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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1192682
審判番号 不服2006-10018  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-17 
確定日 2009-02-12 
事件の表示 平成 8年特許願第290621号「遊技機製造装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 5月19日出願公開、特開平10-127872〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年10月31日の出願であって、平成17年9月7日付けで拒絶理由が通知され、これに対し同年11月8日付けで手続補正がなされ、平成18年4月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年5月17日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。

2.平成18年5月17日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年5月17日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)本件補正後の本願発明
平成18年5月17日付けの手続補正により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】 テーブルに搭載された遊技盤に工具で加工を行う加工機と、加工機を制御するコンピューターを内蔵する制御部と、遊技盤を加工機のテーブルに供給する側に設けられた読取器とを備え、制御部のコンピューターのメモリが、コンピューターの加工機を制御する最中に用いるデーターを記憶する第1メモリと、複数の異なる加工データーと複数の遊技盤機種データーとが個別に対応付けられて記憶される第2メモリとを備え、加工機がテーブルに搭載された先行する遊技盤に工具で加工を行っている最中において、読取器から後続する遊技盤の種別がコンピューターに入力されると、コンピューターが入力された後続する遊技盤の種別を上記加工中における先行する遊技盤の種別と比較し、それらが符合する場合は、コンピューターが後続する遊技盤のテーブルへの搭載後に、第1メモリに先行データーとして記憶された加工データーによって加工機を制御し、それらが異なる場合は、コンピューターが上記加工中における先行する遊技盤の加工終了から後続する遊技盤のテーブルに搭載されるまでの間に後続する遊技盤の種別に対応する加工データーを第2メモリから抽出して第1メモリに後続データーとして更新し、コンピューターが後続する遊技盤のテーブルへの搭載後に、第1メモリに後続データーとして更新された加工データーによって加工機を制御することを特徴とする遊技機製造装置。」
と補正された。

