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審決分類 |
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 B41J 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B41J 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 B41J |
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管理番号 | 1192767 |
審判番号 | 不服2006-7965 |
総通号数 | 112 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-04-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-04-26 |
確定日 | 2009-02-09 |
事件の表示 | 特願2002-138746「熱定着装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月19日出願公開、特開2003-326697〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成14年5月14日の特許出願であって、平成17年1月21日付けの最初の拒絶理由通知に応答して同年3月28日付けで手続補正がされ、同年8月12日付けの最後の拒絶理由通知に応答して同年10月14日付けで手続補正がされたが、平成18年3月20日付けで同手続補正は却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がされ、これを不服として同年4月26日付けで審判請求がされるとともに、同年5月23日付けで明細書についての手続補正がされたものである。 第2 平成18年5月23日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年5月23日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正の内容 本件補正における特許請求の範囲についての補正は、補正前(平成17年3月28日付け手続補正書参照)に 「 【請求項1】 基材と、この基材表面の定着層に転写すべき画像情報がプリントされる浸透層とを有するシート状の被記録媒体を加熱することにより、浸透層に昇華性インクでプリントされた画像情報を定着層に転写定着する加熱部を備えている熱定着装置であって、 前記加熱部が、前記被記録媒体を搬送する搬送機構と、この搬送機構で搬送される被記録媒体を加熱する加熱機構とで構成され、手差し供給部から前記搬送機構の搬送方向と交差する方向に向けて挿入した前記被記録媒体を、この搬送機構に送り込む経路を形成している熱定着装置。 【請求項2】 前記搬送機構の搬送方向での上手位置に圧着型の導入ローラを備え、 この導入ローラに対して、該熱定着装置の外部の供給ローラから前記被記録媒体を送り込む水平姿勢の導入経路を形成すると共に、 前記手差し供給部は、前記導入経路の上方側から該送り込み経路に対して前記被記録媒体を合流させる形態で送り込むガイド板を備えている請求項1記載の熱定着装置。 【請求項3】 前記搬送機構の搬送方向が水平姿勢に設定され、この搬送機構の搬送方向での上手位置に圧着型の導入ローラを備えると共に、 前記手差し供給部は、前記導入ローラより前記搬送機構の搬送方向での下手側に上方側から被記録媒体を合流させる供給経路を備えている請求項1記載の熱定着装置。 【請求項4】 前記加熱機構が搬送経路の下部に配置した加熱プレートと、搬送機構の経路の上方から加熱空気を搬送機構の搬送経路の側に供給する空気加熱部とを備えて構成されている請求項1?3のいずれか1項に記載の熱定着装置。」 とあったものを、 「 【請求項1】 基材と、この基材表面の定着層に転写すべき画像情報がプリントされる浸透層とを有するシート状の被記録媒体を加熱することにより、浸透層に昇華性インクでプリントされた画像情報を定着層に転写定着する加熱部を備えている熱定着装置であって、 前記加熱部が、前記被記録媒体を搬送する搬送機構と、この搬送機構で搬送される被記録媒体を加熱する加熱機構とで構成され、手差し供給部から前記搬送機構の搬送方向と交差する方向に向けて挿入した前記被記録媒体を、この搬送機構に送り込む経路を形成しており、前記搬送機構は、前記被記録媒体の搬送方向の上手側において前記手差し供給部から送られる前記被記録媒体を圧着して搬送する圧着型の導入ローラを備えると共に、この導入ローラから送られる前記被記録媒体の上面に接触する上部ローラと、この上部ローラを基準にして前記被記録媒体の搬送方向に変位した位置において前記被記録媒体の下面に接触する下部ローラとで非圧接状態で搬送力を作用させる両面接触ローラを備えている熱定着装置。 【請求項2】 前記加熱機構が搬送経路の下部に配置した加熱プレートと、搬送機構の経路の上方から加熱空気を搬送機構の搬送経路の側に供給する空気加熱部とを備えて構成されている請求項1記載の熱定着装置。」 と補正するものである。 本件補正には、特許請求の範囲の補正として以下の補正事項を含む。 補正事項(1) 補正前の請求項2、3を削除するとともに、補正前の請求項4の項番を繰り上げる補正。 補正事項(2) 補正前の請求項1における「搬送機構」について、補正後の請求項1では、該「搬送機構」を「前記被記録媒体の搬送方向の上手側において前記手差し供給部から送られる前記被記録媒体を圧着して搬送する圧着型の導入ローラを備えると共に、この導入ローラから送られる前記被記録媒体の上面に接触する上部ローラと、この上部ローラを基準にして前記被記録媒体の搬送方向に変位した位置において前記被記録媒体の下面に接触する下部ローラとで非圧接状態で搬送力を作用させる両面接触ローラを備えている」として、その構成を限定する補正。 