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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1192709
審判番号 不服2006-24832  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-02 
確定日 2009-02-12 
事件の表示 特願2001-381963「通話システム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月 4日出願公開、特開2003-189000〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は,平成13年12月14日に出願したものであって,平成18年9月29日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成18年11月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同日付けで手続補正がなされたものであり,その請求項2に係る発明は,平成18年11月2日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項2】時系列に連続して撮像可能な撮像手段と,撮像手段での撮像画像を基にして話者の口元の動きを認識することによって話者の発話内容を推定する発話内容分析手段と,発話内容分析手段で得た発話内容推定結果情報を基にして話者の発話内容を推定して音声合成より再現する音声再現手段及び該音声再現手段で再現された音声を送出するためのスピーカを含む音声送出手段からなる提示手段と,任意の話者の音質情報やイントネーション情報等の話者情報を予め記録している記録部と,話者の発話内容を前記音声再現手段により音声合成で再現する際に前記記録部に記憶してある任意の前記話者情報を付加する話者情報付加処理部とを備え,該話者情報付加処理部で任意の話者情報が付加された音声を前記音声送出手段にて送出することを特徴とする通話システム。」(以下,「本願発明」という。)
なお,本件補正により,補正前の「為」は「ため」に補正されているが,現代表記への補正であるから,単なる誤記の訂正あるいは明りょうでない記載の釈明に該当する。
また,上記請求項2の下線を引いた「なる」は,本件補正による請求項2には記載されていないが,明らかな遺脱であるから,発明の詳細な説明を参酌して,「なる」を付加挿入した。

第2 引用発明
これに対して,原審における,平成18年6月21日付けで通知した拒絶の理由に引用した,平成12年6月30日に頒布された特開2000-184077号公報(以下,「引用文献」という。)には,図面とともに以下の記載がある。
(イ)「【請求項3】 来客者用のドアホン子機と住居人用のドアホン親機との間で信号の送受信を行うドアホンシステムにおいて,
前記ドアホン親機は,前記ドアホン子機のマイクに入力される来客者の発声音から音声認識する音声認識手段と,受聴者の聴覚特性を登録し記憶する手段と,前記音声認識手段によって認識した音声データから受聴者の聴覚特性に基づき音声を合成する第1音声合成手段と,を備えることを特徴とするドアホンシステム。
【請求項4】 前記ドアホン親機は,前記ドアホン子機のテレビカメラに入力される来客者の発声時における口形及び/又は唇形から音声認識する画像認識手段を備えることを特徴とする請求項3記載のドアホンシステム。」(2頁1欄15?27行)
(ロ)「【0007】
【発明の実施の形態】以下,本発明のドアホンシステムについて,図面を参照して詳細に説明する。図1は,本発明のドアホンシステムの基本構成を示す説明図であって,1は玄関等の室外に設置されるドアホン子機,2は屋内に設置されるドアホン親機であり,ドアホン子機1とドアホン親機2は信号線3又はアンテナ4を介する無線5等の通信媒体によって信号の送受信を行うようになっている。
【0008】ドアホン子機1には,来客者の発声した音声が入力されるマイク6,ドアホン親機2からの音声を出力するスピーカ7,来客者の画像を撮像するテレビカメラ8,来客を住居人に報知する呼鈴スイッチ9がケース15に収められている。ドアホン親機2は,住居人の発声した音声が入力されるマイク10,ドアホン子機1からの音声や呼鈴音を出力するスピーカ11,ドアホン子機1のテレビカメラ8の画像や手書き入力画面等を表示する表示器12,手書き入力時に使用する入力ペン13,ドアホン子機1からの呼び出しに応対の意志を示す応答スイッチ14がケース16に収められている。」(2頁2欄49行?3頁3欄18行)
(ハ)「【0012】図3は,本発明の第2実施の形態におけるドアホン親機2の構成を示すブロック図である。ドアホン子機1のマイク6から入力される来客者の発声した音声信号21は,信号線3もしくは無線5の通信媒体を介してドアホン親機2に伝送される。伝送された音声信号21は,音声認識部22において母音,子音といった音素レベルでの認識が音声辞書部23を用いて行われ,音素データに変換される。次に,この音素データ及び受聴者の聴覚特性が保持されている聴覚特性登録部31及び音声合成辞書部32を用いて音声合成部33において受聴者にとって聞き取りやすい音声が合成される。合成された音声は,音声信号制御部34において増幅され,来客者の音声は受聴者にとって聞き取りやすい音声となってドアホン親機2のスピーカ11に出力される。
【0013】また,ドアホン子機1のテレビカメラ8から入力された来客者の画像信号26は,信号線3もしくは無線5の通信媒体を介してドアホン親機2に伝送される。伝送された画像信号26は画像認識部27において来客者の口形及び/又は唇形の画像及び画像認識辞書部28を基に発声内容を認識され,音素データに変換される。次に,この音素データ及び受聴者の聴覚特性が保持されている聴覚特性登録部31及び音声合成辞書部32を用いて音声合成部23において受聴者にとって聞き取りやすい音声が合成される。合成された音声は,音声信号制御部34において増幅され,来客者の音声は受聴者にとって聞き取りやすい音声となってドアホン親機2のスピーカ11から出力される。
【0014】図8に第2実施の形態の動作のフローチャートを示す。ステップS11?S15は図7のステップS1?S5と同じであり,ステップS15で認識結果が一致すると,認識された音素データに対応する音声合成処理を行い(ステップS16),ドアホン親機2のスピーカ11に出力する(ステップS17)。このフローチャートに示すように,来客者の発声内容の認識手段として,上記の音声認識及び画像認識を併用することにより,より正確な認識を行うことが可能となる。」(3頁4欄6?41行)