上記補正は、本件補正前の請求項2を削除するとともに、
請求項1は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「後続する遊技盤がテーブルに搭載された後に」を「後続する遊技盤のテーブルへの搭載後に」と言い換え、「コンピューターが」の記載位置を変更するとともに、「先行する遊技盤の加工終了後に」について「先行する遊技盤の加工終了から後続する遊技盤のテーブルに搭載されるまでの間に」と限定するものである。
これらの補正事項のうち、言い換えと記載位置の変更については、明りようでない記載の釈明、誤記の訂正には当たらず、特許請求の範囲の減縮、請求項の削除でもないから、平成14年法律第24号による改正前の特許法第17条の2第4項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同項の規定に違反するものであるが、その補正によって発明の構成は格別変わっておらず、限定については上記改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(上記改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-114147号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、
【0001】【産業上の利用分野】本発明はパチンコ機を構成する遊技盤の釘打作業を自動化するための遊技盤の釘打装置に関するものである。
【0010】識別情報と機種別センサとを設けた構成の場合、釘打装置は機種別センサから読み込まれた識別情報の種別に応じ、確実にパチンコ機の機種に対応した釘打加工を新遊技盤に施すことができる。
【0012】釘打装置1には加工テーブル(図2および図3参照)8が設けられている。加工テーブル8は釘打加工を施すために新たな遊技盤(以下、新遊技盤という)を載置するためのもので、加工テーブル8の直上には移送装置7の一部を構成するフレーム9が架設されている。
【0013】第1搬入コンベア2は、エレベータコンベア4、チャック装置5および移送装置7とともに新遊技盤(図1仮想線参照)10を釘打装置1に搬入するためのもので、本実施例では第1搬入コンベア2の直下には第1搬出コンベア3が配設されている。
【0043】中央管理装置50は釘打装置1をはじめとするエレベータコンベア4、チャック装置5、回動装置6、移送装置7などを制御するほか、バーコード46などに基くパチンコ機の機種に係るデータを印刷装置51およびゲージプレス装置52に入力して駆動制御するもので、中央管理装置50にはメモリ53および入力装置54が備えられている。
【0048】そして新遊技盤10が第2搬入コンベア12によって釘打装置1に搬入される直前、バーコード46,46′は釘打装置1の一部を構成する機種別センサとしてのバーコードリーダ55によってふたたび読み取られる。
【0049】このバーコードリーダ55はバーコード46,46′を読み取るための光学式のセンサであり、本実施例では図1、図3および図25に示すように第1搬入コンベア2の端部の上方に配設されている。
【0051】なお本実施例では釘打装置1に搬入される直前にバーコード46,46′をバーコードリーダ55から読み込んでいるが、釘打装置1に搬入される新遊技盤10の釘打加工前にパチンコ機の機種を識別できればよい。
【0052】このことから、エレベータコンベア4に新遊技盤10が搬入されてから、加工テーブル8に載置された新遊技盤10が釘打加工される直前までの間であれば釘打加工作業に支障を来すことはなく、また上述した中央管理装置50から読み込まれたデータとバーコード46,46′との比較は、バーコード46′のみについて行ってもよい。
【0053】釘打装置1はバーコードリーダ55のほか、図17および図18に示す釘打機本体56、ハンマ装置57、平面移動装置58および釘打制御装置(CPU)59を主構成とし、釘打装置1の各構成部材55?59は中央管理装置50によって制御される。
【0054】ハンマ装置57は釘打機本体56に対して片持ち梁上に取り付けられ、60で示したハンマ部は加工テーブル8の上方に固定されている。ハンマ部60は新遊技盤10に釘を新遊技盤10面に対してほぼ垂直に打ちつけるもので、この釘打作業の際には詳細を後述するが、加工テーブル8は平面移動装置58によってハンマ部60に対して平面状に移動する。
【0055】なお平面移動装置58はXモータ61およびYモータ62を主構成とし、Xモータ61は加工テーブル8を図17中、新遊技盤10面に対して左右水平方向に移動制御する一方、Yモータ62は加工テーブル8を図18中、新遊技盤10面に対して左右水平方向に移動制御する。
【0056】これにより平面移動装置58は加工テーブル8に位置決めされた新遊技盤10を、釘打装置1によって打ち込まれる釘と直交する同一平面上に加工テーブル8を移送させることができる。
【0057】そして平面移動装置58は、加工テーブル8に位置決めされた新遊技盤10が搬入された場合に加工テーブル8を新遊技盤10とともに、図17中、右方向に移動させ、釘打作業時においては上記平面状に、加工遊技盤14の完成時には図17中、左方向に移動させる。
【0058】バーコード46,46′は、上述した新遊技盤10が搬入コンベア2上に図示を省略したストッパによって停止またはエレベータコンベア4上に搬入されたとき、バーコードリーダ55によって読み込まれ、その情報はバーコードリーダ55から釘打制御装置59に入力される。
【0059】そして釘打制御装置59はバーコードリーダ55から読み込まれたバーコード46,46′の種別に応じ、予め図示を省略したメモリに格納された釘配置および釘打順序を読み出す。
【0060】この釘配置および釘打順序に基いて、釘打制御装置59はXモータ61およびYモータ62を制御することにより、ハンマ装置57に対する新遊技盤10の相対位置を変動させながら、パチンコ機の機種に固有な釘打加工を新遊技盤10に施すので、釘打装置1は確実にパチンコ機の機種に対応した釘打加工を新遊技盤10に施すことができる。
【0061】このような構成の遊技盤の釘打装置を使用するときには、まず初期状態において、エレベータコンベア4を第1搬入コンベア2の隣接位置に停止させることにより、新遊技盤10を第1搬入コンベア2からエレベータコンベア4に受け入れることができ、また加工テーブル8には加工遊技盤14が載置されていないので、回動装置6は新ワーク用ハンド17の先端部を直下方向に保持させている(図6参照)。
【0062】この状態で新遊技盤10は前記エレベータコンベア4に載置されているので、移送装置7がチャック装置をエレベータコンベア4の直上位置に移送している。これによりチャック装置5はエレベータコンベア4に載置されている新遊技盤10を新ワーク用ハンド17によって握持できる(図7および図8参照)。
【0063】ついで移送装置7はチャック装置5を図9に示すように加工テーブル8の直上位置に移送するが、加工テーブル8には加工遊技盤14が載置されていないので、回動装置6は新ワーク用ハンド17の先端部を直下方向に保持したままになっている。
【0064】これによりチャック装置5は新ワーク用ハンド17に握持された新遊技盤10を、釘打装置1による釘打加工を施すために加工テーブル8に載置し、このため回動装置6は新ワーク用ハンド17の先端部を直下方向に保持したままにしている(図10参照)。
との記載が認められる。

