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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A47B
管理番号 1192723
審判番号 不服2007-6206  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-01 
確定日 2009-02-12 
事件の表示 特願2001-401986「引出し装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月15日出願公開、特開2003-199636〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年12月28日の出願であって、平成19年1月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月26日付けで手続補正がなされたものである。その後、平成20年7月10日付けで審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、平成20年9月16日付けで回答書が提出されたものである。

2.平成19年3月26日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年3月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。
「【請求項1】引き手部を側部のみに設けてなる引出しと、この引出しを出し入れ可能に保持する支持体と、収納位置にある前記引出しを側部において前記支持体から引き出させないようロックし得るロック機構と、このロック機構をロック状態と非ロック状態とに操作可能な操作部とを備えたものであって、
前記ロック機構及び操作部を、前記引き手部を設けた側に配設し、操作部にかけられた操作力によって前記ロック機構を直接的に駆動するように構成し、
前記引出しが、前記引き手部を備えた引き手部材を、その側部前端部分に取り付けたものであるとともに、鏡裏板を有する引出し本体と、引出し本体の前面に取り付けた鏡板とを具備し、前記引き手部材がこの鏡裏板の外側方であって鏡板の各側縁部後側に取り付けられ、操作部が、当該引き手部材に設けられ、
前記引き手部材の前後に貫通させた貫通孔に操作部を挿入させてなるとともに、
操作部の前端面に鍵を差し込み可能な鍵穴を設け、この鍵穴に鍵を差し込みその鍵を回すことにより回転操作するようにしている引出し装置。」

上記補正は、本件補正前の請求項1に係る発明の「操作部」を「操作部の前端面に鍵を差し込み可能な鍵穴を設け、この鍵穴に鍵を差し込みその鍵を回すことにより回転操作する」ものに限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とする。
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。

(2)刊行物及びその記載内容
刊行物1:実願平3-72416号(実開平5-17059号)のCD-ROM
刊行物2:特開2000-265727号公報

本願出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された上記刊行物1には、図面とともに、以下のことが記載されている。

(ア)
「【産業上の利用分野】
本考案はキャビネット等における抽斗のラッチ装置で、極めて簡単な構造で抽斗容器の前面板の側部裏側に位置するようにラッチ装置を左右に設け、キャビネット本体の前面部には取手、ラッチ等を配設しない、スッキリしたキャビネット等を得るようにしたキャビネット等における抽斗のラッチ装置に関するものである。」(【0001】)

(イ)
「【考案が解決しようとする課題】
・・・本考案は、この点に鑑み、簡単な構成により、キャビネット等の前面部をスッキリしたものにすると共に、抽斗容器の前面板の側部裏側に抽斗の側端を握ることにより、ラッチを解除できる、振れ止め部材を一体化したラッチ装置を設け、しかも、左右のラッチ装置はラッチ作動棒により最短距離で連結したキャビネット等における抽斗のラッチ装置を提供することを目的とするものである。」(【0003】)