2.本件補正の目的 補正事項(1)は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。 補正事項(2)の「前記被記録媒体の搬送方向の上手側において前記手差し供給部から送られる前記被記録媒体を圧着して搬送する圧着型の導入ローラを備える」ことは、発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 補正事項(2)の「この導入ローラから送られる前記被記録媒体の上面に接触する上部ローラと、この上部ローラを基準にして前記被記録媒体の搬送方向に変位した位置において前記被記録媒体の下面に接触する下部ローラとで非圧接状態で搬送力を作用させる両面接触ローラを備えている」ことにより、補正後の請求項1に係る発明は、本願明細書の【0026】にいう、 「被記録媒体Mが幅方向に熱膨張した場合でも、被記録媒体Mに歪みを発生し難い」、 「被記録媒体Mの温度分布のバラツキも回避するものとなっている」、 「多様な被記録媒体Mの厚さに良好に対応させることも可能となる。」 との新たな課題を解決するものとなる。 よって、補正事項(2)のこの点は、発明を特定するために必要な事項を限定するものであっても、解決しようとする課題が同一でないので、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。 以上のことから、補正事項(2)は、全体として、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、それを含む本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 しかしながら、補正事項(2)は、発明を特定するために必要な事項を限定し、特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含むので、本件補正後の請求項に係る発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうか( 平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか否か)についても、念のため、以下検討する。 3.独立特許要件について (1)本願補正発明の認定 本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。 「 【請求項1】 基材と、この基材表面の定着層に転写すべき画像情報がプリントされる浸透層とを有するシート状の被記録媒体を加熱することにより、浸透層に昇華性インクでプリントされた画像情報を定着層に転写定着する加熱部を備えている熱定着装置であって、 前記加熱部が、前記被記録媒体を搬送する搬送機構と、この搬送機構で搬送される被記録媒体を加熱する加熱機構とで構成され、手差し供給部から前記搬送機構の搬送方向と交差する方向に向けて挿入した前記被記録媒体を、この搬送機構に送り込む経路を形成しており、前記搬送機構は、前記被記録媒体の搬送方向の上手側において前記手差し供給部から送られる前記被記録媒体を圧着して搬送する圧着型の導入ローラを備えると共に、この導入ローラから送られる前記被記録媒体の上面に接触する上部ローラと、この上部ローラを基準にして前記被記録媒体の搬送方向に変位した位置において前記被記録媒体の下面に接触する下部ローラとで非圧接状態で搬送力を作用させる両面接触ローラを備えている熱定着装置。」(以下、「本願補正発明」という。) (2)引用発明の認定 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開平10-297197号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の(ア)、(イ)の記載が図示と共にある。 (ア)「 【請求項1】 金属基材上に光透過性樹脂層を形成する工程、 上記光透過性樹脂層の表面にインクジェット受理層を形成する工程、 インクジェット印刷により上記インクジェット受理層上から昇華形着色材を塗布する工程、及び塗布された昇華形着色材を加熱により昇華させ上記光透過性樹脂層に入り込ませる工程、 上記インクジェット受理層を除去する工程を含むことを特徴とする金属装飾体の製造方法。」 (イ)「【0013】この後、昇華形着色材14を加熱し、昇華させる。加熱方法としては、加熱炉に入れる方法やホットプレスを用いる方法などがある。この加熱により、昇華形着色材14は、図5に示すように、全てではないが、透明樹脂層13内に入り込む。従って、インクジェット受理層15に対して印刷された着色模様が透明受理層13に形成されることになる。」 上記(ア)において、「インクジェット印刷により上記インクジェット受理層上から昇華形着色材を塗布する」ことは、インクジェット受理層に画像情報をプリントすることといえる。 上記(イ)で、「この加熱により、昇華形着色材14は、図5に示すように、全てではないが、透明樹脂層13内に入り込む。」とあることは、加熱により、インクジェット受理層に昇華形着色材でプリントされた画像情報が、透明樹脂層13に転写定着されることを意味する。 すると、上記(イ)の「加熱炉」は、「インクジェット受理層に昇華形着色材でプリントされた画像情報を透明樹脂層13に転写定着する加熱部を備えている熱定着装置」である。 以上のことから、上記(ア)、(イ)の記載を含む引用例には、次の発明が記載されていると認めることができる。 