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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1192858
審判番号 不服2005-21129  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-02 
確定日 2009-02-20 
事件の表示 特願2001-289300「ICカード用コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月 4日出願公開、特開2003-100369〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成13年9月21日の出願であって、平成17年9月26日付けで拒絶査定(発送日:平成17年10月4日)がなされ、これに対し、平成17年11月2日に拒絶査定不服審判が請求され、同年12月2日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成17年12月2日付け手続補正について
[結論]
平成17年12月2日付けの手続補正を却下する。
[理由]
平成17年12月2日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「ICカードをコネクタハウジングの挿入孔に差込んでICカードの電極と挿入孔内のコンタクトを接続するようにしたICカード用コネクタにおいて、前記挿入孔は、長さ、幅、電極のピッチ間隔が略同じで、電極数が異なる第1、第2のICカードの挿入口と、前記第1、第2のICカードよりも幅が狭く、長さが長く、厚さが厚い第3のICカードの挿入口とを、幅と厚さの重合部分を共有し、異なる部分を幅方向と厚さ方向に延長して形成し、前記第1、第2、第3のICカード用コンタクトを、前記コネクタハウジング内の同一面に設け、かつ、これらのうち第1、第2のICカード用コンタクトを、前記第1、第2、第3のICカード用挿入孔の途中の第1、第2のICカード用ストッパより手前のハウジングの下面の略中央から奥行き方向に斜めに突出させて設け、前記第3のICカード用コンタクトを、前記ストッパより後方に設け、前記第1、第2のICカード用コンタクトの接触部分の位置を、前記第3のICカードの挿入の妨げとならない高さにずらして形成し、第1、第2、第3のICカード用挿入孔の途中の第1、第2のICカード用ストッパより後方に、挿入された第3のICカードを第1、第2のICカード用コンタクトから離れる方向に案内する案内部を設けたことを特徴とするICカード用コネクタ。」
と補正された(以下、「本件補正発明」という。下線部は補正箇所を示す。)。
本件補正は、補正前の請求項1に「第1、第2、第3のICカード用挿入孔の途中の第1、第2のICカード用ストッパより後方に、挿入された第3のICカードを第1、第2のICカード用コンタクトから離れる方向に案内する案内部を設けた」点を追加することを含むものであるので、この発明特定事項について、検討する。

1.新規事項に関して
前記発明特定事項に係る「案内部」について、願書に最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)には、請求人が、補正の根拠として挙げる段落【0010】に「前記挿入口5の内部であって、コンタクト7の両側に位置して第3のICカード31の挿入を案内する案内部13が形成されている。」と、同じく段落【0015】に「第3のICカード31は、図7(a)(b)(c)に示すように、第1の挿入孔2に、第3のICカード31の電極24が下を向く状態で挿入する。…(略)…。第1の挿入孔2内の中間程度の位置にある第1、第2のICカード用のコンタクト6は、奥行き方向に向かって斜めに突出しているため、第3のICカード31の先端は、コンタクト6によって進路を誘導される。また、コンタクト6は、弾性を持っているため、第3のICカード31が挿入されてくると、後方に反りながら逃げる構造となっており、挿入の邪魔にはならない。…(略)…。その後、案内部13に案内され、第3のICカード31の厚さに合った高さで安定して挿入される。第3のICカード31の先端が、第1の挿入孔2の奥に届いた時点で、ロックばね11が溝25に嵌り、安定する。」と記載されるだけである。
即ち、案内部に関して、単に、第3のカードを案内する、と記載されるだけであって、「コンタクトから離れる方向に案内する」ことは記載されていない。
さらに、願書に最初に添付した図面(以下、「当初図面」という。)の図1、4、7等も参酌して検討する。
当初図面の図7(b)(c)、及び、段落【0015】の「第1の挿入孔2内の中間程度の位置にある第1、第2のICカード用のコンタクト6は、奥行き方向に向かって斜めに突出しているため、第3のICカード31の先端は、コンタクト6によって進路を誘導される。また、コンタクト6は、弾性を持っているため、第3のICカード31が挿入されてくると、後方に反りながら逃げる構造となっており、挿入の邪魔にはならない。」なる記載によれば、第1の挿入孔2に挿入された第3のICカード31は、奥行き方向に向かって斜めに突出している、第1、第2のICカード用のコンタクト6に誘導されるが、その際、コンタクト6は、コンタクト6自体の弾性により、後方に反りながら逃げる構造となっているため、カード31の邪魔にはならないものである。
即ち、第3のICカード31が案内部13に案内された状態(ICカード31が案内部13上に載置された状態:図7(b)(c)参照)では、コンタクト6の斜めに突出する頂部(図4において番号6で指示される箇所の図面右側)は、コンタクト6自体の弾性により、第3のICカード31の裏面に接触していることは明らかであり、又、案内部の上面は、図4によれば、水平な平面(番号13で指示される横長の水平部材参照)であるから、コンタクト6が、第3のICカード31から離れない(常に接触している)ことは明らかである。
してみると、当初明細書又は当初図面には、「第3のICカードを第1、第2のICカード用コンタクトから離れる方向に案内する案内部を設けた」点は記載されておらず、又、その点が、当初明細書又は当初図面の記載から自明の事項であるとも認められない。
したがって、本件補正は、当初明細書又は当初図面に記載した事項の範囲内においてしたものとは認められないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反する。