(ウ)
「【実施例】
以下、本考案の実施例を添付図面で詳細に説明する。図1に示したものは、一実施例であるキャビネット本体の概略斜視図で、1はキャビネット本体、3は抽斗容器の前面板の両側部に設けたラッチ装置、4はキャビネット本体の側板、6は抽斗容器の前面板、9は面取り部である。
次に本考案の抽斗のラッチ装置について、図4?図6に基づいて一実施例を詳細に説明すると、略矩形の各取付用リブと、適宜の位置に振れ止め部材21を一体的に成形したラッチレバーボックス10に、ラッチスプリング11を介して常時は係止状態に位置するように付勢されたラッチ12を設け、該ラッチ12の一端に設けられた回動軸13の一部にラッチレバー15の握りでラッチ12をラッチ係止部20から離脱するように作動させる突起部14を設けたもので、さらに、回動軸13の一端部にラッチ作動棒8の端部が嵌合できる角孔18を穿設し、左右対称のラッチ装置3を連結している。なお、前記回動軸13の回動範囲を規制する溝部19が設けられていて、これがとりもなおさずラッチ12の上下動の範囲を規制することになり、これでキャビネット本体の側板4内側に設けたラッチ係止部20に対して係脱し、さらに、図6で図示されているように、振れ止め部材21が一体的に設けられているので、抽斗を本体に挿入した際、振れが起こらないようになっている。…
次に作動について簡単に説明すると、前記のように構成されているため、抽斗容器5を引き出す際には、抽斗容器5の前面板6の両側部裏側にラッチ装置3が設けられているので、左右どちらでも抽斗容器5の前面板6の側部を握ることによりラッチ12をラッチ係止部20から離脱できるものであり、結果としてこれは、ラッチレバー15を握ることによりラッチ12の回動軸13の一端に設けられた突起部14をラッチスプリング11に抗してラッチ12をキャビネット本体の側板4の内側に設けたラッチ係止部20から離脱されるので、抽斗容器5を手前に引き出すことができるものである。・・・」(【0006】)

(エ)
【図3】及び【図6】によれば、ラッチレバーボックス10が、前板7の側方をはさんでその内側及び外側にわたって前面板6の各側縁部後側に取り付けられたことが記載されている。

これらの記載事項(ア)?(エ)によれば、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「引き手部を側部のみに設けてなる抽斗と、この抽斗を出し入れ可能に保持するキャビネット本体1と、収納位置にある前記抽斗を側部において前記キャビネット本体1から引き出させないようにするラッチ12と、このラッチ12を引き出させない状態と引き出す状態とに操作可能なラッチレバー15とを備えたものであって、
前記ラッチ12及びラッチレバー15を、前記引き手部を設けた側に配設し、ラッチレバー15にかけられた操作力によって前記ラッチ12を突起部14を介して駆動するように構成し、
前記抽斗が、前記引き手部を備えたラッチレバーボックス10を、その抽斗の側部前端部分に取り付けたものであるとともに、前板7を有する抽斗容器5と、抽斗容器5の前面に取り付けた前面板6とを具備し、前記ラッチレバーボックス10がこの前板7の側方をはさんでその内側及び外側にわたって前面板6の各側縁部後側に取り付けられ、ラッチレバー15が、当該ラッチレバーボックス10に設けられた、
抽斗。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

本願出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された上記刊行物2には、図面とともに、以下のことが記載されている。

(オ)
「【発明の属する技術分野】本発明は、筐体に出し入れ可能に保持された引出しを左右両側からロックする一対のロック機構を備えた引出しのロック装置に関する。」(【0001】)

(カ)
「【課題を解決するための手段】本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、スペースの有効利用を図るべく連動機構を引出し側に設けるとともに、連動機構の部品点数の削減や構造、組立等の簡単化を図るべく、連動部材を構成する伝達杆を、その両端に取り付けられロック機構と係合連動する作動部材を介して、引出しの一部を利用して形成した枢支部に枢支させるようにしたものである。」(【0004】)

(キ)
「【実施例】以下、本発明の一実施例を、図面を参照して説明する。本実施例に係る引出し付ワゴンWは図1、図2に示すように、前面に開口部を有する直方体形状の筐体W1と、この開口部に装着された上下寸法のそれぞれ異なる上下3段の引出し1A、1B、1Cを具備する。
各引出し1A、1B、1Cは、基本的に、上面を開口する直方体形状の引出し本体12と、この引出し本体12の前面に取付けられた鏡板11とを具備し、各引出し本体12の外側面と筐体W1の内側面との間に設けられた図示しないレールを介して、開口部から収納位置と突出位置との間で前後に出し入れ可能に筐体に支持されている。各部を詳述すると、鏡板11は、例えば木製板状のもので、その上端には幅方向に亘って取手11bが設けられている。引出し本体12は、図3に例えば最上段のものを示すように薄肉金属板を素材とする底壁12a、側壁12b、図示しない背壁、及び前壁を形成する裏当部材12dから構成されている。裏当部材12dは、前方に開口する奥行き方向に偏平な直方体形状をなすもので、その起立する面板部12d1には、ねじ挿通孔Nが設けられ鏡板11をねじ止めする際に用いられる。また、その立側壁12d2及び下壁12d3は、引出し本体12の側壁12b及び底壁12aの前端にその前端を略一致させるように配設されている。また側壁12bには、さらに外側方に向かってオーバーハングするオーバーハング部ohが取り付けてあり、このオーバーハング部ohを図示しないレール上に載置係合させている。」(【0015】,【0016】)

