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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16D
管理番号 1192724
審判番号 不服2007-6469  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-02 
確定日 2009-02-12 
事件の表示 平成 9年特許願第306759号「裏当て板を備えたクラッチ用加圧板」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 5月26日出願公開、特開平10-141388〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成9年11月10日(パリ条約による優先権主張、1996年11月12日、米国)の出願であって、平成18年11月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年3月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

【2】平成19年3月2日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年3月2日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
平成19年3月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 ハウジングと、
該ハウジング内に配置された少なくとも1枚の摩擦板と、
該ハウジング内で前記少なくとも1枚の摩擦板と連動しかつアルミニュウム合金からなる加圧板と、
前記摩擦板と前記加圧板との間に位置決めされた裏当て板であって、該裏当て板がアルミニュウム合金より硬い鋼材料から形成されている裏当て板と、を備え、
前記加圧板が外側表面に形成された複数の強化リブを備え、前記リブが半径を違えた円周方向リブ及び半径方向リブを有し、前記円周方向及び半径方向リブが複数のポケットを形成しているクラッチ機構。」
と補正された。なお、下線は対比の便のために当審において付したものである。
前記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「加圧板」について、願書に最初に添付した明細書の段落【0023】の記載に基づいて、「前記加圧板が外側表面に形成された複数の強化リブを備え、前記リブが半径を違えた円周方向リブ及び半径方向リブを有し、前記円周方向及び半径方向リブが複数のポケットを形成している」との限定を付加するものであって、平成15年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第4項の規定に適合するか)について以下で検討する。

2.引用刊行物とその記載事項
前記優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物とその記載事項は、次のとおりである。

刊行物1:特開昭60-53224号公報
刊行物2:実願昭59-87861号
(実開昭61-4028号)のマイクロフィルム
刊行物3:実願昭62-96105号
(実開昭64-2551号)のマイクロフィルム
刊行物4:特開平7-68086号公報

(1)刊行物1(特開昭60-53224号公報)の記載事項
刊行物1は、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物であって、当該刊行物1には、「クラツチ」に関して、第1図ないし第6図とともに次の事項が記載されている。
ア 「まず第6図に基づいてクラツチの全体構造を簡単に説明すると、一部分を切り欠いて示すクラツチデイスクは内周の部分でトランスミツシヨン入力軸(図示せず、中心線はO-O)にスプライン嵌合する。クラツチデイスク外周部の環状フリクシヨンフエーシング1、1’はエンジンのフライホイル2と環状のプレツシヤープレート3間に介在している。プレツシヤープレート3は図示しないストラツププレートによりクラツチカバー4に支持され、前後方向に移動自在となつている。……
次に拡大後面部分図である第1図により本発明のプレツシヤープレープレート3について詳説すると、プレツシヤープレート3は熱伝導率が高く且つ抗張力も比較的高いアルミニウム・けい素合金(例えばA390)により従来品と比べてかなり小さく形成されている(矢印は回転方向)。プレツシヤープレート3の後面に設けられた前述の突起群7は長い円弧状突起10と短い円弧状突起11から成り、両突起10、11はプレツシヤープレート外周部の同一円周上に例えば各3個、交互に配置されている。両突起10、11の一端からプレツシヤープレート3の内周にかけてそれぞれ傾斜状のリブ12、13が設けられており、リブ12、13は内周側へ向かうにつれて次第に後方(第1図の紙面と直交して手前側)への張出し量が少なくなつている。両リブ12、13間のプレツシヤープレート後面には窪み14、15及び窪み16、17が形成されている。……
第2図、第3図はそれぞれ第1図のII-II線及びIII-III線に沿う断面図であり、これらの両図に示す如くフリクシヨンフエーシングに衝合するプレツシヤープレート3の摩擦面(前面)にはけい素(シリコン)のみからなる強化層20(耐摩耗層)が形成されている。即ちプレツシヤープレート前面には腐食液(例えばフツ化水素溶液)によりエツチングが施され、この表面のアルミニウム母材は腐食除去されてけい素のみが浮出しになつている(拡大部分図参照)。」(第1ページ右下欄第12行?第2ページ右上欄第19行)
イ 「リブ12、13を設けると、プレツシヤープレート3の強度が増し、」(第3ページ右上欄第2?3行)
ウ 「プレツシヤープレート3(25)の摩擦面に強化層20(27)を設けると、摩擦面に傷が付きにくくなり、摩擦面の耐摩耗性が向上する。」(第3ページ右上欄第9?11行)

