち、前記一端と前記他端との間に延在する一側面に前記覆い板の一側面が位置する)か否かは前記「電磁遮蔽板」の形状、位置、前記「覆い板」の形状、大きさ、両者の具体的なはめ込み構造等によっていかようにも構成され得る単なる設計的事項である。そして、これらの周知技術及び自明な事項ないしは設計的事項を引用発明に適用する上での阻害要因は何ら見あたらないから、これらの周知技術及び自明な事項ないしは設計的事項に基づいて、引用発明のアンテナと周辺回路群間の領域に対向する位置(この位置は電磁波透過窓の一端でもある)に例えば切り起こしによる一体型シールド板を設置することにより、本願発明のような「前記電磁波透過窓の一端面を一端とし、該一端から一体に、前記アンテナ素子と前記周辺回路群との間の領域と所定の空隙を持って位置する他端に向かって延在して、且つ、前記一端と前記他端との間に延在する一側面に前記覆い板の一側面が位置する電磁遮蔽板が形成され」という構成を付加することも当業者であれば適宜なし得ることである。

以上のとおりであるから、本願発明は引用発明及び周知技術ないしは自明な事項等に基づいて容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術ないしは自明な事項等に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-20 
結審通知日 2008-11-25 
審決日 2008-12-10 
出願番号 特願2005-293896(P2005-293896)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 賢司  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 阿部 弘
萩原 義則
発明の名称 アンテナ素子を内蔵する半導体モジュール  
代理人 河野 哲  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 中村 誠  
代理人 村松 貞男  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 峰 隆司  
代理人 橋本 良郎  
代理人 福原 淑弘  

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