ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01J |
---|---|
管理番号 | 1192761 |
審判番号 | 不服2005-12788 |
総通号数 | 112 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-04-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-07-06 |
確定日 | 2009-02-09 |
事件の表示 | 特願2001-511713「高圧放電ランプ」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 1月25日国際公開、WO01/06541、平成15年 2月12日国内公表、特表2003-505834〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、2000年6月21日(パリ条約による優先権主張1999年7月20日、ドイツ国)を国際出願日とする出願であって、平成17年3月31日付け(発送日平成17年4月7日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月4日付けで明細書を補正の対象とする手続補正がなされた。その後、当審において、上記平成17年8月4日付けの手続補正は平成19年8月17日付けの補正却下の決定により却下され、同日付け(発送日平成19年8月22日)で拒絶の理由が通知され、平成20年2月22日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 2 本願発明 本願の請求項1ないし18に係る発明は、平成20年2月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願第1発明」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】セラミック放電容器を有し、該放電容器の壁を貫通してリード線が案内されている放電高圧ランプであって、リード線及び放電容器が封止材料により気密に結合されており、その際リード線がニオブ、タンタル、又はニオブ及び/又はタンタルをベースとする合金からなる第1の単一部分と、チタンから形成された少なくとも1つの第2の単一部分とから構成されており、その際第1と第2の単一部分の間の結合領域が封止材料により被覆されているか又は封止材料により形成されており、かつその際放電容器内に配置されたリード線の端部に放電電極が配置されている形式のものにおいて、第1の単一部分が少なくとも部分的に放電容器内に突入しかつ第2の単一部分が少なくとも部分的に放電容器から突出しており、第2の単一部分が封止材料の厚さの最大50%に侵入すること特徴とする高圧放電ランプ。」 3 引用例 (1)当審で通知された拒絶理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-188893号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が図面と共に記載されている。 ア 「【請求項1】透光性セラミックスで成形された発光管内に、一対の電極が対向配置されるとともに、水銀と希ガスが封入された液晶バックライト用セラミック製高圧水銀放電ランプにおいて、前記発光管中央部の最大外径Dと発光管端部の電極導入部の外径dの比d/Dの値が0.4以下であり、水銀の動作圧が60atm以上であることを特徴とする液晶バックライト用セラミック製高圧水銀放電ランプ。」(【特許請求の範囲】) イ 「【発明の属する技術分野】本発明は、発光管が透光性セラミックスで成形された液晶バックライト用高圧水銀放電ランプに関するものである。」(段落【0001】) ウ 「【0019】【発明の実施の形態】図1は、直流点灯される本発明の高圧水銀放電ランプの一実施例を示す。発光管1は、透光性セラミックスス(当審注:「透光性セラミックス」の誤記と認める。)にて成形されており、最大外径がDの球形や楕円球形をした中央部11の両端に外径がdの筒状の電極導入部12,12が一体に連設されている。透光性セラミックスス(当審注:「透光性セラミックス」の誤記と認める。)としては、アルミナ、イットリア、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)、ジルコニアなどを挙げることができる。そして、発光管1の中央部11内には、電極として、タングステン製の陽極2と陰極3が2mmの間隔で対向配置されている。なお、交流点灯する放電ランプであっても良いことは勿論のことである。 