2.独立特許要件に関して
仮に、本件補正が、当初明細書又は当初図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであるとすると、本件補正は、「ICカード用コネクタ」について、該「ICカード用コネクタ」が、「第3のICカードを案内する案内部を設けた」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に該当する。
そこで、独立特許要件について検討する。
(1)上記1.に記載したとおり、コンタクト6は、第3のICカード31が案内部13により案内されている状態では、常に、カード31の裏面に接触しているから、「コンタクト6から離れる方向」とは、図7(c)における「左方向」になり、上記特定事項は、案内部13が、ICカード31を図面左方向に案内することを特定するものである。
しかしながら、案内部13は、図4、7等によれば、横長の水平部材であり(例えば、奥行き方向に斜めに傾斜するものではない。)、又、発明の詳細な説明には、案内部13について、第3のカード31を案内する、と記載されているだけである(上記1.参照)。
してみると、本願明細書の「発明の詳細な説明」には、「案内部」に関して、本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
したがって、本願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。
(2)他方、「コンタクト6から離れる方向」が、図7(c)における「左方向」ではなく、別の方向である場合を勘案すると、ICカード31が、コネクタから抜かれる(図7(c)において、カード31が下方に移動する)ことにより、コンタクトから離れる場合が想定できる。
しかしながら、案内部はコンタクトの後方(図7(c)における上方)に設けられているものであるから、ICカード31が前方に抜かれるときの案内とはならないことは明らかである。
してみると、「コンタクト6から離れる方向に案内する案内部」は、意味不明な特定事項であるから、結局、そのような特定事項により特定されている本願発明は明確でない。
したがって、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(3)以上のとおりであるから、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.まとめ
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するもの、或いは、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年2月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「ICカードをコネクタハウジングの挿入孔に差込んでICカードの電極と挿入孔内のコンタクトを接続するようにしたICカード用コネクタにおいて、前記挿入孔は、長さ、幅、電極のピッチ間隔が略同じで、電極数が異なる第1、第2のICカードの挿入口と、前記第1、第2のICカードよりも幅が狭く、長さが長く、厚さが厚い第3のICカードの挿入口とを、幅と厚さの重合部分を共有し、異なる部分を幅方向と厚さ方向に延長して形成し、前記第1、第2、第3のICカード用コンタクトを、前記コネクタハウジング内の同一面に設け、かつ、これらのうち第1、第2のICカード用コンタクトを、前記第1、第2、第3のICカード用挿入孔の途中の第1、第2のICカード用ストッパより手前に設け、前記第3のICカード用コンタクトを、前記ストッパより後方に設け、前記第1、第2のICカード用コンタクトの接触部分の位置を、前記第3のICカードの挿入の妨げとならない高さにずらして形成したことを特徴とするICカード用コネクタ。」