「金属基材と、この金属基材表面の透明樹脂層13に転写すべき画像情報がプリントされるインクジェット受理層とを有する被記録媒体を加熱することにより、インクジェット受理層に昇華形着色材でプリントされた画像情報を透明樹脂層13層に転写定着する加熱部を備えている熱定着装置」(以下、「引用発明」という。) (3)対比 引用発明の「金属基材」、「透明樹脂層13」、「インクジェット受理層」、「昇華形着色材」は、それぞれ、本願補正発明の「基材」、「定着層」、「浸透層」、「昇華性インク」に相当する。 引用発明の「被記録媒体」は、シート状の被記録媒体であるか否か明示がないものの、「基材(金属基材)と、この基材(金属基材)表面の定着層(透明樹脂層13)に転写すべき画像情報がプリントされる浸透層(インクジェット受理層)とを有する被記録媒体」である点で、本願補正発明の「シート状の被記録媒体」と共通している。 そして、引用発明の「加熱部」は、シート状の被記録媒体を加熱するか否か明示がないものの、「被記録媒体を加熱する加熱部」である点で、本願補正発明の「加熱部」と共通している。 してみれば、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 「基材と、この基材表面の定着層に転写すべき画像情報がプリントされる浸透層とを有する被記録媒体を加熱することにより、浸透層に昇華性インクでプリントされた画像情報を定着層に転写定着する加熱部を備えている熱定着装置」 <相違点> (相違点1) 本願補正発明は「シート状の被記録媒体」と特定されているのに対し、引用発明は前記特定を有しない点。 (相違点2) 本願補正発明は「前記加熱部が、前記被記録媒体を搬送する搬送機構と、この搬送機構で搬送される被記録媒体を加熱する加熱機構とで構成され」と特定されているのに対し、引用発明は前記特定を有しない点。 (相違点3) 本願補正発明は「手差し供給部から前記搬送機構の搬送方向と交差する方向に向けて挿入した前記被記録媒体を、この搬送機構に送り込む経路を形成しており、前記搬送機構は、前記被記録媒体の搬送方向の上手側において前記手差し供給部から送られる前記被記録媒体を圧着して搬送する圧着型の導入ローラを備える」と特定されているのに対し、引用発明は前記特定を有しない点。 (相違点4) 本願補正発明は「この導入ローラから送られる前記被記録媒体の上面に接触する上部ローラと、この上部ローラを基準にして前記被記録媒体の搬送方向に変位した位置において前記被記録媒体の下面に接触する下部ローラとで非圧接状態で搬送力を作用させる両面接触ローラを備えている」と特定されているのに対し、引用発明は前記特定を有しない点。 (4)判断 (相違点1)について 引用例の【図1】からは、引用発明の「被記録媒体」が同じ厚みで横に延びた形状、すなわちシート、または板状であることが看取される。 引用発明が前提とする従来の技術に関し、引用例の【0003】には引用発明の「金属基材」に相当するものが「金属基板5」とされ、引用例の【図6】からは、該「金属基板5」が平板状であることが看取される。 引用発明の被記録媒体は、金属基材、この金属基材表面の透明樹脂層13、透明樹脂層13の上のインクジェット受理層からなるものであれば形状は問われない。 これらのことを勘案すれば、引用発明の被記録媒体をシート状とし、本願補正発明の(相違点1)に係る構成を備えることは、引用発明、及び引用例の記載に基づいて、当業者が適宜なし得たことである。 (相違点2)について シート状の被記録媒体の加熱部を、被記録媒体を搬送する搬送機構と、この搬送機構で搬送される被記録媒体を加熱する加熱機構とで構成することは周知技術である。 例えば、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開平4-21446号公報には、PET製記録層上のラミネート材層に画像をインクジェット記録したシート状の被記録媒体を加熱して画像を記録層に転写定着するとともにラミネート材層を溶融透明化する加熱部であって、被記録媒体を搬送する搬送機構と、この搬送機構で搬送される被記録媒体を加熱する加熱機構とで構成されたものが記載されている。 本願の出願前に頒布された特開昭63-108366号公報の第2図には、電子写真法でトナー像を形成したオーバヘッドプロジェクタ用の透明シート材1を、オーブン定着器5内に設けた、ローラ9とそれに対向しベルト13を掛け渡したローラ10で挟んで搬送する加熱部が記載されている。 本願の出願前に頒布された実願昭53-126071号(実開昭55-42847号)のマイクロフィルムには、オーブン様の熱板体1内に圧接ローラ7,8を設けた電子写真複写機の定着装置が記載されている。 本願の出願前に頒布された特開昭64-72158号公報には、フィルムの自動現像機の乾燥手段28内に送りローラ81を設けたものが記載されている。 よって、引用発明において、本願補正発明の(相違点2)に係る構成を備えることは、周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。 (相違点3) 手差し供給部から圧着型の導入ローラを介してシート状の被記録媒体を受け入れ内部で搬送する装置であって、手差し供給部から装置内の搬送機構による搬送方向に沿った方向とは異なる方向に向けて被記録媒体を挿入する構成はありふれたものにすぎない。特に、手差し供給部以外の供給部を有する装置においては、被記録媒体が導入ローラ部位で方向を変え巻き癖がつくのを防ぐには搬送方向に沿って挿入することが望ましいとしても、供給部が複数ある以上、どれかの供給部は搬送方向に沿った方向とは異なる方向から挿入せざるを得ない。(例えば、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開平9-30710号公報記載の記録装置における、手差しトレー15からの供給部、カセット14からの供給部,両供給部合流部にあるローラ対の間の位置関係を参照。) このように、該挿入方向をどうするかは設計事項にすぎない。 