【0020】電極2,3の端部にニオブ線5が接続され、ニオブ線5の端部に白金合金からなる外部リード線6が接続されている。電極導入部12内には電極2,3を保持するアルミナ製のスリーブ4が配置されており、電極導入部12の端部はフリットガラス7でシールされる。酸化され易いニオブ線5はスリーブ4とフリットガラス7て完全に覆われており、耐酸化シール構造になっている。そして、外部リード線6がフリットガラス7から延び出している。 【0021】発光管の仕様および封入物は次のとおりである。 発光管 材質 透光性多結晶YAG 平均粒径・・・ 封入物 水銀 70mg リチウム 5.1μg 封入ガス アルゴン 200Torr ヨウ素 95μg」(段落【0019】?【0021】) エ 図面の図1には、外部リード線6とニオブ線5の接続部がフリットガラス7により被覆されて描かれており、外部リード線6・ニオブ線5及び透光性セラミックス発光管1の電極導入部12がフリットガラス7により気密に結合されていることが見て取れる。 したがって、引用例1には次のとおりの発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 【引用発明】 「透光性セラミックス発光管1を有し、該透光性セラミックス発光管1の電極導入部12を貫通して外部リード線6・ニオブ線5が案内されている高圧水銀放電ランプであって、外部リード線6・ニオブ線5及び透光性セラミックス発光管1の電極導入部12がフリットガラス7により気密に結合されており、その際外部リード線6・ニオブ線5がニオブからなるニオブ線5と、白金合金から形成された外部リード線6とから構成されており、その際ニオブ線5と外部リード線6の間の接続部がフリットガラス7により被覆されており、かつその透光性セラミックス発光管1内に配置された外部リード線6・ニオブ線5の端部に電極2、3が配置されている形式のものにおいて、ニオブ線5が少なくとも部分的に透光性セラミックス発光管1内に突入し、かつ、外部リード線6が部分的にフリットガラス7から延び出しており、外部リード線6がフリットガラス7に侵入する高圧水銀放電ランプ。」 (2)当審で通知した拒絶理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-144262号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が図面と共に記載されている。 ア 「【請求項1】内部を放電空間とした透光性発光管の開口部を封止体で封止した金属蒸気発光管の封止構造において、前記封止体は、開口部内に気密に嵌合する保持部材と、この保持部材に形成された穴部に基端部が挿入される電極棒を備え、電極棒外周部と保持部材の穴部内周部とは固相拡散で接合されていることを特徴とする金属蒸気発光管の封止構造。・・・ 【請求項4】請求項1に記載の金属蒸気発光管の封止構造において、前記保持部材は金属パイプであり、この金属パイプの貫通穴内であって電極棒との固相拡散部分よりも外側となる部分には金属パイプよりも低融点の金属棒が挿入され、この金属棒と金属パイプとは液相拡散で接合されていることを特徴とする金属蒸気発光管の封止構造。・・・ 【請求項6】請求項4に記載の金属蒸気発光管の封止構造において、前記金属パイプはNb(ニオブ)からなり、前記電極棒はW(タングステン)からなり、前記金属棒はPt(白金)、Rh(ロジウム)、Ir(イリジウム)、Re(レニウム)、Zr(ジルコニウム)、Ti(チタン)、Pd(パラジウム)の少なくとも一種からなることを特徴とする金属蒸気発光管の封止構造。」(【特許請求の範囲】) イ 「【発明の属する技術分野】本発明は、メタルハライドランプや高圧ナトリウムランプ等の高輝度放電灯内に組込まれる金属蒸気発光管の封止構造に関する。」(段落【0001】) ウ 「金属棒4の材料としてはニオブよりも低融点のPt(白金)、Rh(ロジウム)、Ir(イリジウム)、Re(レニウム)、Zr(ジルコニウム)、Ti(チタン)、Pd(パラジウム)とする。」(段落【0013】) 上記ア?ウから、引用例2には、メタルハライドランプや高圧ナトリウムランプ等の高輝度放電灯において、「外部導線である金属棒の材料として、ニオブよりも低融点のPt(白金)、Rh(ロジウム)、Ir(イリジウム)、Re(レニウム)、Zr(ジルコニウム)、Ti(チタン)、Pd(パラジウム)とする」点の事項が記載されているものと認める。 4 対比 本願第1発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「透光性セラミックスの発光管1」、「ニオブ線5」、「外部リード線6」、「高圧水銀放電ランプ」、「フリットガラス7」、「電極2、3」が、それぞれ、本願第1発明の「セラミック放電容器」、「第1の単一部分」、「少なくとも1つの第2の単一部分」、「放電高圧ランプ」、「封止部材」、「放電電極」に相当する。 (2)上記相当関係を考慮すれば、引用発明の「ニオブ線5・外部リード線6」が、本願第1発明の「リード線」に相当し、引用発明の「透光性セラミックス発光管1の電極導入部12を貫通して外部リード線6・ニオブ線5が案内され」が、本願第1発明の「放電容器の壁を貫通してリード線が案内され」に相当し、引用発明の「接続部」が、本願第1発明の「結合領域」に相当する。 (3)上記相当関係を考慮すれば、引用発明の「ニオブからなる」は、本願第1発明の「ニオブ、タンタル、又はニオブ及び/又はタンタルをベースとする合金からなる」に含まれ、引用発明の「ニオブ線5と外部リード線6の間の接続部がフリットガラス7により被覆され」は、本願第1発明の「第1と第2の単一部分の間の結合領域が封止材料により被覆されているか又は封止材料により形成され」に含まれる。 以上(1)?(3)の考察から、両者は、次の一致点で一致し、相違点1?3で相違する。 【一致点】 「セラミック放電容器を有し、該放電容器の壁を貫通してリード線が案内されている放電高圧ランプであって、リード線及び放電容器が封止材料により気密に結合されており、その際リード線がニオブ、タンタル、又はニオブ及び/又はタンタルをベースとする合金からなる第1の単一部分と、少なくとも1つの第2の単一部分とから構成されており、その際第1と第2の単一部分の間の結合領域が封止材料により被覆されているか又は封止材料により形成されており、かつその際放電容器内に配置されたリード線の端部に放電電極が配置されている形式のものにおいて、第1の単一部分が少なくとも部分的に放電容器内に突入し、かつ、第2の単一部分が封止材料に侵入すること特徴とする高圧放電ランプ。」 【相違点】 相違点1:少なくとも1つの第2の単一部分が、本願第1発明では、チタンから形成されているのに対し、引用発明では、白金合金から形成されている点。 相違点2:本願第1発明では、「第2の単一部分が少なくとも部分的に放電容器から突出しており、」に対して、引用発明では、「外部リード線6(本願第1発明の「第2の単一部分」に相当)が部分的にフリットガラス7(本願第1発明の「封止材料」に相当)から延び出しており、」である点。 相違点3:第2の単一部分が封止材料に侵入することに関して、本願第1発明では、「封止材料の厚さの最大50%に」侵入するのに対し、引用発明ではどの程度の割合で侵入するのか明確でない点。 5 判断 上記相違点1?3について検討する。 相違点1については、引用例2に、メタルハライドランプや高圧ナトリウムランプ等の高輝度放電灯において、外部導線である金属棒の材料として、ニオブよりも低融点のPt(白金)、Rh(ロジウム)、Ir(イリジウム)、Re(レニウム)、Zr(ジルコニウム)、Ti(チタン)、Pd(パラジウム)とする点の事項が記載されており、外部導線の材料の1つとしてチタンが示されている。したがって、引用発明の外部リード線6(本願第1発明の「第2の単一部分」に相当)の材料である白金合金に代えて、引用例2記載のチタンを採用して本願第1発明の相違点1に係る特定事項のごとく構成することは当業者が容易になし得たものである。 なお、この点に関し、請求人は、平成20年2月22日付け意見書において、「刊行物3(当審注:上記「引用例2」に同じ)の段落[0013]には、金属棒にはニオブより低融点の材料を用いることが記載されています。つまり刊行物3の段落番号[0011]、[0013]、[0017]、図1、図3の記載に接した当業者は、「金属線にはニオブより低融点の材料を用いなければならない」との教示を受け、リード線の第1の単一部分としてニオブ、タンタル、又はニオブ及び/又はタンタルをベースとする合金を、第2の単一部分としてチタンを用いる本願発明1(当審注:「本願第1発明」に同じ)に至ることを妨げられます。タンタルの融点はニオブの融点より高いので、刊行物3の上記記載に接した当業者がリード線の材料としてタンタルを除外することは明らかであります。」と主張している。 しかしながら、本願第1発明には、リード線の第1の単一部分として「ニオブ、タンタル、又はニオブ及び/又はタンタルをベースとする合金を」用いると規定されているから、本願第1発明には、リード線の第1の単一部分としてニオブを用いたものが含まれる。