2.引用例及びその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された登録実用新案第3079263号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
A.「【考案の属する技術分野】この考案はメモリカードホルダ装置に関し、サイズやタイプの異なる複数種のメモリカードを使用できるメモリカードホルダ装置に関する。」(【0001】)
B.「本考案は、これらの事情に鑑みてなされたものであり、装置全体をあまり大きくすることなく、サイズやタイプの異なる複数種のメモリカードを収納できるメモリカードホルダ装置を提供することを目的としている。」(【0009】)
C.「図1乃至図6はこの考案に係るメモリカードホルダ装置の第1の実施の形態を示し、図1はメモリカードホルダ装置の分解斜視図、図2は図1のメモリカードホルダ装置を組み立てた時の斜視図、図3はベースにスマートメディアカードを挿入した時の斜視図、図4は図1のベースにメモリスティックカードを挿入した時の斜視図、図5は図1のベースにマルチメディアカードを挿入した時の斜視図、図6は図1のベースにスマートメディアカードのメディアカードを挿入した時の横断面図である。」(【0013】)
D.「図1及び図2に示すように、メモリカードホルダ装置1は、メモリカードを収納して、このメモリカードの接点と電気的に接続するものであり、外形が前記メモリカードの挿入方向の一側面から水平方向に沿ってもう一つの側面へ延びるプレート形状に形成されるとともに、空間を交互に重ねる形状により複数種のサイズが異なるメモリカードを収納することができるスロット13,14,15を形成したプレート型ベース10と、接触パーツ201,212,231を有し、前記プレート型ベース10の上下の面にそれぞれ固定された上下の基板20,30と、を具備し、前記プレート型ベース10上のスロット13,14,15に前記複数種のメモリカードのいずれかを収納した場合に、前記上下の基板20,30のいずれかの接触パーツ201,212,231が前記メモリカードの接点に電気的に接続するようになっている。」(【0014】)
E.「さらに詳細に説明すると、プレート型ベース10は、側面11がオープン式で、メモリカードをここから挿入することができ、この開いている側面11はもう一側面12の方向に延びて、複数個のさまざまなタイプとサイズのメモリカードを収納することができるスロット13,14,15が設けられている。」(【0015】)
F.「基板20,30は、上下対称に設置されており、上述したベース10のプレート面の上に複数の接触パーツが溶接され、それは第1組接触パーツ211,第2組接触パーツ212,第3組接触パーツ311を含んで、さまざまなタイプのメモリカードはこの実施の形態のメモリカードホルダ装置1に挿入された後、これら接触パーツと電気的に接続し、信号を伝送させる。」(【0016】)
G.「図1に示したベース10と2つの回路板20,30を定位栓40により相互に組み立てると、図2に示すような状態となる。この図から明らかなように、ベース10を2つの上下基板20,30で覆うと、元々ベース10上に設計されていたスロット13,14,15は自然にそれぞれが違うタイプのメモリカードを収納することができる空間となる。」(【0018】)
H.「図4に示すように、メモリスティックカード52をベース10に差し込んだ状態では、ベース10上のメモリスティックカード52のタイプとだいたい同じスロット14を用いている。このスロット14は明らかに前述のスマートメディアカード51のスロット13と一部分が重なっている。このようなベース10上の空間変化により、お互いの位置を重ねる方法でスロット13,14がそれぞれ占める空間を少なくして、1つのメモリカードホルダ装置1で2、3種類の異なるタイプのメモリカードを挿入して使用する目的を達成する。このほか、このメモリスティックカード52の表面には1組の接点521が設けられており、接点521はベースのスロット14後と上基板20上の第1組接触端子211に配置されて電気的に接続される。」(【0020】)
I.「同様に、図5に示すのは、マルチメディアカード53をベース10に挿入している状態で、この種のカードは体積がさらに小さいためそれを収納するカードスロット15は、ちょうどメモリスティックカード52のスロット14の前半段に設計され、またそのカードはメモリスティックカード52より少し広いため、スロット14の前半段の両側面は外側の広さに合わせて段差部分151を形成する。これはマルチメディアカード53両側の凹段差部分532に対応してお互いに接触して定位する。またマルチメディアカード53の表面上にも1組の接点531を設けて、この1組の接点531によりマルチメディアカード53をメモリカードホルダ装置に挿入して定位させた後、上回路プレート20の第2組接触端子212と電気的に接続させる。」(【0021】)