よって、引用発明において、本願補正発明の(相違点3)に係る構成を備えることは、技術常識に基づいて、当業者が適宜なし得たことである。 (相違点4)について シート状の被記録媒体の搬送手段を、被記録媒体にそれぞれ上面と下面で接する2つのローラが被記録媒体の搬送方向に変位した位置にあるものとすることは周知技術である。 例えば、上記「(相違点2)について」で引用した特開昭64-72158号公報のP.3右下欄第11?14行に、「乾燥部28は、フィルム表面を損傷しない表面が滑らかなベークライト層を表層とした送りローラ81を搬送力が増すように千鳥に配列し」と記載されている。 よって、引用発明において、本願補正発明の(相違点4)に係る構成を備えることは、周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。 まとめ 以上のことから、引用発明において、本願補正発明の(相違点1)?(相違点4)に係る構成を備えることは、引用例の記載、技術常識、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到できたことであり、かかる発明特定事項を採用したことによる本願補正発明の効果も当業者が容易に予測し得る程度のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例の記載、技術常識、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしていない。 4.本件補正についてのむすび 上記「2.本件補正の目的」に記載のとおり、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 仮に、本件補正の目的が、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号で規定されるものに該当するとしても、上記「3.独立特許要件について」に記載のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明の認定 平成18年5月23日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成17年3月28日付けで補正された特許請求の範囲の【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。 「 【請求項1】 基材と、この基材表面の定着層に転写すべき画像情報がプリントされる浸透層とを有するシート状の被記録媒体を加熱することにより、浸透層に昇華性インクでプリントされた画像情報を定着層に転写定着する加熱部を備えている熱定着装置であって、 前記加熱部が、前記被記録媒体を搬送する搬送機構と、この搬送機構で搬送される被記録媒体を加熱する加熱機構とで構成され、手差し供給部から前記搬送機構の搬送方向と交差する方向に向けて挿入した前記被記録媒体を、この搬送機構に送り込む経路を形成している熱定着装置。」(以下、本願発明という。) 2.引用例の記載 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、上記「第2 平成18年5月23日付けの手続補正についての補正却下の決定 [理由] 3.独立特許要件について (2)引用発明の認定」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、上記「第2 平成18年5月23日付けの手続補正についての補正却下の決定 [理由] 3.独立特許要件について」で検討した本願補正発明の発明特定事項から、「搬送機構」について、「前記被記録媒体の搬送方向の上手側において前記手差し供給部から送られる前記被記録媒体を圧着して搬送する圧着型の導入ローラを備えると共に、この導入ローラから送られる前記被記録媒体の上面に接触する上部ローラと、この上部ローラを基準にして前記被記録媒体の搬送方向に変位した位置において前記被記録媒体の下面に接触する下部ローラとで非圧接状態で搬送力を作用させる両面接触ローラを備えている」との限定を省いたものに相当する。 すると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 平成18年5月23日付けの手続補正についての補正却下の決定 [理由] 3.独立特許要件について」に記載したとおり、引用発明、引用例の記載、技術常識、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用例の記載、技術常識、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 また、本願発明の効果は、引用発明、引用例の記載、技術常識、及び周知技術から予測し得る範囲内のものである。 4. むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例の記載、技術常識、及び周知技術にづいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-12-08 |
結審通知日 | 2008-12-11 |
審決日 | 2008-12-24 |
出願番号 | 特願2002-138746(P2002-138746) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B41J)
P 1 8・ 572- Z (B41J) P 1 8・ 575- Z (B41J) P 1 8・ 571- Z (B41J) P 1 8・ 57- Z (B41J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 門 良成 |
特許庁審判長 |
江成 克己 |
特許庁審判官 |
坂田 誠 長島 和子 |
発明の名称 | 熱定着装置 |
代理人 | 北村 修一郎 |