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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1192689
審判番号 不服2006-14991  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-07-13 
確定日 2009-02-12 
事件の表示 特願2004-307446「熱伝導体」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月16日出願公開、特開2005-159318〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成16年10月21日の出願(優先日:平成15年11月4日)であって、その請求項1?6に係る発明は、平成18年2月6日付の手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
面方向に高い熱伝導性を有する天然グラファイトから作製された第1のシートと、この第1のシートの両主面上に積層された等方性熱伝導材料からなる第2および第3のシートを備えてなる熱伝導体であって、
前記第1のシートの25℃におけるヤング率E1(GPa)、厚さt1(mm)、面方向の熱伝導率λ1(W/m・K)および比重ρ1(g/cm^(3))、前記第2のシートの25℃におけるヤング率E2(GPa)、厚さt2(mm)、熱伝導率λ2(W/m・K)および比重ρ2(g/cm^(3))、並びに、前記第3のシートの25℃におけるヤング率E3(GPa)、厚さt3(mm)、熱伝導率λ3(W/m・K)および比重ρ3(g/cm^(3))が、下記の式を満足することを特徴とする熱伝導体。
-10≦ln[(E2・t2・λ2/E1・t1・λ1)/(100ρ2 /ρ1)]≦7
-10≦ln[(E3・t3・λ3/E1・t1・λ1)/(100ρ3 /ρ1)]≦7」

2.引用刊行物及びその摘記事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1、2には、次の事項が記載されている。
(1)刊行物1:国際公開99/14805のパンフレット(訳文は、当該国際特許出願を国内公表したものである特表2004-500692号公報を参照して当審が作成したものである。)
(1a)「SUMMARY OF THE INVENTION
The preferred embodiment of the present invention relates to a highly flexible heat transfer device for thermal management applications where physical space and/or accessibility between the heat source and heat sink is a factor. The heat transfer device of the present invention comprises a high thermal conductivity core material composed of graphite preferably in the form of a flat plate or strip which is sandwiched between two thin and preferably flexible metal face sheets to enclose the core material between its opposing surfaces. The two metal face sheets are preferably bonded together to form a unitary heat transfer device. The bonding agent is preferably an adhesive. The geometry of each metal face sheet is larger than that of the core material to form an overlap on each side thereof. In the preferred assembly one of the face sheets is disposed on one side of the core strip with the other face sheet disposed on the opposite side of the core strip so that they overlap to fully enclose the core strip with the face sheets being bonded together by an adhesive.」(2頁8?22行)
訳文:「発明の概要
本発明の好ましい実施態様は、熱管理の適用例のための優れた可撓性を有する伝熱装置に関する。このような適用例においては、熱源とヒートシンクとの間の物理的間隔および/またはこれらが近寄っている程度はファクターである。本発明の伝熱装置は、好ましくは平板またはストリップの形状であってグラファイトから構成されていて高い熱伝導率を有するコア材料を具備しており、このコア材料は可撓性を有するのが好ましい金属製の二つの薄い表面用シート間に挟まれて、これら表面用シートの対向する面の間にコア材料を封入する。金属製の二つの表面用シートは、好ましくは一緒に結合されて単体の伝熱装置を形成する。結合剤は好ましくは接着剤である。各金属製表面用シートの外形はコア材料の外形よりも大きくて、表面用シートの各側部には重複部分が形成されている。好ましい組立体においては、表面用シートの一方は、コア材料のストリップの一側上に配置され、他方の表面用シートはコア材料のストリップの他側に配置され、それにより、接着剤を用いることで表面用シートが一緒に結合されることによって、これら表面用シートが重なり合ってコア材料のストリップを完全に封入するようになる。」