(ク)
「しかして、本実施例では、これら引出し1A、1B、1Cを引出せないようにロックするロック装置を設けている。このロック装置は、収納位置にある引出し1A、1B、1Cをその左右両側をおいてそれぞれ係止し引き出せないようにロックするための一対のロック機構2,2と、これらロック機構2,2を連動させるための連動機構3と、ロック機構2,2をロック状態と非ロック状態に操作可能な操作部4とを具備するものである。」(【0017】)

(ケ)
「まずロック機構2について説明すると、このものは、全部の引出し1A、1B、1Cを一斉にロックする機能と、中段又は下段のいずれか一方の引出し1Bまたは1Cを引き出した状態では他方の引出し1Cまたは1Bを引出し得ないようにする機能とを備えている。具体的には、筐体W1の内側面前端部に配設した筐体側ロック部と、各引出し1A、1B、1Cの外側面に配設した引出側ロック部とからなり、これら筐体側ロック部と引出側ロック部とを係合させることにより、引出し1A、1B、1Cを引き出し不能にロックさせる。」(【0018】)

(コ)
「筐体側ロック部は、図3及び図6?図9に示すように、筐体W1の内側面に止着した矩形状の基板Kと、この基板Kの上端部に配設された可動子21と、この可動子21の下方において基板Kに上下に配設された2つの回動板22を具備する。具体的には、可動子21は最上段の引出し1Aに対応する部位に配設されたもので、基板Kに取付けた枠体Hに上方に位置させたロック位置Rと下方に位置させた非ロック位置U(最下方位置)との間で上下動可能に支持されており、内方に向かって突出させた上下一対の柱状係合要素21a、21bを具備してなる。なお、ロック位置R及び非ロック位置Uは、上下に一定範囲の幅を有する構造となっている。・・・」(【0019】)

(サ)
「引出側ロック部は、図3?図9に示すように、最上段の引出し1Aにおいてはオーバーハング部ohに設けた前向き面Pがこれに相当し、・・・」(【0020】)

(シ)
「このように構成したロック機構2の動作について説明する。…また最上段の引出し1Aは、可動子21を構成する係合要素21a、21bが上動し、前記前向き面Pがこの係合要素21a、21bに当接するので、引き出すことができなくなる。・・・」(【0021】)

(ス)
「次に操作部4について説明する。操作部4は、図3等に示すように、鏡板11の一端部において前後に貫通させた貫通孔に回動可能に挿入支持された円柱状の基体42と、この基体42の後端面からさらに後方へ一体に突出した円柱状の突出子41とを具備する。基体42は、操作部4の前端面に設けられた鍵穴42aに図示しない鍵を差し込んで回すことにより回動させ得る。突出子41は、仮想軸心たる基体42の軸心から偏位した部位に取付けられており、基体42を回動させることにより基体42の軸心周りに公転回動するようにしてある。しかしてその回動範囲は、突出子41が最も上方に達する位置から最も下方に達する位置までの略180°に設定されている。
この突出子41は、図5、図6等に示すように、一方のロック機構2を構成する可動子21の対をなす係合要素21a、21b間に直交するように嵌入させてあり、一方のロック機構2を直接的に駆動できるようにしてある。すなわち、鍵を回して突出子41を公転回動させ上動させた場合には、突出子41は上側の係合要素21aに摺動しつつ係合して可動子21を図8に示すロック位置Rにまで上動付勢する。一方下動させた場合には、突出子41は下側の係合要素21bに摺動しつつ係合して可動子21を図7に示す非ロック位置Uにまで下動付勢する。」(【0022】,【0023】)