摘記した上記の記載や図面等によれば、引用文献1には、
「加工テーブル8に位置決めされた新遊技盤10にハンマ部60で釘を打ちつける釘打装置1と、
前記釘打装置1を制御する中央管理装置50と、
第1搬入コンベア2の端部の上方に配設されているバーコードリーダ55と、
バーコード46,46′の種別に応じた釘配置および釘打順序を格納するメモリと、
前記新遊技盤10が釘打装置1に搬入される直前に、前記バーコードリーダ55から前記新遊技盤10のバーコード46,46′を読み込み、
読み込まれたバーコード46,46′の種別に応じて前記メモリに格納された釘配置および釘打順序を読み出し、
該読み出した釘配置および釘打順序に基いて、前記加工テーブル8に載置された新遊技盤10に、パチンコ機の機種に対応した釘打加工を施す釘打制御装置59とを設けた
遊技盤の釘打作業を自動化するための装置。」
の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「加工テーブル8」は、本願補正発明の「テーブル」に相当し、以下同様に、
「位置決めされた」は「搭載された」に、
「新遊技盤10」は「遊技盤」に、
「ハンマ部60で釘を打ちつける」は「工具で加工を行う」に、
「釘打装置1」は「加工機」に、
「中央管理装置50」は「制御部」に、
「バーコードリーダ55」は「読取器」に、
「バーコード46,46′の種別」は「遊技盤機種データー」又は「遊技盤の種別」に、
「遊技盤の釘打作業を自動化するための装置」は「遊技機製造装置」に、それぞれ相当する。
さらに、引用文献1の記載等から、以下のことが言える。
a.摘記した段落【0053】の「釘打装置1はバーコードリーダ55のほか、図17および図18に示す釘打機本体56、ハンマ装置57、平面移動装置58および釘打制御装置(CPU)59を主構成とし、釘打装置1の各構成部材55?59は中央管理装置50によって制御される。」という記載等から、引用発明の「中央管理装置50」がコンピューターを内蔵するものであることは明らかである。

b.引用発明の「第1搬入コンベア2」は、摘記した段落【0061】?【0064】等の記載から「新遊技盤10」を「加工テーブル8」に載置する機構(エレベータコンベア4、チャック装置5、回動装置6及び移送装置7)に送るためのものであるから、「第1搬入コンベア2の端部の上方に配設されている」は、「新遊技盤10を釘打装置1の加工テーブル8に供給する側に設けられた」と言い換えることができる。

c.「釘打制御装置59」がバーコード46,46′の種別に応じて読み出した釘配置および釘打順序に基いて、加工テーブル8に載置された新遊技盤10にパチンコ機の機種に固有な釘打加工を施していることからみて、引用発明の「釘配置および釘打順序」は、本願補正発明の「加工機を制御する最中に用いるデーター」に相当している。

d.引用発明の「バーコード46,46′の種別に応じた釘配置および釘打順序を格納するメモリ」は、本願補正発明の「複数の異なる加工データーと複数の遊技盤機種データーとが個別に対応付けられて記憶される第2メモリ」に相当している。

e.引用発明の「読み込まれたバーコード46,46′の種別に応じて前記メモリに格納された釘配置および釘打順序を読み出」すことは、本願補正発明の「後続する遊技盤の種別に対応する加工データーを第2メモリから抽出」することに相当するものといえる。

f.引用発明の「釘打制御装置59」は、「読み出した釘配置および釘打順序に基いて、前記加工テーブル8に載置された新遊技盤10に、パチンコ機の機種に固有な釘打加工を施す」ものであり、その「新遊技盤10」及び「読み出した釘配置および釘打順序」は、それぞれ本願補正発明の「後続する遊技盤」及び「後続データーとして更新された加工データー」に相当し、引用発明の「釘打制御装置59」と本願補正発明の「コンピューター」は「制御要素」である点で共通するから、本願補正発明と引用発明は「制御要素が後続する遊技盤のテーブルへの搭載後に、後続データーとして更新された加工データーによって加工機を制御する」点で共通する。