前記記載事項ア及び第6図の記載によれば、クラツチカバー4内には少なくと1枚のフリクシヨンフエーシング1、1’が配置されており、該クラツチカバー4内でアルミニウム・けい素合金からなるプレツシヤープレート3が前記少なくと1枚のフリクシヨンフエーシング1、1’と連動するものと認められる。
また、前記記載事項ア、ウ及び第2図、第3図、第6図の記載によれば、前記フリクシヨンフエーシング1、1’と前記プレツシヤープレート3との間となるプレツシヤープレート3の摩擦面(前面)にはけい素(シリコン)のみからなる強化層20(耐摩耗層)が形成されており、該強化層20はアルミニウム・けい素合金より堅いけい素(シリコン)材料から形成されているものと認められる。
更に、前記記載事項ア、イ及び第1図の記載によれば、プレツシヤープレート3の後面には複数の傾斜状のリブ12、13が設けられており、該リブ12、13は「強化リブ」としての機能を有するものと認められる(前記記載事項イ、参照)。
よって、前記記載事項アないしウ及び第1図ないし第6図の記載を総合すると、刊行物1には、
「クラツチカバー4と、
該クラツチカバー4内に配置された少なくとも1枚のフリクシヨンフエーシング1、1’と、
該クラツチカバー4内で前記少なくとも1枚のフリクシヨンフエーシング1、1’と連動しかつアルミニウム・けい素合金からなるプレツシヤープレート3と、
前記フリクシヨンフエーシング1、1’と前記プレツシヤープレート3との間に形成された強化層20であって、該強化層20がアルミニウム・けい素合金より硬いけい素(シリコン)材料から形成されている強化層20と、を備え、
前記プレツシヤープレート3が後面に設けられた複数の強化リブ12、13を備えているクラツチ。」
の発明(以下「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

(2)刊行物2(実願昭59-87861号(実開昭61-4028号)のマイクロフィルム)の記載事項
刊行物2は、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物であって、当該刊行物2には、「変速機の多板摩擦係合装置」に関して、第1図ないし第3図とともに次の事項が記載されている。
エ 「第1図は多板摩擦係合装置10の主要部の断面図を示す。多板摩擦係合装置10は、多板摩擦係合部材20とピストン30とから構成されている。ピストン30を作動させる油室(不図示)と多板摩擦係合部材20とはスペース上あるいは組付上の点から離されて配置されている。そのため、ピストン30には薄肉円筒状の筒状の部位32が形成されており、この筒状の部位32を介して多板摩擦係合部材20がピストン30により押圧作動されるようになっている。
また、ピストン30はアルミ材で形成されており、筒状の部位32には、従来と同様、スペース上あるいは組付上の点から切り欠き部(図示省略)が必要により設けられている。
多板摩擦係合部材20は、プレート22と摩擦材24とから構成されている。プレート22と摩擦材24は交互に配設されている。ピストン30の筒状の部位32と当接するプレートは、バッキングプレート23として他のプレート22により板厚が厚く形成されている。このバッキングプレート23およびプレート22は鋼材で形成されている。
この実施例の多板摩擦係合装置10はブレーキ装置の場合であるので、プレート22およびバッキングプレート23の外周の係止片22a、23aは固定部材としての変速機ケース12の係止溝12aに係合して、回転方向には固定、軸方向には移動可能に取付けられている。同様に、摩擦材24はその内周において回転伝達部材(図示せず)に取付けられている。なお、この多板摩擦係合部材20は変速機ケース12に取付けられたスナップリング14と、変速機ケース12の段部12bとの間に配設され、この両者間において軸方向の移動が可能となっている。」(明細書第5ページ第7行?第6ページ第20行)
オ 「ピストン30およびその筒状の部位32はアルミ材で形成されており、軟質であるため、押圧作動の際の大荷重により半径方向の応力を受けて変形しようとする。しかし、筒状の部位32は外周面32aに面して配設された突起26により半径方向の変形が拘束されるようになっているため、半径方向の応力は筒状の部位32と突起26で受け持つことになる。そのため、筒状の部位32の剛性が高められたのと同じ状態となり、筒状の部位32の変形を阻止することができる。その結果、ピストン30の耐久性を向上さることができる。」(明細書第8ページ第6?17行)

(3)刊行物3(実願昭62-96105号(実開昭64-2551号)のマイクロフィルム)の記載事項
刊行物3には、「回転電機のブラケット」に関して、第1図ないし第3図とともに次の事項が記載されている。
カ 「外周円筒部22から内側に同心円周状の第1円周リブ26が形成され、第1円周リブ26よりさらに内側に同心円周状の第2円周リブ27が形成されている。最内側の円周リブである第2円周リブ27はボルト穴24,24を結ぶ線C-Cより中心側に設けられている。また、半径方向のリブである第1径方向リブ28,第2径方向リブ29及び第3径方向リブ20がボルト穴24から近い位置の順に形成されている。径方向リブ28,29,20は、第2円周リブ27から第1円周リブ26と交差して外周円筒部22に達するように形成され、第2円周リブ27と外周円筒部22との間が円盤環状の格子状構造となっている。リブは第2図に示すような断面形状の凸条となっており、ブラケット2,3が鋳造品であれば一体に形成すればよい。」(明細書第7ページ第10行?第8ページ第5行)
キ 「リブによって格子状に形成された構造は曲げに対して強く剛性も高い。」(明細書第9ページ第17行及び第18行)