(2)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-223044号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
J.「【発明の属する技術分野】この発明は、携帯電話機、電話機、PDA (personal digital assistance)、携帯型オーディオ、カメラ等の電子機器に取り付けられるカードコネクタに関し、さらに詳しくは外形、コンタクトパッド位置の異なる少なくとも2種類の異なるカードを小さな占有スペースをもって好適に装填させることができるカードコネクタに関する。」(【0001】)
K.「この発明はこのような事情を考慮してなされたもので、外形、コンタクトパッド位置の異なる二種類以上の異なるカードを小さな占有スペースをもって同一のスロットから装脱できるカードコネクタを提供することを解決課題とする。」(【0008】)
L.「図1において、厚型一段カード10は、所定の厚みtのカード本体11を有しており、その右先端部には誤挿入防止のための面取り部(切欠き)12を有している。カード本体11の底面の先端側には、カード内部のIC回路に接続される複数のコンタクトパッド13が配されている。」(【0017】)
M.「図2は、厚型二段カード20の例としてのSDカードを裏面から見た外観を示している。この厚型二段カード20の平面形状および平面サイズは、図1の厚型一段カード10とほぼ同じである。」(【0018】)
N.「この厚型二段カード20は、厚型一段カード10のカード本体11とほぼ同じ厚さtの上側本体部21を有している。上側本体部21の右先端部には誤挿入防止のための面取り部22を有している。上側本体部21の裏面側には、上側本体部21より僅かに幅が狭い下側本体部23が形成されている。すなわち、このカード20は、両側端部に上側本体部21の底面および下側本体部23の底面による段差27がカード側端に沿って形成された二段構造となっている。下側本体部23の先端側には複数の凹部24が形成されており、これらの凹部24の底面に接触パッド25が配設されている。」(【0019】)
O.「このカードコネクタ1は、樹脂材料などの絶縁体によって成形加工されたコネクタハウジング2を有している。コネクタハウジング2は、上板3、下板4、側面板5、後面板6、前面板7によって形成されている。図4に示すように、ハウジング上板3には、厚型一段カード10及び厚型二段カード20の装填時、これらカード用のコンタクト端子の先端を弾性変形の際に上方に逃がすための逃げ孔40が複数個形成されている。」(【0025】)
P.「コネクタハウジング2の前面板7には、先に示した三種類のカード10,20,30をコネクタ内に装填するための共用かつ単一のカードスロット(挿入口)8を有している。」(【0026】)
Q.「カードスロット8は、厚型一段カード10及び厚型二段カード20用のスロット領域8aと、薄型カード30用のスロット領域8bを有している(図7,図9,図10参照)。これらスロット領域8aおよび8bのうち、スロット領域8aの下側領域は、全てのカードで共用されている。」(【0027】)
R.「図5および図10に示すように、スロット8aに続くハウジング奥方に、厚型一段カード10及び厚型二段カード20用の第1カード収容部9が形成されている。また、図6および図11に示すように、スロット8bに続くハウジング奥方に、薄型カード30用の第2カード収容部19が形成されている。」(【0028】)
S.「図5に示すように、ハウジング上板3の内壁面には、片持ち状の接触バネ片で構成された複数のコンタクト端子50を位置決めして圧入するための複数の溝41が形成されている。」(【0030】)
T.「各コンタクト端子50は、電子機器のプリント配線基板のコンタクトパッドに半田接続される端子部50a、溝41内で固定させるための固定部50b、弾性的に変位してカード10または20のコンタクトパッドと当接する接触ばね片部50c、下方に突出した接点部50dを有している(図10参照)。」(【0031】)
U.「第1カード収容部9には、挿入された厚型一段カード10及び厚型二段カード20を突き当てる突き当て壁43が形成され、かつこの突き当て壁43の一方の角部には、カード10,20の面取り部12,22を突き当てるべく突出されたコーナ壁53が形成されている。」(【0033】)
V.「したがって、このコネクタ構造によれば、いずれのカード10,20が挿入されたときでも、接触パッド12,25がコネクタ1のコンタクト端子50の接点部50dまでの距離が同じになるので、コンタクト端子50はどちらのカード10,20によっても同じ弾性変位量が与えられることになり、両カード10,20について安定した接触信頼性を得ることができるようになる。」(【0043】)
W.「したがってこの第1実施形態では、外形、コンタクトパッド位置の異なる三種類のカードを同一のスロットから装脱できるようになり、これによりカードコネクタの占有スペースを小さくすることができ、各種電子機器の小型化に寄与することができる。」(【0053】)
X.「この第2実施形態においては、厚型カード10,20用のコンタクト端子70と薄型カード用のコンタクト端子75との双方を、コネクタハウジング80の上下面のうちの一方の面(この場合は下板81側)に、位置をずらせて配置している。」(【0059】)