以上を総合すると、両者は、
「テーブルに搭載された遊技盤に工具で加工を行う加工機と、
加工機を制御するコンピューターを内蔵する制御部と、
遊技盤を加工機のテーブルに供給する側に設けられた読取器とを備え、
複数の異なる加工データーと複数の遊技盤機種データーとが個別に対応付けられて記憶される第2メモリを備え、
後続する遊技盤の種別に対応する加工データーを第2メモリから抽出して、制御要素が後続する遊技盤のテーブルへの搭載後に、後続データーとして更新された加工データーによって加工機を制御する遊技機製造装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
なお、山括弧内の記載は、相当する本願補正発明の構成を示す。

[相違点1]
本願補正発明は「制御部のコンピューターのメモリが、コンピューターの加工機を制御する最中に用いるデーターを記憶する第1メモリと、複数の異なる加工データーと複数の遊技盤機種データーとが個別に対応付けられて記憶される第2メモリとを備え」ているのに対し、引用発明は「読み出した釘配置および釘打順序」<加工機を制御する最中に用いるデーター>を記憶するメモリを備えているか否か不明であるとともに、「バーコード46,46′の種別に応じた釘配置および釘打順序を格納するメモリ」<第2メモリ>がどこに設けられているか明らかでない点。

[相違点2]
本願補正発明は「加工機がテーブルに搭載された先行する遊技盤に工具で加工を行っている最中において、読取器から後続する遊技盤の種別がコンピューターに入力される」のに対し、引用発明は「新遊技盤10が釘打装置1に搬入される直前に」バーコード46,46′が読み込まれる点。

[相違点3]
本願補正発明は「コンピューターが入力された後続する遊技盤の種別を上記加工中における先行する遊技盤の種別と比較し、それらが符合する場合は、コンピューターが後続する遊技盤のテーブルへの搭載後に、第1メモリに先行データーとして記憶された加工データーによって加工機を制御し、それらが異なる場合は、コンピューターが上記加工中における先行する遊技盤の加工終了から後続する遊技盤のテーブルに搭載されるまでの間に後続する遊技盤の種別に対応する加工データーを第2メモリから抽出して第1メモリに後続データーとして更新」しているのに対し、引用発明はバーコード46,46′が読み込まれたときに、先行する遊技盤に付されたバーコード46,46′の種別と比較せずに、読み込まれたバーコード46,46′の種別に応じて釘配置および釘打順序を読み出している点。

(4)判断
[相違点1について]
ワーク(被処理物)に対して何らかの処理を行う装置において、処理に際して用いられるデータ等を予めメモリに記憶しておくことは、例えば、特開昭59-43407号公報(特に、第1頁右下欄第8行?第2頁左上欄第10行)及び特開平5-301082号公報(特に、段落【0017】)に記載されるように、従来周知の技術(以下「周知技術1」という。)であり、遊技機製造装置もワークに対して何らかの処理を行う装置ということができるから、引用発明に周知技術1を適用し、「読み出した釘配置および釘打順序」を予めメモリに記憶させるようにすることは、遊技機製造の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)にとって何ら困難なことではない。
そして、引用発明の「読み出した釘配置および釘打順序」及び「バーコード46,46′の種別に応じた釘配置および釘打順序を格納するメモリ」は、いずれも釘打装置1の制御に用いられるものであるから、「読み出した釘配置および釘打順序」を予めメモリに記憶させるに際して、そのメモリ<第1メモリ>及び「バーコード46,46′の種別に応じた釘配置および釘打順序を格納するメモリ」<第2メモリ>を中央管理装置50<制御部>に設けて、本願補正発明の相違点1に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得る事項である。