(4)刊行物4(特開平7-68086号公報)の記載事項
刊行物4には、「洗濯機」に関して、図5ないし図7とともに次の事項が記載されている。
ク 「【0003】前記洗濯槽兼脱水槽2の外底部には円周方向および半径方向に、すなわち格子状に補強リブ4を一体的に設けている。この補強リブ4は、基本的には抜きテーパを除けばほぼ同じ板厚であり、円周方向にはほぼ同じピッチで、半径方向にはほぼ同じ角度で、最外周部まで設けられている。そして前記洗濯槽兼脱水槽2の外底部には、洗濯槽兼脱水槽2の補強とともに、洗濯槽兼脱水槽2と脱水シャフトを連結する役目をする金属製の補強フランジ5をねじ止めしている。」

3.発明の対比
本願補正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「クラツチカバー4」は本願補正発明の「ハウジング」に相当し、以下同様に、「フリクシヨンフエーシング1、1’」は「摩擦板」に、「後面に設けられた複数の強化リブ12、13」は「外側表面に形成された複数の強化リブ」に、「クラツチ」は「クラッチ機構」に、それぞれ相当する。また、「アルミニウム・けい素合金」は「アルミニュウム合金」の一種であるから、刊行物1記載の発明の「アルミニウム・けい素合金からなるプレツシヤープレート3」は本願補正発明の「アルミニュウム合金からなる加圧板」に相当する。更に、刊行物1記載の発明の「強化層20」及び本願補正発明の「裏当て板」は、ともに「摩擦板と加圧板との間に“設けられた裏当て部材”であって、該“裏当て部材”がアルミニュウム合金より“硬い材料”から形成されている“裏当て部材”」という点で一応一致するといえるものである。
よって、本願補正発明と刊行物1記載の発明とは、
[一致点]
「ハウジングと、
該ハウジング内に配置された少なくとも1枚の摩擦板と、
該ハウジング内で前記少なくとも1枚の摩擦板と連動しかつアルミニュウム合金からなる加圧板と、
前記摩擦板と前記加圧板との間に設けられた裏当て部材であって、該裏当て部材がアルミニュウム合金より硬い材料から形成されている裏当て部材と、を備え、
前記加圧板が外側表面に形成された複数の強化リブを備えているクラッチ機構。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
「裏当て部材」が、本願補正発明では、「前記摩擦板と前記加圧板との間に“位置決めされた裏当て板”であって、該“裏当て板”がアルミニュウム合金より硬い“鋼”材料から形成されている“裏当て板”」であるのに対して、刊行物1記載の発明では、「前記フリクシヨンフエーシング1、1’(摩擦板)と前記プレツシヤープレート3(加圧板)との間に“形成された強化層20”であって、該“強化層20”がアルミニウム・けい素合金(アルミニュウム合金)より硬い“けい素(シリコン)”材料から形成されている“強化層20”」である点。
[相違点2]
「強化リブ」の形状・構造に関して、本願補正発明では、「前記リブが半径を違えた円周方向リブ及び半径方向リブを有し、前記円周方向及び半径方向リブが複数のポケットを形成している」ものであるのに対して、刊行物1記載の発明では、「リブ12、13」がそのようなものではない点。

4.当審の判断
そこで、前記各相違点について以下で検討する。

(1)相違点1について
刊行物2には、前記記載事項エ、オ及び第1図ないし第3図の記載を総合すると、「多板摩擦係合部材20とピストン30との間に位置決めされたバッキングプレート23であって、該バッキングプレート23がアルミ材より硬い鋼材から形成されているバッキングプレート23」が記載されているものと認められ、当該刊行物2記載の「バッキングプレート23」は、本願補正発明の「裏当て板」に相当する。
そして、「摩擦板と加圧板との間に設けられた裏当て部材」の設置の形態及び材質は、当業者であれば適宜選択し得るものといえるし、また、クラッチという共通の技術分野に属する刊行物2記載の「バッキングプレート23」を刊行物1記載の発明に適用することは、当業者であれば容易に着想し得るものといえるから、刊行物1記載の発明の「強化層20」を形成することに代えて、フリクシヨンフエーシング1、1’(摩擦板)とプレツシヤープレート3(加圧板)との間に刊行物2記載の「バッキングプレート23」を位置決めすることによって、前記相違点1に係る本願補正発明と同様な構成とすることは、当業者であれば容易に想到することができたものである。