3.引用例に記載された発明
(1)上記事項及び図面の記載からみて、引用例1には、次のような発明が記載されている(以下、「引用例1記載の発明」という。)。
メモリカードを、ベース10と上下の基板20,30とで形成された薄型箱体のスロットに差込んで、各メモリカードの接点と、スロット内の接触パーツとを接続するようにしたメモリカードホルダ装置において、
マルチメディアカード53の挿入口であるスロット15と、該マルチメディアカード53よりも幅が狭く、長さが長いメモリスティックカード52の挿入口であるスロット14とを、幅と厚さの重合部分を共有し、異なる部分を延長して形成し、前記マルチメディアカード53とメモリスティックカード52用の接触パーツ212,211を、メモリカードホルダ装置の基板20上に設け、かつ、マルチメディアカード53の接触パーツ212をスロットの手前に、メモリスティックカード52の接触パーツ211をスロットの後方に設けたメモリカードホルダ装置。

(2)上記記載事項L、M、Vによれば、厚型一段カード10と厚型二段カード20とは、長さ、幅、電極のピッチが略同じものであるところ、その電極数については、明記されていない。
しかしながら、図1、2、5の記載からみて、厚型二段カード20の電極の数は、厚型一段カード10のそれより一つ少ないことは明らかである(図2のメントリブ22近傍のコンタクトパッド、及び、図5のコーナ壁53近傍のコンタクト端子参照)。
又、上記他の記載事項及び図面等からみて、引用例2には、次の発明が記載されている(以下、引用例2記載の発明」という。)
メモリなどのICが内蔵されたカードをコネクタハウジングのカード収容部に差込んでカードのコンタクトパッドとカード収容部内のコンタクト端子を接続するようにしたカードコネクタにおいて、
カード収容部9のカードスロット8aに、長さ、幅、電極のピッチ間隔が略同じで、電極数が異なる、厚型一段カード10と厚型二段カード20とを挿入するカードコネクタ。

4.対比
本願発明と引用例1記載の発明とを対比する。
引用例1記載の発明の「メモリカード」は、その機能等からみて、本願発明の「ICカード」に相当し、同様に、「ベース10と上下の基板20,30からなる薄型箱体」は「コネクタハウジング」に、「スロット」は「挿入孔」に、「メモリカードの接点」は「ICカードの電極」に、「マルチメディアカード53」は「第1のICカード」に、「メモリスティックカード52」は「第3のICカード」に、「接触パーツ212」は「第1のICカード用コンタクト」に、「接触パーツ211」は「第3のICカード用コンタクト」に、「メモリカードホルダ装置」は「ICカード用コネクタ」に、それぞれ、相当する。
又、引用例1記載の発明において、接触パーツ211,212は、どちらも基板20に、即ち、同一面に設けられている。
ところで、引用例1記載の発明においては、第1のICカードに相当する「マルチメディアカード53」は、スロット15の側部に設けられた段差部分151(「マルチメディアカード53」の凹段差部分532が対応する部分)の後端に突き当たることにより、それ以上の挿入が阻止されるから、この段差部分の後端が「マルチメディアカード53」の「ストッパ」となっていることは明らかであり、図1等も参酌すると、「マルチメディアカード53」の「接触パーツ212」はストッパ(段差部分の後端)より手前に、又、「メモリスティックカード52」の「接触パーツ211」はストッパより後方に設けられている。
してみると、上記両発明は、次の一致点と相違点を有するものである。
【一致点】
ICカードをコネクタハウジングの挿入孔に差込んでICカードの電極と挿入孔内のコンタクトを接続するようにしたICカード用コネクタにおいて、前記挿入孔は、第1のICカードの挿入口と、前記第1のICカードよりも幅が狭く、長さが長い第3のICカードの挿入口とを、幅と厚さの重合部分を共有し、異なる部分を延長して形成し、前記第1、第3のICカード用コンタクトを、前記コネクタハウジング内の同一面に設け、かつ、これらのうち第1のICカード用コンタクトを、前記第1、第3のICカード用挿入孔の途中の第1のICカード用ストッパより手前に設け、前記第3のICカード用コンタクトを、前記ストッパより後方に設けたことを特徴とするICカード用コネクタ。
【相違点1】
本願発明では、挿入口に、第1のICカードと、長さ、幅、電極のピッチ間隔が略同じで、電極数が異なる第2のICカードも挿入され、そのため、第2のICカード用のコンタクトも、第1、第3のICカード用コンタクトと同一面に設けられているのに対して、引用例1記載の発明では、そのような第2のカードはない点。
【相違点2】
本願発明では、第3のカードは第1のカードより厚さが厚いものであり、そのため、挿入口が厚み方向にも延長されるのに対して、引用例1記載の発明では、第3のカードと第1のカードとの厚さについては特定されていない点。
【相違点3】
本願発明では、第1、第2のICカード用コンタクトの接触部分の位置を、第3のICカードの挿入の妨げとならない高さにずらして形成したのに対して、引用例1記載の発明では、第1のICカード用コンタクトと、第3のICカード用コンタクトとの高さ関係については特定されていない点。