(1b)「BRIEF DESCRIPTION OF THE PREFERRED EMBODIMENT
With reference to figures 1-3 the heat transfer device 10 preferably consists of a non-structural high thermal conductivity core material in the form of a strip 12 which is sealed or bonded between two opposing face sheets 13 and 14 preferably in the form of foil strips. The face sheets 13 and 14 are bonded together preferably using a bonding agent 15 such as an adhesive. Alternatively, sealing can be accomplished without an adhesive by forming a diffusion bond by application of sufficient pressure and/or temperature between the face sheets 13 and 14. The face sheets 13 and 14 should be sealed by bonding at least around the perimeter of the core material 12.
The non-structural high thermal conductivity core material 12 may be selected from any material having a high thermal conductivity including pyrolytic graphite, ・・・. The in-plane thermal conductivity of the high thermal conductivity core material 12 should be greater than 200 W/mK and preferably greater than 500W/mk for each of the pyrolytic graphite core materials and synthetic diamond. 」(3頁9行?4頁4行)
訳文:「好ましい実施態様の詳細な説明
図1から図3を参照すると、伝熱装置10は、好ましくは非構造部材の高い熱伝導率を有するコア材料12から形成されており、ストリップの形態であるコア材料12は、好ましくはホイル状ストリップの形態であって対向している二つの表面用シート13、14間に封止もしくは結合されている。表面用シート13、14は好ましくは結合剤15、例えば接着剤によって一緒に結合される。あるいは、表面用シート13、14の間を十分に加熱および/または加圧して拡散接合部を形成することによって、接着剤を用いることなく封止作用を行うことができる。表面用シート13、14を、コア材料12の少なくとも周囲周りを結合させることによって封止する。
非構造部材の高い熱伝導率を有するコア材料12は、熱分解グラファイト・・・を含む高い熱伝導率を有するあらゆる材料から選択できる。高い熱伝導率を有するコア材料12の面内熱伝導率は200W/mKよりも大きくて、熱分解グラファイトのコア材料、および合成ダイヤモンドのそれぞれの熱伝導率は500W/mKよりも大きいのが好ましい。」

(1c)「The face or foil strips 13 and 14 are preferably rectangular in geometry (although not limited thereto) and composed from sheet metal of preferably high conductivity such as aluminum, copper ・・・. For flexibility the foil strips 13 and 14 should be thin relative to the thickness of the core material 12 with each of the face sheets having a thickness of between about 2 microns and 2 millimeters and preferably having a maximum thickness in the order of 10-25 mils. The volume fraction ratio of core material 12 to the face sheets including the bonding agent 15 if applied should be between about 5 and 95%. The foil strips 13 and 14 should be somewhat larger in size relative to the core strip 12 both in width and length so that an overlap exists as shown in Figure 3 which facilitates fully enclosing the core strip 12. 」(4頁10行?5頁4行)
訳文:「表面用シート13、14のホイル状ストリップの表面は(限定されるわけではないが)長方形状であるのが好ましくて、好ましくは高い熱伝導率を有するシート状金属、例えばアルミニウム、銅・・・から構成される。・・・可撓性を有するようにするために、表面用シート13、14のホイル状ストリップを、コア材料12の厚さに比較して薄く形成しており、各表面用シートの厚さは約0.002ミリメートル(2ミクロン)と2ミリメートルとの間であって、最大厚さは約0.25ミリメートル(10ミル)から約0.63ミリメートル(25ミル)のオーダーであるのが好ましい。結合剤を塗布する場合には、結合剤15を含む表面用シートに対するコア材料12の体積分率の比は約5%と95%との間である。幅と長さとの両方に関してコア材料12のストリップに比較すると、表面用シート13、14のホイル状ストリップの寸法はいくらか大きく、それにより図3に示されるように、コア材料12のストリップを完全に封入するのを容易にする重複部分が存在するようになる。」