(2)相違点2について
「強化リブが半径を違えた円周方向リブ及び半径方向リブを有し、前記円周方向及び半径方向リブが複数のポケットを形成している」ものとすることは周知の技術である(例えば、刊行物3の記載事項カ及び第1図ないし第3図の記載、刊行物4の記載事項キ及び図5ないし図7の記載、参照)から、刊行物1記載の発明の「強化リブ12、13」の形状・構造を前記相違点2に係る本願補正発明と同様なものとすることは、当業者であれば容易に想到することができたものである。

(3)作用効果について
そして、本願補正発明が奏する作用効果も、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項及び前記周知技術から予測される程度のものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1、2に記載の発明及び前記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

【3】本願発明について
1.本願発明
平成19年3月2日付けの手続補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成18年5月29日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】 ハウジングと、
該ハウジング内に配置された少なくとも1枚の摩擦板と、
該ハウジング内で前記少なくとも1枚の摩擦板と連動しかつアルミニュウム合金からなる加圧板と、
前記摩擦板と前記加圧板との間に位置決めされた裏当て板であって、該裏当て板がアルミニュウム合金より硬い鋼材料から形成されている裏当て板と、
を備えるクラッチ機構。」

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物のうちの刊行物2(実願昭59-87861号(実開昭61-4028号)のマイクロフィルム、原査定の引用文献1)とその記載事項は、前記【2】2.(2)に記載したとおりである。
前記記載事項エ、オ及び第1図ないし第3図の記載を総合すると、刊行物2には、
「変速機ケース12と、
該変速機ケース12内に配置された多板摩擦係合部材20と、
該変速機ケース12内で前記多板摩擦係合部材20と連動しかつアルミ材からなるピストン30と、
前記多板摩擦係合部材20と前記ピストン30との間に位置決めされたバッキングプレート23であって、該バッキングプレート23がアルミ材より硬い鋼材から形成されているバッキングプレート23と、
を備える変速機の多板摩擦係合装置。」
の発明(以下「刊行物2記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

3.発明の対比
本願発明と刊行物2記載の発明とを対比すると、刊行物2記載の発明の「変速機ケース12」は本願発明の「ハウジング」に相当し、以下同様に、「多板摩擦係合部材20」は「少なくとも1枚の摩擦板」に、「アルミ材」は「アルミニュウム合金」に、「バッキングプレート23」は「裏当て板」に、「鋼材」は「鋼材料」に、「変速機の多板摩擦係合装置」は「クラッチ機構」に、それぞれ相当する。また、刊行物2記載の発明の「ピストン30」及び本願発明の「加圧板」は、ともに多板摩擦係合部材20(摩擦板)と連動する「押圧部材」といえるものである。
よって、本願発明と刊行物2記載の発明とは、
[一致点]
「ハウジングと、
該ハウジング内に配置された少なくとも1枚の摩擦板と、
該ハウジング内で前記少なくとも1枚の摩擦板と連動しかつアルミニュウム合金からなる押圧部材と、
前記摩擦板と前記押圧部材との間に位置決めされた裏当て板であって、該裏当て板がアルミニュウム合金より硬い鋼材料から形成されている裏当て板と、
を備えるクラッチ機構。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点3]
「押圧部材」が、本願発明では「加圧板」であるのに対して、刊行物2記載の発明では「ピストン30」である点。

4.当審の判断
そこで、前記相違点3について検討すると、摩擦板(多板摩擦係合部材20)と連動する「押圧部材」として、「ピストン」を採用するか「加圧板」を採用するかは、クラッチ機構の全体構成を考慮して、当業者が適宜選択し得るものであるから、刊行物2記載の発明の「ピストン30」に代えて、「加圧板」を採用することは、当業者であれば容易に想到することができたものである。
また、本願発明が奏する作用効果も、刊行物2記載の発明から予測される程度のものであって、格別なものとはいえない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物2記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項2ないし7に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-08 
結審通知日 2008-09-09 
審決日 2008-10-01 
出願番号 特願平9-306759
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F16D)
P 1 8・ 121- Z (F16D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増岡 亘  
特許庁審判長 溝渕 良一
特許庁審判官 岩谷 一臣
川上 益喜
発明の名称 裏当て板を備えたクラッチ用加圧板  
代理人 千葉 昭男  
代理人 社本 一夫  
代理人 小林 泰  
代理人 増井 忠弐  
代理人 内田 博  
代理人 富田 博行  

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