5.判断
【相違点1】について
引用例2記載の発明における「厚型一段カード10」と「厚型二段カード20」とは、長さ、幅、電極のピッチ間隔が略同じで、電極数が異なる2枚のICカードであり、且つ、同じカードスロットに挿入されるものであるから、本願発明の「第1のICカード」と「第2ののICカード」とに相当するものである。
即ち、引用例2には、同じスロット(挿入口)に、長さ、幅、電極のピッチ間隔が略同じで、電極数が異なる2枚のICカードを挿入すること、又、該2枚のICカードが同じコンタクト端子50に接触すること、が記載されている。
本願発明、引用例1記載の発明、引用例2記載の発明は、何れも、大きさや厚さ等の異なる複数種類(3種類)のICカードを、同じ挿入口に挿入するコネクタに関するものであるところ、複数種類のICカードにどのようなものを選択して、どのような組み合わせにするかは、当業者が適宜決定する設計事項であるから、引用例1記載の発明において、3種類のカードの内、2種類のカードを、引用例2記載の発明に倣って、長さ、幅、電極のピッチ間隔が略同じで、電極数が異なる2枚のICカードとすることは、当業者が容易に想到し得ることと認められる。
なお、その結果、3種類のICカードのコンタクトが同一面に設けられるようになることは言うまでもない。

【相違点2】について
引用例1記載の発明においては、マルチメディアカード(第1のICカード)とメモリスティックカード(第3のICカード)との厚みについては、特定されていない。
しかしながら、上記「相違点1について」において記載したように、同一のコネクタの同じ挿入口に挿入する複数種類のICカードをどのようなものにするかは、当業者が適宜決定する設計事項であり、又、引用例2には、厚型一段、厚型二段、薄型カードというように、厚さの異なる3種類のICカードを用いることも記載されているから、引用例1において、メモリスティックカード(第3のICカード)をマルチメディアカード(第1のICカード)より厚いものとすることに格別の困難性は認められず、厚いICカードを採用した場合には、挿入口の形状を、カードの厚みに応じて延長することは、当業者が、当然に採用すべき技術事項であると認められる。

【相違点3】について
ICカード用コネクタにおいて、ICカード用コンタクトを、コネクタハウジング内の同一面に高さを同じにして前後に設けた場合、長さが長く厚さの厚いICカードを挿入する時に、当該ICカードが、手前側に設けられているコンタクトに当たり、コンタクトを変形させる等、問題が生じることは、当該技術分野における自明の課題であって、その課題解決のために、コンタクトが回避できる逃げ孔を設ける(引用例2における記載事項O参照)、或いは、コンタクトに緩い傾斜面を設ける等、様々な手段が講じられており、その手段の一つとして、前方のICカード用コンタクトの接触部分の位置を、後方まで挿入されるICカード(第3のICカード)の挿入の妨げとならない高さにずらして形成する程度のことは、当業者が容易に想到し得ることと認められる。

【作用効果】について
本願発明の奏する作用効果についてみても、引用例1及び引用例2記載の発明の奏する作用効果から予測し得る程度のものであって、格別なものではない。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用例1及び2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-01 
結審通知日 2008-09-30 
審決日 2008-12-08 
出願番号 特願2001-289300(P2001-289300)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (H01R)
P 1 8・ 575- Z (H01R)
P 1 8・ 121- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 哲男稲垣 浩司  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 豊島 唯
佐野 遵
発明の名称 ICカード用コネクタ  
代理人 古澤 俊明  
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