(1d)「The core strip 12 provides the primary or sole thermal path for the movement of heat. The face sheets 13 and 14 provide protection for the core strip and act as a barrier insuring that the core material 12 will not release damaging particles or gasses to the environment. The face sheets 12 and 13 also increase the ease of handling of the heat transfer device 10 independent of the core material composition 12 such that very high thermal conductivity core materials can be used in applications where space is at a premium.
The preferred core material 12 is pyrolytic graphite ・・・. Conventional high conductivity graphite reinforced composites have inplane thermal conductivity on the order of 300 W/m-k. ・・・
The flexibility of the core strip 12 is dependent on how thin it is. The thickness of the core strip 12 can vary from 1 angstrom to 1/4 thick but preferably has a thickness of between about 2 microns and 2 millimeters. 」(5頁12行?6頁7行)
訳文:「コア材料12のストリップは熱を移動させるための主要なまたは単一の熱経路を形成する。表面用シート13、14はコア材料12のストリップに対する保護部を形成して、コア材料12が周囲の環境に損傷を与える粒子または気体を放出しないようにする障壁部のように働く。コア材料12の構成から独立している表面用シート13、14によって、伝熱装置10の取扱いがさらに容易になり、それにより、極めて高い熱伝導率を有するコア材料を重要な場所における適用例に使用することができる。
好ましいコア材料12は熱分解グラファイト・・・である。高い熱伝導率を有する通常のグラファイト補強用複合体の面内熱伝導率は300W/mKのオーダーである。・・・
コア材料12のストリップの可撓性は、コア材料12のストリップがどれだけ薄いかに応じて定まる。コア材料12のストリップの厚さを0.0001マイクロメートル(1オングストローム)から約6.35ミリメートル(1/4インチ)まで変更できるが、約0.002ミリメートル(2ミクロン)から2ミリメートルの間であるのが好ましい。」

刊行物2:特開昭61-275117号公報
(2a)「グラファイトは抜群の耐熱性や耐薬品性、高電導性などのため工業材料として重要な地位をしめ、電極、発熱体、構造材として広く使用されている。この様なグラファイトとしては天然に産するものを使用するのが一つの方法であるが、良質のグラファイトは生産量が非常に限られており、しかも取り扱いにくい粉末状又はブロック状のため人工的にグラファイトを製造する事が行なわれている。」(1頁右欄4?11行)

3.刊行物1記載の発明
(ア)グラファイト材料は、通常、厚さ方向に比較して面内方向の熱伝導性が良好であるし、摘記事項(1b)には、コア材料の面内熱伝導率が200W/mKよりも大きい旨が記載されているから、上記摘記事項(1a)?(1d)に記載された「コア材料」である「グラファイト」は、面内方向に高い熱伝導性を有するものといえる。
(イ)金属は、通常、等方性熱伝導材料であるから、上記摘記事項(1c)に記載された「アルミニウム」、「銅」等から構成される金属製の「表面用シート」も、等方性熱伝導材料であるといえる。

上記(ア)、(イ)の事項を考慮し、摘記事項(1a)?(1d)の記載を整理すると、刊行物1には、次の「伝熱装置」についての発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

「面内方向に高い熱伝導性を有するグラファイトからなるコア材料と、等方性熱伝導材料である金属製の二つの薄い表面用シートとからなり、表面用シートの一方は、コア材料のストリップの一側上に配置され、他方の表面用シートはコア材料のストリップの他側に配置された伝熱装置」

4.対比・判断
本願発明1と刊行物1発明を対比すると、刊行物1発明における「伝熱装置」は、本願発明1における「熱伝導体」に相当し、以下同様に、「面内方向」は「面方向」に、「コア材料」は「第1のシート」に、「表面用シート」は「第2のシート」、「第3のシート」、乃至「第2および第3のシート」に、それぞれ相当するから(以下、刊行物1発明の用語に替えて、それに相当する本願発明1の用語を使用することがある。)、両者は、
「面方向に高い熱伝導性を有するグラファイトから作製された第1のシートと、この第1のシートの両主面上に積層された等方性熱伝導材料からなる第2および第3のシートを備えてなる熱伝導体」である点で一致するが、次の点で相違する。

<相違点1>
本願発明1では、第1のシートのグラファイトが「天然グラファイト」であるのに対し、刊行物1発明では、「天然グラファイト」であることが規定されていない点