一方、引用発明の「ニオブ線5」(本願第1発明の「第1の単一部分」に相当)は、ニオブを用いていることが明らかであるから、引用例2の記載から「金属線にはニオブより低融点の材料を用いなければならない」との教示を受けた当業者が、引用発明に、引用例2記載のニオブより融点の低いチタンを適用することに何ら阻害要因はないというべきであり、上記説示のとおり、引用発明の、外部リード線6(「第2の単一部分」に相当)の材料である白金合金に代えて引用例2記載のチタンを採用して本願第1発明の相違点1に係る特定事項のごとく構成することに困難性はない。したがって、上記請求人の主張は採用することができない。 次に、相違点2について検討する。 本願第1発明において、「第2の単一部分が少なくとも部分的に放電容器から突出しており、」と規定しているのは、突出した部分を利用して外部電源との電気的接続を取るためであると解され、他方、引用発明において、「外部リード線6(本願第1発明の「第2の単一部分」に相当)が少なくとも部分的にフリットガラス7(本願第1発明の「封止材料」に相当)から延び出しており、」と規定しているのも、本願第1発明と同じく、延び出した部分を利用して外部電源との電気的接続を取るためであると解される。そして、このように両者で規定の仕方が異なるのは、単に、実施例レベルにおいて、本願第1発明が、放電容器外端が封止材料外端より外側に配置され、引用発明が、透光性セラミック発光管1の電極導入部12の外端よりフリットガラス7の外端が外側に配置されているからであるというべきである。したがって、相違点2に係る本願第1発明の特定事項は、外部電源との接続を考慮して当業者であれば容易になし得る設計的事項にすぎない。 次に、相違点3について検討する。 本願第1発明の「封止材料の厚さの最大50%」に侵入する点の数値限定に関する本願明細書中の記載は、「【0008】今や、本発明が基礎とした問題は、高圧放電ランプ内又はそれに、特にナトリウム高圧放電ランプに配置されたリード線の酸化及び腐食に対する安定性を高めるもう1つの手段を提供することである。【0009】前記問題は・・・第2の単一部分が封止材料の厚さの最大50%に侵入しかつより酸化安定性の材料が・・・の第IVB及び/又はVIII属からなる金属又は元素との金属合金であることにより解決される。・・・【0015】前記問題は、さらに、・・・第2の単一部分が封止材料の厚さの最大50%に侵入しかつより酸化安定性の材料がセラミックからなることにより解決される。」(段落【0008】?【0015】)との記載のみであって、例えば、上限値50%の前後で酸化及び腐食に対する安全性がどのように変化するかなど、最大50%とした技術的根拠は何ら示されていない。一方、引用例1には、「酸化され易いニオブ線5はスリーブ4とフリットガラス7て完全に覆われており、耐酸化シール構造になっている。そして、外部リード線6がフリットガラス7から延び出している。」(上記摘記事項(ウ)参照)と記載されており、この記載によれば、引用発明の「外部リード線6がフリットガラス7に侵入する」構成は、ニオブ線5の酸化に対する安全性を高めるためであると解される。したがって、引用発明において、ニオブ線5の酸化に対する安全性を高めるために、外部リード線6をフリットガラス7にどの程度侵入させるかは、当業者が適宜決定し得る事項にすぎないというべきであり、本願第1発明の相違点3に係る特定事項のごとく封止材料の厚さの最大50%に侵入するように構成することは、当業者が容易になし得たものである。 そして、本願第1発明の奏する効果についても、引用例1及び2の記載事項から当業者が予測できる範囲内のものにすぎず格別なものではない。 6 むすび 以上のとおりであるから、本願第1発明は、引用発明及び引用例2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そして、本願第1発明が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項2ないし18に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-09-05 |
結審通知日 | 2008-09-12 |
審決日 | 2008-09-24 |
出願番号 | 特願2001-511713(P2001-511713) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01J)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小川 亮、小島 寛史 |
特許庁審判長 |
杉野 裕幸 |
特許庁審判官 |
堀部 修平 山川 雅也 |
発明の名称 | 高圧放電ランプ |
代理人 | 山崎 利臣 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
代理人 | 矢野 敏雄 |
代理人 | 久野 琢也 |
代理人 | ラインハルト・アインゼル |