[相違点2について]
引用発明においては、引用文献1の段落【0061】?【0064】の記載等からみて、図9の状態と図10の状態との間において、新遊技盤10が釘打装置1に搬入(エレベータコンベア4に載置)されており、図10の状態において加工テーブル8には未だ新遊技盤10が載置されているから、「新遊技盤10が釘打装置1に搬入される直前」は新遊技盤10への釘打加工が施される前と認められる。
しかし、引用文献1の段落【0051】には「なお本実施例では釘打装置1に搬入される直前にバーコード46,46′をバーコードリーダ55から読み込んでいるが、釘打装置1に搬入される新遊技盤10の釘打加工前にパチンコ機の機種を識別できればよい。」との記載もあり、引用発明において新遊技盤10の釘打加工が始まるまでには先行する遊技盤への釘打加工が終了しているのは当然のことであるから、引用発明において、先行する遊技盤への釘打加工中<加工機がテーブルに搭載された先行する遊技盤に工具で加工を行っている最中>にバーコード46,46′を読み込むようにして、本願補正発明の相違点2に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得る事項である。

[相違点3について]
ワーク(被処理物)に対して何らかの処理を行う装置において、先行するワークとこれから処理を行うワークの種類を比較し、それらが一致していれば、先行するワークと同じデータを継続して用い、一致していなければ、これから処理を行うワークの種類に対応するデータを用いることは、例えば、実願昭60-155677号(実開昭62-65150号)のマイクロフィルム(特に、明細書第10頁第8?20行)及び特開平5-301082号公報(特に、段落【0017】)に記載されるように、従来周知の技術(以下「周知技術2」という。)であり、処理に際して用いられるデータ等を予めメモリに記憶しておくことも、上記[相違点1について]の項で述べたように周知の事項であるから、引用発明に周知技術1、2を適用し、本願補正発明の相違点3に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得る事項である。

さらに、本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用文献1に記載された事項及び周知技術1、2から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献1に記載された事項及び周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、上記改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成18年5月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成17年11月8日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「テーブルに搭載された遊技盤に工具で加工を行う加工機と、加工機を制御するコンピューターを内蔵する制御部と、遊技盤を加工機のテーブルに供給する側に設けられた読取器とを備え、制御部のコンピューターのメモリが、コンピューターの加工機を制御する最中に用いるデーターを記憶する第1メモリと、複数の異なる加工データーと複数の遊技盤機種データーとが個別に対応付けられて記憶される第2メモリとを備え、加工機がテーブルに搭載された先行する遊技盤に工具で加工を行っている最中において、読取器から後続する遊技盤の種別がコンピューターに入力されると、コンピューターが入力された後続する遊技盤の種別を上記加工中における先行する遊技盤の種別と比較し、それらが符合する場合は、後続する遊技盤がテーブルに搭載された後に、コンピューターが第1メモリに先行データーとして記憶された加工データーによって加工機を制御し、それらが異なる場合は、上記加工中における先行する遊技盤の加工終了後に、コンピューターが入力された後続する遊技盤の種別に対応する加工データーを第2メモリから抽出して第1メモリに後続データーとして更新し、後続する遊技盤がテーブルに搭載された後に、コンピューターが第1メモリに後続データーとして更新された加工データーによって加工機を制御することを特徴とする遊技機製造装置。」

(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及びその記載事項は、上記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、上記「2.(1)」で検討した本願補正発明を特定するために必要な事項である「後続する遊技盤のテーブルへの搭載後に」を「後続する遊技盤がテーブルに搭載された後に」と言い換え、「コンピューターが」の記載位置を変更するとともに、「先行する遊技盤の加工終了から後続する遊技盤のテーブルに搭載されるまでの間に」について「先行する遊技盤の加工終了後に」に範囲を広げるものである。
そして、言い換えと記載位置の変更によって発明の構成は格別変わっていないから、本願補正発明は、実質的に本願発明の構成要件を全て含み、さらに構成要件に限定を加えたものということができ、その本願補正発明が、上記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明、引用文献1に記載された事項及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用文献1に記載された事項及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献1に記載された事項及び周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、他の請求項(請求項2)に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-04 
結審通知日 2008-12-09 
審決日 2008-12-25 
出願番号 特願平8-290621
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 仁之赤坂 祐樹  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 ▲吉▼川 康史
三原 裕三
発明の名称 遊技機製造装置  
代理人 宮園 純一  

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