<相違点2>
本願発明1の熱伝導体は、
「第1のシートの25℃におけるヤング率E1(GPa)、厚さt1(mm)、面方向の熱伝導率λ1(W/m・K)および比重ρ1(g/cm^(3))、前記第2のシートの25℃におけるヤング率E2(GPa)、厚さt2(mm)、熱伝導率λ2(W/m・K)および比重ρ2(g/cm^(3))、並びに、前記第3のシートの25℃におけるヤング率E3(GPa)、厚さt3(mm)、熱伝導率λ3(W/m・K)および比重ρ3(g/cm^(3))が、下記の式
-10≦ln[(E2・t2・λ2/E1・t1・λ1)/(100ρ2 /ρ1)]≦7
-10≦ln[(E3・t3・λ3/E1・t1・λ1)/(100ρ3 /ρ1)]≦7
を満足する」のに対し、刊行物1発明の熱伝導体は、そのような事項が規定されていない点

以下、上記相違点1、2について検討する。
<相違点1について>
刊行物1の上記摘記事項(1b)には、「高い熱伝導部材を有するコア材料12は、熱分解グラファイト・・・を含む高い熱伝導率を有するあらゆる材料から選択できる」と記載され、第1のシートのグラファイトとして各種のものを使用できる旨が示唆されているし、また、刊行物2には、電極、発熱体、構造材等の工業材料として使用するグラファイトとして、天然に産するもの(すなわち、天然グラファイト)を使用し得る旨が記載されているから、刊行物1発明において、第1のシートのグラファイトとして「天然グラファイト」を採用することは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

<相違点2について>
本願明細書の表3、表5には、熱伝導率が240W/m・Kのグラファイトシートの厚さを0.1?2mmとし、第2のシート乃至第3のシートを、ヤング率が70GPa、熱伝導率が220W/m・K、比重が2.69のアルミニウムシートや、ヤング率が120GPa、熱伝導率が380W/m・K、比重が8.93の銅シートとし、その厚さをグラファイトシートの厚さの1/200?1/8程度としたときには、上記式が満足される旨が示されている。
これに対し、刊行物1には、グラファイト等のコア材料(第1のシート)の厚さは、約0.002?2mmであるのが好ましい旨〔摘示事項(1d)参照〕、アルミニウム、銅等の表面用シート(第2のシート乃至第3のシート)の厚さは、コア材料(第1のシート)の厚さに比較して薄く形成しており、約0.002?2mmである旨、結合剤を含む表面用シートに対するコア材料の体積分率の比は約5%と95%との間である旨〔摘示事項(1c)参照〕が記載されており、また、Fig.1?3には、第1のシートの面積は、第2のシートや第3のシートの面積とほぼ同じかやや小さい旨が示されていることを勘案すると、第1のシートの厚さを0.1?2mmとし、アルミニウムや銅等の第2のシート乃至第3のシートの厚さを第1のシートの厚さの1/40?1/8程度とすることも、刊行物1発明における選択肢の範囲内の事項といえる。そして、刊行物1には、グラファイト等のコア材料(第1のシート)の面内熱伝導率が200W/mKよりも大きい旨も記載され、さらに、アルミニウム、銅のヤング率、比重、熱伝導率が純度、形状、製法等によって大きくは変わらないことを併せ考慮すると、そのような選択肢により得られる熱伝導体は、上記式を満足すると認められる。
してみれば、刊行物1発明の熱伝導体において、熱伝導体(伝熱装置)の熱伝導性を良好とすることを課題として、第2のシート乃至第3のシートをアルミニウムシートや銅シートとし、その厚さを第1のシートの厚さの1/40?1/8程度として、結果的に上記式を満足するように構成することは、刊行物1の上記摘示事項(1c)、(1d)の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものというべきである。

しかも、次の(A)?(C)において述べるように、上記式を満足するものでも熱伝導性が格別良好とはいえないものが含まれているから、上記式は、格別の技術的意義があるものともいえない。