上記摘記事項(ハ)の段落【0013】において,「画像認識部27」の動作に着目して,ドアホンによる通話システムを抽出する。
(1)「テレビカメラ8」は,テレビカメラである以上,当然,時系列に連続して撮像可能な撮像手段といえるものであり,また,「ドアホン」が来客者の意志を通話で伝えるシステムである以上,その通話内容を取得するために,「テレビカメラ8」で時系列的に連続して撮像する必要があることも明らかであるから,「テレビカメラ8」は,時系列に連続して撮像可能な撮像手段である。
(2)「来客者」は,通話している者であるから,このシステムにとって話者でもある。
(3)「音声信号制御部」は,合成された音声を増幅しており,これを「スピーカ」ら出力しているから,この「スピーカ」と「音声信号制御部」とを併せて,「スピーカを含む音声送出手段」と称することができる。また,「音声合成部」と「スピーカを含む音声送出手段」によって,合成された音声をスピーカから提示するという意味で,両者を併せて提示手段と称することもできる。

したがって,上記(1)?(3)によれば,引用文献には,
「時系列に連続して撮像可能な撮像手段と,撮像手段での撮像画像を基にして話者の口形及び/又は唇形を認識することによって話者の発声内容を推定する画像認識部と,画像認識部で得た発声内容を基にして話者の発声内容を音声合成より再現する音声合成部及び該音声合成部で再現された音声を送出するためのスピーカを含む音声送出手段からなる提示手段とを備え,音声を前記音声送出手段にて送出する通話システム。」の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。

第3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)本願発明の「口元」は,撮像されたものであって,口元の形状を意味することは明らかであるから,引用発明の「口形及び/又は唇形」との間に実質的な差異ない。
(2)引用発明で「発声内容」を推定しているのに対し,本願発明では「発話内容」を推定しているが,「発声内容」も「発話内容」も音声情報ということができ,引用発明の「画像認識部」も本願発明の「発話内容分析手段」も,音声情報分析手段ということができる。
(3)引用発明の「音声合成部」は,話者の音声情報を音声合成して再現するものであるから,本願発明の「音声再現手段」との間に格別な差異はない。

したがって,両者は,以下の点で一致,相違する。

(一致点)
時系列に連続して撮像可能な撮像手段と,撮像手段での撮像画像を基にして話者の口元の形状を認識することによって話者の音声情報を推定する音声情報分析手段と,分析手段で得た音声情報を基にして話者の音声を音声合成より再現する音声再現手段及び該音声再現手段で再現された音声を送出するためのスピーカを含む音声送出手段からなる提示手段とを備え,音声を前記音声送出手段にて送出する通話システム。

(相違点1)
音声情報分析手段に関して,本願発明では,「(話者の口元の)動きを認識することによって話者の発話内容を推定する発話内容分析手段」であって,発話された内容,すなわち音声列の意味内容を分析しているのに対して,引用発明では,「話者の口元を認識することによって話者の発声内容を推定する画像認識部」であり,発声,すなわち,1つ1つの音声(子音,母音)を推定しているだけのものである。また,「話者の発話内容を推定」する点について,本願発明では,音声再現手段においても,「話者の発話内容を推定して」との規定がなされている。
(相違点2)
本願発明は,「任意の話者の音質情報やイントネーション情報等の話者情報を予め記録している記録部と,話者の発話内容を前記音声再現手段により音声合成で再現する際に前記記録部に記憶してある任意の前記話者情報を付加する話者情報付加処理部とを備え,該話者情報付加処理部で任意の話者情報が付加された音声を前記音声送出手段にて送出」しているが,引用発明には,このような話者情報付加処理に関した構成はない。

第4 当審の判断
そこで,上記相違点1,2について検討する。
音声合成において,辞書として男声や女声など任意の話者の音質情報やイントネーション情報等の話者情報を予め記録している記録部を備え,この話者情報を付加して音声合成をすることは,特開2001-100977号公報(【請求項2】【請求項3】【0024】?【0026】図9,図10),実願平3-23927号(実開平5-38700号)のCD-ROM(【0015】?【0017】図2),特開2001-5487号公報(【請求項1】【0001】【0042】?【0046】図1,図2),特開2001-34859号公報(【請求項1】【0021】【0030】図3)に記載されているように周知技術であり,しかも,音声合成にさいして,ア,イのような単一の文字の音声合成だけでなく,語,句,文等の(意味)内容自体も一定の範囲で考慮する必要があることは,例えば,前記文献の例えば特開2001-100977号公報における「形態要素解析」に係る記載などから明らかである。
してみると,引用発明の音声合成に係る構成において,音声合成に係る上記周知技術を適用するに際し,語,句,文等の(意味)内容に相当する話者の発話内容を,推定するために,発話内容分析手段を設けること(相違点1について)や,その具体化のために,任意の話者の音質情報やイントネーション情報等の話者情報を予め記録している記録部を付加し,また,音声合成で再現する際に前記記録部に記憶してある任意の前記話者情報を付加する話者情報付加処理部を設ける程度のこと(相違点2について)は,音声合成に関した前記周知技術の設計的付加の域を出ないということができる。
また,音声再現手段における「話者の発話内容を推定して」との規定も格別な創意工夫を要するものとはいえない。
そして,本願発明の作用効果も,引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

第5 むすび
したがって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-25 
結審通知日 2008-12-02 
審決日 2008-12-24 
出願番号 特願2001-381963(P2001-381963)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲葉 和生  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 萩原 義則
小宮 慎司
発明の名称 通話システム  
代理人 森 厚夫  
代理人 西川 惠清  

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