(セ)
【図2】によれば、鏡板11の前後に貫通させた貫通孔に操作部4を挿入させてなるとともに、操作部4の前端面に鍵を差し込み可能な鍵穴42aを設けたものが記載されている。

(3)対比
そこで、本願補正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「抽斗」は、本願補正発明の「引出し装置」に相当し、以下、「キャビネット本体1」は「支持体」に、「ラッチレバー15」は「操作部」に、「ラッチレバーボックス10」は「引き手部材」に、「前板7」は「鏡裏板」に、「抽斗容器5」は「引出し本体」に、「前面板6」は「鏡板」に、それぞれ相当し、
刊行物1記載の発明の「ラッチ12(又は、ラッチ12及びラッチ係止部20)」と本願補正発明の「ロック機構」とは、「引出しを支持体から引き出させない機構」である点で共通するから、
両者は、
「引き手部を側部のみに設けてなる引出しと、この引出しを出し入れ可能に保持する支持体と、収納位置にある前記引出しを側部において前記支持体から引き出させない機構と、この引出しを支持体から引き出させない機構を引き出させない状態と引き出す状態とに操作可能な操作部とを備えたものであって、
前記引出しを支持体から引き出させない機構及び操作部を、前記引き手部を設けた側に配設し、操作部にかけられた操作力によって前記引出しを支持体から引き出させない機構を駆動するように構成し、
前記引出しが、前記引き手部を備えた引き手部材を、その側部前端部分に取り付けたものであるとともに、鏡裏板を有する引出し本体と、引出し本体の前面に取り付けた鏡板とを具備し、前記引き手部材がこの鏡裏板の側方であって鏡板の各側縁部後側に取り付けられ、操作部が、当該引き手部材に設けられた
引出し装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
「引出しを支持体から引き出させない機構」は、本願補正発明が「ロックし得るロック機構」であるのに対し、刊行物1記載の発明が「ラッチ12(機構)」である点。

(相違点2)
操作部にかけられた操作力によって前記引出しを支持体から引き出させない機構を、駆動するように構成するのに、本願補正発明が「直接的に駆動するように構成」したものであるのに対し、刊行物1記載の発明が「突起部14を介して駆動するように構成」したものである点。

(相違点3)
本願補正発明が、引き手部材が鏡裏板の外側方に取り付けられたものであるのに対し、刊行物1記載の発明は、引き手部材が鏡裏板の側方をはさんでその内側及び外側にわたって取り付けられたものである点。

(相違点4)
本願補正発明が「前記引き手部材の前後に貫通させた貫通孔に操作部を挿入させてなるとともに、操作部の前端面に鍵を差し込み可能な鍵穴を設け、この鍵穴に鍵を差し込みその鍵を回すことにより回転操作するようにしている」のに対し、刊行物1記載の発明がこのような構成を有しない点。

(4)判断
(相違点1について)
上記記載事項(オ)?(セ)によれば、刊行物2には、引出し装置における「ロック装置」を有するものが記載されている。そして、引出し装置において、引出しを支持体から引き出させない機構として、ロック機構もラッチ機構も従来周知であり、ラッチ装置は簡易なロック装置ということもできることから、刊行物1記載の発明において、ラッチ(機構)に代え、ロック機構を採用することは、当業者であれば容易になし得たものといえる。