(A)表3について
【表3】の上段から14番目の試料と15番目の試料を比較すると、アルミニウムシートの厚さ、ヤング率、熱伝導率、比重はいずれも同一であり、グラファイトシートのヤング率、 熱伝導率、比重はいずれも同一であるが、厚さについては、14番目の試料は0.08mm、15番目の試料は0.1mmで差があり、さらに、複合シートの面方向の2点間平均温度差Δtは6Kで、いずれも同一であるが、複合シートのln(f(x))の値は、14番目の試料は7.04、15番目の試料は6.82で差がある。
そうすると、複合シートのln(f(x))の値は、14番目の試料は上記条件式の範囲から外れ、15番目の試料はその範囲に含まれるにもかかわらず、複合シートの2点間平均温度差Δtはいずれも同一であるから、15番目の試料が、14番目の試料よりも面方向の熱伝導性が良好であるとはいえない。

また、【表3】の上段から26番目の試料と27番目の試料を比較すると、アルミニウムシートの厚さ、ヤング率、熱伝導率、比重はいずれも同一であり、グラファイトシートのヤング率、 熱伝導率、比重はいずれも同一であるが、厚さについては、26番目の試料は0.1mm、27番目の試料は0.2mmで差があり、さらに、複合シートの面方向の2点間平均温度差Δtは、26番目の試料は10K、27番目の試料は9Kで差があり、複合シートのln(f(x))の値は、26番目の試料は7.51、27番目の試料は6.82で差がある。
そうすると、複合シートのln(f(x))の値は、26番目の試料は上記条件式の範囲から外れ、27番目の試料はその範囲に含まれるにもかかわらず、複合シートの2点間平均温度差Δtは、27番目の試料が26番目の試料よりも1K低いだけで、その差はわずかであるから、27番目の試料が、26番目の試料よりも面方向の熱伝導性が格別良好であるとはいえない。

(B)表4について
【表4】の上段から14番目の試料と15番目の試料を比較すると、アルミニウムシートの厚さ、ヤング率、熱伝導率、比重はいずれも同一であり、グラファイトシートのヤング率、 熱伝導率、比重はいずれも同一であるが、厚さについては、14番目の試料は1.5mm、2番目の試料は2mmで差があり、さらに、複合シートの面方向の2点間平均温度差Δtは9Kで、いずれも同一であるが、複合シートのln(f(x))の値は、14番目の試料は7.10、15番目の試料は6.82で差がある。
そうすると、複合シートのln(f(x))の値は、14番目の試料は上記条件式の範囲から外れ、15番目の試料はその範囲に含まれるにもかかわらず、複合シートの2点間平均温度差Δtはいずれも同一であるから、15番目の試料が、14番目の試料よりも面方向の熱伝導性が良好であるとはいえない。

また、【表4】の上段から38番目の試料と39番目の試料を比較すると、アルミニウムシートの厚さ、ヤング率、熱伝導率、比重はいずれも同一であり、グラファイトシートのヤング率、 熱伝導率、比重はいずれも同一であるが、厚さについては、38番目の試料は4mm、39番目の試料は10mmで差があり、さらに、複合シートの面方向の2点間平均温度差Δtは8Kで、いずれも同一であるが、複合シートのln(f(x))の値は、38番目の試料は7.73、39番目の試料は6.82で差がある。
そうすると、複合シートのln(f(x))の値は、38番目の試料は上記条件式の範囲から外れ、39番目の試料についてはその範囲に含まれるにもかかわらず、複合シートの2点間平均温度差Δtはいずれも同一であるから、39番目の試料が、38番目の試料よりも面方向の熱伝導性が良好であるとはいえない。

(C)表7、表8について
【表7】の上段から2番目と11番目の試料、及び、【表8】の上段から2番目の試料は、上記式を満足するものの、複合シートの2点間平均温度差Δtがそれぞれ14K、12K、15Kと熱伝導性が悪い。

そして、本願発明1は、刊行物1、2の記載から予測できないような格別に顕著な効果を奏するとは認められない。

したがって、本願発明1は、刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-02 
結審通知日 2008-12-09 
審決日 2008-12-24 
出願番号 特願2004-307446(P2004-307446)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田代 吉成  
特許庁審判長 綿谷 晶廣
特許庁審判官 粟野 正明
岡 和久
発明の名称 熱伝導体  
代理人 須山 佐一  

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