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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1192662
審判番号 不服2005-10126  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-30 
確定日 2009-02-12 
事件の表示 特願2000-616749「N-アセチルグルコースアミンを用いる剥脱方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月16日国際公開、WO00/67722、平成14年12月24日国内公表、特表2002-544154〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯・本願発明

本願は、平成12年4月26日(パリ条約による優先権主張1999年5月6日 米国)を国際出願日とする出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年12月1日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】N-アセチル-D-グルコースアミン、N-アセチルガラクトースアミン、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるアミノ糖を、剥脱させるに有効な量含む組成物を皮膚に塗布することを含む、皮膚の剥脱方法。」

2.引用刊行物及びその記載事項
これに対して、原査定の理由に引用された、本願優先件主張日前に頒布されたことが明らかな刊行物Aには、以下のことが記載されている。

A:特開昭59-13708号公報(原審で引用された引用例1)
(A-1)
「アミノ糖、N-アセチルアミノ糖およびこれらの塩からなる群より選ばれた一種又は二種以上の化合物を配合してなる化粧料」(特許請求の範囲)
(A-2)
「本発明は天然の多糖、ムコ多糖、糖タンパクを酸、アルカリ、酵素等で分解して得られるアミノ糖類を化粧料成分として配合することを特徴とし、皮膚に対しては滑らかさ、しっとり感を与え…る新規な化粧料を提供するものである。」(公報第1頁左下欄下から10?5行)
(A-3)
「本発明に用いられるアミノ糖、N-アセチルアミノ糖およびこれらの塩は、…、例示すればN-アセチル-D-グルコサミン、N-アセチル-D-ガラクトサミン、…等があげられる。」(公報第1頁右下欄第17行?同第2頁左上欄第7行)
(A-4)
「本発明においてアミノ糖、N-アセチルアミノ糖およびこれらの塩は化粧料中0.001?30重量%程度配合され、本発明の効果を奏し、かつ化粧料としてベタツキ等の弊害を有さない点で0.1?5.0重量%程度が好ましい。」(公報第2頁左上欄第11?15行)
(A-5)
「本発明の化粧料は、皮膚に対しては滑らかな使用感、保湿効果、柔軟効果、皮膚賦活効果を有し、皮膚に、はり、つやを与える。」(公報第2頁右上欄第1?3行)

3.対比
上記刊行物Aの(A-1)?(A-5)の記載、及び、該刊行物Aの実施例では化粧水やクリーム等が例示されていて、刊行物Aに記載の化粧料が皮膚に塗布されて使用されることが明らかであることから、上記刊行物Aには、以下の発明が記載されているものと解される。
「N-アセチル-D-グルコサミン、N-アセチル-D-ガラクトサミンから選ばれた一種又は二種以上の化合物を、0.1?5.0重量%程度配合してなる化粧料を皮膚に塗布することにより、皮膚に対して、滑らかさ、しっとり感、はり、つやを与える方法。」(以下、「引用発明」という。)
そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、両者はともに、
「N-アセチル-D-グルコースアミン、N-アセチルガラクトースアミン、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるアミノ糖を含む組成物を皮膚に塗布することを含む方法。」
である点で一致し、以下の点で一応相違している。
・[相違点1]
アミノ糖の含有量が、本願発明では皮膚を「剥脱させるに有効な量」であるのに対して、引用発明では「0.1?5.0重量%程度」である点。
・[相違点2]
本願発明では「皮膚の剥脱方法」とされているのに対して、引用発明では「皮膚に対して、滑らかさ、しっとり感、はり、つやを与える方法」としている点。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
・[相違点1]について
本願発明では皮膚を「剥脱させるに有効な量」としているが、その具体的な配合量については、明細書【0009】に「N-アセチル-D-グルコースアミン又はN-アセチルガラクトースアミンは組成物中に、組成物の質量の約0.01?約25.0%、好ましくは0.5?約10.0、より好ましくは約1.0?5.0%の量存在する。」と記載されており、かかる記載と引用発明における「0.1?5.0重量%程度」とを対比すると両者は明らかに重複するものであるので、相違点1に関しては実質的な差異であるとすることはできない。
・[相違点2]について
皮膚の角質層を剥離することによって、皮膚のざらざら感をなくし滑らかな感触を与えたり、乾燥肌の改善や皮膚を新鮮に若々しく保つ効果があることは技術常識である(例えば、特開平10-175848号公報【0003】、特開平9-208448号公報【0003】、特開平9-295930号公報【0003】及び特開平10-175844号公報【0006】?【0008】及び特開平9-216809号公報【0005】?【0006】など参照)。
これに対して、本願発明において剥脱される皮膚は表皮の角質層であることは明らかであるので、本願発明における「皮膚の剥脱方法」も、上記技術常識を考慮すれば、「皮膚に滑らかさやしっとり感を与える」といった方法に他ならないものであって、その点において本願発明は引用発明と差異がないものである。
もっとも、本願発明は、「N-アセチル-D-グルコースアミン又はN-アセチルガラクトースアミンの皮膚剥脱作用」という、いわば未知の属性を発見したことに基づく発明と言えるものではあるが、上記したように「皮膚の剥脱により皮膚に滑らかさやしっとり感を与える効果がある」といった技術常識を考慮すると、本願発明と引用発明とは、ともに皮膚に対して適用されるものであって、その具体的な使用態様や効果等に関しても、両者を区別することができない。
すなわち、換言すれば、本願発明は、方法のカテゴリーによって表現された用途発明であると解されるものであるところ、たとえ本願発明が「N-アセチル-D-グルコースアミン又はN-アセチルガラクトースアミンの皮膚剥脱作用」という、未知の属性の発見に基づくものであったとしても、この分野の技術常識を考慮すると、その属性によって新たな用途を提供したものとすることができないので、本願発明は新規性あるものとすることができない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記刊行物Aに記載された発明であるとされるので、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。

以上
 
審理終結日 2008-09-10 
結審通知日 2008-09-16 
審決日 2008-09-29 
出願番号 特願2000-616749(P2000-616749)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福井 美穂  
特許庁審判長 星野 紹英
特許庁審判官 穴吹 智子
川上 美秀
発明の名称 N-アセチルグルコースアミンを用いる剥脱方法  
代理人 石井 貞次  
代理人 藤田 節  
代理人 平木 祐輔  

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