(相違点2について)
上記記載事項(ケ)?(ス)によれば、刊行物2には、引出し1Aを支持体(箱体W1)から引き出させない機構(ロック機構2)を駆動するように構成するのに、引出し1A側の操作部4の突出子41が、直接的に、筺体W1側の可動子21の柱状係合要素21a,21bを駆動すること、すなわち、「直接的に駆動するように構成」したものが記載されている。
そして、上記記載事項(イ)の「・・・簡単な構成により、・・・キャビネット等における抽斗のラッチ装置を提供することを目的とするものである。」の記載及び上記記載事項(カ)の「部品点数の削減、構造・・・の簡単化を図る」の記載にあるように、刊行物1及び刊行物2は、いずれも、本願補正発明と同様に、部品点数の低減、構成を簡素にする点(本願明細書段落【0004】)において課題が共通するものである。
したがって、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の技術事項を適用し、本願補正発明のように、操作部にかけられた操作力によって前記引出しを支持体から引き出させない機構を、直接的に駆動するように構成することは、当業者であれば容易になし得たことである。

(相違点3について)
本願補正発明と刊行物1記載の発明とは、いずれも、引き手部材がこの鏡裏板の側方であって鏡板の各側縁部後側に取り付けられた点で共通するものであり、該引き手部材を、刊行物1記載の発明のように「鏡裏板の側方をはさんでその内側及び外側にわたって」取り付けるか、本願補正発明のように「鏡裏板の外側方」に取り付けるかは、当業者による設計上の選択的技術事項にすぎず、格別の顕著性はない。

(相違点4について)
上記記載事項(ス)及び(セ)によれば、刊行物2には、鏡板11の前後に貫通させた貫通孔に操作部4を挿入させてなるとともに、操作部4の前端面に鍵を差し込み可能な鍵穴42aを設け、この鍵穴42aに鍵を差し込みその鍵を回すことにより回転操作するようにしたことが記載されている。そして、刊行物1記載の発明のラッチ装置の操作部に代え、刊行物2記載のロック機構の鍵穴を設けた操作部を採用すれば、前面側から鍵を挿入する以上、必然的に、引き手部材の前後に貫通させた貫通孔を設け、そこに操作部を挿入させることとなるものであり、相違点4に係る構成自体に格別の顕著性があるものではない。

そして、本願補正発明の作用効果も、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術事項から当業者が予測できる範囲のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成19年3月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年12月28日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

(本願発明)
「【請求項1】引き手部を側部のみに設けてなる引出しと、この引出しを出し入れ可能に保持する支持体と、収納位置にある前記引出しを側部において前記支持体から引き出させないようロックし得るロック機構と、このロック機構をロック状態と非ロック状態とに操作可能な操作部とを備えたものであって、
前記ロック機構及び操作部を、前記引き手部を設けた側に配設し、操作部にかけられた操作力によって前記ロック機構を直接的に駆動するように構成し、
前記引出しが、前記引き手部を備えた引き手部材を、その側部前端部分に取り付けたものであるとともに、鏡裏板を有する引出し本体と、引出し本体の前面に取り付けた鏡板とを具備し、前記引き手部材がこの鏡裏板の外側方であって鏡板の各側縁部後側に取り付けられ、操作部が、当該引き手部材に設けられ、
前記引き手部材の前後に貫通させた貫通孔に操作部を挿入させてなる引出し装置。」

4.刊行物及びその記載内容
原査定に引用され本願出願前に頒布された刊行物、及び、その記載内容は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から「操作部」の限定事項である「操作部の前端面に鍵を差し込み可能な鍵穴を設け、この鍵穴に鍵を差し込みその鍵を回すことにより回転操作する」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-26 
結審通知日 2008-12-02 
審決日 2008-12-16 
出願番号 特願2001-401986(P2001-401986)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47B)
P 1 8・ 575- Z (A47B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 石川 好文
特許庁審判官 家田 政明
山口 由木
発明の名称 引出し装置  
代理人 赤澤 一博  

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